強制わいせつ罪のすべて|初犯、逮捕、懲役、示談から時効まで
2023年7月13日以降の事件は「不同意わいせつ罪」に問われます。
よくある犯罪に焦点をあて、弁護士の監修のもと徹底調査したレポートを集めた罪名ナビ。
今回は、強制わいせつ罪についての調査結果をお届けします。
強制わいせつ罪の意味や刑期、時効、逮捕の流れ、慰謝料、そして示談まで、徹底的に見ていきましょう。
目次
強制わいせつ罪とは、強制わいせつ罪の構成要件
強制わいせつ罪の定義とは
強制わいせつ罪とは、13歳以上の者に対しては、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること、13歳未満の者に対しては、暴行・脅迫を用いずともただわいせつな行為をすることによって成立する犯罪をいいます。
刑法176条は「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」と定めています。
強制わいせつ罪の構成要件とは
強制わいせつ罪の構成要件とは、強制わいせつ罪が成立するための要件のことです。
強制わいせつ罪の構成要件が認められれば、精神障害などで責任が認められないなどの特別の事情がない限り、強制わいせつ罪が成立します。
強制わいせつ罪の構成要件の判断方法は?
強制わいせつ罪の構成要件の該当性は、
- ①強制わいせつ罪の実行行為があるか、
- ②強制わいせつ罪の結果が生じたか、
- ③強制わいせつ罪の実行行為と結果との間に因果関係が認められるか、
- ④強制わいせつ罪の故意が認められるか
によって判断されます。
強制わいせつ罪の構成要件のポイント
強制わいせつ罪の保護法益は?
保護法益とは、法律が守ろうとしている利益のことです。
強制わいせつ罪の保護法益は個人の性的自由です。
強制わいせつ罪の実行行為は?
強制わいせつ罪の実行行為は、13歳以上の者に対しては、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること、13歳未満の者に対しては、暴行・脅迫を用いずともただわいせつな行為をすることです。
「暴行・脅迫」の程度としては、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度、つまり軽微な程度でよいとされています。
「わいせつな行為」とは、簡単にいうと普通の人がわいせつだと感じる行為をいいます。
裁判所は、性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ一般人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいうとしています。
具体的には、むりやり抱きつく、陰部に手を触れる、手指で弄ぶ、自分の陰部を押し当てる、女性の乳房を弄ぶなどの行為は、「わいせつな行為」とされています。
強制わいせつ罪の結果は?
強制わいせつ罪の結果は、13歳以上の者は意思に反して、13歳未満の者ならば意思に反していなくても、わいせつ行為を受けることです。
強制わいせつ罪の故意は?
強制わいせつ罪の故意があったというためには、行為がわいせつであるということの認識が必要です。
そして、一般的に、わいせつ行為を他の目的でなくわいせつ目的のために行う意図が必要と考えられています。
実際に最高裁は、女性を脅迫して裸にし、撮影した事案について、性的意図はなく、もっぱら報復、侮辱、虐待の目的で行った場合は、強制わいせつ罪は成立しないと判断しました。
しかしこれには反対の声も多く、その後の裁判例では、性的意図がなくても強制わいせつ罪の成立を認めたものもあります。
(※2017年11月29日、最高裁は1970年の最高裁判例を変更し、強制わいせつ罪の成立に「性的な意図」は必要ないとの判断を示しました。)
13歳以上が未満かという年齢による区別について、13歳以上の者を13歳未満であると勘違いしていても、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為に及んだ以上、強制わいせつ罪が成立します。
他方で、13歳未満の者を13歳以上であると勘違いして、暴行・脅迫のいずれも用いずにわいせつな行為に及んだ場合、強制わいせつ罪は成立しません。
強制わいせつ罪が未遂の場合はどうなる?
