逮捕と執行猶予の関係|執行猶予中に逮捕されたらまた執行猶予はつく?保釈は可能?
「執行猶予」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
執行猶予とは、簡単にいうと一定の期間刑を執行せず、その期間を無事経過することで刑を受けなくなる制度です。
つまり、懲役刑の猶予期間中は、刑務所に行かなくて済むということです。
ですが、執行猶予中にまた犯罪を犯して逮捕されてしまったらどうなるのでしょうか。
- 執行猶予が取り消されて刑務所行き?
- 再度の執行猶予がつくことはある?
- 執行猶予と保釈の関係は?
など、疑問に思うことがたくさんありますよね。
今回は「逮捕と執行猶予の関係」についてレポートしていきます!
専門的な部分は弁護士の先生に解説をお願いします。
目次
逮捕と執行猶予の関係は?
【解説】逮捕から執行猶予までの流れ
まず先に執行猶予になる流れを詳しくみていきましょう。
みなさんは逮捕後の流れをご存知ですか?
執行猶予は「刑事裁判」において言い渡されることになります。
執行猶予について詳しく解説
では執行猶予について詳しく確認してみましょう。
定義からみていきます。
刑の言渡しをした場合に、情状によりその執行を一定期間猶予し、その期間を無事経過するときは刑を受けることがなくなる制度(刑一編四章)。前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、処せられてもその執行終了後五年を経過した者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五〇万円以下の罰金に処せられたとき、及び前件で執行猶予中の者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたときに付せられ得る。猶予期間は一年以上五年以下の範囲内で定められる。
出典:有斐閣 法律用語辞典 第4版
執行猶予となるには要件を満たすことが必要なようです。
詳しくみていきましょう。
現在執行猶予中でない者に対する執行猶予については、
- ① 言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か、または50万円以下の罰金であること
- ② 酌むべき情状があること
- ③ 前に禁錮・懲役刑になったことがないか、あるとしてもその刑の執行終了(執行の免除も含む)から5年間を新たに禁錮・懲役刑に処せられることなく過ごしたこと
以上①~③の要件を満たすと執行猶予がつけられる場合があります。
懲役刑の場合、執行猶予になるためには、言い渡される刑が3年以下である必要があります。
「懲役4年」「懲役5年」の場合は執行猶予が付きません。
さらに、執行猶予になるためには、刑務所に入ったことがないか、あるとしても刑務所から出所して5年以上経過している必要があります。
ですから、刑務所から出所した直後にまた犯罪をしてしまった場合は、執行猶予が付きません。
また、現在他の犯罪で執行猶予中の方についても、再度の執行猶予がつく場合があります。
すなわち、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、
- ① その刑の全部の執行を猶予された者(保護観察に付されていない場合)が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、
- ② 情状に特に酌量すべきものがあるとき
は執行猶予がつく可能性があります。
以上、執行猶予の要件についてお伝えしました。
執行猶予がつかない場合
執行猶予がつくケースは確認できました。
逆に執行猶予が付与されないのはどのようなケースでしょうか。
刑事裁判において、執行猶予が付与されないケースは以下の通りです。
- ① 言い渡される刑が3年を超える懲役・禁錮である場合
- ② 酌むべき情状がない場合
- ③ 過去5年の間に、禁錮・懲役刑に処せられたことがある場合
以上にどれかに当てはまる場合は執行猶予は付されません。
また、現在他の犯罪で執行猶予中の場合も、上記の要件を満たさない場合は執行猶予がつきません。
以下に、執行猶予付与の要件をまとめましたのでご覧ください。
まとめ
執行猶予付与の要件
現在執行猶予中でない場合 | 現在執行猶予中の場合 | |
---|---|---|
執行猶予がつく | ①言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か、または50万円以下の罰金である ②酌むべき情状がある ③前に禁錮・懲役刑になったことがないか、あるとしてもその刑の執行終了(執行の免除も含む)から5年間をあらたに禁錮・懲役刑に処せられることなく過ごした | ①言い渡される刑が1年以下の懲役又は禁錮である。 ②情状に「特に酌量すべきもの」がある ③現在他の刑罰の「全部の執行を猶予」され、かつ保護観察がついていない。 |
執行猶予がつかない | ① 言い渡される刑が3年を超える懲役・禁錮である ② 酌むべき情状がない ③ 過去5年の間に、禁錮・懲役刑に処せられたことがある | ①言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」以外 ②特に酌量すべき情状がない ③全部の執行猶予中でない、または保護観察が付いている |
保釈と執行猶予の関係は?
