痴漢は後日逮捕される?逮捕の条件・その後の裁判までの流れや刑罰を徹底解説!
「出来心で痴漢をしてしまった・・・その場では捕まらなかったけど後日逮捕されることはあるのだろうか・・・」
「痴漢で逮捕されてしまったら、その後は必ず裁判になってしまうのだろうか・・・」
出来心で痴漢をしてしまった方やそのご家族は、逮捕されてしまうかどうかやその後の流れがわからず心配な方もいらっしゃるかと思います。
このページでは、そのどちらの方のためも役立つ
- 痴漢の基礎知識
- 痴漢で逮捕される条件
- 痴漢で逮捕された場合のその後の裁判までの流れ
といった事柄を徹底的に調査してきました!
専門的な部分は刑事事件を数多く取り扱い、痴漢の事案にもアトム法律事務所の刑事弁護士に解説をお願いしております。
よろしくお願いします。
気軽な気持ちやその場で見つからなければ大丈夫だろうと痴漢をして、逮捕された事案は数多くあります。
また、実際に逮捕されてしまったら、様々な不利益を回避するためにも即時に動かなければなりません。
ここで、痴漢に関する知識をしっかり学んで、万が一の場合に備えましょう。
目次
痴漢という言葉は日常的にも用いられるので、耳にしたことがないという方はほとんどいないかと思います。
もっとも、痴漢の正確な意味や何の犯罪になるのかまではよく知らないという方も多いと思います。
まずは、痴漢の基礎知識から確認していきましょう!
痴漢の意味は?何の犯罪?まずは基礎知識を確認!
痴漢は何の犯罪?刑罰は罰金?懲役?
痴漢とは、一般的には
相手の意に反する性的行為またはそういった行為を行う者
という意味であると言われています。
もっとも、「相手の意に反する性的行為」といっても様々ですよね。
では、逮捕される「痴漢」って一体何なのでしょうか?
現在の日本では、犯罪として法令で規定されている痴漢行為をした場合にのみ逮捕されます。
難しい法律用語でいうと
罪刑法定主義
といいます。
そして、実際に痴漢で逮捕されている人がいる以上、痴漢が何らかの犯罪にあたるはずですよね。
でも、殺人罪や窃盗罪などとは違い
痴漢は「痴漢罪」という犯罪が法令で定められているわけではない
んです!
実は、痴漢の多くは、都道府県迷惑防止条例違反、刑法上の強制わいせつ事犯として逮捕されているんです。
電車内等における痴漢事犯については、都道府県迷惑防止条例違反、刑法上の強制わいせつ事犯等として検挙している。
出典:https://www.npa.go.jp/hakusyo/h25/honbun/html/pf231000.html
痴漢は、問われる可能性のある犯罪が一つではないということですね。
では、痴漢で問われる可能性のある犯罪について個別に確認していきましょう。
迷惑防止条例違反
東京都を例に出すと、迷惑防止条例の正式名称は
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
といいます。
この条例の中にこんな規定があります。
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(以下略)
出典:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第5条1項
少しわかりにくいのでまとめると、
- 公共の場所又は公共の乗物で
- 衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れ
- 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせ
た場合に、この条例違反ということになります。
そして、この条例に違反した場合の刑罰は以下のように規定されています。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(略)
二 第五条第一項又は第二項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)
(以下略)
出典:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第8条1項
こちらの条例違反の場合の刑罰には懲役刑だけでなく罰金刑もあるということですね。
各都道府県が独自に制定しているため、迷惑防止条例は、都道府県ごとに処罰の内容が若干異なる点は注意しましょう。
強制わいせつ罪
一方、刑法にはこんな規定があります。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。
十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
出典:刑法第176条
刑法上の強制わいせつ罪は、先ほどの条例違反と検証して
- 懲役の刑期が長く
- 罰金刑がない
ことからより重い刑罰が定められているものといえます。
もっとも、両者の区別として
- 条例違反は公共の場所に限定される
- 脅迫を用いた場合は強制わいせつが適用される
ことは条文から分かりますが、公共の場所で脅迫を用いず、体に触れた場合についてはどちらが適用されるのでしょうか?
