刑事事件の裁判所とは|刑事裁判はどの裁判所で行うの?手続きとは?
刑事事件を起こし、逮捕され、事件が起訴されると刑事裁判を受けることになります。
刑事事件の裁判所についてご存知ですか?
普段、なかなか裁判所について考える機会もないと思います。
こちらの記事で「刑事事件の裁判所」について知っていきましょう!
専門的な部分は弁護士の先生にお願いします。
もし、身近な人が刑事事件の当事者になってしまったら…
と考えると裁判所での裁判は他人事ではないですよね。
今回は刑事事件の裁判所についてくわしく解説します。
目次
刑事裁判はどこでする?|刑事事件の裁判所
刑事事件の裁判所は5種類!どこにある?
日本では、最高裁判所と4つの下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)が存在しています。
- 最高裁判所
東京都のみに置かれています。 - 高等裁判所
東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8か所の都市に置かれています。さらに、支部として別の6か所の都市にも設けられています。 - 地方裁判所、家庭裁判所
全国に50か所あり、各都道府県に置かれています。北海道は管轄区域が4つに分かれてます。
それぞれに支部と、家庭裁判所には出張所も設けられています。 - 簡易裁判所
全国に438か所設置されています。
また、特別の支部として、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所が設けられています。
それでは、それぞれの裁判所の役割について詳しくみていきましょう。
地方裁判所と簡易裁判所|主に刑事事件の第一審を管轄
原則、刑事事件の第一審を審理するのは、
- 「地方裁判所」
- 「簡易裁判所」
です。
簡易裁判所
簡易裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪や、窃盗や横領など比較的軽微な罪の刑事事件の第一審について担当します。
簡易裁判所では、
- 窃盗や常習賭博など一部の犯罪については3年以下の懲役刑
- それ以外の犯罪については、原則、罰金以下の刑罰
しか科すことができないとされています。
より重い刑罰を科すべきであると判断されたときは、地方裁判所に事件を移送することになっています。
略式手続
また、略式手続がとられた刑事事件はすべて簡易裁判所の管轄となります。
簡易裁判所の担う事件は非常に多いわけです。
そのため、簡易裁判所は5種類の裁判所の中で最多の全国438か所に存在しています。
地方裁判所
地方裁判所は簡易裁判所の管轄外の事件や、簡易裁判所から移送されてきた事件について、その第一審の審理を担当します。
支部も含めて全国に253か所存在しています。
簡易裁判所 | 地方裁判所 | |
---|---|---|
刑事訴訟における役割 | 第一審を審理 | 第一審を審理 |
管轄の事件 | 罰金以下の刑にあたる罪 一部の軽微な犯罪 | 簡易裁判所の管轄外の事件 |
科せられる刑罰 | 原則、罰金以下の刑 一部の犯罪は3年以下の懲役刑 | 制限なし |
数 | 全国438か所 | 支部を含め全国253か所 |
高等裁判所と最高裁判所|控訴、上告を審理
第一審の判決に不服がある場合には、さらに上級の裁判所に不服申し立てを行うことができます。
- 第一審に対する不服申し立てを「控訴」
- 控訴審に対する不服申し立てを「上告」
とそれぞれ呼称します。
控訴審についてよりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
高等裁判所
刑事事件において控訴(第一審に対する不服申し立て)が行われた際には、原則として高等裁判所が審理をすることになっています。
高等裁判所は全国に本庁8か所、支部6か所、合計14か所置かれています。(知的財産高等裁判所を除く)
注意
刑事訴訟において高等裁判所は控訴審を行う裁判所です。
しかし、刑法の第2章に規定される「内乱に関する罪」については、例外的に高等裁判所において第一審の審理が行われることになっています。
最高裁判所
最高裁判所は、憲法によって設置された日本における唯一かつ最高の裁判所です。
刑事訴訟においては、上告(控訴審に対しての不服申し立て)の審理を行います。
なお、言うまでもないことかもしれませんが、最高裁判所は日本全国に1か所しか設置されていません。
高等裁判所 | 最高裁判所 | |
---|---|---|
刑事訴訟における役割 | 控訴を審理 | 上告を審理 |
数 | 支部含め全国14か所* | 1か所 |
家庭裁判所|少年事件を審理
少年法上、20歳未満の人間を「少年」と呼称します。
少年が犯罪を犯した場合には、通常の刑事事件とは異なる手続きによって、審判を下すことになります。
少年事件についてよりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
家庭裁判所
家庭裁判所は、少年が犯した犯罪について審判を下す裁判所です。
家庭裁判所は人間科学や社会学、犯罪学に精通した専門スタッフを擁しており、少年の更生に関して専門的知見から判断をくだすことができます。
本庁の他、支部や出張所をふくめて、全国に330か所存在しています。
刑事事件の裁判所Q&A
Q1.刑事裁判と民事裁判の違いは?
