万引きの再犯|二回目・三回目は実刑になる?執行猶予中と後に分けて解説
万引き事件の執行猶予中に、二回目・三回目と再犯を犯してしまった…
万引きは、窃盗癖やクレプトマニアといわれるような依存症を持つ方がいます。
二回目・三回目と何度も再犯を起こしてしまうことから、依存性の高さがお分かりいただけると思います。
もしも、あなたのご家族が万引きの再犯してしまったら…
「二回目は、かならず実刑…?!」
これからのことが、気がかりでたまらないと思います。
そこで本日は、「万引き事件の再犯」を軸に特集をレポートします。
- 万引きの再犯は刑期は長くなる?
- 執行猶予中、執行猶予後の再犯とは
- 万引きの再犯率を知る
- 窃盗癖から抜け出す治療施設は?
といった疑問について、詳しく調査しました!
目次
法律的な部分の解説は、万引きといった刑事事件を専門的にあつかう法律のプロをお呼びしています。
アトム法律事務所の弁護士です。
よろしくお願いします。
万引きを二回目、三回目と繰り返してしまうと一人でお悩みの方は多いです。
あなたの悩みを解決できるよう、弁護士としてできるアドバイスをしていきたいと思います。
高齢者が万引きの再犯を繰り返し、逮捕されたというニュースをよく耳にすると思います。
身近な事件だからこそ、悩みをかかえる方は多くいらっしゃることでしょう。
今後どのような対応をとっていけばいいのか…
などなど、万引きの再犯についてのギモンを徹底解明していきます。
万引き二回目・三回目の再犯なら刑期はどうなる?
万引きの再犯(二回目・三回目)、「累犯」の法律的な定義とは
万引きの再犯を深堀していく前に、まずは再犯の意味を確認しておきます。
一般的に、再犯のことを「同種犯罪を何度も繰り返すこと」だと思われている方が多いようです。
しかし…
今回の記事全体をとおして、再犯の意味として、
「再び(同種とは限らず)犯罪を犯すこと」
として定義して、解説を進めていきます。
一般的に再犯とする例
- 万引き事件をおこしたあと、万引き事件をおこす
- 万引き事件をおこしたあと、覚醒剤事件をおこす
- 強制わいせつ事件をおこしたあと、傷害事件をおこす
このようなケースを「再犯」とします。
法律面からこまかい話をします。
- 世間一般的に使用される「再犯」
- 法律で定義される「再犯」
これらは、それぞれ意味が異なります。
法律上の「再犯」は刑法56条に定められており、
第1の犯罪について懲役刑の執行を終わり若しくはその執行の免除を得た後、5年以内に更に第2の犯罪を犯し、有期懲役に処すべき場合をいいます。
刑法で定義されている、再犯(累犯)についての条文を確認しておきます。
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
出典:刑法第56条1項(再犯)
刑法は読み慣れていないと、むずかしと思います。
法律の用語辞典をみてみましょう。
広義には、初犯以後更に罪を犯すことをいうが、狭義には、刑法一編一〇章「累犯」に規定されているものを指す。
すなわち、懲役に処せられた者がその執行の終わった後五年以内に更に罪を犯し、有期懲役に処するときに、これを再犯と呼び、累犯として処断刑が加重される。
出典:有斐閣法律用語辞典第4版
さらに「罪を犯す」とありますが、この罪は同種の罪である必要はありません。
この点では、世間一般的に使用される再犯と同じですね。
法律で定義される再犯(累犯)をまとめるとこのようになります。
法律で定義される再犯
- 懲役の執行が終わった日(刑期の満了後)
- 懲役の執行の免除のあった日(刑の時効など)
これらの日の翌日から、5年以内にさらに罪を犯して有期懲役に処せられたものを再犯という
累犯(再犯)は刑期が重くなる?