刑法で、強制わいせつ罪の未遂は罰せられると定められています(刑法180条)。
そのため、わいせつ行為に及ぼうとしたが被害者の抵抗を受けて未遂に終わった、という場合、強制わいせつ罪の未遂罪が成立し、罰せられることになります。
強制わいせつ罪と刑期
強制わいせつ罪と刑期の関係
強制わいせつ罪を犯した者は、刑法で「6月以上10年以下の懲役に処する」と定められています。
懲役とは、懲役刑のことで、強制わいせつ罪で有罪判決を受けた人物を刑務所に収監し、刑務作業を行わせる刑罰をいいます。
もっとも、刑事裁判で懲役刑が言い渡されても、加害者側に有利な事情も考慮され執行猶予になれば、直ちには刑務所に収監されないです。
執行猶予後は、社会で日常生活を送り、再び犯罪をした場合に限り、執行猶予が取り消されて刑務所に収監されることになります。
強制わいせつ罪の刑期に関するQA
強制わいせつ罪の初犯の刑期は何年?
強制わいせつ罪を犯した者は、刑法で「6月以上10年以下の懲役に処する」と定められています。
初犯の場合の刑期も、この法律の範囲内で言い渡されることになります。
実際に言い渡される刑期は、強制わいせつ罪の行為の悪質性の程度によって異なってきます。
強制わいせつ事件の行為が極めて悪質な場合は、初犯でも実刑になることがあります。
逆に、行為があまり悪質でない場合は、執行猶予がついて実刑にはならないことも多いです。
また、理論的には強制わいせつ罪が成立する場合でも、強制わいせつ罪の行為の悪質性がほとんどないケースでは、不起訴になることも考えられます。不起訴になれば、前科がつかないことになります。
強制わいせつ罪でも執行猶予になる?執行猶予になるためには?
強制わいせつ罪で起訴されて刑事裁判になっても、執行猶予になる場合があります。
刑事裁判で懲役刑が言い渡されても、執行猶予になれば、直ちには刑務所に収監されないことになります。
執行猶予とは、直ちに刑務所に収監されるのではなく、執行猶予期間中は社会で日常生活を送り、執行猶予期間内に再び犯罪を犯さなければ刑務所への収監を免除されることをいいます。
執行猶予期間中に再び犯罪を犯した場合、執行猶予が取り消されて、その取消しの時から懲役刑の刑期分刑務所に収監されます。
執行猶予になるためには、強制わいせつ事件の被害者に謝罪と賠償が尽くされ、示談が成立していることが大切です。
強制わいせつ罪と時効
強制わいせつ罪と時効の関係
強制わいせつ罪の時効は、刑事の時効と民事の時効に分けることができます。
強制わいせつ罪の刑事の時効とは、公訴時効のことです。
公訴時効とは
検察官の公訴する権限を消滅させる時効のことです。公訴時効が成立すれば、検察官は事件を起訴することができなくなります。つまり、刑事裁判は行われないということになります。
強制わいせつ罪の民事の時効とは、損害賠償請求権の消滅時効のことです。
民法724条の規定により、「事件の時」から20年間、「損害および加害者を知った時」から3年間権利を行使しないときには、その権利は消滅するとされています。
強制わいせつ罪の時効に関するQA
強制わいせつ罪の公訴時効の時効期間は何年?いつから進行する?
強制わいせつ罪の公訴時効は7年です。公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行します。
強制わいせつ罪が終わった時から7年が経過した後は、検察官は強制わいせつ事件を起訴することができないということになります。
強制わいせつ罪の民事の時効期間は何年?いつから進行する?
強制わいせつ罪の民事の賠償請求権の時効期間は3年です。
損害賠償請求権の消滅時効は損害および加害者を知った時から進行します。また、事件の時から20年という制限もあります。
強制わいせつ罪の被害者は、事件から20年以内で、損害および加害者を知った時から3年以内であれば、強制わいせつ罪の加害者に対して損害賠償を請求できるということになります。
これに対して、強制わいせつ罪の加害者は、事件から20年が経過するか、強制わいせつ罪の被害者が損害および加害者を知ったのち3年が経過すれば、損害賠償の請求を受けないということになります。
強制わいせつ罪の慰謝料の時効期間は何年?いつから進行する?
「慰謝料」は、厳密には「民事の損害賠償請求権」のうち精神的苦痛に関する部分をいいます。ただ、「慰謝料」が「民事の損害賠償請求権」と同じ意味で使われているケースも多いようです。
強制わいせつ罪の慰謝料請求権の時効期間は3年です。
慰謝料請求権の消滅時効は、被害者が損害および加害者を知った時から進行します。また、行為時から20年間という制限もあります。
強制わいせつ罪の時効については『強制わいせつ罪の時効|刑事・民事・慰謝料の時効は何年?』でも解説しているので、興味があればご覧ください!
