刑事事件で逮捕、罰金刑になった。分割払いはできる?未納・払えない場合はどうなる?
盗撮や万引き、ストーカー行為などで刑事事件として逮捕され、罰金に処せられた…。
そんな方が感じるであろう、罰金についての疑問を全部お答えしていきます。
- 分割はできる?
- 未納、払えない場合はどうなる?
- 執行猶予はつく?
他にも、解雇の可能性、前科との関係など、刑事事件と罰金に関する全てを解説します。
法的な解説については、刑事事件の解決経験豊富なアトム法律事務所の弁護士にお願いしていきます。
よろしくお願いします。
刑事事件で逮捕され、罰金が科せられるケースは大変多いです。
罰金についての関連知識をしっかりと解説していきます。
目次
刑事事件で逮捕されたら罰金刑?そもそも罰金ってどんな刑罰?
刑事事件で逮捕されると、その後警察・検察から取り調べを受け、起訴されることがあります。
逮捕後に起訴され、裁判所から有罪の判断をされると、刑罰を受けることになります。
刑事事件で科せられる刑罰として、罰金がどのようなものか、どんな手続きなのか、順を追ってみていきましょう。
逮捕されて罰金刑が言い渡された。前科になる?
罰金とは、刑事事件で一定の金額の納付を命ずる刑罰をいいます。
刑法では、このように記載されています。
罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
出典:刑法15条
ちなみに上限はありません。
金融商品取引法207条などでは、7億円もの罰金が規定されています。
そして罰金も刑罰ですから、科せられることで前科がつきます。
逮捕後も長期に身柄を拘束されていたら、罰金の支払額が減るって本当?
なお逮捕後、判決がでるまで拘置所や留置場に勾留として身柄を拘束されている場合があります。
この期間の一部を金銭評価し、罰金に充当される可能性もあります。
刑法21条を見てみましょう。
未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。
出典:刑法21条
判決が出るまでの勾留を、「未決勾留」といいます。
全期間の算入は稀ですが、刑事事件で通常かかる日数を超えた部分は参入される可能性があります。
1日5000円と計算することが多いようですね。
もちろん、参入されるかどうかは具体的な刑事事件によって異なります。
不安な場合は弁護士に相談してみましょう。
刑事事件では、罰金刑に執行猶予はつく?
このような罰金ですが、執行猶予はつくのでしょうか。
「執行猶予」とは、「刑の言渡しをした場合に、情状によりその執行を一定期間猶予し、その期間を無事経過するときは刑を受けることがなくなる制度」をいいます。
刑法25条以下に記載されています。
この執行猶予、罰金にもつくのでしょうか。
執行猶予についての条文を見てみましょう。
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
出典:刑法25条
刑事事件で50万円以下の罰金であれば、執行猶予の可能性があると読めますね。
しかし
罰金刑に執行猶予が付されることはほぼありません。
たとえば、「検察統計」によれば2016年に罰金が科された事件は263,099件でした。
そのうち、「執行猶予が付与」されたのは宮崎簡易裁判所で1件あったのみです。
他の年も同様であり、罰金に執行猶予が付されることはほぼないといえるでしょう。
刑事事件における罰金の支払手続きは?
このような罰金が科せられた場合、支払いには2つの方法があります。
まずは
検察庁で直接支払う方法です。
逮捕され、略式命令を受けた場合に多いようですね。
「略式命令」とは、「簡易裁判所が、管轄に属する刑事事件について、公判前に、100万円以下の罰金又は科料を科す裁判」です。
この略式命令を出すための手続きを「略式手続」といいます。
軽微な事件について、簡易・迅速に刑事手続きを終結させるものです。
略式手続であれば通常1日で手続きが終わり、命令も即日出ることになります。
裁判所が関係書類を見るだけ、かつ非公開で罰金・科料を決めてしまう点が特徴です。
もっとも書類審査だけで有罪となってしまうため、略式手続について被疑者の異議がないことをあらかじめ示す必要があります。
逮捕後の略式手続では、「検察庁」で直接罰金を支払うことも多いです。
もちろん強制ではなく、釈放後後日支払うことも認められています。
後日払い
略式手続でない場合も含め、後日支払う場合には、検察庁から「納付告知書」が送られてきます。
これを指定の金融機関に持っていき、支払うことになります。
刑事事件の罰金は分割払いできる?
では、このような支払いをするときに、分割払いをすることはできるのでしょうか。
実は原則として罰金は一括払いと考えられています。
そのため、検察庁に分割の申し出をしても、最初は断られることが多いです。
ですが、絶対に不可能というわけでもないようです。
もはや誰からもお金が借りられない、生活状況からどうしても払えない場合には、分割に応じてもらえる可能性もあります。
検察庁に行き、粘り強く相談してみましょう。
刑事事件の罰金に納付期限はある?
