逮捕間近…銀行口座凍結の理由と凍結期間を調査|警察に言えば凍結解除できる?
「身に覚えがないのに銀行口座が凍結されてしまった…。」
「通帳の譲渡で逮捕されたんだけど、もしかして口座凍結される?」
そのようなお悩みを抱えている方はいませんか?
知らないうちに闇金による詐欺等の逮捕事案に関わってしまい、ゆうちょや銀行の口座が凍結されるというケースが相次いで発生しています。
- そもそも銀行口座が凍結される理由は何なのか?
- 口座凍結された時、解除する方法はあるのか?解除までの期間は?
- 口座凍結の影響は?引き落とし、入金、振込、新規開設ができなくなる?
今回はこのような疑問について徹底解説していきます!
なお専門的な解説は刑事事件を数多く取り扱い、口座凍結に至る逮捕事案などにも詳しいアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
口座の譲渡・売買が犯罪にあたるということについて、知っている方は意外と少ないように感じます。
気軽に通帳を貸してしまったがために、取り返しのつかない事態に陥ってしまったという方は数多くいらっしゃいます。
一度口座が凍結されてしまうと、弁護士であってもどうすることもできないことが多く、事件がすべて解決するまで口座の凍結は解除されません。
心覚えのある方もない方も、ここで銀行口座の凍結についてしっかりとした知識を身に着けて、もしものときに備えてください。
目次
銀行口座凍結、ゆうちょの口座凍結、その理由は?逮捕との関係を解説
まずは口座が凍結される理由について解説していきます。
口座凍結に至る主な理由
- 口座名義人が死亡した場合
- 資産の差し押さえ等から、債務整理に至った場合
- 詐欺等の逮捕事案に使われた場合
これらについてひとつずつ解説していきましょう。
銀行口座凍結の理由①~口座名義人の死亡~
まずは、口座名義人が死亡した場合についてです。
こちらのケースは、どちらかというと
「銀行口座を凍結しなければならない」
と表現したほうが適当かもしれません。
口座名義人が死亡した際、その口座に入っている財産は「相続財産」となります。
国税庁によると「金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべて」に相続税がかかります。
当然、口座名義人死亡の後、遺産として残された銀行口座内のお金にも相続税はかかります。
口座名義人が死亡したとき、そのまま名義人以外の家族などが勝手に使用を継続することはできないのです。
口座名義人が死亡したら、まずはその旨を銀行に通知し、口座内のお金が親族に持ち出されたりしないよう凍結する必要があります。
また、銀行としても新聞の死亡欄や人づてに名義人の死亡を確認するとすぐに凍結を行います。
銀行口座凍結の理由②~資産の差し押さえ~
カードローンなど銀行からの借り入れによる借金について債務整理を行った場合、対象の銀行口座が凍結され、口座内のお金が差し押さえられます。
銀行から借り入れした借金について債務整理を行うと、銀行側はその口座内の預金残高と借金を相殺する手続きを行います。
この相殺の手続きが済むまでの間、口座内のお金の変動が無いように一時的に口座が凍結される、というわけです。
借り入れのない他の金融機関の口座まで凍結されることはありません。
また、凍結中に新たな口座の開設も行えますし、相殺手続きが完了し次第、すぐに凍結も解除されます。
銀行口座凍結の理由③~振込め詐欺等による逮捕事案~
犯罪に使用された疑いのある口座は、警察からの申請などにより凍結されます。
また、犯罪に利用された口座だけでなく、同じ名義人の他の口座も順次凍結されてしまいます。
犯罪による口座凍結でよくあるケース
- 身分証明書が闇金などの犯罪者組織に盗まれ、不正な口座が開設され犯罪に利用される
- 新規で口座を開設し、闇金等に譲渡し、その口座が犯罪に利用される
- 闇金等に既存の口座情報を渡してしまい、その口座が犯罪に利用される
こういったときに、口座の凍結が行われます。
また不正利用が疑われたときにはブラックリストに名義が載ってしまい、いずれ他の銀行の口座なども全て凍結されてしまいます。
名義人死亡 | 債務整理 | 不正利用 | |
---|---|---|---|
状況 | 口座名義人が死亡した | 銀行から借り入れた借金について債務整理した | 口座が犯罪に利用されたと疑われた |
理由 | 相続の手続きを円滑にするため | 借金と預金残高を相殺する手続きを行うため | 犯罪抑止と捜査のため |
詐欺等の不正利用で口座が凍結された!凍結解除の方法は?口座凍結の期間は?