再犯を犯した場合は、一般的に裁判官の心証(一般情状)によって量刑が重くなる傾向にあります。
一方で、法律で定義される再犯(累犯)では量刑について、法律で規定されています。
刑法の第57条です。
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。
出典:刑法第57条(再犯加重)
「懲役の長期の二倍以下」と規定されています。
ですが、あくまでも刑期の年数を引き上げられる上限を示しているだけです。
再犯(累犯)の場合は、かならず2倍の刑期が待ち受けているというわけではありません。
可能性として、量刑が重くなることがあるという点は覚えておいてください。
万引きは窃盗罪だった!懲役などの刑期について
万引きを二回目、三回目と繰り返してしまう「再犯」が本日のテーマです。
その再犯についてみていく前に…
万引きで有罪判決をうけると、懲役などの刑期はどのくらいになるのか気になります。
まずは、法律の基礎から学んでいきましょう。
いわゆる「万引き」は、刑法の窃盗罪にあたります。
刑法の第235条です。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第235条 (窃盗)
「他人の財物を窃取」とあります。
「他人の財物」は、人のモノということは分かります。
ですが、「窃取」ははじめて聞く言葉かもしれませんね。
法律の用語辞典を確認しておきます。
窃取とは、不法領得の意思で、占有者の意思に反してその占有を侵害し、目的物を自己(場合によっては第三者)の占有に移すことをいう。
出典:有斐閣法律用語辞典第4版
窃取を万引き行為に当てはめて考えてみます。
万引きは、お店の商品代金を払わずに持ち帰る行為をさしますね。
まさに「他人の財物を窃取」しています。
万引き行為によって、お店の方の意思に反して商品の占有を移すことになっています。
それでは、つづいて窃盗罪の刑罰についてくわしくみていきます。
窃盗罪の刑罰は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められています。
懲役は懲役刑のことで、刑務所に収監され刑務作業を強いられます。
罰金は罰金刑のことで、一定の金銭の支払いを強いられます。
万引きで有罪判決となれば、
- 10年以下の懲役刑
- 50万円以下の罰金刑
この範囲内で、判決が言い渡されます。
10年以下の懲役を言い換えてみると…
- 最短1ヶ月の懲役
- 最長10年の懲役
50万円以下の罰金を言い換えてみると…
- 最低1万円の罰金
- 最高50万円の罰金
このような範囲になります。
罰金の判決が出れば、刑務所に入ることはありません。
懲役も罰金も有罪判決なので、前科がつきます。
ポイント
万引き(窃盗罪)の刑罰
懲役刑 | 罰金刑 | |
---|---|---|
行為の内容 | 他人の財物を窃取すること | 他人の財物を窃取すること |
法定刑 | 10年以下 | 50万円以下 |
万引き(窃盗罪)についてもっとくわしい内容が知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
執行猶予中・執行猶予後、万引きの再犯(二回目・三回目)は?
【執行猶予中】万引きの再犯二回目は実刑?再度の執行猶予の可能性は?
執行猶予中に万引きの再犯を行ってしまった場合は、実刑は確実なんでしょうか。
二回目、三回目と繰り返してしまう可能性の高い万引きだから気になります。
執行猶予の可能性も気がかりです。
一般的に、執行猶予中の再犯の場合、再び執行猶予がつくための要件は非常に厳しいです。
具体的には、つぎの3つの要件を満たす必要があります。
3つの要件
- ① 言い渡される刑が1年以下の懲役・禁錮であること
- ② 特に酌量すべき情状があること
- ③ 前科について保護観察がつけられ、その期間中に再犯をしたのではないこと
一般的に、再び執行猶予がつくようになるためには、この①②③をすべて満たさなければなりません。
執行猶予中の再犯の場合は、一般的に厳しい判決が予想されます。
懲役実刑の判決となれば、執行猶予が取り消され、前の刑と合わせた期間、刑務所に入る必要があります。
もっとも、万引きの再犯の場合は、事案によっては、再度の執行猶予となり、前刑の執行猶予が取り消されないこともあります。
万引きの再犯の場合は、ほかの犯罪と比べて判決が例外的となることが多いようです。
こんな記事を見つけました。
ちょっと、ご覧ください。
万引きで有罪となり、保護観察付きの執行猶予期間中に再犯に及んだ窃盗症(クレプトマニア)の被告に、裁判所が罰金刑を選択するケースが相次いでいる。
保護観察中の再犯は懲役刑となるのが通常で、罰金刑は例外的だ。
近年、再犯防止のため依存症などの病的原因を研究する動きが進んでおり、裁判所の判断に一定の影響を与えているとの見方もある。(略)
出典:毎日新聞(2017年8月25日 15時49分)
万引き事件の執行猶予中に再犯に及んだ場合、罰金刑となるケースが相次いでいるという内容の記事です。
窃盗症、窃盗癖によって、二回目・三回目と万引きを繰り返すことを防止するには、
懲役刑ではなく別のアプローチが必要になるととらえられているようです。