強制わいせつ罪と逮捕
強制わいせつ罪と逮捕の関係
現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)の違いは?
強制わいせつ罪の逮捕には、大きく、①強制わいせつ罪の事件当日に逮捕される現行犯逮捕と、②強制わいせつ罪からしばらくした後に逮捕される後日逮捕(法律的には「通常逮捕」といいます)の二つのパターンがあります。
強制わいせつ罪の現行犯逮捕とは、強制わいせつ罪の当日に強制わいせつ事件の現場で逮捕されることをいいます。強制わいせつ事件が起こった「その時」「その場所」で目撃者や駆けつけた警察官によって逮捕されるのが一般的です。
現行犯逮捕された後は、強制わいせつ罪の加害者はそのまま警察署に連行されることになります。
これに対して、強制わいせつ罪の後日逮捕とは、強制わいせつ罪の逮捕状にもとづいて逮捕されることをいいます。強制わいせつ事件が起こった翌日以降に逮捕状をもった警察官によって逮捕されるのが一般的です。
強制わいせつ罪の逮捕状がいつ発行されるかは、強制わいせつ事件に対する捜査の進み具合によって異なります。
強制わいせつ罪で現行犯逮捕されるケースは?
強制わいせつ罪で現行犯逮捕されるケースの一つに、強制わいせつ罪の犯行が多くの人の前で行われている行為態様が悪質な場合があります。
強制わいせつの犯行が多くの人の見ている前で行われた場合事件では、目撃者や被害者側の関係者が警察に通報し、現場に駆けつけた警察官によって現行犯逮捕されるが駆けつける場合が少なくありません。
また、強制わいせつ罪の手段として悪質な方法を用いた場合も、現行犯逮捕されるケースが多いです。この場合に、警察官が強制わいせつ罪の行為態様が悪質だと判断すると、その場で現行犯逮捕されることがよくあります。
具体例
加害者Aは被害者Bに対して、電車内で被害者Bのパンティ内に手指を差し入れて、その陰部をもてあそぶなどしたことで現行犯逮捕された。
実際の例
加害者Aは被害者Bに対して、電車内路上で自己の陰茎を露出させ、眠っている被害者Bの頭部に陰茎を接触させた後をつけ回し抱きついたことで現行犯逮捕された。
事例
加害者Aは被害者Bに対して、電車内路上で自己の陰茎を露出させ、眠っている被害者Bの頭部に陰茎を接触させた後をつけ回し抱きついたことで現行犯逮捕された。
強制わいせつ罪で後日逮捕(通常逮捕)されるケースは?
強制わいせつ罪で後日逮捕されるケースは、強制わいせつ罪の加害者が強制わいせつ事件に関する証拠を隠滅する可能性が高いケースや、現場から逃走しているケースに多く見られます。
警察としても、軽微な強制わいせつ事件で、証拠隠滅の可能性が低いケースでは、わざわざ裁判所に対して逮捕状を請求しないのが一般的です。
この点、また、強制わいせつ罪の容疑を不合理に否認している場合や、強制わいせつ事件の共犯者が多数存在する場合にもは、「証拠を隠滅する可能性が高い」として後日逮捕されるリスクが高まります。
具体例その1
加害者Aは被害者Bに対し、無理やりわいせつ行為に及んだ。しかしその後、多数の目撃者や明確な証拠があるにも関わらず、容疑を不合理に否認Aは現場から逃走したため後日逮捕された。
具体例その2
加害者ABCは被害者Dに対し、無理やりわいせつ行為に及んだ。しかしその後、ABCの三者は今回の強制わいせつ事件を駆けつけた警察官に認めたが、事件に関して口裏合わせをして証拠を隠滅しようとしたため後日逮捕された。
強制わいせつ罪の逮捕に関するQA
逮捕されない強制わいせつ罪はある?
あります。すべての強制わいせつ罪の加害者が逮捕されるわけではありません。
強制わいせつ罪を犯してしまっても、強制わいせつ罪の行為が悪質でない場合は、逮捕されないケースも多いです。
もっとも、逮捕されない強制わいせつ罪の場合でも、被害届が受理されれば、在宅(ざいたく)のまま捜査や取り調べが行われることになります。
在宅事件の場合は、警察署の留置場で生活する必要はありません。自宅で生活することができます。
しかし、警察から呼び出しがあった場合は、その呼び出しに応じて自宅から警察署に出向き、強制わいせつ事件の捜査や取り調べに協力することが求められます。
強制わいせつ罪の逮捕条件は?
