【完全版】刑事事件の裁判の流れ|裁判の費用は?裁判の記録は閲覧できる?
「刑事事件の裁判の流れってよくわからない」
そう思われている方もいらっしゃると思います。
今回は、
- わかりやすい刑事裁判の流れ
- 刑事事件の裁判の疑問
をレポートしていきます。
法律的な部分の解説は弁護士の先生にお願いします。
ご自身やご家族が刑事裁判を受ける当事者になってしまうことがあるかもしれません。
その際、刑事裁判の流れについて正しい知識を持っておくことは非常に重要です。
刑事裁判で判決が出るまでには様々な手続きがあります。
「刑事事件の裁判の流れ」について詳しくみていきましょう。
目次
刑事事件の裁判の流れを弁護士が解説!
ドラマやゲームで裁判の様子を目にしたことがあるかもしれません。
しかし、実際に法廷で刑事事件の裁判をご覧になった方は少ないと思います。
まずは、刑事事件の裁判の大まかな流れを確認しましょう。
刑事事件の裁判の流れ
▼第一回公判
① 冒頭手続
人定質問、起訴状朗読、黙秘権告知、罪状認否
② 証拠調べ手続
検察官の立証、弁護人の立証、被告人質問
③ 弁論手続
検察官の論告求刑、弁護人の最終弁論、被告人の意見陳述
▼第二回公判(約10日後 )
④ 判決言い渡し
通常の事件では、上記のように2回の公判で判決がでます。
聞き馴染みのない言葉がたくさんでてきたかもしれません。
以下で各項目をくわしくみていきましょう。
①冒頭手続
刑事事件の裁判が開廷されると、まずはじめに「冒頭手続(ぼうとうてつづき)」を行います。
冒頭手続きでは以下の手続きを行います。
✔人定質問 ✔起訴状の朗読 ✔黙秘権などの被告人が有する権利の告知 ✔起訴された公訴事実に対する罪状認否 |
まず、「人定質問」で被告人が人違いでないかを確認します。
人違いでないことが確認できたら、検察官が起訴状を朗読します。
起訴状には、どんな内容が記載されているのでしょうか。
起訴状では、「検察官がどのような事実を立証しようとしているのか」「犯罪名」などを明らかにします。
例えば、傷害事件などでは、加害者がいつ、どこで、誰に対し、どうやって、どのような傷害を負わせたかなどが記載されます。
「黙秘権」という権利を聞いたことがありますよね。
裁判官は被告人に不利益を与えないため、「黙秘権」があることの説明をします。
その後、被告人と弁護人が、起訴状記載の罪を認めるか否か、また、こちら側の言い分を主張する機会があります。
この刑事裁判の手続きが始まってから証拠調べに入るまでの手続きを「冒頭手続」といいます。
冒頭手続きまとめ
- どんな刑事事件について裁判をするか
- 刑事事件の罪を認めるかどうか
を明らかにする。
②証拠調べ手続
冒頭手続きが終わると、次は「証拠調べ手続」に入ります。
証拠調べ手続とは、検察官と弁護人が裁判官に対して、各証拠を示す手続きのことです。
どんなものが証拠として示されるのでしょうか。
証拠として取り扱われるものは大きく分けて以下の3種類あります。
- 証拠書類(書証)
- 証拠物
- 人証(事件の目撃者など、公判廷に出廷してもらう証人のこと)
各証拠をくわしく見ていきましょう。
《証拠書類》 ✔事件の関係者が作った書類(証拠物と扱われる場合もある) ✔捜査機関が捜査結果を報告するため作った書類 ✔供述調書など 《証拠物》 ✔犯行に使用された凶器 ✔犯行現場に落ちていた遺留品 ✔家宅捜索によって押収された物など 《人証》 ✔証人(目撃者、鑑定人など) |
検察官と弁護人が以上の証拠を示していきます。
示される証拠は予め裁判官は把握しているのでしょうか。
たくさん証拠がある場合は、先に目を通しておけばスムーズに進行しそうですが…
裁判官は証拠調べ手続までは証拠を一切見ません。
証拠調べ手続きにおいて初めて証拠を目にします。
これは裁判官の予断を排除するためです。
裁判官が起訴状だけを持って法廷に入ることを、起訴状一本主義と言います。
さて、提出された証拠を利用した証拠調べの中身をくわしくみてみましょう。
まずは検察官の冒頭陳述があります。
検察官による冒頭陳述
証拠調べ手続に入る前に、検察官がどのような事件の犯罪事実を立証しようとしているのかをくわしく説明する
先ほど、検察官が読み上げた「起訴状」には犯罪を構成する事実しか記載されていません。
この冒頭陳述で具体的な事件の内容を明らかにします。
通常の流れでは、冒頭陳述は検察官のみが行います。
弁護人は、裁判長の許可を受ければ、冒頭陳述を行うことが可能です。
弁護人が冒頭陳述を行う場合は、弁護側が立証を予定している「被告人に有利な事情」を説明します。
