「不法侵入」の時効|窃盗目的など、目的別の不法侵入を調査。時効の年数一覧も大公開
不法侵入をしてしまう人には、いろいろなケースがありますよね?
- 窃盗目的で不法侵入する人
- 性的暴行目的で不法侵入する人
- 傷害目的で不法侵入する人・・・etc.
不法侵入後、逃走したけれど、いつかは逮捕されるという不安にさいなまれてしまうのではないでしょうか?
今回は、「不法侵入事案の時効」についてレポートしていきたいと思います。
- 「時効」ってなに?
- ほかの犯罪を目的に不法侵入したときの「時効」の年数はどうなるの?
- 刑事事件の時効以外に、注意すべき「時効」はある?
このような内容を中心に、レポートします。
不法侵入の時効に関する解説は、刑事事件に精通するアトム法律事務所の弁護士にお願いします。
よろしくお願いします。
不法侵入のみの場合と、窃盗目的の不法侵入の場合とでは、時効の年数が違います。
時効の年数について、具体的な年数を挙げながら解説していきます。
目次
不法侵入が問題になる刑事事件の公訴時効まとめ
「公訴時効」とは
「公訴時効」の定義
「公訴時効」という言葉を聞いたことはありますか?
「刑事事件を起こした犯人が、時効間近に逮捕されました・・・。」
このようなニュースを、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
次のニュースは、女性のアパートに侵入して強制わいせつをした犯人が、時効間近に逮捕されたという刑事事件です。
2日、強制わいせつなどの疑いで(略)容疑者(42)を逮捕した。
強制わいせつ罪の公訴時効は7年で、署によると時効成立前に改めて関係者を調べるなどし(略)容疑者が浮上した。大筋で容疑を認めている。
逮捕容疑は10年11月13日(略)アパートに侵入し、当時20代だった住人女性の胸を触るなどした疑い。
出典:産経ニュース(2017.11.2 19:54)
このニュースでは、アパートに不法侵入してなされた強制わいせつ罪の公訴時効の成立が問題になっていました。
ニュースによると、この刑事事件の公訴時効は、「7年」のようです。
したがって、公訴時効は、2010年11月13日から、「7年」を経過したときに成立します。
この犯人は、2017年11月2日に逮捕されたため、まさに時効間近の逮捕だったといえます。
まとめ
▼事案
女性のアパートに不法侵入し、強制わいせつをした。
▼犯罪日時
2010年11月13日
▼公訴時効期間の年数
7年
▼公訴時効の成立
2017年11月13日を経過したとき
▼逮捕された日時
2017年11月2日(時効直前)
「公訴時効が完成してしまうと、逮捕されなくなるのかな?」
このような印象をもった方もいると思います。
厳密には、「公訴時効」とは、どのようなものなのでしょうか。
公訴時効の定義を確認しましょう。
犯罪行為のあと、一定期間(公訴期間)が経過した場合、公訴の提起が許されなくなること。確定判決後に刑の執行が免除される「刑の時効」とは異なる。公訴の時効。
出典:デジタル大辞泉
「公訴時効期間が経過すると、起訴が許されなくなる」
これが、公訴時効という制度のようです。
もし仮に、公訴時効が成立しているのに、起訴された場合どうなるのでしょうか。
時効が成立していることを、法律的には、「時効の完成」といいます。
この時効完成後に起訴された場合、免訴の判決が出されます。
したがって、裁判の手続が打ち切られるため、最終的には処罰されません。
時効の完成により、免訴判決が出されるようです。
刑事訴訟法上の根拠を確認してみましょう。
第三百三十七条 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。
(略)
四 時効が完成したとき。
出典:刑事訴訟法第337条第4号
公訴時効とは、辞書の定義では、「時効期間が経過すると、起訴が許されなくなる」というものでした。
つまり、この真義は、時効が完成すると処罰されなくなるというものです。
刑事訴訟法250条1項と2項
公訴時効期間の年数は、刑事訴訟法に規定されています。
次のように、規定されています。
- ① 「人を死亡させた罪」のうち、法定刑が「禁錮以上」であれば、250条1項に規定される
- ② 250条1項以外の罪については、250条2項に規定される
刑事訴訟法250条1項
人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)
刑事訴訟法250条2項
人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪
「公訴時効」の年数一覧
それでは、それぞれの公訴時効の規定を確認していきましょう。
まずは、1項の条文と、公訴時効の年数一覧です。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
出典:刑事訴訟法第250条第1項
250条1項 | 個別の条文に規定された刑罰 | 時効期間 |
---|---|---|
柱書 | 死刑に当たる罪 | なし |
1号 | 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 | 30年 |
2号 | 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪 | 20年 |
3号 | 表の①~③以外の罪 | 10年 |
刑事訴訟法第250条第1項には、「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの」の公訴時効を規定されている。
殺人罪など、「人を死亡させた罪」で「死刑」に問われるものについては、公訴時効が撤廃されています。