強制わいせつ罪の逮捕条件は、現行犯逮捕の場合と、後日逮捕(通常逮捕)の場合とで異なります。
現行犯逮捕の要件
強制わいせつ罪の現行犯逮捕は、基本的に、強制わいせつ事件を現に確認した者によってその現場で行われる必要があります。
現行犯逮捕できるのは、基本的にその時その場限りです。
強制わいせつ事件の現行犯逮捕は、
・目撃者
・被害者側の関係者
・現場に駆けつけた警察官
によって行われることが多いです。
後日逮捕の要件
強制わいせつ罪の後日逮捕は、裁判官が発行する逮捕状にもとづいて行われる必要があります。
逮捕状の発行を請求するのは、一般的に警察官です。
逮捕状の発行は、逮捕の理由と逮捕の必要性が認められる場合に限られます。
逮捕の理由とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことです。
逮捕の必要性とは、「被疑者が逃亡するおそれ」や「被疑者が罪証を隠滅するおそれ」があることです。
強制わいせつ罪の逮捕の流れは?逮捕までの流れは?
強制わいせつ罪の逮捕の流れは、大きく現行犯逮捕の場合と後日逮捕(通常逮捕)の場合に分けられます。
現行犯逮捕の流れ
強制わいせつ罪の現行犯逮捕の流れは、強制わいせつ事件の現場で強制わいせつ事件の直後に逮捕される点に特徴があります。
強制わいせつ事件の被害者、目撃者や現場に駆けつけた警察官が加害者を直接逮捕するのが、強制わいせつ罪の現行犯逮捕です。
現行犯逮捕された後は、そのまま警察署に連行されることになります。
①強制わいせつ事件の発生②被害者、第三者や駆けつけた警察官による現行犯逮捕③警察署への連行
後日逮捕の流れ
強制わいせつ罪の後日逮捕の流れは、逮捕状をもった警察官に逮捕される点に特徴があります。
強制わいせつ事件の加害者を後日逮捕するためには、裁判所が発行する逮捕状にもとづく必要があります。
実際の後日逮捕の現場では、警察官が強制わいせつ事件の加害者に逮捕状を示して、逮捕が執行されることになります。
①強制わいせつ事件の発生②警察官による逮捕状の請求③裁判官による逮捕状の発行④警察官による後日逮捕⑤警察署への連行
強制わいせつ罪から後日逮捕されるまでの期間は?
後日逮捕されるまでの期間に、法律上の決まりはありません。
強制わいせつ罪を犯してから後日逮捕されるまでの期間は、半年かかるケースもあり、捜査の進み具合によるところが大きいです。
単純な強制わいせつ事件の場合
単純な強制わいせつ事件で捜査がスムーズに進む場合は、強制わいせつ事件から一か月以内に後日逮捕されるケースが多いです。
複雑な強制わいせつ事件の場合
複雑な強制わいせつ事件で捜査が困難な場合は、後日逮捕までの期間が長引く傾向にあります。
特に、強制わいせつ事件の関係者が複数いるなどして捜査が難航しているケースでは、後日逮捕までの期間が長引くことになります。
複雑な強制わいせつ事件で捜査が難航している場合は、強制わいせつ事件から半年後や一年後に後日逮捕されることもあります。
強制わいせつ罪で逮捕された後の勾留期間は?