「執行猶予が見込まれる場合、保釈も認められやすくなる」
と聞いたことがあるのですが、実際はどうなのでしょうか。
この点については、正確な統計があるわけではありません。
ですが一般に、執行猶予が見込まれる場合には、保釈も認められやすくなる傾向があるということはいえます。
これに対し、保釈が認められる場合に、執行猶予も認められやすいとは一概にいえません。
保釈においては、
- 権利保釈の場合には「適用除外事由があるか」
- 裁量保釈の場合には「保釈を認めることが適当か(その過程では、逃亡や証拠隠滅のおそれ、また保釈の必要性や相当性も考慮されます)」
という基準で判断されます。
これに対して、執行猶予においては、「言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か」や「酌むべき情状があるか」という基準で判断されます。
保釈と執行猶予では、判断の基準が違うということです。
そのため、保釈によって執行猶予の可能性が高まると断言はできません。
一方、執行猶予が見込めるのであれば、被告人がわざわざ逃亡や証拠隠滅をする可能性は低いものです。
そのため、執行猶予が見込めることが保釈の可能性を事実上高めている場合があるのです。
【逮捕と執行猶予Q&A】執行猶予中に逮捕!保釈は可能?etc…
Q1.執行猶予中に再犯で逮捕…また執行猶予はつく?
執行猶予が付与された全員が何事もなく執行猶予の期間を過ごすわけではありません。
中には、執行猶予中にまた犯罪をしてしまう人もいます。
こちらのニュースをご覧ください。
栃木県足利市のコンビニエンスストアで万引したとしたとして執行猶予判決を受けた(略)容疑者(略)=栃木県足利市=が判決後に群馬県内で万引した疑いで逮捕されていたことが分かった。前橋地検太田支部は窃盗罪で(略)容疑者を起訴した。(略)
(略)被告は栃木県足利市のコンビニで化粧品や食料品を万引したとして、昨年11月に宇都宮地裁足利支部で懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の有罪判決を受けていた。
出典:産経ニュース 2018.3.5 12:36
こちらは窃盗罪で懲役1年、執行猶予3年を言い渡された後に再度窃盗を行った事件です。
もし、このように執行猶予中に罪を犯した場合、以前受けた執行猶予はどうなってしまうのでしょうか。
イメージとしては執行猶予が取り消され、刑が科されてしまうようにも思えます。
実際のところ、執行猶予中に再び罪を犯してしまった場合はどうなってしまうのでしょうか。
執行猶予中に犯した罪が禁錮・懲役刑になる場合は、「再度の執行猶予」がつかない限り、前の執行猶予は必ず取り消されます。
前に受けるはずだった禁錮・懲役刑と今回の禁錮・懲役刑の刑期が合計された分、刑務所に行かなければなりません。
一方、執行猶予中に犯した罪が罰金刑になる場合は、前の執行猶予が取り消される場合と取り消されない場合とがあります。
執行猶予が取り消されなかった場合は、新たな罪について罰金を支払う必要がありますが、刑務所に収容されることはありません。
取り消されなかった場合は、前の刑についての執行猶予が依然として続きます。
そのため、執行猶予の残りの期間を無事に過ごせば、前に言い渡された刑は受けなくて済むようになります。
再度の執行猶予がつくための厳しい要件とは…
上でも確認しましたが、もう一度、再度の執行猶予が認められる要件について見ていきましょう。
「再度の執行猶予」が認められるためには、以下の①から③の厳しい要件をすべて満たす必要があります。
- ① 今回言い渡される刑が1年以下の懲役・禁錮であること
- ② 情状に特に酌量すべきものがあること
- ③ 前回の執行猶予判決に保護観察が付されていないこと
以上の要件を全て満たすと再度の執行猶予が付される場合もあります。
ですが、基本的に執行猶予中の犯罪は、厳しく処罰されます。
執行猶予がつかない懲役刑の場合、前回の懲役刑の刑期と新しい刑期を合わせた期間、刑務所に収監されることになります。
再度の執行猶予を獲得するのは容易ではありません。
もし、執行猶予中にまた事件の加害者になってしまったら…
弁護士に相談し、適切な対処の方法を聞きましょう。
最後に、「再度の執行猶予」の意味を法律用語辞典でも確認しておきます。
判決宣告の時点で執行猶予期間中である者が、その期間中に犯した罪により、再び執行猶予に付されること。一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける場合で、情状に特に酌量すべきものがある場合に認められるが、現在の執行猶予が保護観察付きである場合には、再度の執行猶予は付されない(刑二五②)。なお、再度の執行猶予期間中は常に保護観察に付される(二五の二①)
出典:有斐閣 法律用語辞典 第4版
Q2.執行猶予中に逮捕された!保釈は可能?
