刑事事件の時効をまるっと解説!窃盗は7年?民法も関係する?停止・中断についても…
「自分の刑事事件は時効にかかっているのか、気になる。」
という方もおられることでしょう。
そこで、今回は刑事事件の時効についてレポートします。
題して、「刑事事件の時効をまるっと解説!」です!
- 刑事事件に関連する時効3つの時効を紹介
- 公訴時効の年数
- 民事の消滅時効
- 時効の停止・中断
といった内容をおとどけします。
時効制度や、時効の年数など専門的な解説は、刑事事件に詳しいアトム法律事務所の弁護士にお願いします。
時効直前で逮捕される方もおられます。
この機会にご自身の刑事事件の時効について確認しましょう。
また、被害額について損害賠償請求される期限、つまり民事の消滅時効についても取り上げます。
加えて、消滅時効前に賠償の問題を解決する方法として、示談も取り上げます。
目次
刑事事件の時効は3種類!~公訴時効・刑罰の時効・損害賠償の時効~
刑事事件の時効と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
事件現場から逃走した犯人が、時効の成立を待っている姿を想像する方もいるかもしれません。
時効直前で逮捕されたといったニュース報道もありますよね。
平成20年に10代の女性に性的暴行を加えたとして、埼玉県警川口署は13日、強姦の疑いで(略)容疑者(37)を逮捕した。時間は午後8時18分で、15日午前0時の時効成立まで27時間余りだった。さいたま地検は14日夜に(略)容疑者を異例のスピード起訴した。
出典:産経ニュース 2018.6.14 19:50
この刑事事件では、強制性交罪の公訴時効が問題になっています。
ただ、刑事事件に関係する時効は、公訴時効のほかにも2つあります。
それは、刑罰の時効と、損害賠償の民事時効です。
時効は3種類
- ① 公訴時効
- ② 刑罰の時効
- ③ 損害賠償などの民事の時効
これらの3つの時効について確認していきましょう。
(1)公訴時効とは?
まず、公訴時効の意味を確認します。
刑事訴追されないというのは、つまり起訴されないという意味です。
法律に書かれている時効期間が経過したら、起訴されなくなります。
公訴時効
時効期間が経過すると起訴されなくなる制度
公訴時効が経過すれば、起訴されないし、裁判もされません。
刑罰は、裁判の審理を経なければ、科されません。
そのため、公訴時効が経過すれば、刑罰は科されなくなります。
さて、次に刑罰の時効についてチェックしましょう。
(2)刑罰の時効とは?
逮捕された後、一定の手続を経て、刑事裁判にかけられます。
有罪ということになれば、判決で刑罰が言い渡されます。
この刑罰についても、時効があります。
あまり知られていないかもしれませんが、刑罰の時効について意味を確認しておきます。
「刑罰の時効」とは、
刑(死刑を除く)の言渡しを受け、それが確定した後、刑の執行を受けることなく一定期間が経過したことにより、刑の執行が免除される制度
です。
一定の期間、刑罰が執行されなければ、その刑罰は免除されます。
刑罰の時効については、下記のとおりです。↓↓↓
刑罰の時効まとめ
死刑→なし 無期の懲役または禁錮→30年 10年以上の有期懲役・禁錮→20年 3年以上10年未満の有期懲役・禁錮→10年 3年未満の有期懲役・禁錮→5年 罰金→3年 拘留・科料・没収→1年 |
刑罰の時効は、このような年数になっています。
さて、次に民事の時効について確認しておきましょう。
(3)損害賠償は民事時効が関係する?
刑事事件では、なにかしらの損害が被害者に生じます。
たとえば、人を死亡させてしまった刑事事件では、
- 将来のお給料が受け取れなくなった損害(逸失利益)
- 死亡させたことに対する慰謝料
などの損害が生じます。
そして、加害者は民事裁判で損害賠償を請求されることになります。
地震で倒壊したブロック塀(高さ約4メートル)の下敷きとなり死亡
(略)
ブロック塀が建築基準法の要件を満たしていなかったとして、過失致死容疑でブロック塀を所有する社会医療法人理事長を熊本県警に刑事告訴した。今年3月には理事長らを相手に損害賠償請求訴訟も起こした。
出典:毎日新聞 2018年6月19日 21時53分
このような損害賠償請求についても、時効があります。
民事の時効を経過した場合、損害賠償は請求されなくなります。
このテキスト内で解説する時効は?
刑事事件の加害者の方にとって、重要な関心事は、
- 公訴時効
- 損害賠償の民事の時効
だと考えられます。
この2つの時効について、くわしく解説していきます。
刑事事件の時効といえば公訴時効!いつからカウント?窃盗は7年?停止もある?
