保釈条件アラカルト!身元引受人がいないと保釈されない?条件の違反や変更についてもレポート
「保釈を請求したいけど、自分は認められるのかな?」
「保釈後の生活で注意する条件はあるのかな?」
このような疑問をお持ちの方もおられると思います。
そこで、今回は・・・
- どのような条件の下で、保釈が認められるのか
- 保釈を取り消されないために、必要な条件は何か
このような保釈の条件について、レポートしていきます。
法律の解説は、アトム法律事務所の弁護士にお願いします。
今日は、保釈の条件について詳しく解説します。
保釈請求の許可を目指している方や、保釈の取消しを回避したい方は、ぜひ参考にしてくだいさいね。
目次
保釈が認められるための条件とは?
保釈には種類がある?!
ひとくちに保釈といっても、種類は一つだけではありません。
3種類の保釈があります。
保釈の種類によって、保釈が認められるための条件が異なります。
- どのような保釈があるのか
- どのような条件を満たす必要があるのか
これらの点について、確認していきましょう。
必要的保釈
まずは、ひとつめ。
必要的保釈です。
これは、刑事訴訟法89条に規定されています。
「必要的保釈」という名前からすると・・・
保釈が必要な場合ということでしょうか。
必要的保釈とは、一定の事由がなければ、必ず許可される保釈のことです。
一定の事由には、法定刑の重い犯罪や常習犯などの逃亡の可能性が高い場合や、罪証隠滅のおそれがある場合などの事由があります。
一定の例外事由に当たらなければ、保釈が必要的になるということです。
必要的保釈が認められるための条件、すなわち要件を確認していきましょう。
条文の中で書かれている事由が、必要的保釈の例外事由です。
これらに該当する場合、保釈は許可されません。
第八十九条
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
もし、必要的保釈の例外事由に該当してしまったら・・・。
そのようなケースでも、裁量保釈が認められる余地があります。
次に、裁量保釈について確認しましょう。
裁量保釈
それでは裁量保釈について見ていきましょう。
裁量保釈は、刑事訴訟法90条に規定されています。
第九十条
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
裁量保釈は裁判所が職権で認めるものです。
ですが、まったく弁護活動の余地がないわけではありません。
- 裁量保釈を認めるべき上申書の提出
- 保釈請求書の中で予備的に裁量保釈を促す記載を書き添えておく
というような対応が可能です。
義務的保釈
さいごに、義務的保釈について確認しましょう。
保釈が義務的になるということでしょうか?
義務的保釈とはどのようなものなのでしょう。
義務的保釈とは、被告人の拘束期間が不当に長くなった場合に許される保釈です。
不当に長い勾留かどうかは、事案の性質、態様、審判の難易、被告人の健康状態その他諸般の状況から、総合的に判断されます。
第九十一条第一項
勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
拘束が長くなると、保釈が義務になるというものです。
実務的には、この条文が利用されることはあまりありません。
保釈には、以上の3種類があります。
保釈請求の概要について知りたいという方は、以下のリンクも参考にしてください。
保釈制度について知りたい方はコチラもご参照ください。
保釈の具体的な事例
では、実務で利用される頻度の高い、必要的保釈と裁量保釈について、より詳しく見ていきましょう。
- 必要的保釈の例外事由の内容
- 裁量保釈が許されるケース
この2点について、解説を加えていきます。
保釈請求後に必要な「保釈の条件」のほうをすぐに知りたいという方は、あとでゆっくり読んでみてください!