初犯で執行猶予が見込まれる場合、保釈も認められやすくなると上でお伝えしました。
では執行猶予中に逮捕されてしまった場合、「保釈」は同様に認められやすいのでしょうか。
再度の執行猶予は付与されるための要件が厳格です。
そのため執行猶予期間中に再犯を行い逮捕されると、基本的には実刑が見込まれます。
執行猶予の可能性が低いのですから、逃亡や証拠隠滅のおそれも高まると考えられやすいです。
よって、執行猶予中の再犯事件については、保釈が認められる可能性は低いといえます。
再度の執行猶予を獲得するためには、有利な情状を積み上げることが必要です。
そのような弁護活動によって再度の執行猶予可能性が高まれば、再犯事件においても「保釈」が認められる可能性があるでしょう。
とはいえ、再犯事件について保釈や執行猶予が認められるのは非常に難しいです。
刑事弁護に詳しい弁護士にしっかりと相談しましょう。
Q3.万引、傷害、出資法違反(闇金)、殺人で逮捕!刑事裁判に…執行猶予がつく犯罪は?
再度の執行猶予を除き、「執行猶予」になるための条件をもう一度確認しておきましょう。
- ① 言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か、または50万円以下の罰金であること
- ② 酌むべき情状があること
- ③ 前に禁錮・懲役刑になったことがないか、あるとしてもその刑の執行終了(執行の免除も含む)から5年間を新たに禁錮・懲役刑に処せられることなく過ごしたこと
以上の要件があることが先程わかりましたね。
では執行猶予がつく可能性について、具体的な罪名ごとに見ていきましょう。
刑罰:10年以下の懲役、又は50万円以下の罰金 →言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か、または50万円以下の罰金の場合、付与されることがある。 |
万引きの様な比較的軽微な犯罪でも、前科が多数あったり、被害額が大きい場合は、起訴されて正式裁判になるケースがあります。
正式裁判になるケースでは、最後に検察官から懲役刑が求刑されるのが一般的です。
窃盗(万引き)事件の場合、
- 罪を認めて反省している
- 被害弁償が済んでいる
- 正式裁判を受けるのは今回が初めてである
- 再犯防止のためクリニックに通う予定である
- 同居の家族が今後の監督を約束している
等の事情が認められれば、執行猶予付きの判決を得ることができます。
刑罰:15年以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処する →言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か、または50万円以下の罰金の場合、付与されることがある。 |
傷害事件においても、
- 素直に罪を認めて反省している
- 被害者と示談が成立し、宥恕の意思が表明されている
- 同居の家族が今後の生活を監督すると約束している
- 刑事裁判を受けるのは今回が初めてである
等の事情が認められれば、執行猶予付きの判決になる可能性があります。
続いて、出資法の金利規制違反(闇金)の場合をみてみましょう。
刑罰:5年以下の懲役、若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科 →言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮か、または50万円以下の罰金の場合付与されることがある。 |
最後に殺人罪の場合をみてみましょう。
刑罰:死刑、又は無期、若しくは5年以上の懲役 →殺人罪の法定刑は最低でも懲役5年以上であり、かなり重い犯罪です。 そのため、原則として殺人罪に執行猶予はつきません。 (※刑法68条の刑の減軽によっては執行猶予は非常に稀ですがあり得ます) |
言い渡される刑によっては執行猶予がつくこともあります。
しかし実際は、比較的軽い犯罪にしか執行猶予がつくことはありません。
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最後に一言アドバイス
逮捕と執行猶予についてお伝えしてきました。
最後に一言アドバイスをお願いします。
執行猶予中の犯罪は、厳しく処罰されます。
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