現時点で、未解決刑事事件については、この公訴時効の規定が適用されることになります。
公訴時効が完成していない事件は、実質的には時効期間の延長になってしまいます。
さて、次は、250条2項の条文と公訴時効の一覧です。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
出典:刑事訴訟法第250条第2項
250条2項 | 個別の条文に規定された刑罰 | 時効期間 |
---|---|---|
1号 | 死刑に当たる罪 | 25年 |
2号 | 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 | 15年 |
3号 | 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪 | 10年 |
4号 | 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 7年 |
5号 | 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 5年 |
6号 | 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪 | 3年 |
7号 | 拘留又は科料に当たる罪 | 1年 |
刑事訴訟法第250条第2項には、「人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの「以外」の罪」の公訴時効が規定されている。
チェックしてみると、こまかく規定されていることがわかります。
ただ、この規定を見るだけでは、不法侵入の公訴時効はわかりませんね。
「不法侵入の公訴時効の年数はどのくらいなのだろうか・・・。」
このようなギモンを解消していきましょう。
「不法侵入」罪の公訴時効
ここで、ひとつ確認ですが、法律上は、「不法侵入」罪という呼ばれ方はしません。
不法侵入の中には、
- 人の住居に侵入する「住居侵入罪」
- 人の看守する建造物に侵入する「建造物侵入罪」・・・etc.
などがあります。
あわせて、住居侵入「等」罪と呼ばれたりもします。
では、その住居侵入等罪の、法定刑について確認してみましょう。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し(略)た者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第130条
住居侵入等罪の法定刑は、「3年以下の懲役」または、「10万円以下の罰金」です。
公訴時効期間の基準となる法定刑は、もっとも重い刑罰です。
住居侵入等罪については、そのもっとも重い法定刑は、「3年」の懲役刑です。
これは、表②の6号にあたり、公訴時効は「3年」となります。
250条2項 | 個別の条文に規定された刑罰 | 時効期間 |
---|---|---|
6号 | 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪 | 3年 |
次のような不法侵入の事案があったとします。
- 窃盗目的で侵入したけれど、物色もせずに、逃げてきた
- 盗撮目的で侵入して、住居侵入罪に該当する場合
これらの不法侵入の場合、公訴時効は「3年」です。
「不法侵入+窃盗」の公訴時効
不法侵入+窃盗=窃盗?
次は、窃盗目的で侵入して、実際に窃盗をしたようなケースを考えてみましょう。
署は14日、住居侵入と窃盗の疑いで(略)住所不定、無職男(24)を逮捕した。
逮捕容疑は2017年12月24日午前1時ごろから同月26日午後3時ごろまでの間2回にわたり、(略)市内の女性(31)方に侵入し、現金8万8000円と加熱式たばこ1個(時価5000円相当)を盗んだ疑い。
出典:下野新聞(2018.2.14 21:53)
この不法侵入事件をモデルにした、下の事案について、公訴時効の完成を考えてみましょう。
設例(不法侵入+窃盗)
▼事案 2017年12月24日午前1時、女性の居宅に侵入し、現金約8万円を盗んだ。 ▼逮捕容疑 ・住居侵入罪 ・窃盗罪 ▼公訴時効期間 3年? |
この事件では、住居侵入のみならず、窃盗罪も問題になります。
この場合、どの犯罪の法定刑を基準にして、公訴時効期間が決められるのでしょうか。
窃盗の目的で、住居侵入をしたとします。
この場合、住居侵入罪と窃盗罪は、手段と目的の関係にあります。
このような手段・目的の関係にある犯罪を、「牽連犯」(けんれんぱん)といいます。
この「牽連犯」の公訴時効については、判例(最三判S47・5・30 民集26-4-826)によって、その算定方法が示されています。
それは、牽連犯において、目的行為がその手段行為に対する時効期間の満了前に実行されたときは、両者の公訴時効は、不可分的に、最も重い刑を標準に最終行為の時より起算すべきという内容です。
つまり、窃盗と住居侵入が牽連犯とされる場合、①~③の過程を経て、時効期間が決められます。
- ① 住居侵入罪の時効完成前に、窃盗罪が実行されたときは、
- ② 住居侵入罪と窃盗罪の公訴時効の期間は、同じになる。
- ③ これらの犯罪の刑のうち、最も重い法定刑を基準に、公訴時効を起算する。
では、住居侵入罪と、窃盗罪の法定刑を見比べてみましょう。
住居侵入罪
三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第130条
窃盗罪
十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第235条
住居侵入罪と、窃盗罪の法定刑を見比べて最も重い刑とは・・・?