逮捕の期間
強制わいせつ罪の逮捕の期間は、72時間です。
強制わいせつ罪で逮捕されてから48時間以内に送致され、24時間以内に勾留が請求されなければ、基本的に釈放されます。
強制わいせつ罪での勾留が認められない限り、留置場で一、二泊して釈放されるというイメージになります。
勾留の期間(拘留ではありません)
強制わいせつ罪での勾留の期間は、最初は10日間、さらに10日間延長される可能性があり、強制わいせつ事件が起訴されればさらに長引くことになります。
一度勾留が決定されれば、弁護士が介入し途中で示談が成立するなどの特段の事情がない限り、最低でも10日間は警察署の留置場で生活しなければなりません。
その後、さらに10日間ほど勾留が延長される可能性があります。
さらに、強制わいせつ罪で起訴(公判請求)された場合は、その後に保釈が認められるか執行猶予判決が言い渡されるまで、ずっと留置場または拘置所で生活しなければなりません。
もし早期の釈放が必要な場合は、弁護士に積極的に動いてもらった方がよいでしょう。
弁護士が示談を成立させたり、保釈を請求することで、比較的早く留置場から釈放されるケースも多いからです。
強制わいせつ罪と懲役
強制わいせつ罪と懲役の関係
強制わいせつ罪には、懲役刑が定められています。
強制わいせつ罪の行為の態様が軽微な場合は、実刑にはならず執行猶予がつくことも多いです。
これに対して、強制わいせつ罪の行為が悪質なケースでは、懲役刑が下され、執行猶予もつかず実刑になる可能性が高いです。
そもそも懲役刑とは?
懲役刑とは、刑務所で刑務作業を負う刑罰をいいます。
強制わいせつ罪で懲役実刑となった場合は、刑務所に収監されて刑務作業を行わなければなりません。
これに対して、強制わいせつ罪で懲役刑になっても、判決で執行猶予がついた場合は、直ちには刑務所に収監されないので、刑務作業を行う必要もありません。
強制わいせつ罪の懲役に関するQA
強制わいせつ罪の懲役の相場は?
強制わいせつ罪の懲役刑の相場は、事件によってさまざまです。
強制わいせつ罪の懲役の法定刑は、刑法によって懲役10年以下と定められているため、強制わいせつ罪の懲役刑が強制わいせつ事件単体で懲役10年を超えることはないと言えます。
強制わいせつ罪の行為が悪質でない場合は、実刑にはならず執行猶予がつくことも多いです。
これに対して、強制わいせつ罪の行為が悪質な場合は、初犯であっても懲役実刑になることがあります。
強制わいせつ罪の懲役の年数は?懲役は何年?
強制わいせつ罪の懲役の年数は、刑法によって6月以上10年以下と定められています。
強制わいせつ罪で懲役実刑になるとしても、強制わいせつ罪単独であれば、刑務所に収監されるのは10年以下です。
初犯の強制わいせつ罪でも懲役実刑になる?
初犯でも懲役実刑になる可能性があります。
強制わいせつ罪の中でも、危険な凶器を使うなど行為が悪質な場合は、初犯でも懲役実刑になる可能性が高いです。
特に、強制わいせつ罪の加害者と被害者の間で示談が成立していない場合は、初犯でも懲役実刑になる可能性がより高まります。
懲役実刑を避ける方法は?
強制わいせつ事件は被害者がいる刑事事件なので、被害者と示談を成立させることがもっとも大切です。
強制わいせつ罪の被害者と示談が成立し、相手から許してもらうことができれば、初犯である点が考慮され、懲役実刑になる可能性が低くなります。
初犯の強制わいせつ罪だと執行猶予になる?
初犯の強制わいせつ罪だからといって、必ずしも執行猶予になるとは限りません。
強制わいせつ罪の初犯であることは、刑事裁判において有利に考慮されますが、強制わいせつ事件の行為が悪質な場合は、初犯でも懲役実刑になる可能性があります。
強制わいせつ罪で刑事裁判になった場合、執行猶予の可能性を高めたければ、被害者と示談を成立させることが大切です。
強制わいせつ罪の懲役の量刑判断は?
