覚醒剤の初犯の刑罰・刑期はどれくらい?保釈金はいくら?
「覚醒剤で逮捕された…」
初犯なら実刑にならないという噂を聞いたけど、本当なのでしょうか。
覚醒剤の初犯で逮捕されたら気になるポイントを徹底的に調査しました。
- 初犯は懲役判決?執行猶予はつく?
- 初犯でも刑罰が重い?
- 保釈金はどのくらい?
法律面の解説として、アトム法律事務所の弁護士にお越しいただきました。
目次
初犯3ケース別|覚醒剤事件で逮捕されたら懲役判決?執行猶予はつくのか
覚醒剤事件にかかわらず、刑事事件では「初犯」であるかどうかが重視される傾向にあります。
初犯という言葉は日常的になんとなく使っていますが、解説をすすめるにあたって明確な意味をおさえておきたいと思います。
まず、法律の用語辞典を調べました。
こちらをご覧ください。
初めて犯した罪。再犯、累犯に対する語であるが、「初犯」自体は法令上の用語ではない。
出典:有斐閣 法律用語辞典 第4版
初犯は特に法律的な用語ではないということが分かりました。
- 人生ではじめて犯罪を起こした
- 何回も犯罪をくり返したが、警察にはじめて逮捕された
- はじめて刑事裁判で有罪判決をうけた
人によって初犯の意味のとらえ方がことなるかもしれません。
ですが…
本記事で解説をすすめていくにあたって、初犯の意味を定義しておきたいと思います。
初犯とは
犯罪の内容は問わず、警察といった捜査機関にはじめて介入されたケース
初犯の意味をこのように定義したいと思います。
では、覚醒剤事件の「初犯」はどんな処分となるのでしょうか。
起訴されたら執行猶予はつかずに実刑判決となってしまうのでしょうか。
いろいろな意見があるようですね。
初犯の刑罰についてケース別にみていきたいと思います。
初犯① 覚醒剤を「使用」したら
覚醒剤「使用」の初犯は、
懲役1年6か月、執行猶予3年
このような判決になることが多いようです。
覚醒剤の使用で初犯の場合は、懲役1年6か月に執行猶予3年の言い渡しを受けるのが通例です。
ただ、覚醒剤の使用量がごく微量であったなどの情状があれば、懲役の刑期が数か月少なくなる可能性があります。
執行猶予付きの判決が言い渡されれば、すぐさま刑務所に入る必要はありません。
初犯② 覚醒剤を「所持」したら
覚醒剤「所持」の初犯は、使用と同様に
懲役1年6か月、執行猶予3年
このような判決になることが多いようです。
覚醒剤の所持で初犯の場合は、懲役1年6か月に執行猶予3年の言い渡しを受けるのが通例です。
ただ、覚醒剤の所持量がごく微量であったなどの情状があれば、懲役の刑期が数か月少なくなる可能性があります。
街中で怪しい動きをして職務質問されて覚醒剤の所持が発覚して現行犯逮捕されるケースが多いです。
この場合、覚醒剤を携帯している状況ではありますが、自宅や車に保管することも所持に該当する可能性が高いです。
初犯③ 覚醒剤を「譲り受け・譲り渡し」をしたら
覚醒剤「譲り受け・譲り渡し」の初犯は、友人・知人の間柄などだった場合、
懲役1年6か月、執行猶予3年
このような判決になることも多いようです。
有償、無償にかかわらず営利外の使用や所持と同等にあつかわれることがあるようです。
営利目的の譲渡の場合は、初犯であっても執行猶予はつかずに実刑判決となる場合が多いです。
懲役の長さや罰金の金額は、覚醒剤の量の多さに比例して重くなる傾向があるといえます。
営利目的の場合、はかりが見つかったりして商売として継続的におこなわれていたなどの事情があればさらに量刑は重くなるでしょう。
営利目的の覚醒剤譲渡は、営利目的外にくらべると確実に重い判決がくだされることになるようです。
覚醒剤の初犯なら刑務所行きを回避できる?