不正利用が疑われた時の銀行凍結は、他の理由による銀行凍結とは比較にならないレベルでやっかいです。
生活へのダメージもとてつもなく大きいものになります。
銀行・ゆうちょの口座凍結の解除方法 銀行・警察・弁護士に言う?
不正利用を理由にした口座凍結においては、
凍結解除は困難
です。
銀行は凍結と同時に名義人を「凍結口座名義人リスト」というものに登録します。
凍結口座名義人リストとは?
凍結口座名義人リストは、全国的な振り込め詐欺の多発に伴い、これに対応するため作成されました。
- 詐欺犯の新規口座開設の阻止
- 警察への情報提供
をより円滑に行うため、振り込め詐欺に関与が疑われる人物について名義をリスト化しています。
凍結口座名義人リストは
- 警察庁が作成し
- 全国銀行協会に渡って
- 各金融機関に展開
されています。
つまり、一度リストに名義が載ると、全金融機関の間でその名が共有されてしまうのです。
凍結口座名義人リストから登録抹消してもらえる可能性
はっきり言ってしまうと、一度凍結口座名義人リストに載ってしまった場合、
今後、凍結解除や新規口座開設を行うのはほぼ無理
と考えるべきです。
凍結解除の方法
凍結を解除するには、
- 警察庁へ連絡して名義人リストの登録を抹消してもらい
- 全国銀行協会から銀行に連絡してもらい
- 当該の銀行口座の凍結を解除する
といった流れをたどる必要があります。
しかし、この手続きは弁護士でもかなり苦戦することになります。
仮にうまく交渉が進み、警察庁から登録が抹消されたとしましょう。
ですが、口座凍結の解除や新規口座開設の判断を行うのは口座を管理する各銀行の支店です。
銀行支店としても、過去リストに載っていた人物について、やすやすと凍結解除したり新規開設を許したりするとは考えづらいのです。
なぜ他銀行の口座まで凍結されるのか
「直接犯罪に使われていない口座まで凍結するのは酷い!」
そうお考えの方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、例えば
「詐欺で得たお金を別銀行の口座に移している」
といった場合を想定するとどうでしょう?
その名義人の各口座、どの範囲までが白いお金でどの範囲までが黒いお金なのか判別はつきませんよね。
各金融機関は犯罪の抑止を目的に、すべての口座について凍結せざるを得ないのです。
口座凍結解除までの期間は?
「凍結されても、しばらく放置していれば解除されるんじゃないの?」
そう考えていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、不正利用が疑われて凍結された口座については、時間が経てば解除されるということはありません。
振り込め詐欺等により資金が振り込まれ凍結された口座については、振り込め詐欺救済法に基づいて口座名義人の権利を消滅させる手続きが取られます。
定められた期間内に各金融機関へ権利行使の届け出を行わないと、口座の権利が消滅し、預金は犯罪被害者への資金分配のために使われてしまいます。
また直接犯罪に使われておらず、凍結口座名義人リストに載ったことを理由として凍結された口座についても、時間経過で解除されるということはありません。
放置したところで、何か事態が好転するといったことはないでしょう。
不正利用の口座凍結まとめ
- 不正利用が疑われたとき、その口座は凍結される。
- 他銀行の他口座も順次凍結され、新規口座開設もできなくなる。
- 凍結口座名義人リストの登録を抹消することはほぼ不可能である。
逮捕による口座凍結の不利益 引き落とし、入金、振込、新規開設ができなくなる?
不正利用が疑われて口座凍結に至ったとき、具体的にはどんな不利益、問題点があるのか
前項目と内容が重複する部分もありますが、重要なことなので、ここでもう一度確認してみてください。
問題点①引き落とし、入金、振込ができなくなる
口座が凍結されると、引き落とし、入金、振込が一切できなくなります。
クレジットカードの引き落とし先に指定された口座が凍結された場合、支払い滞納となり信用情報に傷がつく場合も考えられます。
また、給与の振込先に指定された口座が凍結された場合には、入金が行われず、会社から事情の説明を求められることでしょう。
問題点②銀行のブラックリストが共有されて他の口座も凍結される
口座の不正利用が疑われた時、警察庁はその口座の名義人を凍結口座名義人リストに載せます。
凍結口座リストに名前が載ると、その情報は、全国銀経協会から各銀行に共有されます。
各銀行は、同名義の銀行口座について順次凍結を行います。
問題点③銀行のブラックリストが共有されて新規開設ができなくなる
凍結口座名義人リストに名前が載ると、口座の新規開設ができなくなります。
たとえば就職に際して、給与振込用の指定銀行の口座開設をお願いされたとき、これを行うことができなくなります。
身に覚えがないのに警察に逮捕された!口座も凍結された!
