大麻の刑罰は懲役何年?|所持・栽培・密輸・営利目的ごとに解説
大麻で逮捕されたら懲役は覚悟したほうがよいのでしょうか?
刑務所にはいることになってしまうのかは気がかりな点だと思います。
大麻事件と懲役の関係を本日は深堀していきたいと思います。
- 大麻の懲役の可能性をリサーチ
- 大麻取締法とは?
- 大麻で逮捕されたあとの流れ
このような点に着目して、大麻について解説していきます。
法律家の観点からお話いただくのは、アトム法律事務所の弁護士です。
目次
大麻の刑罰は懲役何年?|所持・栽培・密輸・売買ごとに解説
大麻犯罪は大麻取締法で規定
大麻の取りあつかいについては、「大麻取締法」で規定されています。
この法律では、大麻の取りあつかいについてのさまざまな行為が禁止されています。
違反となる行為
- 所持
- 栽培
- 密輸(輸入・輸出)
- 売買(譲渡・譲り受け)
など
このように細かく大麻の取りあつかいについて規定されています。
さらに、営利外の目的と営利目的でも区別されています。
それぞれの刑罰について確認していきましょう。
大麻の所持
営利外:5年以下の懲役
営利目的:7年以下の懲役または7年以下の懲役および200万円以下の罰金
大麻の栽培
営利外:7年以下の懲役
営利目的:10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金
大麻の密輸
営利外:7年以下の懲役
営利目的:10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金
営利目的だと、懲役刑と罰金刑のどちらも科される可能性があるのですね。
大麻という違法薬物を社会に広げてしまう営利目的の場合、営利外の場合よりも重い刑罰がくだされることになります。
さいごにもう一度、大麻の刑罰をまとめておきます。
刑罰
大麻の所持・栽培・密輸
営利外 | 営利目的 | |
---|---|---|
所持 | 5年以下の懲役 | 7年以下の懲役または7年以下の懲役および200万円以下の罰金 |
栽培 | 7年以下の懲役 | 10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金 |
密輸 | 7年以下の懲役 | 10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金 |
大麻の使用は懲役刑にならない理由
ここで大麻の「使用」は、罪に問われないということを聞いたことはあるでしょうか。
大麻取締法では、単純な大麻の使用は違法行為として規定していません。
大麻取締法では都道府県知事の免許をうけた大麻取扱者に対して、大麻の取りあつかいの一部行為を認めています。
一部の行為とは大麻の所持・研究のための使用などなので、体内に吸収されてしまうことも可能性としてあります。
そのため薬物検査によって尿から大麻の陽性反応が出たとしても、
- 取締り対象の大麻
- 取締り対象外の大麻
どちらの大麻なのかの判別までおこなうことができないため、大麻の使用を禁止行為とはしていません。
もっとも、単純に大麻を使用(吸引)しているときは大麻を所持していることになりますので、大麻所持で逮捕されることになります。
大麻の刑罰の相場①|ニュースや判例から紹介
大麻の量刑をリサーチ。懲役〇年?執行猶予はつく?
大麻事件で逮捕されて、裁判を受けることになったら懲役刑はまぬかれないものなのでしょうか。
執行猶予がつくのかという点も気になります。
そこで、本日は大麻事件の量刑について調査してみました。
3つの調査方法を使って、リサーチしてきたいと思います。
調査方法
- ニュース
- 判例検索システム(民間のシステム)
- 量刑調査報告集(第一東京弁護士会出版)
これらを使って、大麻事件の量刑を調査していきます。
この記事では、大麻事件のなかでもよく取り上げられる3つの違反行為に着目して解説していきたいと思います。
- ① 大麻の所持
- ② 大麻の栽培
- ③ 大麻の密輸
これらの量刑について、それぞれリサーチしていきます。
リサーチ①大麻所持
大麻の所持事件では、どのくらいの量刑が言い渡されることになるのでしょうか。
まずは、ニュースから懲役の可能性をリサーチします。
ニュース
ヒップホップユニット(略)として活動し、大麻取締法違反(所持)の罪に問われた(略)に、静岡地裁は19日、懲役8月、執行猶予3年(求刑懲役8月)の判決を言い渡した。(略)
出典:西日本新聞(2018年03月19日 16時36分)
とあるDJが大麻所持で逮捕されたという事件です。
芸能人ということもあり、かなりニュースで取り上げられていたので記憶に新しい方もいらっしゃるでしょう。
こちらの大麻所持事件では、「懲役8月、執行猶予3年」が言い渡されています。
執行猶予はついていますが、懲役刑が言い渡されたようです。
つぎは、判例検索システムで懲役の可能性をリサーチします。
判例検索システム
事件の概要 |
---|
警察署で証拠品の管理を担当する警部補である被告人が、大麻栽培事件で押収されていた証拠品の大麻を盗みだした大麻の所持事件 |
量刑 |
懲役1年6月、執行猶予4年(保護観察付) |
警察官による大麻の所持事件です。
証拠品だった大麻を盗み出したとのことです。