強制わいせつ罪の懲役の量刑判断では、
- ①強制わいせつ事件の結果の重大性
- ②強制わいせつ事件の行為の悪質性
- ③強制わいせつ事件の加害者と被害者との間で示談が成立しているか
などが考慮されます。
結果の重大性
強制わいせつ事件の結果が重大な場合は、執行猶予がつかず懲役実刑になる可能性が高まります。
例えば、被害者である児童に対し、そのパンツ内に手を入れて陰部をさわった強制わいせつ事件では、結果が重大と判断されることになります。
行為の悪質性
強制わいせつ事件の行為が悪質な場合は、執行猶予がつかず懲役実刑になる可能性が高まります。
例えば、被害者の頭部に自己の陰茎を接触させた強制わいせつ事件は、行為が悪質と判断されることになります。
示談の有無
強制わいせつ事件の示談が不成立な場合は、執行猶予がつかず懲役実刑になる可能性が高まります。
示談が成立しているか否かは、被害者が存在する強制わいせつ事件の刑事裁判としては、重要な量刑事情となるからです。
強制わいせつ罪と慰謝料
強制わいせつ罪の慰謝料とは
強制わいせつ罪の慰謝料とは、強制わいせつ罪によって生じた精神的損害に対する賠償金のことをいいます。
強制わいせつ罪の慰謝料の金額は、強制わいせつ罪の行為の悪質性や被害感情の強弱の程度によって異なってきます。
基本的には、行為の悪質性や被害感情の強弱の程度が高いほど金額が高額になります。
強制わいせつ罪の慰謝料に関するQA
強制わいせつ罪の慰謝料の相場は?
強制わいせつ罪の慰謝料の相場は、強制わいせつ罪によって生じた被害の程度によってさまざまです。
強制わいせつ罪は被害者の性的自由を保護法益としている規定であり、本罪における被害者の感じる被害の程度は小さくないため、慰謝料の金額は数十万~100万円に及ぶこともあります。
具体例その1
電車の中で女性の後ろから抱きついたという強制わいせつ事件で、示談金30万円を支払った。
具体例その2
道路を歩いていた女性を押し倒してわいせつな行為をしたという強制わいせつ事件で、示談金50万円を支払った。
強制わいせつ罪の慰謝料請求権の時効は?
強制わいせつ罪の慰謝料請求権の時効は、事件の時から20年、強制わいせつ罪の損害および強制わいせつ罪の加害者を知った時から3年です。
慰謝料請求権は、3年間行使しない時は、時効によって消滅するので注意が必要です。
強制わいせつ罪の慰謝料請求権の時効の進行は、請求、差押え・仮差押え・仮処分、承認によって中断します。
強制わいせつ罪の慰謝料と示談の関係は?
慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償金のことをいいます。
実際のケースでは、慰謝料を支払うことで示談が成立するケースが多いです。
しかし、慰謝料の支払いはただの義務の履行なので、慰謝料を支払ったからといって必ず示談が成立するわけではない点を理解する必要があります。
強制わいせつ罪の被害者は、強制わいせつ罪の加害者から慰謝料を受け取る権利を有します。
慰謝料の受け取りは権利の行使なので、慰謝料を受け取ったからといって必ず示談を締結しなければならないというわけではないのです。
強制わいせつ罪慰謝料と未成年者の関係は?
未成年者であっても、強制わいせつ罪の慰謝料の支払い義務を負うというのが、法律の判断です。
慰謝料の支払い義務を負わない若年者は、民法上、自分の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない者に限られます。
一般論としては、12歳から13歳未満程度と言われています。
したがって、未成年者であっても、強制わいせつ罪の慰謝料を支払う義務を負う場合があります。
未成年者に弁済の資力がない場合でも、慰謝料の支払い義務自体は負うことになるのです。
強制わいせつ罪と示談
強制わいせつ罪の示談とは
強制わいせつ罪の示談とは、強制わいせつ罪によって生じた賠償金をめぐるトラブルを、強制わいせつ罪の加害者と被害者の合意をもって解決することをいいます。
示談書の作成は、示談の成立の必要条件ではありません。
しかし、その後のトラブル(示談が成立した、しないの言い合い)を防ぐためにも、示談書を作成することが大切です。
示談成立の効果は?
強制わいせつ罪の示談が成立したということは、強制わいせつ罪によって生じた賠償金のトラブルが当事者間の合意によって解決したということを意味します。
示談が成立すれば、強制わいせつ罪の加害者は、被害者に対して、示談金を支払い、その他の示談の条件を履行する義務を負います。
強制わいせつ罪の被害者は、加害者が示談の条件を履行しない場合は、成立した示談書を証拠として、その後の民事手続きを有利に進めることができます。
加害者側の示談のメリットは?