また、納付告知書には「納付期限」が定められています。
この期限内に罰金を支払ってしまいましょう。
期間内に支払えないとどうなるのかは、後で詳しくお伝えします。
逮捕後、罰金刑を理由に解雇されることはあるか?
今見たように、逮捕後に罰金刑となるのは「有罪となった場合」であり、前科がつきます。
そして企業の就業規則には「犯罪行為を犯し、有罪となったとき」を懲戒解雇事由と定めている場合もあります。
ですが
どんな犯罪でも絶対に解雇されるとは限りません。
労働契約法にこのような条文があります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
出典:労働契約法16条
解雇をするには、客観的に合理的な理由が必要とされています。
企業が懲戒権を持つのは、企業の秩序を維持するためです。
そこで、業務外で企業の秩序とは関係のない犯罪を行った場合、解雇が無効となることもあります。
疑問に思った場合は、弁護士に相談してみましょう。
無免許運転やスピード違反で、反則金を払った。罰金と同じ?
無免許運転やスピード違反など、交通関連の犯罪では反則金という制度があります。
お金を払うという点では同じですが、反則金と罰金は全く別の制度です。
「反則金」とは、「道路交通法に違反する行為のうち一定未満の速度超過、信号無視など比較的軽微なものに対する制裁として納付させる金銭」をいいます。
反則金を支払うことで、刑事訴追を免れることになっています。
刑事訴追を免れるのですから、前科がつきません。
刑罰として科せられるのもでもありませんから、刑罰である罰金とは異なるものです。
- 反則金と罰金は異なる制度。
- 反則金を支払えば、前科はつかない。
よく「交通違反で罰金の未納は、逮捕される」という文を見ることもありますが、誤用です。
未納によって逮捕の危険があるのは反則金です。
反則金を支払うことで刑事訴追を免れる一方、納付期限内に払わなかった場合は逮捕される可能性がでてくるということです。
刑事事件で罰金未納、払えないとどうなる?
労役場留置とは何か。
では、このような罰金を納付期限までに払えなかった場合、どうなるのでしょう。
まずはこの条文を見てみましょう。
罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
出典:刑法18条1項
なんと罰金が払えない場合、最大で2年、労役場に入れられてしまいます。
労役場は刑務所や拘置所に併設されています。
場合によっては、成人が少年刑務所に入って労役することもあるようです。
そこでは「紙袋に取手をつける」など、軽作業を行います。
この軽作業、だいたいは1日5000円分の労働と計算されることが多いようです。
そのため、3万円の罰金を未納している場合、6日間の労働をすることになるでしょう。
この期間の算定方法は、判決の際にあらかじめ伝えられます。
罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
出典:刑法18条3項
判決や略式命令で罰金を言い渡す場合は、
「被告人を罰金〇〇万円に処する。これを完納することができないときは、金××円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。」
のように記載されています。
先ほども述べたように、「××」の部分は5000円となることが多いようですね。
なお、より軽い科料が罰金と同時に科されることもあります。
また多数の事件で複数の罰金が同時に科されることもあります。
この場合には、留置の期間制限は三年以下まで拡張されることになります。
罰金が払えない場合は、労役場に入れられ、指定の時間働かせられる、ということですね。
なお、労役場留置は裁判確定から30日を過ぎないと本人の同意なしに執行されることはありません。
罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
出典:刑法18条5項
もっとも、最近は罰金を払わずに、労役場留置を求める人も増えてきたと聞きます。
その場合には、本人の承諾があるのですから、期間制限に関係なく労役場留置になる場合もあるでしょう。
以上、罰金が払えない・未納の場合についてお伝えしました。
労役場留置に関するデータ。
最後に検察統計から、労役場留置に関するデータを見てみましょう。
2016年において、前年からの繰り越しも含め罰金を執行した件数は271,096件でした。
納付された金額は、約5666万円にも及びます。
そのうち、労役場留置処分となったのは4,559件、評価額は約185万円となっています。
罰金刑全体 | 労役場留置 | 割合 | |
---|---|---|---|
件数 | 271,096件 | 4,559件 | 1.68% |
金額 | 56,666,187円 | 1,845,683円 | 3.26% |
罰金刑全体から考えると、1.68%の件数が労役場留置となっています。
それによって全体の3.26%の金額が支払われたと評価されていたことが分かります。
以上が実務上の運用でした。
刑事事件で逮捕・罰金が不安なら、弁護士に相談してみよう。
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最後に一言アドバイス
では最後にアトム法律事務所の弁護士から一言お願いします。
罰金が払えない場合は労役場で働くことになります。
長期の拘束をされると、人によっては会社や家族関係で不利益が生じる可能性もあります。
ですが労役場留置は刑の言渡し確定から30日を過ぎなければ執行されません。
その期間内に分割払いの交渉など、対策をとれる可能性もあります。
お困りの場合はなるべく早く弁護士にご相談ください。