さて、ここからは公訴時効について確認していきましょう。
- 具体的な公訴時効の年数
- いつからカウントするのか
- 時効が停止する事由
などを見ていきます。
(1)いつからカウント?時効の【起算点】とは…
時効期間を数えるとき、いつからカウントするのでしょうか。
時効期間のカウントをはじめる時点を、「起算点」といいます。
まず、公訴時効の起算点を確認します。
公訴時効の起算点は、「犯罪行為」が終わつた時です。
「犯罪行為」とは、
犯罪の結果も含むと解釈されています(最決昭和63.2.29刑集42-2-314)。
構成要件という犯罪の要件に該当する事実をおこない、その行為の結果が生じたときから、時効が進行します。
たとえば、
- 万引きなら、商品を自分のポケットにいれたとき
- 振り込め詐欺なら、振り込み入金が完了したとき
- 傷害致死なら、相手が死亡したとき
などなど、犯罪行為をして、その結果が生じたときからカウントが始まります。
(2)【時効一覧】窃盗は?詐欺は?公訴時効の年数を確認!
時効の起算点について確認したところで、時効期間について見ていきましょう。
公訴時効の年数については、刑事訴訟法に規定されています。
ここでは、法律事務所でも相談者の多い犯罪を中心にまとめてあります。
まずは、10年以上の時効一覧です。
こちらでは、殺人、強盗、強姦、傷害など重大犯罪が並んでいます。
時効 | 具体例 |
---|---|
なし | 殺人、強盗致死、強盗の強制性交等致死 |
30 年 | 強制わいせつ等致死 |
25 年 | 現住建造物放火 |
20 年 | 傷害致死、危険運転致死 |
15 年 | 強盗致傷、強盗の強制性交等 |
10 年 | 業務上過失致死、過失運転致死、強制性交等、傷害、強盗 |
重大犯罪のほうが、時効期間が長い傾向にあります。
次の表は、7年以下の時効一覧です。
こちらでは、痴漢、窃盗、詐欺、横領などの犯罪が並んでいます。
時効 | 具体例 |
---|---|
7 年 | 強制わいせつ(痴漢など)、窃盗、詐欺、業務上横領(会社の使い込みなど) |
5 年 | 収賄、受託収賄、事前収賄、監禁罪、単純横領 |
3 年 | 不法侵入、公然わいせつ罪、淫行勧誘、死体損壊、脅迫罪、名誉棄損、威力業務妨害・条例違反の痴漢 |
1 年 | 侮辱、軽犯罪法違反(盗撮・痴漢など) |
たとえば、窃盗を見てみましょう。
窃盗の公訴時効は、7年です。
窃盗といえば、万引きや空き巣などが代表的な例です。
これらの刑事事件をすると、公訴時効は7年になります。
もっと個別の犯罪について説明してほしいという方は、以下の記事も参考にしてみてください。
窃盗・淫行・死亡事故・不法侵入の「時効」解説はコチラ↓↓↓
さて、次の項目では時効の停止について確認します。
(3)どんなとき【停止】される?時効の停止とは…
公訴時効の進行はが、どんなときに停止するかについては刑事訴訟法に規定されています。
公訴時効の停止事由を条文で確認しておきましょう。
一つ目の停止事由は、公訴の提起です。
時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。 |
刑事訴訟法第254条第1項
「公訴の提起」とは、起訴のことです。
起訴された場合、公訴時効は停止します。
停止事由①
起訴された場合
ただ、「裁判所の管轄違い」や「訴訟条件の不充足」などの事情があった場合は、再び時効期間は進行をはじめます。
さて、二つ目の停止事由について確認しましょう。
犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。 |
刑事訴訟法第255条第1項
この条文は長いですね…。
かんたんにまとめると、
- 犯人が国外にいる場合
- 犯人が逃げ隠れしていて起訴を告知できない場合
といった事由です。
停止事由②
- 国外にいる場合
- 逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合
さて、次に民事の時効について確認していきましょう。
刑事事件でも民事の時効が関係?!損害賠償の時効・停止や中断について
(1)【民事時効】損害賠償・慰謝料の時効は3年?援用とは?
この損害賠償では、民事の時効が問題になります。
正確には、これは消滅時効といわれるものです。
一定期間行使しなかった損害賠償請求権は、消滅します。
この消滅に関する時効が、「消滅時効」です。
もし損害賠償請求されたとしたら、
消滅時効の成立により、損害賠償請求権が消滅した旨を主張(援用)
することによって、支払いを拒否できます。
さて、この消滅時効の年数はどのくらいなのでしょうか。
刑事事件は、民事上の不法行為にあたります。
- ① 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
- ② 不法行為の時から20年を経過したとき
損害賠償請求権は消滅します。
不法行為の消滅時効は2種類あります。
ちなみに、②の時効については、従来判例では除斥期間と言われていましたが、昨今の改正民法では消滅時効として扱われるようです。
「損害及び加害者を知った時から」とあるのは、簡単にいうと
どのくらい損害があるのか、犯人は誰なのか分かって、損害賠償が現実味を帯びたときから3年間
という意味です。
消滅時効の期間・起算点・効果を整理してみました。
まずは、3年のほうです。
消滅時効 |
---|
3年 |
起算点 |
損害および加害者を知った時 |
効果 |
被害者は損害賠償請求できない |
次は、20年のほうです。
消滅時効 |
---|
20年 |
起算点 |
不法行為の時 |
効果 |
被害者は損害賠償請求できない |
※従来の判例では、「不法行為の時から20年間」の意味について除斥期間と解釈されていた。 しかし、改正後の民法第724条柱書では、「時効によって消滅する」旨規定されるに至った。
さて、刑事事件の時効については、停止されることがありました。
民事の時効についても、停止事由があるのでしょうか?