必要的保釈その1(刑事訴訟法89条1号)
89条1号
まずは、89条1号について見ていきましょう。
被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
窃盗罪が、この89条1号の例外事由に該当するか考えてみましょう。
窃盗罪には、「死刑」「無期懲役」「禁固」という刑罰はありません。
窃盗罪の有期懲役については、1か月以上10年以下とされています。
89条1号では、「1年以上」の有期懲役が対象とされています。
そうすると、窃盗罪は「1か月以上」の有期懲役なので、89条1号の例外事由に該当ません。
したがって、窃盗罪は、必要的保釈の対象になります。
でも、「こんな専門的な法律解釈はムリ!」という方も多いですよね。
そのような方は、「弁護士に相談すればすぐに教えてくれますよ。
必要的保釈 | |
---|---|
89条1号の要件 | 死刑または無期もしくは1年以上の懲役若しくは禁錮 |
窃盗罪の法定刑 | 1か月以上10年以下の懲役または五十万円以下の罰金 |
必要的保釈その2(2号から6号まで)
では、1号以外の事由についても見ていきましょう。
89条2号
この2号の例外事由も、法律の専門的な解釈をしなければなりません。
でも、気になる方のために簡単にまとめておきます。
まずは、条文を見ておきましょう。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
ポイントは、次のとおりです。
- 保釈の許可の最終決定よりも前に
- 2号に規定されている犯罪について判決が宣告されたこと
この2つです。
89条3号
3号については、「常習」について争点になります。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
ここでいう「常習として」とは前科だけでなく、同種の犯罪をくり返す傾向があるかなど総合考慮されます。
89条4号
89条4号は、実務上、もっとも注目される点です。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
罪障隠滅のおそれは、手続の進行とともに減少していくといわれています。
- 被告人が保釈された後に、どんな証拠を隠そうとするのか
- それによって裁判の結果に不当な影響が及ぶのか
- 被告人は実際そのような罪証隠滅行為をする可能性があるのか
このような視点で弁護活動が進められることになるでしょう。
89条5号
事件関係者に「害を加え」又は「畏怖させる」という行為を防ぐためのものです。
この条文は、いわば、裁判のキーマンとなる人々へのお礼参りを禁止した条文です。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
「審判に必要な知識を有する者」とは、主に証人をさします。
6号
さいごに、6号です。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
6号の事由があると、保釈された後に、被告人がどこかへ行ってしまう可能性が高いと考えられています。
裁量保釈の具体例
裁量保釈が認められるケースとは、どのようなケースなのでしょうか。
裁量保釈は「身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度その他の事情」を考慮して判断されます。(略)夫に持病があり、居酒屋経営の事情があるので、認められる可能性があります。
このような事情を考慮して裁量保釈を許可するかを判断します。
必要的保釈が認められないとき、「裁量保釈」頼みということになります。
弁護士が保釈を求める上申書を提出して、保釈の必要性などを主張していくことになります。
いわゆる「保釈の条件」とは?
保釈された後に課される条件
いままで保釈が許可されるための要件を見てきました。
このほかにも、保釈には条件があります。
こんどは、保釈された後に必要な条件です。
これをいわゆる「保釈の条件」と呼びます。
刑事訴訟法93条3項の規定を見てみましょう。
第九十三条第三項
保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。
保釈の条件は、一つではありません。
- 被告人の住居を制限
- その他適当と認める条件
これらの条件が、保釈の許可に付されることになります。
保釈の条件は様々!どんな条件があるの?
では、「その他適当と認める条件」とは、どのような条件をいうのでしょうか。
どのような条件の下で、保釈が許可されたのか気になりますよね。
これは皆さんの関心事だと思います。
保釈の条件は具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
保釈の条件には、被告人の逃亡を防止したり、罪証隠滅をさせないための事項が盛り込まれます。
- 住居を変更する際は裁判所の許可を得ること
- 召喚を受けたときは出頭すること
- 逃亡や罪証隠滅と思われる行為をしないこと
- 旅行(外泊)については裁判所の許可を得ること
- 被害者や裁判員などとの接触禁止
一般的には、これらの事項が盛り込まれます。
これらの条件に違反した場合には、保釈が取り消されたり、保証金が没取されることがあります。
保釈許可決定に記載されるので、よく内容を確認しておく必要があります。
保釈には身元引受人の迎えが必要?その責任とは?
身元引受人は保釈に必須の条件か?
身元引受人は、法律にはっきりとは規定されていませんでした。
そうなると、身元引受人がいないとしても保釈は認められるはず。
しかし、身元引受人がいないと保釈されないという意見もあります。
身元引受人の存在は保釈に必須の条件なのでしょうか?