覚醒剤事件においては、違反行為の内容や初犯なら執行猶予がつく可能性もあることが分かりました。
執行猶予付きの判決となれば、刑務所に入ることはありません。
一定期間、刑が執行されない制度が、執行猶予です。
社会の中での更生を目的としており、普通の生活を送ることが可能です。
営利目的外の覚醒剤所持や使用などの初犯は、執行猶予付きの判決が言い渡されることが見込まれます。
営利目的の所持・譲渡の場合は、初犯でもまず執行猶予がつくケースはほぼないでしょう。
覚醒剤の使用は初犯でも刑罰・刑期が重くなる?
覚醒剤事件の初犯で逮捕された場合の量刑について確認してきました。
ここからは、覚醒剤の取りあつかいについて規定した法律の基本を確認していきます。
覚醒剤を取り締まる法律は…
覚せい剤取締法
覚せい剤取締法では、覚醒剤に関してつぎのような行為が違法であるとしています。
違法行為
- 使用
- 所持
- 輸入
- 輸出
- 製造
- 譲渡
- 譲受
など
このような覚醒剤の違反行為にたいして、それぞれ刑罰が規定されています。
覚醒剤などの薬物事件では、営利外の目的と営利目的とで刑罰が区別されています。
- 営利外の目的:個人的な使用などのため
- 営利目的:財産上の利益を得るため
それぞれで刑罰が規定されています。
営利目的とは、金銭を得るため覚醒剤などの薬物を多くの人に売りさばいたりすることをさします。
覚醒剤という違法薬物を世に流通させて薬物汚染を広げることは、社会の安全をおびやかす行為です。
そのため、営利目的はより厳しい刑罰が科せられることになります。
覚せい剤取締法で規定される刑罰について、代表的な違法行為をピックアップしてみていきたいと思います。
覚醒剤「使用」の刑罰
まずは、覚醒剤の使用に焦点をあてていきたいと思います。
覚醒剤の使用についてこんなニュースを見つけました。
不倫相手の20代女性に覚醒剤を注射したとして、警視庁代々木署が、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで、(略)を逮捕していたことが5日、同署への取材で分かった。(略)
出典:産経ニュース(2018.1.5 13:50)
不倫相手に覚醒剤を注射して逮捕されたというニュースです。
覚醒剤の使用というと自分で注射するイメージがあったのですが、他人に覚醒剤を使用しても逮捕されるようです。
覚醒剤を使用したらどのような刑罰が待ちうけているのでしょうか。
営利外の目的
10年以下の懲役
営利目的
- 1年以上の有期懲役
- 1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金が併科
それぞれ、このような刑罰が規定されています。
覚醒剤使用の刑罰は営利目的であれば、懲役と罰金の両方が科せられる可能性があります。
期懲役の上限は20年以下なので、「1年以上~20年以下の懲役」となります。
罰金の下限は1万円以上なので、「1万円以上500万円以下の罰金」になります。
営利目的の使用というのは、人に覚醒剤を注射するなどして報酬を得るような行為が考えられます。
覚醒剤「所持」の刑罰
つぎは、覚醒剤の所持に焦点をあてていきたいと思います。
覚醒剤の所持についてこんなニュースを見つけました。
覚醒剤約10グラムを所持したとして、覚せい剤取締法違反罪に問われた千葉県の男性会社員(47)の控訴審判決で、東京高裁(若園敦雄裁判長)は2日、「職務質問した警察官が、無断でかばんの中を調べたのは違法」として、懲役4年、罰金50万円とした一審判決を破棄、無罪を言い渡した。(略)
出典:産経ニュース(2018.3.2 22:55)
職務質問した警察官の捜査方法が適法におこなわれなかったことから、無罪判決が言い渡されたというニュースです。