強制わいせつ罪の示談が成立すれば、強制わいせつ罪の加害者は、その後の刑事手続きにおいて、示談が成立しなかった場合と比べて有利に取り扱われます。
特に、検察官が起訴を決める前に告訴の取消しまで含めた示談が成立した場合、加害者側の示談のメリットは大きいです。
強制わいせつ罪は、告訴取消となった場合、不起訴になる可能性が高くなります。
不起訴になれば裁判にならないので、有罪判決を受けることもなく、前科がつかないで事件が終了します。
起訴後であっても執行猶予になる可能性や刑期が短くなる可能性が高まるので、加害者側の示談のメリットは大きいです。
被害者側の示談のメリットは?
強制わいせつ罪の示談が成立すれば、強制わいせつ罪の被害者は、民事裁判などの面倒な手続きを経ることなく、賠償金を受け取ることができます。
もっとも、示談の成立と同時に賠償金を受け取らなければ、その後に加害者に逃げられてしまうリスクもあるため、注意が必要です。
加害者に逃げられてしまった場合は、賠償金を受け取るためには、示談書を証拠として民事裁判などの手続きを取る必要が出てきます。
強制わいせつ罪の示談に関するQA
強制わいせつ罪の示談金の相場は?初犯の場合の相場は?
強制わいせつ罪の示談金の相場は、ケースによってさまざまです。
初犯の強制わいせつ罪だからといって示談金が安くなることはあまりなく、強制わいせつ罪の行為の悪質性や、被害者の処罰感情によって金額が左右されることが多いです。
強制わいせつ罪の被害がそれほど重くない場合は、10万〜50万円程度の示談金でまとまるケースも多いです。
強制わいせつ罪の被害者の側としても、一定の慰謝料を貰えれば、誠意が伝わったとして満足するケースが多いからです。
これに対して、強制わいせつ罪の行為が悪質な案件に関しては、示談金が数十万円を超えることもあり、当事者の話し合いでまとまる示談においても、示談金の金額が高くなる傾向にあります。
刑事事件としての強制わいせつ罪の場合は、加害者が刑務所に入ってしまえば、いくら民事裁判で損害賠償が認められたとしても、実際に賠償金を回収するのは困難です。
賠償金の回収を重視する被害者の方には、その時点で加害者が用意できる限度の金額で示談してしまうという方もいます。
示談であれば、「示談金を実際に受け取ってから示談書を作成する」という前払いの方式を取ることが可能で、お金が回収できないリスクを回避することができるからです。
示談拒否で、強制わいせつ罪の示談に応じない場合は?
強制わいせつ罪の加害者が示談に応じない場合、被害者としては、自らが強制わいせつ罪で被った損害を取り戻すためには、自ら法的な手段を取る必要があります。
加害者側からまだ連絡がない場合は、犯罪被害者事件を取り扱う弁護士に依頼して加害者と交渉してみるのが一つの方法でしょう。
もし加害者が交渉を拒否する場合は、強制わいせつ罪で被害を被ったことを理由とした民事裁判や民事調停を起こすことも可能です。
ただし、たとえ強制わいせつ罪で被害を被った場合であっても、民事の手続きで弁護士を立てる場合は、自らで弁護士費用の大半を負担する必要が出てきます。
これに対して、強制わいせつ罪の被害者が示談に応じない場合、加害者としては、弁護士を依頼して交渉するか法的な手段を取る必要があります。
弁護士は秘密を守る義務を負っているため、弁護士から連絡をすることで被害者が警戒を解いて交渉に応じてくれる可能性があります。
弁護士から連絡をしても示談を拒否されてしまった場合、支払いたくても支払えない慰謝料を専門の施設に預ける「供託」という法的な手段をとることもあります。
強制わいせつ罪で示談不成立の場合、十分な証拠があればほぼ不起訴になることはないです。
また、起訴後であっても示談が成立すれば執行猶予になる可能性がありますが、示談不成立の場合実刑になるリスクを負うことになります。
なお、強制わいせつ罪の被害者が示談に応じない場合、加害者は、刑事手続が終わった後も、強制わいせつ罪により損害を与えたことを理由とする民事の損害賠償責任を負い続けることになります。
強制わいせつ罪で示談しない場合は?
