傷害事件の時効の年数|「傷害事件」の被害届が出されるリミットや、被害弁償の時効
「傷害事件を起こしてから、かなり年数がたったけれど、あの時の被害届を出されてしまうのだろうか・・・。」
このような心配をされている方もいるのではないでしょうか。
- 傷害事件の被害届が出される期間にリミットはある?
- 時効という言葉を聞いたことがあるけど、傷害事件の時効の年数は?
- 傷害事件の時効だけでなく、被害弁償にも時効はあるの?
このようなギモンが浮かんできますよね!
そこで、今回は「傷害事件の時効」に関するギモンにお答えしていきます。
傷害事件の時効にまつわる法律的な解説は、刑事弁護のプロ、アトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
刑事事件の時効といえば公訴時効が1番の関心事でないかと思います。
刑事弁護の実務の視点から皆さんの気になるところについて、解説していきます。
目次
傷害事件の時効期間の年数は?刑事事件の被害届を出せるリミットについて
時効期間内でなければ傷害事件の被害届は受理されない?
公訴時効にかかった傷害事件に関するニュース
傷害事件には、「公訴時効」というものがあります。
捜査が進まず、「公訴時効」にかかってしまう傷害事件もあります。
まずは、「公訴時効」にかかってしまった傷害事件が報じられたニュースを見てみましょう。
平成9年に起きた傷害事件の(略)被害届を受けた同署は男を特定して逮捕状請求書を作成したが、居場所が分からず請求手続きは見送っていた。(略)16年6月に公訴時効(当時は7年)が成立した。(略)同事件の凶器や逮捕状請求書などの資料が署内の機械室に放置されているのが24年11月に見つかり、(略)内部で問題化していた
出典:産経WEST(2015.2.20 14:04)
この傷害事件では、被害者から、傷害事件の被害届が出されていました。
その被害届を受けて、傷害事件の逮捕状請求書が用意されていました。
しかし、それらの資料が放置され、「時効」になってしまいました。
公訴時効という制度の意義
ところで、「公訴時効」とは、具体的にはどのような制度なのでしょうか。
「公訴時効」とは、犯罪終了後、一定期間が経過すると、起訴がされなくなる制度です。
この時効は、判決が未確定の事件に関する時効です。
仮に、時効が成立した後に起訴された場合、その裁判は打ち切られることになります。
公訴時効は、「犯罪が終った時」から進行します。
公訴時効が成立すると、起訴されません。
「公訴時効まで逮捕状請求書などが放置された」というニュースは、このような事情から報じられてしまったようです。
それにしても、なぜこのような「時効」が認められているのでしょうか。
公訴時効が認めらるの理由については、一般的に次のような学説があります。
- ① 訴訟法説:時間の経過に伴う証拠の散逸による審理の困難
- ② 実体法説:刑罰を加える必要性の低下
公訴時効が認められる理由については、種々の論争があります。
犯人の社会的安定と捜査・裁判の負担軽減などを、公訴時効を認める理由とする説もあるようです。
傷害事件の公訴時効を確認しよう
時効の年数一覧(刑事訴訟法250条1項)
では、実際に公訴時効はどのように規定されているのでしょうか。
公訴時効については、刑事訴訟法250条に規定されています。
時効期間は、法定刑が基準にされています。
法定刑とは、個々の刑罰法規に定められている刑のことです。
刑事訴訟法250条では、2つの類型にわけて、時効が規定されています。
公訴時効の規定
- ① 人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(刑事訴訟法250条1項)
- ② 人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪(刑事訴訟法250条2項)
この分類のポイントは、
- 「人を死亡させた罪」かどうか
- 人を死亡させた罪のうち「禁錮以上」の法定刑かどうか
ということです。
では、公訴時効の年数をまとめた一覧をチェックしてみましょう。
まずは、刑事訴訟法250条1項の内容をまとめてみました。
250条1項 | 法定刑 | 時効期間 |
---|---|---|
柱書 | 死刑に当たる罪 | なし |
1号 | 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 | 30年 |
2号 | 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪 | 20年 |
3号 | 表の①~③以外の罪 | 10年 |
一部の刑事事件については、公訴時効が「なし」とされています。
以前は、人を死亡させた刑事事件で「死刑」が規定されている「殺人罪」でも、公訴時効が存在していました。
さきほどご紹介した制度の理由があるにもかかわらず、なぜ時効が撤廃されたのでしょうか。