こんなケースがあるのですね。
とはいえ、覚醒剤の所持は職務質問から発覚して現行犯逮捕されるケースが多くなっています。
適法な捜査によって、起訴されたとしたらどのような刑罰が待ちうけているのでしょうか。
営利外の目的
10年以下の懲役
営利目的
- 1年以上の有期懲役
- 1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金が併科
それぞれ、このような刑罰が規定されています。
覚醒剤所持の刑罰も営利目的であれば、懲役と罰金の両方が科せられる可能性があります。
営利目的の所持というのは、覚醒剤の売人が密売するために所持している場合などが考えられます。
覚醒剤「譲り受け・譲り渡し」の刑罰
つぎは、覚醒剤の譲り受け・譲り渡しに焦点をあてていきたいと思います。
覚醒剤の譲渡についてこんなニュースを見つけました。
覚醒剤の密売人に注射器を無許可で渡したとして、大阪府警薬物対策課は27日、医薬品医療機器法違反(無許可授与)と覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡)ほう助の容疑で、(略)ら3人を逮捕したと発表した。(略)
出典:産経WEST(2018.2.27 20:58)
覚醒剤の密売人に、注射器を流したとして逮捕されたという事件です。
注射器であるのにもかかわらず、覚醒剤流通に加担したとして逮捕されためずらしいケースです。
このように覚醒剤そのものではないものの逮捕される可能性があるようです。
では、覚醒剤自体を譲渡したらどのような刑罰が待ちうけているのでしょうか。
営利外の目的
10年以下の懲役
営利目的
- 1年以上の有期懲役
- 1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金が併科
それぞれ、このような刑罰が規定されています。
覚醒剤譲渡の刑罰も営利目的であれば、懲役と罰金の両方が科せられる可能性があります。
覚醒剤「製造」の刑罰
さいごは、覚醒剤の製造に焦点をあてていきたいと思います。
覚醒剤の製造といわれても、ちょっとピンとこないですよね?
こんなニュースを見つけました。
覚醒剤の製造に使われる化学物質を所持したとして、(略)を覚せい剤取締法違反(製造予備)の疑いで逮捕したと発表した。
覚醒剤約7.8キロ(末端価格約4億9000万円)が製造できる量で、入手経路を調べる。(略)
自宅そばの工場の敷地内に止めた車内で、(略)覚醒剤製造の準備をしたとしている。(略)
出典:毎日新聞(2018年2月21日 21時47分)
覚醒剤を製造しようとして原料となる化学物質を所持していたという事件です。
覚せい剤取締法では、原料のあつかいについても規定しています。
営利外の目的
1年以上の有期懲役
営利目的
- 無期若しくは3年以上の懲役
- 無期若しくは3年以上の懲役および1千万円以下の罰金が併科
それぞれ、このような刑罰が規定されています。
営利目的の製造がより重い刑罰になっていることが分かります。
さいごに覚せい剤取締法で規定されている刑罰についてまとめておきます。
まとめ
覚せい剤取締法違反の刑罰
営利外の目的 懲役 | 営利目的 懲役 | 営利目的 罰金※2 | |
---|---|---|---|
使用※1 | 10年以下 | 1年以上20年以下 | 500万円以下 |
所持 | 10年以下 | 1年以上20年以下 | 500万円以下 |
譲り受け・譲り渡し | 10年以下 | 1年以上20年以下 | 500万円以下 |
製造 | 1年以上20年以下 | 無期若しくは3年以上 | 1千万円以下 |
覚醒剤の刑罰については『覚醒剤は懲役何年?売人や運び屋の営利目的の所持・密輸で逮捕?使用は罰金?』もで特集しているので、是非ご覧ください!