「懲役1年6月、執行猶予4年(保護観察付)」が言い渡されています。
こちらの事件でも、執行猶予付きの懲役刑が言い渡されています。
つぎは、量刑調査報告集で懲役の可能性をリサーチします。
量刑調査報告集
事件の概要 |
---|
大麻がふくまれた乾燥植物を約1g所持していた事件 |
量刑 |
懲役6月、執行猶予3年 |
「懲役6月、執行猶予3年」が言い渡されています。
こちらの事件でも執行猶予がついています。
大麻の所持事件では執行猶予がつくのが通例なのでしょうか。
大麻の所持は初犯であれば、懲役1年、執行猶予3年となることが多いです。
ただし、有利な情状があるなどすれば、
- 懲役6か月、執行猶予3年前後
- 懲役8か月、執行猶予3年前後
- 懲役10か月、執行猶予3年前後
このような判決が言い渡されることがあります。
大麻の所持事件は、懲役1年に執行猶予3年がつくことが多いということでした。
リサーチ②大麻栽培
大麻の栽培事件では、どのくらいの量刑が言い渡されることになるのでしょうか。
まずは、ニュースから懲役の可能性をリサーチします。
ニュース
和歌山県かつらぎ町の倉庫で1万本を超える大麻草を栽培したとして、大麻取締法違反(営利目的栽培)などの罪に問われた男4人の判決公判が22日、奈良地裁葛城支部であり、首謀者の無職(略)に懲役7年、罰金300万円(求刑懲役10年、罰金300万円)を言い渡した。(略)
出典:産経WEST(2017.6.22 17:47)
1万本もの大麻草を栽培したという事件です。
こちらの大麻の栽培事件では、「懲役7年、罰金300万円」が言い渡されています。
懲役刑も罰金刑も科されています。
大麻の栽培事件は、複数の刑罰が言い渡される可能性があることが分かりました。
つぎは、判例検索システムで懲役の可能性をリサーチします。
判例検索システム
事件の概要 |
---|
大学の敷地内で、自己使用と知人へ無償で譲渡する目的で大麻を栽培した事件 |
量刑 |
懲役3年、執行猶予4年 |
大学の敷地内で大麻を栽培していたという事件です。
「懲役3年、執行猶予4年」が言い渡されています。
所持事件の判決より刑期が長い印象があります。
つぎは、量刑調査報告集で懲役の可能性をリサーチします。
量刑調査報告集
事件の概要 |
---|
大麻を約170g栽培した事件 |
量刑 |
懲役2年6月、執行猶予4年 |
大麻を170g栽培したという事件です。
170gがどれほどの量なのかはっきりとは分かりませんが…
1回の吸引で0.1~0.2gといわれているので、かなりの量になると思われます。
「懲役2年6月、執行猶予4年」が言い渡されています。
こちらの栽培事件も、所持事件よりは懲役と執行猶予の年数が長いような気がします。
大麻の栽培は、薬物流通の原因を作る行為となります。
したがって、所持より栽培のほうが刑罰が重くなります。
懲役1年6か月〜2年、執行猶予3年〜4年
初犯であれば、このような判決となることが多いです。
薬物流通の原因ではなく個人1人の使用目的であったりすると、懲役1年、執行猶予3年程度になることもしばしばあるようです。
この場合は、他人に有償・無償にかかわらず譲り渡したりしていないことがポイントとなるようです。
リサーチ③大麻密輸
大麻の密輸事件では、どのくらいの量刑が言い渡されることになるのでしょうか。
まずは、ニュースから懲役の可能性をリサーチします。
ニュース
米国から大麻を密輸したとして、大麻取締法違反(輸入)などの罪に問われたバスケットボール男子Bリーグ1部(B1)「レバンガ北海道」元選手で、米国籍(略)の判決公判が27日、札幌地裁であり、平手健太郎裁判官は懲役1年6カ月、執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。(略)
出典:北海道新聞(03/28 05:00)
アメリカから大麻を密輸したとして、アメリカ人が大麻輸入の罪にとわれた事件です。
日本人でなくても刑事裁判をうけることになるのですね。
「懲役1年6カ月、執行猶予3年」が言い渡されています。
つぎは、判例検索システムで懲役の可能性をリサーチします。
判例検索システム
事件の概要 |
---|
大麻や覚醒剤・麻薬などを輸入しようとした事件 |
量刑 |
懲役1年8月 |
大麻や覚醒剤などの違法薬物を輸入しようとした事件です。
「懲役1年8月」が言い渡されています。
こちらは執行猶予がついていないので、すぐさま刑務所にはいることになります。
つぎは、量刑調査報告集で懲役の可能性をリサーチします。
量刑調査報告集
事件の概要 |
---|
大麻を約100g輸入した事件 |
量刑 |
懲役2年6月 |
大麻を100g程度、輸入しようとした事件です。
「懲役2年6月」が言い渡されています。
こちらも執行猶予がついていません。
執行猶予がつく場合と、つかない場合のちがいはどのような点にあるのでしょうか。
大麻を営利目的で輸入した場合に、量刑が一気に重くなります。
懲役3年〜6年(実刑)に罰金150万円〜200万円が併科
初犯でもこのような判決となることが通例です。
営利目的の場合は、懲役刑と罰金刑が一緒に科される可能性があることが分かりました。
懲役とは?意味や禁錮との違いをおさえる
大麻事件では、懲役刑になるのかリサーチしてきました。
そもそも、「懲役」とはどんな意味なのでしょうか?