アトム法律事務所の弁護士にお尋ねしてみましょう。
明確に区別する基準があるわけではないですが、レポートにもあるとおり、強制わいせつ罪の方が重い刑罰が定められていることから
強制わいせつ罪はより悪質な痴漢行為に適用されるものと考えられています。
具体的には
- 下着の中にまで手を入れる行為
- 自身の陰茎を直接押し付ける行為
などには強制わいせつ罪が適用される可能性が高いといえます。
アトム法律事務所の弁護士に解説いただいた点も踏まえて、痴漢で問われる二つの犯罪を検証したものを表にまとめてみましたので、ご参照下さい。
迷惑防止条例 | 強制わいせつ | |
---|---|---|
刑罰 | 6月以下の懲役 又は 50万円以下の罰金 |
6月以上10年以下の懲役 |
場所 | 公共の場所に限定 | 限定なし |
態様 | ・衣服の上から触る ・直接肌に触れる |
・下着の中に手を入れる等 ・相手を脅迫してわいせつな行為をする |
※迷惑防止条例は都の条例を想定
痴漢に時効ってあるの?
痴漢をしてしまったが、その場では逮捕されなかった方の中には、いつまで痴漢の責任を問われる可能性があるのか心配されているかもしれません。
痴漢をしてしまった場合
- 刑事上の責任
- 民事上の責任
の二種類の責任を問われる可能性があります。
そして、それぞれについて時効が定められているので、それぞれご紹介していきたいと思います。
刑事上の時効
刑事上の時効については、刑事訴訟法にこのような規定があります。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
(略)
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
(以下略)
出典:刑事訴訟法第250条2項
罪の重さによって時効が完成する期間も異なるんですね。
そして、先ほど見てきたとおり、痴漢行為は
- 迷惑防止条例違反
- 強制わいせつ罪
に問われる可能性があるところ、
- 迷惑防止条例は長期6月で「長期五年未満」
- 強制わいせつ罪は長期10年で「長期十五年未満」
に該当するため、刑事上の(公訴)時効は
- 迷惑防止条例違反は3年
- 強制わいせつ罪は7年
となります。
なお、時効の起算点は犯罪行為が終わったときからとなります。
民事上の時効
一方、民事上の時効については、民法にこのような規定があります。
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
出典:民法第724条
刑事上の時効とは異なり、一律に規定されているんですね。
なお上記の条文上、3年間の起算点は「損害及び加害者を知った時」となっているため、
痴漢の犯人が発覚していない段階では3年間の時効は進行しない
ことになります。
ただし、その場合でも痴漢をしたときから20年が経過すれば時効が成立することになります。
迷惑防止条例 | 強制わいせつ | |
---|---|---|
刑事 | 3年 | 7年 |
民事 | ・損害及び加害者を知ったときから3年 ・行為から20年 |
※迷惑防止条例は都の条例を想定
上記のレポートのとおり、刑事上も、民事上も時効が成立するまでにはかなりの時間を必要としています。
痴漢をしてしまった方は、時効が完成するまで、逮捕や賠償請求の心配を独りでするのではなく、まずは弁護士に相談をしてみましょう。
弁護士は相談内容を外部に漏らしてはいけないという守秘義務を負っていますので、弁護士への相談により事件が発覚することはありません。
痴漢で逮捕されることによる刑罰以外の不利益|仕事をクビ?実名報道?
