器物損壊罪の罰金相場はいくら?|初犯・前科は罰金に影響する?
器物損壊罪で罰金になったらどうしよう…。
そんなお悩みをお持ちの方のために、ここでは器物損壊と罰金について詳しく解説していきます。
- 器物損壊罪の罰金相場。
- 初犯や前科、告訴・弁償は罰金の金額に影響するのか。
など、器物損壊と罰金にまつわる全てをお伝えしていきますよ。
器物損壊で逮捕された後の流れが知りたい方は『器物損壊で通常逮捕・現行犯逮捕されたらどうなる?』のページもあわせてご覧ください。
法的な解説は刑事事件の解決経験豊富なアトム法律事務所の弁護士にお願いしていきます。
よろしくお願いします。
器物損壊罪で有罪になれば、罰金になる可能性もあります。
罰金刑が科されたその後の手続きなど、器物損壊と罰金の全てを、具体的事例も踏まえて解説していきます。
目次
器物損壊罪では、どんな刑罰が科せられる?
器物損壊罪は刑法261条に定められています。
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
出典:刑法261条
「損壊」は物を壊すということで分かりやすいですよね。
一方、「傷害」とは人を傷つけることではありません。
他人のペットや、飼育している動物などを傷つけた場合を意味しています。
この場合の刑罰は
- 3年以下の懲役か
- 30万円以下の罰金、科料
とされています。
まず「懲役」とは、刑事施設に拘置し、刑務作業を行わせる刑罰をいいます。
「懲役」には無期と有期とがあります。
「有期懲役」は、原則として1月以上20年以下とされています。
そのため、「器物損壊罪」で科せられる懲役は、刑の加重・減軽がなければ1月以上、3年以下になります。
刑罰は事情によって上限や下限が加重、減軽されることがあります。
ここでは加重などがされていない場合を想定してお伝えします。
次に、問題の罰金と科料について確認してみましょう。
また、「科料」とは1000円以上、1万円未満の金額を納付させる刑罰です。
これらから、器物損壊罪における刑罰の上限・下限をまとめてみました。
懲役 | 罰金 | 科料 | |
---|---|---|---|
刑罰の性質 | 自由を制限 | 金銭を納付 | 金銭を納付 |
上限・下限 | 1月以上、3年以下 | 1万円以上、30万円以下 | 1000円以上、1万円未満 |
正当な理由なく他人の物を壊したり、ペットを傷つけたりすると、これらの刑罰が科せられるということですね。
次の章では、器物損壊罪の罰金に関する詳細をみていきましょう。
器物損壊の罰金の相場を紹介|初犯は影響する?
では次に、器物損壊事件で罰金となった具体的事例をみていきましょう。
数件みることで、罰金金額の相場が見えてくるかもしれません。
また、「初犯か」「前科ありか」で刑が重くなるかについても確認していきます。
罰金になった事例
事例① |
---|
▼事案:路上で、停車中の自動車のリアフェンダーを蹴って、へこませた。(損害額5万9220円) ▼前科:前科1犯 ▼刑罰:罰金10万円 |
事例② |
▼事案:マンション1階にある他人所有の消化器ポンプに、黒いスプレーを吹き付けて汚損させた。(損害額5500円) ▼前科:初犯 ▼刑罰:罰金15万円 |
事例③ |
▼事案:職業安定所で、ボードを投げつけてドアガラスを割る。(損害額3万8850円) ▼前科:前科3犯 ▼刑罰:罰金20万円 |
事例④ |
▼事案:路上で、他人の自動車に自転車を数回投げつけ、更に足で蹴って傷をつけた。(損害額61万3378円) ▼前科:前科6犯 ▼刑罰:罰金20万円 |
事例⑤ |
▼事案:電車内で女性のショートパンツを汚し、使えなくした。(損害額約5000円) ▼前科:初犯 ▼刑罰:罰金30万円 |
いかがでしょうか。
損害額と、損壊の態様、初犯か否かを考慮して決められているのが分かるのではないでしょうか。
同じような事情、事案のもとでは、同じような罰金の相場になるものと推察されます。
懲役になった事例
一方、同じ損壊でも懲役になるのは、どのような場合でしょうか。
懲役となった具体例も見てみましょう。
事例① |
---|
▼事案:他人の家の玄関窓ガラスを、レンチで割る。(損害額1万8430円) ▼前科:初犯 ▼刑罰:懲役6月、執行猶予3年。 |
事例② |
▼事案:飲食店前で、壁面ガラスを叩き割った。(損害額1万6000円) ▼前科:初犯 ▼刑罰:懲役月9月 |
事例③ |
▼事案:信用金庫のATMで、電光掲示板とバックミラーをペンチで叩き故障させる。(損害額22万7220円) ▼前科:前科17犯 ▼刑罰:懲役6月 |
事例④ |
▼事案:他人の自動車にライターで火をつけ、焼損させた。(損害額約118万円相当) ▼前科:前科1犯 ▼刑罰:懲役1年、執行猶予4年 |
事例⑤ |
▼事案:警察署内の保護室で、壁を数回蹴り、石膏ボードを割った。(損害見積額55万6500円) ▼前科:前科8犯 ▼刑罰:懲役1年、執行猶予3年。 |
初犯でも、被害額が高額だと懲役がつく可能性があることが分かりました。
また、前科を有する者が高額なものを損壊させた場合は、懲役の中でも重くなることが推察されます。
とはいえ、やはり事案・事情によって量刑は異なります。
具体的な事件で不安がある場合は、弁護士に相談しましょう。
器物損壊罪の罰金に関するQ&A
器物損壊罪の罰金に執行猶予はつく?