強制わいせつ罪の示談をしない場合、強制わいせつ罪の加害者は、その後の刑事手続において、示談が成立した場合と比べて重い処罰を受けるリスクを負います。
また、強制わいせつ罪の示談をせずに刑事処罰を受けたとしても、強制わいせつ罪の加害者は、強制わいせつ罪によって相手に与えた損害につき、引き続き損害賠償責任を負い続けることになります。
これに対して、強制わいせつ罪の被害者としては、強制わいせつ罪の示談をしないで刑事手続きが終わった場合でも、引き続き、加害者に対して損害賠償を請求し続けることができます。
示談金の金額や示談の条件に納得がいかない場合は、強制わいせつ罪によって被った損害につき、民事裁判や民事調停などの法的な手続きをとって、強制わいせつ罪の加害者に賠償を求めるのも一つの方法です。
ただし、強制わいせつ罪の加害者が刑務所に入ってしまった場合は、賠償金の回収が困難なので注意が必要です。
強制わいせつ罪の示談書の書き方は?
強制わいせつ罪の示談書の書き方は、その他の犯罪における示談書の書き方と同様です。
示談書には以下の事項を盛り込むことが一般的です。
- ①事件の内容(日時、場所、当事者など)
- ②示談金の金額、支払方法
- ③被害者が加害者を許すこと宥恕条項、告訴を取り消すこと告訴取消
- ④示談書に記載されたもの以外の賠償義務がないこと清算条項
- ⑤両当事者の署名
示談書の冒頭で、強制わいせつ事件が起こった日時・場所、強制わいせつ罪の加害者と被害者の氏名などを記載して、事件の内容を特定することになります。
また、強制わいせつ罪の示談書には、示談金の金額やその支払い方法を記載します。
示談書の作成は、加害者と被害者の双方がサインをすることで完了します。
示談金の一括払いが難しい場合は、示談金の分割払いの合意を盛り込む結ぶことも可能です。
強制わいせつ罪の示談書に、「被害者は加害者のことを許す」旨の宥恕条項(ゆうじょじょうこう)を設けた場合は、その後の刑事手続きで、加害者に有利に考慮されます。
強制わいせつ罪の起訴が決まる前に、被害者が告訴取消をする旨の条項を入れられると、とりわけメリットが大きいです。
示談の内容通り、告訴を取り消してもらうことができると、強制わいせつ罪は不起訴になる可能性が高くなり、不起訴になれば、前科がつかずに事件が終了するためです。
強制わいせつ罪の示談の流れや示談の方法は?
強制わいせつ罪の示談の流れは、その他の犯罪における事件の示談の流れと同様です。
刑事事件になる前で強制わいせつ罪の加害者が被害者の連絡先を知っている場合は、当事者同士で示談の話し合いを進めることができます。
示談成立の流れとしては、
①話し合い②示談条件の確定③示談書の作成④示談金の支払い⑤示談書にサイン
という流れを経ることが多いです。
これに対して、刑事事件になった後は、強制わいせつ罪の加害者が被害者の連絡先を知らない場合は、強制わいせつ罪の示談を進めるためには、弁護士を選任する必要があります。
弁護士を選任すれば、警察官や検察官から被害者の連絡先を聞くことができるケースが多いからです。
弁護士を選任した後の示談の流れとしては、弁護士が被害者と話し合って、示談が成立することになります。
強制わいせつ罪の示談が不成立だった場合はどうなる?
強制わいせつ罪の示談が不成立の場合は、強制わいせつ罪の加害者は、その後の刑事手続において、重い処罰を課されるリスクを負います。
示談が不成立だった場合は、示談が成立している場合と比べて、強制わいせつ罪の加害者側に有利な事情が少ないからです。
なお、示談が不成立だったとしても、強制わいせつ罪によって負わせた損害の賠償を完了している場合は、その限りにおいて、強制わいせつ罪の加害者側に有利な事情として取り扱われます。
これに対して、損害の賠償も完了していない場合、強制わいせつ罪の被害者は、刑事手続きが終わった後も引き続き、加害者側に対して、強制わいせつ罪によって負った損害の賠償を請求し続けることができます。
なお、その他の示談金の相場もこちらからかんたんに確認できるようにしておきました!
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まとめ
いかがでしたか?
ここでは強制わいせつ罪について、弁護士の監修のもと、キニナル全情報を徹底調査してきました。
本記事以外で、強制わいせつ罪に関して知っておきたい情報は『強制わいせつで前科をつけずに解決するための対処法と手続きの流れ』にまとめているので、興味がある方はご覧くださいね。
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