また、痴漢で逮捕されることによる不利益は
- 刑事上の刑罰
- 民事上の賠償請求
に限られません。
仕事上の不利益
痴漢で逮捕されてしまうと、少なくとも数日は仕事を休むことを余儀なくされます。
さらに、後ほど詳しく説明いたしますが、逮捕後に勾留までされるとさらに最大20日間仕事を休まなければいけなくなります。
逮捕後の数日間であれば、会社に伝えないことも不可能ではないですが、勾留されてしまうと、事実上会社に痴漢の事実を伝える必要があります。
いずれにせよ、痴漢行為または無断欠勤に対して、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。
なお、痴漢の逮捕の事実だけでいきなり仕事をクビになる可能性は低いものの、全く可能性がないわけではありません。
痴漢行為が繰り返された事案ではありますが、痴漢行為を理由とする懲戒解雇処分が有効とされた、下記のような裁判例もあります。
本件行為のわずか半年前に、同種の痴漢行為で罰金刑に処せられ、昇給停止及び降職の処分を受け、今後、このような不祥事を発生させた場合には、いかなる処分にも従うので、寛大な処分をお願いしたいとの始末書(略)を提出しながら、再び同種の犯罪行為で検挙されたものである。
このような事情からすれば、本件行為が報道等の形で公になるか否かを問わず、その社内における処分が懲戒解雇という最も厳しいものとなったとしても、それはやむを得ない。
出典:東京高判平成15年12月11日
報道によるプライバシー上の不利益
また、皆さんも新聞等でご覧になったことがあるかもしれませんが、痴漢による逮捕が以下の記事のように新聞等で報道される可能性もあります。
東松山署は13日、県迷惑行為防止条例違反の疑いで、(略)、会社員の男(31)を現行犯逮捕した。
出典:埼玉新聞 2017/6/13
上記の記事は実名は記載されていませんが、近所に住む方であれば、これだけで特定されてしまう可能性もあります。
また、逮捕された方が著名な人や社会的地位の高い人の場合は実名報道される可能性もあります。
犯罪報道における被疑者の特定は、犯罪報道の基本的要素であって、犯罪事実自体と並んで公共の重要な関心事である(略)。
(中略)
逮捕をされた被疑者については無罪の推定が及ぶ(略)点を考慮すると、各事件における被疑事実の内容、被疑者の地位や属性などの具体的事情によっては、プライバシー保護の要請が上記のような意味での公共性に勝り、被疑者段階における実名等の個人情報を含む犯罪報道が、名誉棄損あるいはプライバシーの違法な侵害に当たる場合があることは否定できない。
出典:東京高判平成28年3月9日
上記の裁判例も、被疑者段階の実名報道は場合によっては認められると判断しており、この事案では実名報道を認めています。
家庭内での不利益
さらに、痴漢の事実が家族に発覚すれば、家庭内不和の要因にもなりかねません。
確かに、痴漢の事実だけで民法上の離婚事由である「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法第770条1項5号)とは通常中々認められません。
しかしながら、配偶者から離婚を切り出されるきっかけには十分なる可能性があります。
レポートにあるとおり、痴漢で逮捕されると様々な社会的不利益が生じるおそれがあります。
痴漢の逮捕に関するお悩みを弁護士に相談することは、こういった逮捕による社会的不利益を回避するためにも役立つといえます。
内容 | 具体例 | |
---|---|---|
① | 会社での不利益 | 最悪クビも |
② | プライバシーや名誉 | 実名報道も |
③ | 家庭での不利益 | 最悪離婚も |
痴漢で後日逮捕される場合とは?逮捕の条件を徹底解説!
痴漢の犯人の逮捕は現行犯なら誰でもできる
痴漢の基礎知識を押さえたところで、続いては痴漢で逮捕される条件について見ていきたいと思います。
まず、痴漢の逮捕でよく聞かれるのがいわゆる現行犯逮捕です。
twitter上でも、痴漢の現行犯逮捕場面に遭遇したというツイートが見られます。
もしかしたら、警察でもないのに逮捕できるの?と思う方もいるかもしれません。
しかし、法律は現行犯の場合は誰でも逮捕できると定めているんです。
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
出典:刑事訴訟法第213条
痴漢されていることに気づいたのに、逮捕できず逃げられてしまっては困りますから当然といえば当然ですね。
では、逆に現行犯以外では逮捕されないのでしょうか?