よく執行猶予という言葉を聞きますよね。
傷害致死罪に問われた母親(20)の裁判員裁判判決公判がさいたま地裁であり、(略)裁判長は懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役4年)を言い渡した。
出典:産経ニュース 2018.3.1 16:50
「執行猶予」とは、「刑を言渡された場合に、情状によりその執行を一定期間猶予され、その期間を無事経過するときは刑を受けることがなくなる制度」をいいます。
刑法25条以下に記載されています。
条文を具体的に見てみましょう。
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
出典:刑法25条
条文には罰金の場合も執行猶予がつけられると記載されています。
ですが、罰金に執行猶予がつけられることはほぼありません。
具体的に統計を見てみましょう。
下の表は2016年に罰金刑となった事件数と、罰金刑に執行猶予が付された事件数です。
2016年 | 数値 |
---|---|
罰金刑になった全事件 | 263,099件 |
執行猶予が付された罰金事件 | 1件 |
執行猶予率 | 0.00038% |
何と1年間を通じて1件しか、執行猶予が付されていません。
その確率0.00038%!
執行猶予がつくことはほとんどないということがお分かりになるかと思います。
器物損壊罪で罰金刑になった場合の納付方法。
器物損壊罪のおける罰金の納付方法には2つの種類があります。
罰金の納付方法
- ① 郵送される納付告知書に従い、金融機関で納付。
- ② 検察庁で直接納付。
一つは金融機関で払う方法。
もう一つは検察庁で直接払う方法です。
金策などの観点から、都合のよい方法を選びましょう。
たとえば
検察庁で直接納付する典型的な場合として、「略式起訴」が考えられます。
略式起訴は、「公判前に100万円以下の罰金又は科料を科す裁判」をするよう、検察官から起訴されるものです。
被疑者の異議がない場合に、軽微な事件を書面だけの手続きで簡潔に終結させる制度です。
略式手続であれば通常1日で手続きが終わり、命令も即日出ることになります。
裁判所が関係書類を見るだけ、かつ非公開で罰金・科料を決めてしまう点が特徴です。
裁判所で命令書を受け取り、その日のうちに検察庁で罰金を納付、刑の執行まで終了させるケースが多いようですね。
器物損壊罪の罰金を分割払いできる?
この罰金が高い場合、分割払いできれば助かりますよね。
認められるのでしょうか。
実は、検察庁に分割の申し出をしても、最初は断られることが多いようです。
「どこからかお金を借りられないのか」、などを聞かれるようですね。
実際、親戚の方から借りて支払うケースもあります。
ですが、分割が絶対に許されないわけでもありません。
事情を粘り強く説明することで、分割できる場合もあるようですね。
器物損壊罪の罰金が払えない!どうなってしまう?
罰金が払えない場合、未納についての規定が適用されます。
罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
出典:刑法18条1項
なんと罰金が払えない場合、最大で2年、労役場に入れられてしまうのです。
労役場とは
労役場とは刑務所や拘置所に併設されている施設です。
そこで軽作業をすることになりますが、1日あたりの日給はケースにより異なります。
刑の言渡し時に裁判所から告げられますが、だいたい1日5000円とされることが多いようです。
最長2年のあいだ、罰金相当額分まで働くことになります。
もっとも罰金納付のためですから、残額を支払えば、即日出ることができます。
器物損壊事件で罰金を避けることはできる?
話題のドラマタイトルにもありますが、日本では起訴をされると約99%の確率で有罪にされてしまいます。
そのため、器物損壊事件でも起訴されると高確率で罰金や懲役などが科されることになるでしょう。
日本の高い有罪率については、こちらの記事をご覧ください。
そのため、罰金などをさけるには、「そもそも起訴されない」ことが大切です。
検察官から「起訴をされない」ことを、「不起訴処分」といいます。
不起訴処分には嫌疑なし、嫌疑不明などの理由があります。
それに加え、「罪を犯したことが明白であっても、情状などから不起訴とする」起訴猶予処分が重要です。
この起訴猶予は罪を犯しても前科がつかない点がとても重要です。
実際器物損壊をし、検挙・逮捕された場合には、起訴猶予処分を目指して活動していくことになるでしょう。
その時に大切なのが、被害者との示談成立です。
「示談」とは民事上の紛争を当事者間の合意により裁判外で解決することです。
示談金の額が合意でき、支払うことができれば不起訴の可能性が高くなるでしょう。
起訴するか否かの判断に際し、損害の賠償も検察官に考慮されるためです。
また、宥恕条項を示談書に盛り込むことができるか否かも重要です。
「宥恕条項」とは、「加害者を許す、処罰を望まない」という旨の意思を記載した条項です。
宥恕条項により、被害者の処罰感情が低下したということが示せます。
被害者の処罰感情も起訴・不起訴の判断で考慮されます。
加えて、「被害届の取り下げも合意できた場合、さらに不起訴処分の可能性が高まるでしょう。
示談についての詳細はこちらの記事にもありますので、ぜひご覧ください。
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最後に一言アドバイス
では最後にアトム法律事務所の弁護士から一言お願いします。
器物損壊罪で罰金、懲役にならないためには、不起訴になることが大切です。
被害者と迅速に示談を成立させられれば、不起訴の可能性が高まります。
事件後すぐの成立なら、逮捕の回避すらできるかもしれません。
弁護士ならば、豊富な知識と経験からスムーズに示談交渉ができる可能性があります。
器物損壊事件でお困りの際は、すぐ弁護士にご相談ください。