ズバリ、
「10年」の懲役
です。
したがって、この「10年」の懲役という法定刑を基準に決められます。
これは、公訴時効一覧の表②の4号にあたります。
250条2項 | 個別の条文に規定された刑罰 | 時効期間 |
---|---|---|
4号 | 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 7年 |
4号の公訴時効は、「7年」です。
ここで、設例の不法侵入事案をおさらいしておきましょう。
事案は、「2017年12月24日午前1時、女性の居宅に侵入し、現金約8万円を盗んだ」というものでした。
この場合、2017年12月24日から「7年」を経過した時に、公訴時効が成立することになります。
「不法侵入+性的暴行」の公訴時効
次に、女性宅への不法侵入後、性的暴行を加えた事案の公訴時効について考えてみます。
まず、どのようなニュースがあるのか、少し読んでみましょう。
容疑者は7月20日未明、(略)市内のマンションの一室に侵入。(略)性的暴行を加えた疑いがある。大筋で容疑を認め、9月に逮捕されて強制性交罪などで起訴されたという。
出典:朝日新聞デジタル(2017.10.16 12:32)
この事案をモデルに、設例をまとめてみました。
設例(不法侵入+性的暴行)
▼事案 2017年7月20日未明、女性宅に侵入し、強制性交罪にあたる性的暴行を加えた。 ▼住居侵入罪と、強制性交罪の関係 牽連犯 ▼公訴時効期間 ? |
住居侵入罪と、強制性交罪は、牽連犯の関係にあります。
両者の法定刑のうち、最も重い法定刑を基準に公訴時効が決められます。
まず、法定刑を見比べてみましょう。
住居侵入罪
三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第130条
強制性交罪
五年以上の有期懲役に処する。
出典:刑法第177条
強制性交罪の法定刑は、「5年以上」となっています。
5年以上という規定の仕方では、懲役の年数の上限がわかりません。
この場合、どのような年数になるのでしょうか。
有期懲役の期間は、原則として、「1か月以上20年以下」とされています。
個別の条文に、有期懲役の上限が規定されていない場合には、20年になります。
強制性交罪の条文には、5年以上の有期懲役と規定されています。
これは、5年以上20年以下の有期懲役を意味しています。
強制性交罪の有期懲役の上限は、20年です。
この20年の懲役が、最も重い法定刑となります。
これは、公訴時効一覧の表②の3号にあたります。
250条2項 | 個別の条文に規定された刑罰 | 時効期間 |
---|---|---|
3号 | 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪 | 10年 |
3号だと、公訴時効は、「10年」となります。
ここで、設例の不法侵入事案をおさらいしておきましょう。
事案は、「2017年7月20日未明、女性宅に侵入し、強制性交罪にあたる性的暴行を加えた。」というものでした。
この場合、2017年7月20日から「10年」を経過した時、公訴時効が成立することになります。
ちなみに、窃盗の時効については、以下のリンクも見てみてくださいね。
「不法侵入+傷害」の公訴時効
さいごに、不法侵入をした後に、人を傷害した事案の公訴時効についてです。
下のニュースは、「老人ホームに侵入した後、傷害事件が起きた」という不法侵入事案です。
25日午前5時25分ごろ、(略)有料老人ホーム(略)の敷地内に男が侵入し、出入り業者の女性(23)の両手を刃物で切り付けた。男はさらに上司の男性(48)の顔も殴り、逃走した。2人とも軽傷。男が施設の事情を知っていたとみて、(略)傷害事件として行方を追っている。
出典:東京新聞(2018.1.25 19:44)
この不法侵入事案をモデルに、設例の公訴時効を考えてみましょう。
設例(不法侵入+傷害)
▼事案 2018年1月25日未明、老人ホームに「侵入」し、人を「傷害罪」を犯した。 ▼住居侵入等罪と、傷害罪の関係 牽連犯 ▼公訴時効期間 ? |
老人ホームに侵入するという住居侵入等罪と、傷害罪は、牽連犯の関係にあります。
両者の法定刑のうち、最も重い法定刑を基準に公訴時効が決められます。
それでは、法定刑を見てみましょう。
住居侵入等罪
三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第130条
傷害罪
十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第204条