時効撤廃について言及している警視庁のHPの説明を読んでみましょう。
平成22年4月27日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)が成立し、同日公布され、殺人罪など人を死亡させた犯罪であって死刑に当たるものについて公訴時効が廃止されるなどの改正が行われました。(略)殺人犯であっても、25年間逃げ切れば、処罰されることはありませんでした。しかし、(略)この種事犯においては、時間の経過による処罰感情の希薄化等、公訴時効制度の趣旨が必ずしも当てはまらなくなっているとの指摘がなされていました。(略)そこで、殺人罪など一定の犯罪について、公訴時効を廃止したり、公訴時効期間を延長する法整備がなされたものです。
出典:平成23年版 犯罪被害者白書〔HTML〕(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/w-2011/html/zenbun/part2/s2_3_1c5.html)
公訴時効制度には理由があっても、一部の犯罪にはその理由が通用しないと判断されたようです。
時効の撤廃のみならず、この改正により公訴時効の年数が従前より長期化されました。
時効の年数一覧(刑事訴訟法250条2項)
次に、刑事訴訟法250条2項に規定される公訴時効の一覧です。
こちらでは、250条1項にあたるもの以外について規定されています。
250条2項 | 法定刑 | 時効期間 |
---|---|---|
1号 | 死刑に当たる罪 | 25年 |
2号 | 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 | 15年 |
3号 | 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪 | 10年 |
4号 | 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 7年 |
5号 | 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 5年 |
6号 | 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪 | 3年 |
7号 | 拘留又は科料に当たる罪 | 1年 |
いま見てきたとおり、時効期間は法定刑によって違ってきます。
では、これから傷害事件の時効の年数について、確認していきましょう。
傷害事件の公訴時効の年数は?
刑法に挙げられている傷害事件には、どのような刑事事件があるのでしょうか。
刑法上、問題となる傷害事件には、一例として、次のようなものがあります。
- 傷害罪(刑法204条)
- 傷害致死罪(刑法205条)
- 過失致死罪(刑法209条)
では、これらの3つの刑事事件について、時効を確認していましょう。
まずは、傷害罪の法定刑をチェックします。
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 |
刑法204条に規定される傷害罪の法定刑は、「15年以下の有期懲役」と「罰金刑」です。
この場合、有期懲役の法定刑によって、公訴時効が決められます。
結論として・・・
表②の3号にあたり、公訴時効は「10年」です。
でも、傷害罪の「15年以上」の法定刑を、3号の「15年以下」に該当させてよいのでしょうか?
これには、「以上」と「未満」のトリックがあります。
3号の「15年以上の懲役」という規定だと、ピッタリ「15年」を含みます。
4号の「15年未満の懲役」という規定だと、「15年」よりも下の年数でなければなりません。
したがって、法定刑15年は、3号の「15年以上」に該当することになります。
傷害致死罪の公訴時効の年数
次に、傷害致死罪の公訴時効の年数をチェックしましょう。
まずは、傷害致死罪の法定刑の確認です。
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。 |
刑法205条に規定される傷害致死罪の法定刑は、「3年以上の有期懲役」です。
この場合、刑法のほかの規定によって、「3年以上20年以下」の有期懲役となります。
結論として、
表①の2号にあたり、公訴時効は「20年」です。
過失傷害罪の公訴時効の年数
さいごに、過失傷害罪に問われる傷害事件の公訴時効についてチェックしましょう。
まずは、過失傷害罪の法定刑の確認です。
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。 |
刑法209条1項の過失傷害罪の法定刑は、「30万円以下の罰金又は科料」です。
この傷害事件は、表②の6号にあたり、公訴時効は「3年」です。
傷害事件の時効と告訴の関係|告訴期間を過ぎても被害届は提出される?
告訴期間とは
起訴を有効にするための告訴は、告訴期間内にしなければならないという話を聞いたことはありますか?