万引きは、犯罪の中でも例外的な判決が下される流れがあるようです。
執行猶予中に二回目、三回目の再犯、必要的取消と裁量的取消
そもそも、執行猶予という制度が存在する理由とはなんでしょうか。
起訴猶予とは、自発的に自ら更生する機会として与えられるものです。
再犯を犯したとなれば、このような更生の機会を無視したとして、執行猶予が取り消されることがあります。
執行猶予中に再犯を犯し、有罪判決を受けた場合、
前回の執行猶予が、
- 必ず取り消される
- 取り消される可能性がある
この2つのケースがあります。
必ず取り消されるケースは「執行猶予の必要的取消し」と、言われています。
必要的取消し
刑法第26条で定義されている。
執行猶予の期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せらせ、その刑について執行猶予の言渡しがないときなど。
この場合、前に出された執行猶予は必ず取り消されることになる。
取り消される可能性があるケースは「執行猶予の裁量的取消し」と、言われています。
裁量的取消し
刑法第26条の2で定義されている。
執行猶予の期間にさらに罪を犯し、罰金に処せられたときなど。
この場合、前に出された執行猶予が取り消される可能性はあるが、取り消されないことも多い。
万引き事件を、この2つのケースに当てはめて考えると…
窃盗罪の刑罰は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定されています。
万引きの再犯で「執行猶予の言渡しがない懲役刑」を言い渡されると、前回の執行猶予は必ず取り消され、前回の分の刑も併せて執行されることになります。
これに対して、万引きの執行猶予中、暴行といった別の事件を起こして再犯をした場合に「罰金刑」を言い渡されると、前回(万引き時)の執行猶予が取り消されるかどうかは、裁判所の裁量によります。
【執行猶予後】万引きで二回目・三回目の再犯は実刑判決??
初犯の万引き事件の場合、刑事処分や量刑はどうなるのでしょうか。
事件の内容によって、異なります。
- 不起訴のケース
- 略式手続による罰金刑のケース
刑事処分はさまざまですが、初犯の場合は不起訴や罰金で収まるケースが多いようです。
一方で、事件の内容がよっぽど悪質だったりすると、
正式な裁判のケース
となる場合もあるようです。
つまり、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲内で判決がくだされることになります。
では、ここからが本題です。
執行猶予後の再犯の場合はどうなるのでしょうか。
二回目・三回目と万引きを繰り返す再犯では、懲役実刑はまぬかれないものなのでしょうか。
執行猶予付きの懲役刑を言い渡されたあとに、また万引きをしてしまった場合の量刑についてです。
▼執行猶予期間中の再犯
正式裁判になり、懲役実刑の判決を言い渡される可能性が極めて高いです。
この場合、前刑の執行猶予は取り消され、前の懲役刑と今回の懲役刑の合わせた期間、刑務所に入らなければなりません。
もっとも…
- 被害額が小さい
- 被害者と示談が成立した
- その他の考慮すべき事情がある
このような場合は、再度の執行猶予になる可能性が残っています。
再度の執行猶予が言い渡されれば、前刑の執行猶予が取り消されることも、刑務所に入ることもありません。
▼執行猶予期間終了直後の再犯
正式裁判になり、懲役実刑の判決を言い渡される可能性が極めて高いです。
もっとも、前刑の執行猶予期間はすでに終了しています。
そのため、執行猶予が取り消されることはありません。
今回の懲役刑の期間だけ、刑務所に入ることになります。
情状によっては、もう一度、執行猶予付きの判決が言い渡される可能性もあります。
▼執行猶予期間終了から数年〜10年後の再犯
再び、罰金刑で済む可能性があります。
特に、10年以上経過した前科は、それほど重たく考慮されないことも多いです。
事件の内容にもよりますが、執行猶予後に犯した再犯では経過した年数によって刑事処分の判断が変わってくるようです。
万引きの「再犯率」を知る。犯罪白書をチェック
成人の万引きの再犯率
万引き事件の再犯率は、どのくらいなのでしょうか。
法務省が刊行する「平成28年版犯罪白書」をもとに確認していきます。
まず、この犯罪白書でいう万引きの再犯率とは、「同一罪名を犯したもの」をさすとしています。
万引きの同一罪名有前科者率(万引きの成人検挙人員に占める同一罪名(窃盗)の前科を有する者の人員の比率をいう。)
出典:犯罪白書(平成28年版)第5編 第1章 第1節「2 刑法犯により検挙された成人の有前科者」
近年、同一罪名再犯者率は上昇傾向にある結果が出ているようです。
万引きの検挙数は63,972人と、窃盗事件すべての中でもずば抜けて多いです。
平成27年において、再び万引き事件を起こした再犯者率は20.9%です。
再犯率
万引きの成人検挙人員(平成27年)
検挙者数 | 同一罪名再犯者 | |
---|---|---|
窃盗罪すべて | 100,832人 | 20,401人 |
万引き | 63,972人 | 13,395人 |
こちらの法務省のホームページから、その他の年度の犯罪白書がみられます。
万引きの再犯を防止する、窃盗癖の治療施設などはある?