現行犯以外での逮捕のイメージがつきにくいですが、この点はアトム法律事務所の弁護士にお尋ねしてみましょう。
痴漢の逮捕は現行犯が多いとはいえます。
満員電車などの場合には、たとえ防犯カメラなどがあったとしても痴漢行為がはっきりと写っていないことが多いからです。
もっとも、痴漢で後日逮捕されている実例もありますので現行犯でないと逮捕されないとはいえません。
痴漢の後日逮捕には逮捕状が必要
後日逮捕のことは
通常逮捕
と呼ばれており、先ほど話に出てきた
現行犯逮捕
とは異なり、通常逮捕の場合には逮捕状が必要となります。
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
出典:刑事訴訟法第199条1項本文
痴漢で通常逮捕するためには、証拠を揃えた上で、裁判官に逮捕状を出してもらう必要があるということです。
通常逮捕は、逮捕される人の自宅に行き、逮捕状を示して逮捕することがほとんどです。
そして、逮捕状が発付される要件として、
- 逃亡のおそれ
- 罪証隠滅のおそれ
といった逮捕の必要性が審査されています。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
出典:刑事訴訟規則第143条の3
つまり、後日逮捕の場合の流れは以下の画像のようになります。
逆に言えば、逮捕の必要性がないと判断されれば痴漢が発覚しても後日逮捕されないということです。
ただし、後日逮捕されない場合でも、自宅にいたまま捜査を受け、起訴される可能性はあるので注意が必要です。
被害届は痴漢の後日逮捕の条件ではない
なお、痴漢の検挙数について、こんな新聞記事がありました。
警察庁によると、2015年に全国で検挙された痴漢は約3200件で前年より230件ほど減った。
被害件数は減少傾向だが、月平均は260件以上で、警視庁幹部は「被害届を出さない場合もあり、実際はもっと多いはず」とみる。
出典:日本経済新聞 電子版 2017/7/14 12:30
こちらの記事を読むと、被害届も検挙(後日逮捕)の条件のようにも見えますが、法律上、被害届は痴漢の後日逮捕の条件ではないようです。
こちらの新聞記事と法律上の規定はどういった関係になっているのでしょうか?
専門的なお話ですので、アトム法律事務所の弁護士にお尋ねしてみましょう。
被害届は痴漢の後日逮捕の条件ではないですが、被害届が出されないと、警察が痴漢の被害を把握できず、捜査される事自体が少ないことになります。
そのため、事実上、被害届が出されないと痴漢は検挙されないことになります。
現行犯逮捕 | 通常逮捕 | |
---|---|---|
いつされる | 痴漢当日 | 後日 |
どこでされる | 痴漢現場 | 主に自宅 |
誰からされる | 痴漢の被害者・目撃者など | 主に警察官 |
逮捕状 | なくてもされる | 無ければされない |
被害届 | 不要 | 不要※ |
※事実上は提出ないとほとんど逮捕されない
痴漢は未遂でも逮捕される?
痴漢の逮捕に関してこんなツイートがありました。
よく〇〇未遂の罪で逮捕というニュースを聞くかと思いますが、法律上、未遂が罰せられるのは法律に定めがある場合のみです。
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
出典:刑法第44条
そして、先ほど見てきたとおり、痴漢行為は
- 強制わいせつ罪
- 迷惑防止条例違反
に問われる可能性があります。
強制わいせつ罪には未遂処罰の規定がある
強制わいせつ罪(刑法第176条)には、刑法上、未遂を罰する規定が定められています。
第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。
出典:刑法第180条
迷惑防止条例には未遂処罰の規定がない
一方、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例には未遂を罰する規定が定められていません。
ということは、迷惑防止条例違反に該当する痴漢行為をしようとしたが、触る前に思いとどまった場合には逮捕されないということでしょうか。
理論的にはそのとおりです。
ただし、実際に触れた事実がないため、どういった行為をしようとしていたか、すなわち
強制わいせつ未遂か(処罰規定のない)迷惑防止条例違反未遂か
の判断が難しいケースが考えられます。
なお、同じ条文で処罰が定められている迷惑防止条例違反の盗撮も未遂処罰の規定はないですが、こちらは
- 撮影目的での撮影機の差し向け
- 撮影目的で撮影機の設置
も対象にしているため、実際に撮影していなくても、カメラを差し向けたり、設置した段階で都の迷惑防止条例上既遂となり逮捕される可能性があります。
未遂処罰 | 既遂態様 | |
---|---|---|
強制わいせつ | ○ | わいせつな行為 |
迷惑防止条例(痴漢) | ☓ | ・衣服の上から触る ・直接肌に触れる |
迷惑防止条例(盗撮) | ・撮影 ・撮影目的での撮影機の差し向け ・撮影目的で撮影機の設置 |
※迷惑防止条例は都の条例を想定
痴漢の容疑で警察に逮捕されたその後の裁判までの流れをご紹介!