冒頭陳述が終わると、「証拠調べ請求」に入ります。
証拠調べ請求
検察官と弁護人が裁判官に対し、立証活動の予定を説明する手続き
まず、証拠を調べるには、一方がそれを証拠とすることを裁判所に求めなければなりません。
もう一方の意見を聞いた上で、裁判所が証拠とすることに問題がないと判断されたものについて、その内容を調べます。
刑事事件では、検察官が事件について証明する責任を負っています。
よって、まずは検察官側の証拠調べから行います。
検察官の立証が終わった後、弁護側の証拠を調べます。
検察官の証拠調べに対して弁護人は、
- 嘘が書かれてる被害者や関係者の調書
- 内容が不正確な書面
が請求された場合、その証拠に対して不同意の意見を述べることができます。
認められた証拠で、検察官の立証、被告人・弁護人の立証が行われます。
検察官の立証、弁護人の立証
裁判官が証拠調べ請求により、取り調べる必要があると決定した証拠については、証拠の取調べを行う
検察官は、採用された証拠で事件の事実の立証を進めていきます。
証拠を提示する方法は証拠の種類により様々です。
「書類」:法廷で読み上げる(朗読) 「証拠物」:裁判官に証拠物を見せる(展示) 「証人」:証人に証人尋問を行う |
このようにそれぞれの証拠の種類に応じたそれぞれの方法で証拠を調べます。
立証活動は弁護人の弁護活動の中でも非常に重要な手続きです。
この立証活動によって、裁判官の心証が形成されるからです。
裁判官の心証は判決に影響を及ぼします。
証人尋問などの後に、被告人質問の手続きがあります。
被告人本人に話をする機会を与える被告人質問はどの裁判でも行われます。
被告人はこの手続きで、事実に争いのある傷害事件においては、
裁判官に直接自分の言い分を述べる
事実に争いが無い場合は、
今回の傷害事件についての謝罪や反省の気持ち
などを話します。
被告人質問は裁判の中でも極めて大切な手続きといえます。
③弁論手続
極めて重要な被告人質問が終わると「弁論手続き」に入ります。
弁論手続は、
論告・求刑
↓
弁論
↓
最終陳述
といった流れで進んで行きます。
弁論手続の内容をくわしくみていきましょう。
まずは論告・求刑です。
論告・求刑
論告とは証拠調べが全て終わり、検察官が今回の事件についての意見を述べる手続き
検察官は、
- 検察官の提出した証拠で事実が認められるという意見
- 求刑
などについて述べます。
「求刑(きゅうけい)」とは、被告人にどのような刑罰を与えるべきかについて述べた部分です。
具体的にいうと、「懲役〇年」「罰金〇円」などです。
論告・求刑が終わると、最後に弁護人が最終弁論を行います。
最終弁論
弁護人が事実に争いがある場合、検察官の論告・求刑に対して反論を述べる手続き
事実に争いのない場合は、被告人にできる限り軽い刑が言い渡されるように被告人に有利な意見を述べます。
裁判も終盤を迎えます。
弁護人が被告人に有利な意見を述べられる最後の機会が「最終弁論」です。
最終弁論が終わると、最後に最終陳述の手続きがあります。
最終陳述
被告人が意見・反省を述べる手続き
被告人の最終陳述が終わるとすべての審理が終了します。
これを「結審」といいます。
通常の裁判では、その日のうちに判決は出されません。
最後に裁判官が判決宣告期日を指定して、閉廷となります。
④判決言い渡し
通常、第一回公判では、判決はでません。
「判決言い渡し」は裁判官が証拠を検討し、後日行われます。
判決の言い渡しがされることで裁判が終わります。
判決の言い渡しでは「有罪か無罪か」がまず言い渡されます。
判決言い渡しでは裁判長が結論となる「主文」を朗読し、その結論に至った理由を詳しく述べます。
主文では、無罪の場合は無罪と、有罪の場合は刑罰の内容が言い渡されます。
以上が刑事事件の裁判の流れです。
また、流れを追ってきた「正式裁判」ではなく、略式裁判という裁判の手続きもあります。
刑事事件の結果が軽微な場合などは、略式裁判で罰金刑になることもあります。
略式裁判:公開の法廷での裁判を開かない簡易な手続き
略式手続は簡易裁判所の管轄に属する事件のうち
- 100万円以下の罰金、または科料を科す場合
- 被疑者に異議がないとき
は検察官の請求によって行われます。
それに対し、刑事事件の結果が重大、または悪質な場合は、正式裁判になる可能性が高いです。
刑事裁判はたくさんの工程で成り立っているのですね。
ご自身やご家族が刑事事件で裁判を受ける場合も流れを知っていれば心の準備ができます。
刑事裁判が行われる期間は?