告訴がなければ起訴されない犯罪について、キッチリ説明してくれている人がいますよ。
では、親告罪の告訴期間について、規定した条文を見てみましょう。
親告罪の告訴は、犯人を知った日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。
出典:刑事訴訟法第235条本文
そもそも「告訴」とは、どのようなものなのでしょうか。
「告訴」とは、犯罪の被害者その他の告訴権者が捜査機関に対し犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
犯人の処罰を求める意思表示を必要とする点で、単に犯罪事実の申告をする「被害届」とは区別されます。
親告罪とされる犯罪では、このような「告訴」がなければ起訴されません。
この告訴には、告訴期間があり、原則として「犯人を知った日から6か月」です。
親告罪で起訴されるかどうかは、公訴時効以外にも、告訴期間も関係しているようです。
一例として、過失傷害罪のケースを用いて、公訴時効と告訴期間の関係を整理してみましょう。
まずは、過失傷害罪の条文をご覧ください。
過失傷害罪
1 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
出典:刑法第209条第1項、同第2項
過失傷害罪は、「告訴がなければ公訴を提起することができない」親告罪です。
この場合、犯人だと知られた日から「6か月」の期間、告訴されなければ起訴されません。
また、告訴期間内に告訴されたとしても、公訴時効の「3年」を経過すると起訴されません。
告訴期間経過後、告訴ではなく被害届を出される可能性
先ほどからお話ししているように、告訴期間を経過している場合、処罰されません。
そのため、告訴期間を経過して被害届が提出されたとしても、処罰されません。
仮に、公訴時効が経過していない余罪があるとします。
その場合、被害届が関係人の供述書として受理される可能性はあるかもしれません。
傷害事件の時効は、「公訴時効」以外にもある
いままで、公訴時効について説明をしてきました。
刑事事件の時効といえば、「公訴時効だけである」とお考えの方もいますよね?
でも、公訴時効以外にもあります。
それは、「刑の時効」です。
「刑の時効」とは、どのようなものか定義を確認しておきましょう。
刑(死刑を除く)の言渡しを受け、それが確定した後、刑の執行を受けることなく一定期間が経過したことにより、刑の執行を免除する制度
出典:有斐閣 法律学小辞典 第5版
公訴時効と異なり、「刑の時効」は裁判の後に問題になるものです。
それにしても、刑の執行についても時効があるとは、驚きですね。
他にも傷害事件や暴行の時効についての記事はあります。
『傷害罪の時効|公訴時効・告訴期間・被害届の提出期間・慰謝料の時効とは?』も是非見てくださいね。
傷害事件が公訴時効にかからない場合とは?「時効の停止」について
被害届提出の猶予期間!?刑事事件の「時効の停止」とは
公訴時効の時効期間の年数は、長期に及びます。
さらに、この期間の進行が「停止」してしまうことがあるようです。
時効期間の停止について、「初めて知った」という声もありますよ。
では、海外に逃亡したら刑事事件の時効が停止するのでしょうか。
刑事事件の時効の停止について規定してある条文のうちの一つを確認してみましょう。
犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかった場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
出典:刑事訴訟法第255条第1項
この条文を見てみると、「犯人が国外にいる場合」が停止の事由として規定されていますね。
そうすると、海外逃亡の場合には、時効が停止されることになります。
この刑事訴訟法255条1項に規定されている「時効の停止」の事由を読みやすくまとめると、次のようになります。
255条1項の「時効の停止」が生じる事由
- ① 犯人が国外にいる場合
- ② 犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合
共犯者の時効が停止されたら、自分の傷害事件について時効はどうなるか
犯人が国外にいる場合などのほかにも、時効が停止されることがあります。
次の条文をご覧ください。
時効は、当該事件についてした公訴の提起によってその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
出典:刑事訴訟法第254条第1項