痴漢で逮捕された後の勾留(☓拘留)期間は?
痴漢の容疑で警察に逮捕された場合、その後の裁判までの流れは、大まかに以下の表のようになります。
表にあるとおり、警察は逮捕後48時間以内に検察に送致し、送致を受けた検察官は24時間以内に勾留請求をするかどうか判断します。
裁判官が検察官の勾留請求を認めると、10日間、延長請求を認めるとさらに10日間、留置所などに留め置かれることになります。
つまり、痴漢で逮捕されると起訴されるまでに最大23日留置所などに留め置かれることになります。
なお、ここで問題となる勾留とは
逮捕後に捜査・取調べのために刑事施設に留め置かれること
をいいます。
同じ読みのものに「拘留」というものがありますが、これは
1日以上30日未満刑事施設に拘束される刑罰
のことを言います。
混同しないように両者を検証した表を作成しましたので、参考にしてみて下さい。
勾留 | 拘留 | |
---|---|---|
目的 | 捜査 | 刑罰 |
期間 | 最大20日 | 1日以上30日未満 |
痴漢で逮捕後に釈放・保釈されるには?
痴漢で逮捕された後も
- 検察官が勾留請求をしなかった場合
- 裁判官が勾留請求を却下した場合
- 勾留期間中に勾留の必要がなくなった場合
など、捜査のため、被疑者を留置所などに留め置く必要がなくなった場合には起訴前にも釈放されることがあります。
なお、釈放と似た用語として保釈という言葉がありますが、こちらは
- 起訴後に限られる
- 保釈保証金というお金を裁判所に納める必要がある
点が異なります。
参考に、両者を検証した表を作成してみました。
釈放 | 保釈 | |
---|---|---|
時期 | 起訴前も | 起訴後のみ |
裁判所に納めるお金 | 不要 | 必要 |
痴漢で逮捕されても前科をつけないことはできる!
痴漢などで逮捕された場合に、以下のツイートのような誤解をされている方がいらっしゃいます。
ツイートの情報によれば「不起訴処分となった」とありますが、逮捕されても不起訴となった場合には前科にはなりません!
ただし、逮捕された時点で前歴という記録が残ることにはなります。
起訴後も無罪判決を勝ち取れば前科にはならないですが、起訴後に無罪となる可能性は極めて低いです。
そのため、前科をつけたくない場合には不起訴処分を得ることが重要といえます。
起訴前 | 起訴後 | |
---|---|---|
方法 | 不起訴処分を得る | 無罪判決を勝ち取る |
可能性 | それなりに高い | 低い |
痴漢で起訴・不起訴を決めるポイントは?告訴の有無は影響?
起訴・不起訴は示談が大きく影響する
それでは、不起訴処分を得るためには何が重要となってくるのでしょうか?
それは、示談です。
痴漢においては、被害者の気持ちが重視されるため、被害者と示談していれば、不起訴となる可能性が高まります。
とはいえ、示談といわれても相場や方法がわからない方が多いかと思います。
そんな時便利なのが、以下の示談金計算機です。
こちらで、痴漢の示談金の相場を確認して示談に臨みましょう。
そして、示談の話がまとまった場合、示談書を作る必要があります。
下のページでは痴漢の示談書の雛形が確認できますので、こちらを参考にしてみて下さい。
強制わいせつ罪は刑法改正に注意!