それぞれの法定刑を見比べると、最も重い法定刑は、「15年」の懲役です。
これは、公訴時効一覧の表②の3号にあたります。
250条2項 | 個別の条文に規定された刑罰 | 時効期間 |
---|---|---|
3号 | 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪 | 10年 |
3号だと、公訴時効は、「10年」となります。
ここで、設例の不法侵入事案をおさらいしておきましょう。
事案は、「2018年1月25日未明、老人ホームに「侵入」し、人を「傷害罪」を犯した。」というものでした。
この場合、2018年1月25日から「10年」を経過した時に、公訴時効が成立することになります。
ちなみに、傷害罪単独の時効については、以下のリンクも見てみてください。
次の項目で、時効の停止や中断という制度について見ていきます・・・。
時効が停止したらどうなるの?「時効の停止」「時効の中断」とは
刑事事件の時効の停止とは?
いままで、不法侵入事案の時効期間について見てきました。
ここからは、その時効の進行が妨げられる事由について見ていきましょう。
公訴時効が妨げられる事由として、どのようなものがあるのでしょうか。
時効の停止という事由があります。
「時効の停止」とは、一定の事実が生じると、時効の進行が停止される制度です。
時効の進行が停止しているので、その分、時効の完成時期も延期されます。
たとえば、次のような事案を考えてみましょう。
設例(時効の停止)
▼事案 2018年1月1日未明、Aさん宅に侵入した。 ▼罪名 住居侵入罪 ▼時効期間の年数 3年 ▼時効が完成する時 2021年12月31日を経過した時 |
この設例で、たとえば、2019年1月1日から1年間、時効が停止したとします。
1年間時効の進行が停止するので、時効完成時は、2021年12月31日を経過した時になります。
「時効が進行していたはずなのに・・・」|時効が停止する場合とは
ここで、気になるのが、具体的に時効が停止される事由についてです。
どのような事由があれば、時効が停止されるのでしょうか。
公訴時効が停止されるのは、
- 公訴の提起があった場合
- 犯人が国外にいる場合
- 犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかつた場合
です。
実際に、時効の停止事由が規定されている条文を見てみましょう。
第二百五十四条 時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
2 共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
出典:刑事訴訟法第254条
第二百五十五条 犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
2 犯人が国外にいること又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。
出典:刑事訴訟法第255条
公訴の提起により時効が停止された場合は、管轄違いや公訴棄却の裁判が確定した時から、時効の進行が再開されます。
犯人が国外にいる等で時効が停止された場合は、その事情がなくなった時から、時効の進行が再開されます。
時効が中断したら大変!?「中断」の意義
「停止」に似ていますが、時効には「中断」というものもあるようです。
時効の中断も、一定の事由が発生することで生じます。
しかし、時効が中断すると、改めて時効期間をカウントしなおさなければなりません。
公訴時効については、この「中断」という制度は採用されていません。
刑事事件の被害弁償には時効がある?不法侵入で損害賠償請求権の時効とは
損害賠償請求権の時効|起算点や中断・停止など
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効
刑事事件を起こした場合、民事上も問題になります。
被害者から、不法行為に基づく損害賠償請求権を行使され、慰謝料などの損害賠償を払わなければなりません。
この場合でも、行使された損害賠償請求権が時効にかかっているときもあります。
では、どのようなケースで、時効にかかるのでしょうか。
不法行為による損害賠償請求権が時効によって消滅するのは、
「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」
です。
また、「不法行為の時から20年を経過した時」も、不法行為による損害賠償請求権は消滅するとされています。
こちらについては、判例上、「除斥期間」とされていました。