次の項目で確かめていきましょう。
(2)【停止】が民事にもある?【中断】との違いは?
停止と中断の違い
さて、この損害賠償の消滅時効についても、「停止」されることがあります。
さらに、停止に加えて「中断」という制度もあります。
公訴時効のときとの違いを整理してみました。
公訴時効(刑事) | 消滅時効(民事) | |
---|---|---|
停止 | 〇 | 〇 |
中断 | なし | 〇 |
それでは、停止と中断の意味の違いについて確認しましょう。
「時効の停止」というは、停止事由が生じたときに、時効の成立が猶予される制度です。
停止事由が消滅すれば、停止した時点の続きから時効期間がカウントされます。
これに対して、「時効の中断」は、中断事由が生じたら、すでに進行した時効期間が無に帰する制度です。
中断事由が消滅すれば、ふりだしにもどり、あらためて時効期間がカウントされることになります。
中断の場合には、いままで経過した時効期間がなくなってしまいます。
たとえば、3年の時効直前で、時効が中断されてしまったとします。
その場合、消滅時効が成立するには、あらためて3年の期間の経過が必要になります。
停止と中断の違いを整理してみました。
停止 | 中断 | |
---|---|---|
意味 | 猶予 | 無に帰する |
効果 | 経過した期間は維持される | 経過した期間はなくなる |
再開 | 今まで進行した期間の続きからカウント | あらためて最初からカウントされる |
停止事由とは?
具体的な停止事由を確認していきましょう。
民法上、時効が停止するのは、
未成年者が法定代理人を欠くとき、天災事変が起こったときなど権利者が中断行為をすることが困難であるような場合
です。
たとえば、未成年者が法定代理人を欠くときは、
法定代理人がついたときから6か月を経過するまでの間
時効は完成しません。
また、天災事変が原因で、時効中断がむずかしいとされるときは、
天災事変がおさまった時から2週間を経過するまでの間
時効は完成しません。
中断事由とは?
具体的な中断事由を確認していきましょう。
民法上、時効が中断するのは、請求、差押え、承認などの場合です。
請求といっても、口頭でされたり、裁判でされたり、と色々なパターンがあります。
時効の中断が気になる方は、法律の専門家にたずねてみるのも一つの手です。
消滅時効まで待たないのが鉄則?示談と時効の関係とは‥‥
いままで、損害賠償の消滅時効を見てきました。
ですが、「消滅時効まで待つ」という加害者は少数派だと思います。
通常は、加害者側から賠償に取り組むことが多いです。
その方法としては、示談です。
示談
民事上の紛争について、裁判手続きによらず、当事者間の合意で解決するもの
刑事事件に関する示談は、被害の賠償金に関する紛争を解決するものです。
示談の成立させることで、
- 被害が金銭的に回復した
- 被害者との間では事件が解決している
といったことを示すことができます。
これらの事情があることで、不起訴となり、刑事裁判を回避する可能性もでてきます。
起訴されてしまったとしても、示談の成立は量刑を軽くする方向で考慮される事情になります。
示談と不起訴の関係などについて知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
↓↓↓
実際の示談の流れは、この図のとおりです。
担当の弁護士さんに、被害者の方との橋渡し役をお願いします。
もっと具体的な示談の流れ・方法については、こちらの記事が参考になります。
↓↓↓
これで示談の流れについても押さえることができて安心ですね。
さて、刑事事件の時効についてお悩みの方もいると思います。
- この記事を読んで、時効について確認したくなった
- 逮捕された後の流れについて相談したい
という方もおられることでしょう。
さいごに、簡単に弁護士に相談できる方法をご紹介しておきます。
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さいごに
刑事事件の時効については、公訴時効、刑罰の時効、民事の消滅時効が問題になるということが分かりました。
公訴時効は重い犯罪ほど長期間で、国外にいるなどの事由で停止されることもありました。
刑事事件でも民事の時効が関係するとは、意外でしたね。
刑事事件の賠償金については、民事の時効に関係なく、示談での解決を目指したいところです。
早くから示談交渉に取り組み、不起訴の可能性を広げていきましょう。
いつ逮捕されるかは捜査の進展次第です。
ですが、逮捕や示談についてご不安がある方は今のうちから弁護士に相談していただければと思います。