万引きを二回目・三回目、さらには十回目…
と繰り返し再犯を犯してしまうのが、万引きの特徴のうちの一つにあります。
窃盗癖やクレプトマニアといわれる依存症による万引きは、心の病とされています。
万引きを繰り返す人の中には、数百円のパンやおにぎりだけを万引きすることがあります。
このような方は、決してこの数百円が支払えないわけではありません。
経済的に困窮していることが理由で万引きしているとは限らないのです。
万引きの再犯の場合でも罰金刑となる傾向にあることを前述しました。
しかし、二回目、三回目…
と再犯を繰り返すせば繰り返すほどに、懲役実刑つまり刑務所に入る可能性が高くなります。
とはいっても、刑務所は窃盗癖を治療する場所ではありません。
万引きの再犯を防止するためには、窃盗癖を根本的に治療しなければなりません。
ここからは…
万引きの再犯防止の取り組みとして、治療施設のようなものがあるのか調査しました。
「厚生労働省」のホームページによれば、依存症についての対策に取り組んでいるようです。
アルコール、薬物、ギャンブルなど…
人によって依存の対象はさまざまですが、公共機関や私設団体などによって依存者へのケアの取り組みが行われています。
▼保健所
地域住民の健康・保健・医療・福祉などの相談を受け付ける公的機関です。
アルコール、薬物、ギャンブルなどの依存症や引きこもりの問題など、幅広く相談を受け付けています。
保健所は、健康に暮らしているとあまり縁のないところかもしれません。
ですが、保健所は全国各地に設置されているので、身近な存在ではないでしょうか。
まずは、お住いの地域に窃盗癖を治療するような病院・治療施設があるのか問い合わせてみるといいでしょう。
▼精神保健福祉センター
地域住民の精神的健康の保持増進・予防などの活動が主な目的の機関です。
心の健康や社会復帰についての相談、アルコール・薬物・ギャンブルなど幅広く相談を受け付けています。
精神保健福祉センターも保健所と同じように、健康に暮らしているとあまりなじみないかもしれません。
ですが、各都道府県・政令指定都市ごとに1か所以上は設置されているようです。
数は少ないですが、窃盗癖を治療するための足掛かりとして、治療施設のことなど問い合わせてみるのもいいかもしれません。
▼自助グループ・家族の自助グループ
アルコール・薬物・ギャンブルなど依存症の問題を抱えた当事者たちが、自発的に集まった団体のことです。
同じ悩みをもつ者同士で悩みを共有し、ともに治療や更生に励むことができることが特徴です。
窃盗癖、窃盗症をもつ当事者たちが集まり、依存症の克服を目指していく取り組みについての記事を見つけました。
(略)治療施設が限られる中、当事者らの自助グループが結成され、兵庫でも克服を目指すメンバーが集う。
(略)クレプトマニアの治療施設「赤城高原ホスピタル」(群馬県)によると、患者の多くは経済的な理由ではなく物を盗んでしまうという。
回復に向けて当事者同士の支え合いが効果的といい、同ホスピタルの呼び掛けで04年以降、自助グループが結成され、現在は全国に約20カ所ある。(略)
出典:神戸新聞NEXT(2016/4/14 12:15)
窃盗癖で悩む方同士で話し合うことで、お互いを励ましあいながら治療や更生に取り組むことができるのですね。
このような団体については、精神保健福祉センター・保健所・市町村などが、連絡先といった情報を提供してくれることがあります。
まずは、保健所などに問い合わせることからはじめてみましょう。
依存症対策について、もっと詳しく知りたい方は厚生労働省のホームページもあわせてご覧ください。
万引きを二回目・三回目と繰り返す再犯で悩んだら、弁護士に相談
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このような刑事事件でお悩みなら、弁護士に相談するようにしてください。
万引きの再犯といえど、各事件の内容に沿って弁護士が個別に対応していく必要があります。
すこしでも早い解決を望むのなら、弁護士への迅速な依頼がポイントとなります。
一刻も早く、弁護士を探して相談してください。