刑事裁判が行われている間の被告人や被告人の家族の心労は計り知れません。
裁判が長期間に渡れば心労は蓄積されていくばかりですよね。
事件が起訴され、裁判を経て判決が言い渡されるまでの期間はどれくらいなのでしょうか。
事件が起訴されると、裁判所から被告人へ起訴状の写しが送られます。
通常、裁判は、起訴状が送られてきてから約1ヶ月後に行われます。
事実関係に争いがあるなど複雑な事件の場合、裁判は長期に渡ります。
比較的簡単な事件であれば、1回の公判で終了します。
判決の言い渡しは第1回の約10日後に行われることが多いです。
比較的簡単な事件なら最短で1ヶ月半程で全行程が終了するといえそうですね。
刑事裁判の期間についてわかりやすい動画がありますのでご覧ください。
【裁判の流れQ&A】刑事事件の裁判にかかる費用は?記録を閲覧できる?
Q1.裁判に費用はかかる?
一般的には裁判にかかる費用は「裁判費用」と呼ばれることがあります。
「裁判費用」とは主に民事裁判で登場する言葉です。
刑事裁判においては裁判の際にかかる費用を訴訟費用と呼びます。
訴訟費用は被告人が負担することになるのでしょうか。
無罪になった場合でも、訴訟費用はかかってしまうのでしょうか。
刑事裁判で無罪判決を獲得すれば訴訟費用はかかりません。
有罪で終わった際はそれまでの過程でかかった費用を全てまたは一部、被告人が負担する場合があります。
そもそも、被告人が罪を犯したことによって訴訟費用が生じたという関係にあります。
以上から、このように定められたものです。
刑の言い渡しをした時は、裁判所は原則として、被告人に訴訟費用の全部または一部を負担させると定められています。
これは、刑事訴訟法によって定められています。
ただし、実務上は、訴訟費用を被告人に負担させるケースはほとんどありません。
なお、刑事裁判を私選弁護士に依頼した場合、弁護士費用は必ずかかります。
弁護士費用は私選弁護人の弁護活動の対価として弁護人に支払う費用です。
私選弁護士に依頼する際の費用は以下の記事が参考になります。
私選弁護士に依頼した際の弁護士費用についてはコチラ
Q2.裁判記録を閲覧する方法は?
これから裁判を受ける身としては、裁判記録を閲覧できれば非常に参考になりますよね。
刑事事件の裁判記録は、誰が、どのようにすれば閲覧できるのでしょうか。
刑事訴訟法上、刑事被告事件が終結した後は、原則として誰でも訴訟記録を閲覧できます。
したがって、裁判記録の閲覧は、判決確定を待って閲覧を申し出れば可能です。
記録の保管者に閲覧を申し出れば裁判記録を見ることができるのですね。
記録の保管者とは、その訴訟の第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官です。
Q3.刑事事件の裁判はどんな裁判所で行われる?