しかし、民法の改正により、こちらの20年についても、「時効」とされる予定です。
時効の中断について
さきほどの公訴時効にはありませんでしたが、債権については「中断」という制度があります。
この「中断」とは、どういった制度なのでしょうか。
時効の中断とは、時効が完成するのに必要な期間の進行が、一定の事実の発生によって中断し、既に進行した期間が無かったことになる制度です。
時効が中断すると、中断事由の終了後に改めて時効期間が進行することになります。
時効の中断事由としては、請求、差押え、承認等があります。
中断されると、また改めて時効をカウントしなおさなければなりません。
停止の場合には、すでに進行した年数は、加算されます。
しかし、中断の場合には、加算されません。
最初から改めて時効期間をカウントしなおさなければなりません。
時効の停止事由について
では、消滅時効の停止事由について確認してみましょう。
刑事事件の公訴時効でも、「停止」の制度はありました。
しかし、民法上の停止事由は、公訴時効の停止の規定とは、異なっています。
民法に規定された消滅時効の停止事由の内容は、以下のとおりです。
消滅時効の停止事由
- 未成年者又は成年被後見人と時効の停止(158条)
- 夫婦間の権利の時効の停止(159条)
- 相続財産に関する時効の停止(160条)
- 天災等による時効の停止(161条)
条文も引用しておきます。
(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)
第百五十八条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
(夫婦間の権利の時効の停止)
第百五十九条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(相続財産に関する時効の停止)
第百六十条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(天災等による時効の停止)
第百六十一条 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
出典:民法第158条、同159条、同160条、同161条
民法の場合には、債権者が何らかのアクションをとれば、時効を中断することができます。
ですが、場合によっては、債権者がアクションを起こすことが困難なこともあるでしょう。
このような場合に、「中断」制度の補完として、「停止」制度が設けられているようです。
ちなみに、民法改正で「時効の中断」も少し変わったようです。
どのように変わったか、簡単に説明をお願いします。
民法改正により、時効の中断は、「時効の更新」と名前が改められました。
更新事由は、細かく見れば変更されていますが、基本的には改正前と同様に考えておけば大丈夫です。
基本的には名前が変わったと考えておけばいいのですね。
確かに時効の「中断」って少しわかりにくいですよね…
損害賠償請求権が時効にかかっていても被害弁償は可能
民事上の債権が、時効によって消滅したとします。
でも、「被害者に対して自発的に被害弁償をして示談したい」と考えるケースもあるでしょう。
損害賠償請求権が時効にかかったことで、支払えなくなる不都合は生じるのでしょうか。
損害賠償請求権が時効にかかっていても、債務者が任意に支払うことが禁止されるわけではありません。
したがって、損害賠償請求権が時効にかかったことで、被害弁償・示談金の支払いができなくなる不都合は生じません。
ただ、被害者に受け取りを拒否されたため、被害弁償ができないという可能性はあります。
民事事件の側面と、刑事事件の側面があると、とても複雑ですね。
金員の支払いについて迷ったことがあるときは、事件の解決に精通する弁護士に助言を求めてみるとよいでしょう。
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さいごに一言
今回は、「不法侵入事案の時効」についてレポートしてきました。
不法侵入だけだと短い公訴時効も、窃盗など他の犯罪が組み合わさると時効の年数が長くなってしまいます。
窃盗や性的暴行などの他の犯罪を目的として、不法侵入を犯す人は多くいます。
その場合、単なる不法侵入よりも公訴時効は長くなり、時効直前に逮捕される人もいます。
逮捕された後は、被害者との示談の準備に急いで取り掛からなければなりません。
迅速な対応によって、釈放や不起訴への可能性が広がります。
時効間近で不安な方、時効直前で逮捕されてしまった方など、ご不安がある場合には、一刻も早く弁護士にご連絡いただければと思います。