この条文だと、「公訴の提起」によって時効が停止されると規定されています。
公訴の提起による「時効の停止」は、共犯者にされた公訴の提起についても同様です。
その条文を見てみましょう。
共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
出典:刑事訴訟法第254条第2項
共犯者の一人に対してされた公訴の提起によって、他の共犯者の公訴時効も停止します。
共犯者への公訴提起による時効の停止について、次のニュースを見てみましょう。
巡査(当時21)に火炎瓶を投げつけるなどして殺害した疑いが持たれている。地検は(略)容疑者を渋谷暴動における傷害、公務執行妨害、凶器準備集合の罪でも起訴した。共犯者として起訴された男の公判が、病気を理由に長期にわたって停止したため、刑事訴訟法の規定で時効が成立していなかった。
出典:朝日新聞デジタル(2017.6..28 14:40)
このニュースについて、公訴時効の停止を考えるために整理してみました。
共犯者の公訴の提起
▼事件の概要
共犯者Bとともに、容疑者Aが傷害事件を起こした。
▼共犯者Bの「時効の停止」の事由
B自身に、公訴の提起があったこと。
▼容疑者Aの「時効の停止」の事由
共犯者に、公訴の提起があったこと。
このような事案で、たとえば、Bに対する裁判が確定したとします。
そうすると、Bの裁判が確定した時から、Aの公訴時効は進行を再開します。
ちなみに、殺人罪については、時効が撤廃されたため、「時効の停止」は観念できません。
傷害事件の時効の年数を起算しよう|傷害致死や、時効の停止がある場合
時効の起算点
さて、これから実際に、起算日から傷害事件の時効の経過をたどってみましょう。
まず、時効の起算日について規定している条文を確認してみましょう。
時効は、犯罪行為が終った時から進行する。
出典:刑事訴訟法第253条第1項
この条文の「犯罪行為」とは、構成要件に該当する事実をいい、行為とそれから生じた結果を含むものをいいます。
犯罪行為が終った時から、一定期間を「経過」することで時効が成立します。
さっそく、事例を見ていきましょう。
傷害罪の時効の算定例
では、架空事例を使って、時効の成立を検討してみましょう。
事例
▼事案
太郎くんが、花子さんを、手拳で殴打して、加療1か月のけがを負わせた。
▼事件発生日時(犯罪が終った時)
2018年2月14日PM3:00
▼傷害事件の時効期間の年数
10年
このような傷害事件の事例では、2018年2月14日から10年を経過した時に、時効が成立します。
傷害致死罪の時効の算定例
次に、傷害致死事件の時効の成立の経過をたどります。
こちらのニュースでは、傷害致死と死体遺棄が問題になっています。
死体遺棄罪のほうは公訴時効が成立しているようです。
2カ所に計2人の遺体が埋められていた事件で、(略)被告は2007年8月ごろ、(略)胸などを素手で何度も強く殴り、死亡させたとされる。(略)死体遺棄罪は3年の公訴時効が成立している。
出典:河北新報(2018.2.8)
公訴時効の一覧表などを参考にすると、傷害致死事件の公訴時効は「20年」です。
時効の起算点は、傷害致死事件の場合、「被害者の死亡時」になります。
たとえば、このニュースで、2007年8月1日午前3時に被害者が死亡したと仮定します。
その場合、公訴時効は、2007年の8月1日から20年を経過した時に成立します。
傷害事件の慰謝料にも時効がある?民事債権の時効について
傷害事件の損害賠償の時効|時効の起算日や、時効の年数
ここまで傷害事件の公訴時効についてレポートしてきました。
ですが、傷害事件は刑事事件にとどまりません。
民事事件として、治療費や逸失利益、慰謝料などの損害賠償を求められることもあります。
酔っぱらうとケンカしてしまう人もいるかもしれませんよね。
忘年会で起きた傷害事件について、損害賠償請求訴訟が提起された事案を見てみましょう。
2013年12月、(略)居酒屋で働いていた男性(50)が忘年会に参加。2次会で同僚から非難を受け、「めんどくせえ」と言い返したところ、殴る蹴るの暴行を受けた。男性は肋骨を折るなどして3週間後に退職。殴った同僚は傷害罪で罰金30万円の略式命令を受けた。15年8月、男性は(略)と同僚に対して約177万円の賠償請求訴訟を起こした。
出典:日刊ゲンダイ(2018年4月25日)
こちらの傷害事件では、177万円の損害賠償を求められています。
この損害賠償の債権についても、「時効」があります。
時効期間の年数は、どのくらいの期間なのでしょうか。
傷害事件の損害賠償については、不法行為にもとづく損害賠償請求権が被害者側に成立します。