よく、「刑事裁判」と「民事裁判」という言葉を耳にしますよね。
もしかすると混同してしまっている方も多いかもしれません。
実際はどのような違いがあるのでしょうか。
刑事裁判と民事裁判は全く違う手続きです。
刑事裁判は検察官が起訴した事件について、被告人が有罪か無罪かを決定する手続きです。
有罪とされた際には、どのような刑罰が妥当かが判断されます。
一方、民事裁判は私人間での紛争を裁判所が終局的に解決するための手続となります。
個人の間の金銭トラブルや土地の所有権についての争いなどを扱うのは「民事裁判」です。
刑事裁判では、訴える人は被害者などではなく検察官です。
刑事事件を犯してしまった場合でも、被害者から
- 「慰謝料(賠償金)を支払え」と訴えられた場合は「民事裁判」
- 検察官から訴えられた場合は「刑事裁判」
となります。
まとめ
刑事裁判と民事裁判の違い
刑事裁判 | 民事裁判 | |
---|---|---|
訴える人 | 検察官 | 原告(誰でも) |
訴えられる人 | 被告人 | 被告(誰でも) |
判決内容 | 刑罰と量刑 | 権利義務の存否など |
Q2.第一回公判はどの裁判所で行われる?
刑事事件の第一回公判はどの裁判所で行われるのでしょうか。
刑事事件の通常の第一審は、簡易裁判所か地方裁判所で行われます。
このうち、簡易裁判所で裁判できるのは
- 罰金以下の刑に当たる罪
- 「懲役又は罰金」というように選択的に罰金が定められている罪
- 窃盗罪・横領罪など裁判所法33条2項が定める罪
と決まっています。
簡易裁判所では原則として禁錮以上の刑を科すことができません。
例外的に住居侵入罪・窃盗罪・横領罪など一定の罪について懲役3年以下の刑を科すことができるにとどまります。
地方裁判所は、簡易裁判所が裁判すべき事件を含め、すべての事件について裁判することができます。
裁判所で行われる刑事事件の裁判の手続きとは?
刑事事件の裁判の流れ
裁判所のあれこれがわかりましたね!
さて、実際の裁判所では裁判はどんな流れで行われているのでしょうか。
裁判の様子ってなんとなくは想像がつきますが、くわしくはわかりませんよね。
先に第一審の刑事裁判の大まかな流れを確認しておきましょう。
刑事裁判の流れ
第一回公判
- ① 冒頭手続
人定質問、起訴状朗読、黙秘権告知、罪状認否 - ② 証拠調べ手続
検察官の冒頭陳述、証拠調べ請求、検察官の立証、被告人・弁護人の立証 - ③ 弁論手続
検察官の論告求刑、弁護人の最終弁論、被告人の意見陳述
第二回公判(約10日後)
判決言い渡し
判決までに様々なやるべきことがあるのですね。
ところで起訴後、裁判はどのタイミングで始まるのでしょうか。
第1回公判は起訴状が送られてきてから約1ヶ月後に開かれます。
事実関係が明らかで争いのない事件は1回の公判で終了することもあります。
事実関係に争いのある複雑な事件の場合は公判の時間や回数が増え、裁判が長期に渡るようです。
期間についてくわしい説明は以下の動画も参考にしてください。
①冒頭手続き
冒頭手続きは、裁判の手続きが始まってから証拠調べに入るまでの手続きのことです。
冒頭手続きは
- ① 人定質問:被告人が人違いでないか確認されます。住所・氏名・生年月日・本籍地などが聞かれる
- ② 起訴状の朗読:起訴状が読み上げられます。難しい言葉で、簡潔な事実のみ読み上げられる
- ③ 被告人が有する権利の告知:黙秘権など、被告人が有する権利や、裁判に当たって注意することが伝えられる
- ④ 罪状認否:被告人と弁護人が起訴状の罪を認めるかどうか、被告人側の言い分を主張する
といった流れになります。
罪状認否で発言した内容は、後で覆すことがほぼ不可能です。
被告人は冒頭手続きの公判期日までに弁護人としっかり打ち合わせをしておくことが大切です。
法廷の雰囲気に圧倒され、頭が真っ白になるかもしれません。
被告人は弁護人と綿密に話し合っておきたいですね。
②証拠調べ手続
証拠調べ手続は、検察官と弁護人が裁判官に対して各証拠を示す手続です。
- ① 検察官の冒頭陳述:検察官がどのような犯罪事実を立証しようとしているかの詳細を説明する
- ② 証拠調べ請求:検察官と弁護人が、裁判官に対し、立証活動の予定を説明し、証拠調べの請求を行う
裁判官は、証拠調べの請求を受けて、証拠を取り調べる必要があるのかどうかを決定する - ③ 検察官の立証・被告人・弁護人の立証:裁判官が取り調べる必要があると決定した証拠については、検察官と弁護人の立証活動により、証拠の取調べが行われる