懲役と似たような言葉で、「禁錮」があります。
こられらの違いもおさえつつ、懲役の意味を解説していきます。
懲役とは
刑務所に収監されて、所定の刑務作業を強いられる刑罰の一種
禁錮とは
刑務所に収監される刑罰の一種
懲役と禁錮はどちらも刑務所に収監されるという点が共通しています。
これらの違いとしては、「刑務作業」を強いられるのが懲役となります。
懲役も禁錮も、無期・有期が決められています。
無期は言葉通り、刑期に期限がありません。
有期には期間が定められており、有期懲役・有期禁錮ともに「1月以上20年以下」と定められています。
なお、禁錮刑の場合でも希望すれば刑務作業をおこなうことができるようです。
大麻の刑罰の相場②|初犯の場合はどうなる?
ここまでは、大麻取締法に規定されている刑罰についてそれぞれ見てきました。
では「初犯」の場合、どのような刑罰が見込まれるのか確認していきます。
大麻の所持で起訴された場合
まず、初犯の大麻所持の刑罰をみていきます。
懲役1年、執行猶予3年
このような刑罰となることが多いようです。
有利な情状があるときは…
- 懲役6か月
- 懲役8〜10か月
このような懲役に、執行猶予3年前後がつくことがあるようです。
有利な情状を具体的にいうと…
- 所持している大麻が少量だった
- 十分に反省している
- 病院などで依存症を克服しようと努めている
などのケースが考えられます。
執行猶予がつけば、すぐさま刑務所に入ることはありません。
執行猶予期間を無事にむかえることができれば、懲役刑が執行されることもありません。
大麻の栽培で起訴された場合
つぎは、初犯の大麻栽培の刑罰をみていきます。
懲役1年6か月〜2年、執行猶予3年〜4年
となることが多いようです。
大麻栽培の目的が、自分1人で使用するためで、実際に他人に譲渡していなければ、
懲役1年、執行猶予3年程度
このような刑罰になることも、しばしばあります。
大麻の栽培は初犯であっても、薬物流通の原因を作ったということで、基本的に所持にくらべると刑罰が重くなるようです。
営利目的の大麻を輸入・栽培で起訴された場合
さいごは、初犯でもとくに営利目的の大麻輸入・栽培の刑罰をみていきます。
懲役3年〜6年に罰金150万円〜200万円が併科
このような刑罰となるのが通例です。
執行猶予がつかなければ、すぐさま刑務所に入ることになります。
大麻で逮捕されたあとの流れ
大麻で逮捕されたらすぐ懲役?
ここまでは、大麻事件の量刑について調査してきました。
では、大麻事件で逮捕されたらすぐに裁判が開かれて懲役刑が言い渡されることになるのでしょうか。
ニュースなどでは、逮捕直後の様子は伝えられますがその後どうなるのかまで詳しくは報道されません。
大麻で逮捕されたあとの流れについて解説していきたいと思います。
逮捕されてから刑事裁判が開かれるまでの流れです。
大麻事件にかぎらず、刑事事件では段階をふんで事件の捜査がおこなわれていきます。
逮捕後、警察によって48時間以内に検察官へ送致するか検討されます。
送致をうけた検察官は、24時間以内に
- 勾留請求
- 起訴
- 釈放
いずれかを検討します。
裁判官によって勾留が決定されると、留置場などで10日間のあいだ生活をおくることになります。
勾留が延長されれば、さらに10日間以内勾留がつづきます。
逮捕から起訴まで最長で23日間、自宅に帰ることができません。
2~3日でも仕事や学校など休みにくいのではないでしょうか。
23日間の長期間、勾留がつづけば社会生活に影響が出るでしょう。
勾留期間が終了するまでに、検察官は起訴するかどうかを検討します。
なお、大麻で逮捕された後の流れは『大麻で逮捕された場合の流れを解説|初犯だとどうなるの?』でも解説しています。
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さいごに一言、弁護士からアドバイスをいただきたいと思います。
大麻事件は、警察に犯行が発覚すると逮捕される可能性が非常に高い事件です。
当番弁護士という弁護士会が派遣する弁護士に相談するという方法もありますが、すぐに対応してくれるともかぎりません。
早期の対応が、事件解決の第一歩となります。
大麻事件に関して弁護士に相談するなら、刑事事件を多くあつかう専門の弁護士を探して相談するようにしましょう。