覚醒剤の初犯…逮捕後の流れを解説
逮捕~起訴~裁判までの流れ
覚醒剤の初犯で逮捕されたら、どのような流れで刑事手続きがすすめられていくのでしょうか。
逮捕ニュースをちょっと確認してみましょう。
覚醒剤約2.5キロ(末端価格約1億6千万円)を密輸したとして、神奈川県警は21日、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで、(略)を逮捕した。(略)
出典:産経ニュース(2018.2.21 16:04)
覚醒剤を密輸してとして逮捕されたというニュースです。
記事の内容だけでは、逮捕されたという事実しか読み取ることができません。
逮捕後は、どのように刑事手続きがすすめられていくのか解説していきます。
まずはこちらをご覧ください。
逮捕されてから勾留・起訴とつづき、刑事裁判で判決が言い渡されるまでの流れです。
初犯・再犯にかかわらず、このような流れで刑事手続きはすすめられていきます。
警察などの捜査機関に逮捕されると、最長23日間も留置場で生活を送ることになります。
- 逮捕・勾留請求まで3日間
- 勾留決定となれば10日間
- 勾留延長となれば、さらに最大10日間延長
覚醒剤事件では証拠隠滅のために関係者と口裏合わせをすると考えられることから、勾留されることが多いです。
覚醒剤事件の場合、覚醒剤の所持で現行犯逮捕されるケースが多いです。
逮捕・勾留となれば、警察や検察官からきびしい取り調べを受けることになります。
覚醒剤の初犯…保釈金はいくらで釈放される?
覚醒剤の初犯、保釈金の相場は?
保釈金とは
覚せい剤取締法違反(所持、使用)罪で起訴された元プロ野球選手(略)の弁護人は16日、東京地裁に保釈を申請した。(略)
専門家によると、不在とされた身元引受人は弁護人が務め、保釈金は500万円程度になる見込みだ。(略)
出典:産経ニュース(2016.3.17 14:18)
元プロ野球選手が覚醒剤事件で逮捕されたというニュースは連日報道が続いていました。
保釈金「500万円」とのことですが、結構な金額ですね。
保釈金は人によって金額が違うようです。
そもそも保釈金は、なんのために払うものなのでしょうか。
保釈金
起訴後、保釈を得るために納付する保証金のこと
保釈が認められれば、裁判が終わるまで自宅で生活することができます。
法律用語としては、保釈金のことを「保釈保証金」といいます。
保釈は被告人の住居を制限したり、一定の条件を提示されることになります。
この条件を守らず刑事裁判前に逃亡したりすると保釈金は没取されます。
保釈条件の違反なく、刑事裁判が終わると保釈金は全額返金されます。
没取されたら困るという精神的負担によって、出頭が確保されると考えられている制度です。
覚醒剤事件における保釈金の相場
覚醒剤の所持などで逮捕・勾留された状態で、刑事事件が起訴されると、勾留はさらに長引きます。
保釈で釈放されなければ、裁判が終わるまで留置場などで生活をつづけることになります。
留置場の暮らしは、自由がなくきびしいでしょう。
「保釈金をはらって、留置場から出たい!」
保釈金はどのくらい払わなければならないのでしょうか。
元プロ野球選手は500万円とのことでした。
貯金がないとすぐに出せる金額ではないと思います。
100万円というケースもあるようですが、覚醒剤事件の保釈金に相場はあるのでしょうか。
覚醒剤事件の保釈金
150万円〜200万円程度
覚醒剤事件をおこしたら、「保釈金は〇〇万円」と決まっているわけではありません。
- 犯罪の態様
- 証拠関係
- 被告人の性格、経済状況
このような点から保釈金の金額が決められます。
覚醒剤事件では身元引受人がおり、
- 自らがおこなった行為について
- 覚醒剤の入手ルートについて
などを正直に話していれば、保釈が認められる場合が多いです。
一方、規模の大きい覚醒剤事件では、
- 入手ルート
- 覚醒剤を一緒に使用していた人たち
このような点についてくわしく話していなければ、保釈が認められにくくなります。
覚醒剤事件といっても、事件の内容によって保釈が認められる場合と認められない場合があるということでした。
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