この不法行為による損害賠償請求権は、「被害者又はその法定代理人」が「損害及び加害者を知った時」から「三年間行使しないとき」、時効によって消滅します。
また、不法行為の時から二十年を経過したときも、債権は消滅します。
このニュースをわかりやすいようにアレンジしてみました。
あてはめ
▼事案
会社の忘年会で起きたケンカ(傷害事件)
▼被害者が損害および加害者を知った時
2013年12月30日
▼債権の時効期間の年数
3年
▼提訴
2015年8月
このような場合、2013年12月30日から起算して、3年間経過すると時効が完成します。
つまり、2016年12月29日が満了した時に時効が完成します。
でも、あるアクションをおこされてしまうと、時効が先延ばしになってしまいます。
この「あるアクション」とは、「時効の中断」です。
損害賠償の債権について「時効の中断」が生じる場合とは
「時効の中断」という制度は、公訴時効にはありませんでした。
では、この「時効の中断」とは、どのような制度なのでしょうか。
「時効の中断」とは、時効の達成に必要な期間の進行が、一定の事実の発生によって中断し、既に進行した期間が無に帰すことをいいます。
時効が中断されると振出しに戻り、中断事由の終了後に改めて時効期間が進行することになります。
時効の中断事由としては、「請求」、「差押え」、「承認」などでがあります。
時効が中断すると、それまでカウントされていた時効期間がゼロになってしまいます。
つまり、最初から時効期間の年数を数えなおさなければなりません。
例
▼事案
AがBを手拳で殴打し、加療約1か月のけがを負わせた傷害事件。
▼事件発生日
2014年3月22日
▼債権の時効期間の年数
3年
▼時効成立の予定日
2017年3月22日満了時
上のような事案で、仮に2017年3月20日に、時効中断事由が生じたとします。
そうすると、中断の事由が終了した時から、あらためて3年の時効期間がカウントされることになります。
民事上の債権の時効にも「停止」がある?
ところで、刑事事件では、「停止」という制度もありましたよね?
民事事件では、「時効の停止」はあるのでしょうか。
それでは、民事の債権の時効について、
「時効の停止」が認められる事由
を確認していきましょう。
民事事件の時効の停止事由には、次のようなものがあります。
- 未成年者又は成年被後見人と時効の停止(158条)
- 夫婦間の権利の時効の停止(159条)
- 相続財産に関する時効の停止(160条)
- 天災等による時効の停止(161条)
たしかに、刑事事件の「時効の停止」の事由とは違いますね。
また、民事事件には、「時効の中断」という制度があります。
刑事事件 | 民事事件 | |
---|---|---|
時効の中断 | なし | あり |
時効の停止 | あり | あり |
停止と中断とは、言葉遣いが似ていますが、「中断」した場合には、最初から期間を算定しなおさなければなりません。
たとえば、民事の債権の時効は3年であるところ、2年11か月目で時効が中断してしまったとします。
そうしたら、また、3年カウントし直しです。
でも、停止という制度があるのに、なぜ中断という制度も存在するのでしょうか?
それは、 民事上の債権について、時効の成立を阻止したい人が「中断」のためのアクションを起こせない場合があります。
そのような場合に、「停止」という制度が、「中断」という制度を補完という役割を果たすからです。
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今回は、「傷害事件の時効」についてまとめてみました。
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さいごに
今回は、「傷害事件の時効」についてレポートしてきました。
ひとえに傷害事件といっても、時効の年数は違いましたね。
また、民事上の債権にも時効があるようです。
傷害事件から年数がずいぶん経過したけれど、「被害届」をだされて時効直前に逮捕されるという方もいます。
逮捕後には、被害者との示談や、不起訴にむけて弁護活動を迅速に進めなければなりません。
ご不安な点がある方は、早期に弁護士までご連絡いただくことをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「傷害事件の時効」について、理解を深めていただけましたか。
傷害罪の時効については『傷害罪の時効|公訴時効、告訴・民事・慰謝料の時効は何年?』でも解説しているので、もっと知りたい!という方は見てみてくださいね。
また、傷害事件の時効についてもっと知りたい方は、関連記事も見てみてください。