自分から詐欺に関わり、口座が凍結されたならある意味、自業自得と言えるかもしれません。
しかし不正利用による銀行口座凍結の事例の中には、
- まったく知らないうちに犯罪行為に関わってしまっており
- いつの間にか口座が凍結されたというケースもあります。
ここで解説していきましょう。
口座の譲渡は犯罪!逮捕される可能性も!
よくあるケースなのが
闇金など悪質な金融業者の借り入れ条件として、口座情報が要求され、従ってしまった
というケースです。
闇金業者は手に入れた口座を振り込め詐欺などの犯罪に利用します。
その後、最終的にはその不正利用について警察が認知して、口座が凍結されるに至り、名義人はブラックリストに載ります。
一見して口座名義人は被害者のように見えますが、実は口座の譲渡は立派な犯罪なのです。
口座の譲渡は「犯罪収益移転防止法」によって禁じられています。
場合によっては、逮捕、勾留されたり、起訴されて前科がついてしまう可能性もあります。
犯罪収益移転防止法は、それまでの「預金口座等の不正利用防止法」などを統合する形で、平成20年に全面施行された法律です。
口座の譲渡などについて、この法律で禁じられている行為は以下の通りです。
- ① 他人になりすまして口座を利用する目的で、通帳やキャッシュカードを譲り受ける
- ② 相手方に①の目的があることを知って、①の者に通帳やキャッシュカードを譲渡する
- ③ 正当な理由がないのに、有償で、通帳やキャッシュカード等を譲渡する
これらの行為に抵触すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処される(または併科される)可能性があります。
第二十八条
他人になりすまして特定事業者(略)との間における預貯金契約(略)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報(略)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律
実際に闇金へ通帳を譲渡し逮捕されたという方も多数いらっしゃいます。
新規に口座を開設して闇金に渡した場合、詐欺罪に問われる可能性も…
さらに、闇金等に従い闇金に渡す用の口座を新たに開設した場合には、銀行に対しての詐欺罪にあたる可能性があります。
判例をここに引用してみましょう。
(略)
預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘して上記申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,(略)詐欺罪を構成することは明らかである。
(略)
出典:最高裁判所第三小法廷 平成19年7月17日 事件番号平成18(あ)2319
まさか銀行員に
「闇金に渡すための口座を作りたい!」
などと申告するわけはないのですから、闇金へ譲渡することを目的とした新規口座開設は詐欺罪にあたるわけです。
詐欺罪の条文も確認しておきましょう。
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
出典:刑法246条1項
「罰金刑なし、10年以下の懲役」
刑罰としては相当重いものです。
身分証明書などを紛失した時にも要注意
これは犯罪ではありませんが、身分証明書等を紛失した際、犯罪組織にそれが悪用されて新たに銀行口座が開かれるケースもあります。
もちろん、その口座が悪用されれば自分の持っている生活用の口座まで凍結される可能性もあります。
先に説明した通り、新規の口座開設までもが不可能となり日常生活に多大な影響が出ることも考えられます。
所有していた口座を譲渡 | 新規口座開設して譲渡 | 身分証を悪用され口座開設 | |
---|---|---|---|
要件 | 犯罪収益移転防止防止法 | 刑法246条1項 詐欺罪 | ― |
刑罰 | 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその併科 | 10年以下の懲役 | ― |
口座凍結のリスク | 口座が凍結されるリスクがある | 口座が凍結されるリスクがある | 口座が凍結されるリスクがある |
もし逮捕の流れについてより詳しく知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。
まとめ
今回は口座凍結やそれに関わる逮捕事案について解説してきました。
口座凍結とその逮捕事案のまとめ
- 口座の凍結の理由としては「名義人の死亡」「債務整理による相殺手続き」「不正利用」の3つの理由が考えられる
- 不正利用で口座が凍結されると、その名義がブラックリストに載り、他の口座も凍結される恐れがある
- そうなった場合、日常生活に多大な影響が残る
- 不正利用を理由にした口座凍結の場合、凍結解除やブラックリストの登録抹消は困難を極める
- 口座の譲渡や譲渡目的の新規開設があった場合、逮捕され刑事罰に問われるおそれもある。
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