なお、強制わいせつ罪については、従来
被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪
でしたが、刑法改正により
非親告罪となり、被害者の告訴がなくても起訴される可能性
が出てきましたので注意しましょう。
なお、刑法改正の詳しい内容は、以下のページに記載されておりますので、興味のある方はご覧になってみて下さい。
とはいえ、依然として、示談成立(告訴取下)の有無が起訴・不起訴の判断に大きな影響を与えることに変わりはありません。
なお、起訴後であっても、示談することや告訴を取り下げてもらうことは刑罰が軽くなる方向に働くというメリットがあります。
示談成立有 | 示談成立無 | |
---|---|---|
起訴前 | 不起訴の可能性高い | 起訴の可能性高い |
起訴後 | 刑罰軽くなる傾向 | 刑罰重くなる傾向 |
痴漢で逮捕されたら初犯で実刑も?執行猶予は?
痴漢で逮捕されその後に起訴されてしまった場合、初犯の場合の処罰の見込みはどのようになるのでしょうか?
罰金刑が見込まれる場合
迷惑防止条例違反で起訴された場合には、初犯であれば、多くの場合罰金刑となります。
一方、強制わいせつ罪で起訴された場合、先程見たとおり、罰金刑が規定されていないため、罰金刑の余地はないことになります。
なお、罰金刑で執行猶予が認められることはほとんどありません。
執行猶予付きの懲役刑が見込まれる場合
初犯であれば、強制わいせつ罪で起訴された場合であっても、執行猶予付きの懲役刑となることが多いです。
また、迷惑防止条例違反で起訴された場合であっても
- 常習性
- 行為の悪質性
- 被害者の処罰感情
などを考慮して、執行猶予付きの懲役刑となる可能性があります。
執行猶予無しの懲役刑が見込まれる場合
強制わいせつ罪で起訴された場合
- 常習性極めて高い
- 行為極めて悪質
- 被害者の処罰感情強い場合
には初犯であっても、執行猶予の付かない懲役刑、いわゆる実刑となる可能性があります。
一方、迷惑防止条例違反で起訴された場合、理論的には初犯であっても実刑判決となることはありえますが、実際上はほとんど考えられません。
執行猶予有 | 執行猶予無 | |
---|---|---|
懲役 | ・常習性 ・行為の悪質性 ・被害者の処罰感情強い |
・常習性極めて高い ・行為極めて悪質 ・被害者の処罰感情強い |
罰金 | ほとんどない | 多くの迷惑防止条例違反 |
※例外あり
痴漢で逮捕後否認を続けたらその後の流れは?
痴漢で逮捕された場合、否認をする事案も当然考えられますが、否認を続けた場合、その後の流れに何か違いはあるのでしょうか?
結論から言うと、事実上、逮捕後の流れの中で不利益に働くことがあるようです。
まず、最近では改善の傾向があるものの、依然として、否認を続けている場合には
釈放・保釈が認められにくい
傾向にあるようです。
また、否認している場合には相手方と示談することは通常できないですから、示談できずに
起訴される可能性が高まる
といえます。
さらに、否認し続けた結果、有罪になると、反省していないという不利な情状として扱われ、
処罰が重くなる方向に働く
といえます。
反対に、否認していなければ、通常無罪はないですが、否認をしていても起訴後に無罪となる可能性は極めて低いです。
否認 | 認める | |
---|---|---|
釈放・保釈 | 認められにくい | 認められやすい |
起訴 | される可能性高まる | されない方向 |
裁判 | ・不利な情状 ・無罪の可能性 |
・有利な情状 ・無罪は通常ない |
痴漢の容疑で警察に逮捕された場合、被疑者の不利益を最小限にするには、その後の裁判までの流れの中で適切な行動を取る必要があります。
ここまでで、流れや対処法について学んできたと思いますが、実際に取るべき適切な行動は、個々の事情によって変わってくることになります。
ご自身だけで、適切な行動を取るのは困難な面もあるかと思いますので、お困りの際にはすぐに弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
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最後に一言アドバイス
では、最後にまとめの一言をお願いします。
よろしくお願いします。
実際に痴漢で逮捕されてしまったら、その後の人生のためにも即時に動かなければなりません。
ご家族が痴漢で逮捕されてしまったという方は今すぐに弁護士に相談してみて下さい。