この証拠調べ手続前までは、裁判官は証拠を一切見ていません。
裁判官の手元には検察官から提出された起訴状のみがあります。
裁判官が事前に証拠を見ないのは、予断を排除するためです。
この制度を起訴状一本主義といいます。
立証活動で有罪・無罪(一部無罪)、量刑が決まります。
よって、証拠調べ手続は極めて重要な手続となり、弁護人の弁護活動の最たるものになります。
なお証拠を調べる際は
- 「書類」を調べるときは法廷で読み上げる方法
- 「証拠物」についてはその場にいる人たちに見てもらう方法
- 「証人」の場合には証人尋問を行う方法
と、証拠の種類に応じたそれぞれの方法で証拠を調べます。
③被告人質問
どの裁判でも裁判の中で、必ず「被告人質問」が行われます。
被告人本人に話をする機会が与えられるということです。
事実に争いのある事件においては、被告人質問で被告人は裁判官に直接自分の言い分を説明します。
また、事実に争いが無い場合は事件についての謝罪や反省の気持ちを話す機会でもあります。
④弁論手続
公判も終盤に差し掛かり、次は「弁論手続」です。
弁論手続では、
- ① 検察官の論告求刑:検察官がこれまでの経緯をまとめ、検察側が最終的な意見を主張する。
法律の解釈や、求刑懲役○年との量刑についての具体的な意見も述べられる。 - ② 弁護人の最終弁論:最終弁論とは、検察官の論告・求刑に対する、弁護人の最終的な反論。
無罪(一部無罪)であることの主張や、被告人に斟酌すべき情状があることなどの情状を主張する。 - ③ 被告人の意見陳述
以上の手続きが行われます。
検察官の求刑について、裁判官はあくまで参考にするにとどまります。
裁判官ごとに量刑が均整を欠くのを防止することに役立ちます。
弁護人は、検察官の求刑を不当に重いと反論することもあります。
その場合、妥当とする刑期を主張することもあります。
最終弁論は、弁護士が被告人に有利な事情を述べることができる最後の機会です。
この最終陳述で全ての審理が終わります。
これを「結審」といいます。
最終弁論が終わると、裁判官が判決宣告期日を指定し、法廷は閉廷となります。
⑤判決の言い渡し
判決の言渡しとは、刑事裁判の結論を告げ知らせることをいいます。
判決の言い渡しは、誰でも傍聴できる公開の法廷で行われます。
裁判長が、無罪(一部無罪)、有罪(懲役3年執行猶予2年など)の結論となる主文を朗読します。
さらに、なぜそのような結論になったかの理由をくわしく説明します。
第一審の判決に納得できない場合は、高等裁判所に審理してもらいます。
その際は、判決の翌日から2週間以内に控訴する必要があります。
控訴すれば、控訴審でもう一度審理を受け直すことができます。
死刑判決を言い渡すときは、被告人や傍聴席の動揺を和らげるため、判決理由から述べ、最後に「死刑」の主文を言い渡すことも多いです。
通常の有罪判決の言い渡しは、「被告人を(懲役◯年に処する…)」と始まるのに対して、無罪判決の場合は、「被告人は(無罪…)」で始まります。
傍聴席にいる記者たちは、「を」と「は」を聞き分けただけで、ニュース速報を流すために傍聴席から出て行くこともあるそうです。
以上が刑事裁判の流れとなります。
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編集部のコメントや実際の利用者の口コミが掲載されていて参考になりますよね。
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最後にひとこと
それでは最後にひとことお願いします。
刑事事件の裁判所についての疑問は解消されたでしょうか。
もし、実際にご自身やご家族が刑事事件の当事者になってしまったら…
刑事裁判を受け、有罪になってしまうと前科がつきます。
まずは刑事裁判を回避するために不起訴を獲得することを目指しましょう。
弁護士に早めに相談することで不起訴を獲得できる可能性が格段にあがります。
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まとめ
今回は「刑事事件の裁判所」について特集しました。
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