身元引受人は、保釈の必須条件とはいえません。
ですが、実務上は、身元引受人の存在は重要です。
保釈請求の際、身元引受人が身元引受書を差し入れるのが通常です。
身元引受書の中では、以下のような内容を記載します。
- 被告人に保釈許可の条件を守らせること
- 被告人を指定の期日に出頭させること
保釈後、身元引受人といっしょに生活するケースを考えてみましょう。
保釈の条件として「住居の制限」がありました。
現実的な問題として、身元引受人がいなければ、保釈後の住居が定まらない。
このような問題を解消するためにも、身元引受人がいることが重要ですね。
頼れる身内がいない場合に、身元引受人を立てることは難しいかもしれません。
ですが、刑事施設の収容されていた人を積極的に引き受ける体制を整えている会社もあるようです。
ハローワークを通じて全国の刑務所に求人案内を出し、(略)法務省の「矯正就労支援情報センター室」(受刑者の出所時期や移住予定地などの情報を一括管理する部署)が雇用条件にマッチする受刑者の情報を企業に紹介する『コレワーク』という制度も活用している。(略)社員寮がある。つまり住所を持てる。しかも3食付きだ。さらには(略)社長が身元引受人になってくれた。
出典:YAHOO!JAPANニュース(2017.11.12 10:00)
この会社では、求人票を出すだけでなく、社長が身元引受人になってくれるケースもあるようです。
身元引受人が確保できずに困ってしまう・・・。
そのようなときは担当の弁護士さんと相談して何か手立てを考えましょう!
身元引受人の責任とは
保釈のポイントとなる身元引受人。
身元引受人は、被告人の監督をするという重要な役割を担っています。
保釈制度の縁の下の力持ち的な立場にあります。
その責任も重大なのでは?!
もし、被告人が逃亡等してしまった場合に、何か責任を負うことはあるのでしょうか。
身元引受人がいるのに、被告人が逃亡してしまったようなケースでも、被告人の代わりに身元引受人が有罪判決をうけるようなことはありません。
ただ、保釈金を身元引受人が納付するケースでは、注意が必要です。
被告人の逃亡などによって、保釈金が没取されることがあります。
このような事実上の責任を身元引受人は負うことになるでしょう。
保釈の条件に違反した場合
保釈の条件に違反したらどうなるの?
保釈の条件に違反すると、保釈保証金が没取(ぼっしゅ)されてしまいます。
没取とは、国庫に帰属させる処分です。
全額を没取された場合には、全額が返還されません。
保釈金の一部だけ没取された場合は、没取されていない部分について返還されます。
それでは、関係する条文を見てみましょう。
第九十六条
① 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
(略)
五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
② 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。
第九十一条第一項
次の場合には、没取されなかつた保証金は、これを還付しなければならない。
一 勾留が取り消され、又は勾留状が効力を失つたとき。
二 保釈が取り消され又は(または) : or又は効力を失つたため被告人が刑事施設に収容されたとき。
三 保釈が取り消され又は効力を失つた場合において、被告人が刑事施設に収容される前に、新たに、保釈の決定があつて保証金が納付されたとき又は勾留の執行が停止されたとき。
保釈金が一部没取された事例
では、実際に保釈金が一部没取された事例を取り上げてみましょう。
記憶に新しいサイバー犯罪の報道。
こちら事件では、保釈金は1000万円でした。
そのうち、一部の600万円が没取されました。
インターネット上に無差別殺人や小学生襲撃の予告が書き込まれた事件(略)で、(略)被告人は(略)保釈されました。しかし、(略)保釈は取り消され、東京拘置所に勾留されました。(略)本件では、保証金1000万円のうち、600万円を没収し、残り400万円は今後返還されるとされています。
このように保釈金の一部が没取された場合には、残額は返還されます。
保釈の条件を変更することはできる?
保釈の条件を変えたい場合にはどうするの?
それでは、保釈の条件を変更することができるのでしょうか。
たとえば制限住居の変更。
保釈許可決定の通知に、次のような条項が記載されていることが多いです。
住居を変更する際は裁判所の許可を得ること
この場合には、住居の変更を裁判所に申し出て許可を得ることになります。
身元引受人の変更はできる?
身元引受人の変更もできます。
制限住居の変更のような裁判所の許可を得る旨の条件がないとしても、通常は書面を差し入れておくなどの対応をとります。
保釈条件についてわからないことは弁護士に聞こう!
今回は、保釈の条件についてレポートしてきました。
- 保釈の申請のために自分が条件を満たすのか知りたい。
- 保釈の住居制限の条件などの変更をしたい。
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さいごに一言
いかがでしたでしょうか。
保釈の条件というのは、保釈請求の要件や、保釈後に守らなければならないルールのことを示しているんですね。
保釈の条件についてのポイントは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、保釈請求をするための要件を満たすことです。
2つ目は、保釈が許可された後、その許可に付された条件を守ることです。
保釈請求の準備から保釈後まで弁護士と二人三脚でのぞむことになります。
請求の準備に時間がかかることや、信頼できる弁護士を探すためには、今すぐに動きだす必要があります。
保釈をお考えの方は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。