裁判所は、全国に配置されています。
「最高裁判所」「高等裁判所」「地方裁判所」「家庭裁判所」「簡易裁判所」
といった種類があります。
それぞれどんな裁判所なのかみてみましょう。
まとめ
全国の裁判所
最高裁判所 |
---|
東京都のみに配置されている。 憲法により直接設置されている司法権の最高機関 。 |
高等裁判所 |
東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8か所の都市に置かれている。 さらに、支部として別の6か所の都市にも設けられている。 |
地方裁判所、家庭裁判所 |
全国に50か所あり、各都道府県に置かれている。 それぞれに支部と、家庭裁判所には出張所も設けられています。 |
簡易裁判所 |
全国に438か所設置されている。 |
また、特別の支部として、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所が設けられています。
刑事事件の第一回公判はどの裁判所で行われるのでしょうか。
刑事事件の裁判の第一審は、通常、簡易裁判所か地方裁判所で行われます。
簡易裁判所で裁判できるのは
- 罰金以下の刑に当たる罪
- 「懲役又は罰金」というように選択的に罰金が定められている罪
- 窃盗罪・横領罪など裁判所法33条2項が定める罪
と決まっています。
簡易裁判所では原則として禁錮以上の刑を科すことができません。
例外的に住居侵入罪・窃盗罪・横領罪など一定の罪について懲役3年以下の刑を科すことができるにとどまります。
地方裁判所は、簡易裁判所が裁判すべき事件を含め、すべての事件について裁判することができます。
Q4.刑事事件の裁判は傍聴できる?
今回は、刑事裁判の流れを学びました。
実際の刑事裁判をみることができればさらに裁判を理解できそうですよね。
また、ドラマや映画の裁判と実際の裁判に違いがあるのかも気になりますよね。
刑事裁判を傍聴することができるという噂を聞いたことがありませんか?
刑事裁判を傍聴することは可能なのでしょうか。
また、有料であったり、予約が必要であったりするのでしょうか。
ただし、有名な事件などで傍聴を希望する人が多い場合は、事前に抽選が行われることもあります。
その場合は当選した人でないと傍聴できません。
今回の記事で刑事裁判に興味を持った方は一度裁判所に裁判を傍聴しに行っても良いかもしれません。
Q5.裁判の判例はどこで見ることができる?
一般的に「判例」とは過去の判決の実例を指します。
裁判の流れがわかると、様々な事件の判例も気になるかもしれません。
過去の判例をみることができれば、ご自身やご家族が裁判を受ける際に参考になりますよね。
こちらでは判例を見る手段をご紹介します。
①裁判所のホームページを利用する(無料) |
裁判所のホームページの「裁判例情報」をクリックすれば探している判例が検索できます。 もっとも、全ての判例が載っているわけではありません。 |
②有料のデータベースを利用する |
具体的にご紹介すると、 ・判例秘書(LIC) ・ Westlaw Japan ・TKC などが挙げられます。 契約し、料金を支払うと多くの判例を検索することができます。 |
③判例雑誌を利用する |
具体的に挙げると ・判例タイムズ ・判例時報 などです。 図書館などでも閲覧できる場合があります。 |
④学習用資料を利用する |
具体的には ・判例百選シリーズ ・判例セレクト ・重要判例解説 などが挙げられます。 判例が簡潔にかかれている場合もあり、初心者でも読みやすいです。 |
⑤インターネットで検索する |
上記に挙げている他にも判例を掲載しているサイトはあります。 インターネットができる環境にある場合はまずインターネットで検索してみましょう。 |
まずは、裁判所のホームページの無料検索を利用する事をオススメします。
基本的な判例は確認することが可能です。
しかし、有料のデータベースより掲載されている判例よりは少なくなっています。
判例を調べる方法がたくさんあることがわかりましたね。
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以下の記事が参考になりますので刑事事件で弁護士を探す際は参考にしましょう。
最後に一言アドバイス
今回は、「刑事裁判の流れ」をくわしく説明しました。
最後に一言アドバイスお願いします。
刑事裁判で有罪判決を受けると「前科」がついてしまいます。
そもそも裁判になる前に事件を解決できればベストです。
そのためにもまずは、事件後すぐに弁護士に相談してみましょう。
刑事裁判になってしまった場合は、無罪やできる限り軽い刑を目指し、弁護士と綿密に打ち合わせしましょう。