覚せい剤取締法違反のすべてを徹底解説|その意味・時効・懲役とは?
薬物・覚せい剤取締法違反について詳しく知りたい…
と思っても、なかなか人に相談するのは難しいもこまで、「覚せい剤取締法違反の懲役」について見てきのです。
専門的でデリケートな話題ですし、友だちとの会話にもなじまないですよね^^;
そこで今回、私たち弁護士カタログの編集部は、
- そもそも覚せい剤取締法違反の意味は?
- 覚せい剤取締法違反で逮捕されたら懲役になる?
- 覚せい剤取締法違反の時効は何年?
といった疑問について、詳しく調査してみました。
法律的な部分の解説は、薬物問題に詳しいアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
- これまでの弁護活動で得た現場の感覚
- 最新の動向
を踏まえながら、覚せい剤取締法違反について解説していきます。
目次
覚せい剤取締法違反というと、どんなイメージでしょう?
芸能人が捕まって、高い保釈金をかけて釈放されるイメージ?
何年も刑務所に入るイメージ?
ここではまず、覚せい剤取締法違反の法律的な意味から確認していきましょう。
覚せい剤取締法違反とは、その構成要件は?
覚せい剤取締法違反の定義とは
覚せい剤取締法違反の定義
覚せい剤取締法違反とは、覚せい剤取締法という法律に違反することをいいます。
覚せい剤取締法では、覚せい剤に関して、
- 使用
- 所持
- 譲渡
- 譲受
- 製造
などをすることが禁止されています。
ここでいう覚せい剤とは、法律上、
- フエニルアミノプロパン
- フエニルメチルアミノプロパン
- およびその塩類等
を指します。
取引きの現場では、シャブ、スピード又はアイスなどと呼ばれることもあります。
覚せい剤取締法の保護法益
ところで、「保護法益」という言葉を聞いたことはありますか?
法律は、ある特定の行為を規制することにより、一定の利益を保護・実現しようとしています。
保護法益とは、この法律が罰則を定めてまで守ろうとしているもののことです。
覚せい剤を禁じることで、法律はどんなものを守ろうとしているのでしょうか?
覚せい剤取締法の保護法益は、覚せい剤の乱用による保健衛生上の危害の防止とされています。
覚せい剤は、身体や精神に影響があり依存性のある薬物です。
そのため、覚せい剤が濫用されると、多数の人々の身体や精神に悪影響が生じる危険が想定されます。
覚せい剤取締法は、これらの想定される危険を防止するために制定されたといえるでしょう。
そうですね。覚せい剤取締法の1条にも、このことが記載されています↓
この法律は、覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締を行うことを目的とする。
出典:覚せい剤取締法1条
定義 | 覚せい剤取締法に違反すること |
---|---|
保護法益 | 覚せい剤の乱用による保健衛生上の危害の防止 |
条文 | 1条 この法律は、覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締を行うことを目的とする。 |
覚せい剤取締法違反の構成要件とは
覚せい剤取締法違反の構成要件の判断方法
「構成要件」という言葉があります。
構成要件とは、犯罪が成立するための要件のことです。
構成要件該当性が認められると、精神障害で責任が認められない、などといった特別な事情がない限り、犯罪が成立します。
では、覚せい剤取締法違反の場合、その構成要件はどのように判断するのでしょうか?
覚せい剤取締法では、一般的に、覚せい剤の
- 輸入
- 輸出
- 所持
- 製造
- 譲渡
- 譲受
- 使用
- 施用
- 広告
が禁じられています。
覚せい剤とは、法律上、
- フエニルアミノプロパン
- フエニルメチルアミノプロパン
- およびその塩類等
を指します。
覚せい剤取締法違反のうち、多いのは所持と使用です。
覚せい剤取締法違反といえるかどうかについては、これらの要素を一つ一つ判断していくのですね。
以下ではまず、「覚せい剤」の意味から押さえていきましょう。
①覚せい剤取締法における「覚せい剤」
覚せい剤取締法違反にいう「覚せい剤」とは、具体的にどのような薬物を指すのでしょうか?
覚せい剤とは、法律上、
- フエニルアミノプロパン
- フエニルメチルアミノプロパン
- およびその塩類等
を指します。
覚せい剤は、取引の現場では
- シャブ
- スピード
- アイス
などと呼ばれることもあります。
通常、白色の粉末状で流通しており、パケと呼ばれるビニール製の小袋に入れられていることが多いです。
覚せい剤取締法を見てみると、
- これらと同様の覚せい作用があって政令で指定されているもの
- これらを含む物
なども禁止されているようです。
②覚せい剤取締法における「所持」
覚せい剤取締法では、覚せい剤の輸入、輸出や譲渡など、色々な行為が禁止されています。
しかし、覚せい剤取締法違反の中でも特に多いのは、覚せい剤の所持と使用です。
ここでは、覚せい剤の所持について見てみましょう。
覚せい剤取締法違反における所持は、法律上、事実上の実力支配関係をいうとされています。
つまり、本人の管理の及ぶ場所に保管していることです。
覚せい剤を携帯していること
は典型例ですが、それ以外にも、
- 自宅に保管しておくこと
- 車に隠しておくこと
- 他人に預けておくこと
などの行為も、「所持」に該当する可能性があります。
所持していれば覚せい剤取締法違反なのであって、その際に所持している覚せい剤の量は問われません。
③覚せい剤取締法における「使用」
覚せい剤取締法違反で、「所持」のほかに多いのは、覚せい剤の使用です。
ここでいう「使用」とは、どのような行為を指すのでしょうか。
覚せい剤取締法違反の使用は、法律上、薬品として消費する一切の行為をいいます。
- 覚せい剤を注射したり
- 炙って吸引したり
するのは典型的な「使用」ですが、他にも
- 他人に覚せい剤を注射したり
- 他人に吸引させたり
といったことも、「使用」に該当する可能性があります。
覚せい剤の使用は、尿検査で覚せい剤の陽性反応が出るかどうかが、起訴不起訴の判断の分かれ目といえます。
尿検査で陽性反応が出てしまったら、覚せい剤を「使用」したことの証拠になってしまうんですね。
④覚せい剤取締法違反における「故意」
覚せい剤取締法違反が成立するためには、故意が必要です。
故意は、ごく簡単に言うと、「わざとやった」という意味です。
覚せい剤取締法違反では、
- 「覚せい剤だとは知らなかった」
- 「シャブ、スピード、アイスと呼ばれるものが覚せい剤だとは思わなかった」
という主張がされることがあります。
しかしこれらの主張は、法律上は無意味です。
「何らかの薬物だと思っていたが、覚せい剤だとは思っていなかった」
という主張では、覚せい剤取締法違反の故意が認められる場合があります。
「断定はできないが、覚せい剤かもしれない」
という思いがあったのであれば、法律上は故意があるとして取り扱われます。
「覚せい剤かもしれない」レベルで、故意ありとされてしまうのですね。
「知らなかった」「わからなかった」では通せないようです。
覚せい剤 | フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類 |
---|---|
主な流通形態 | 白色の粉末状で、パケと呼ばれるビニール製の小袋に入れられている |
所持 | 覚せい剤を本人の管理の及ぶ場所に保管していること |
使用 | 覚せい剤を薬品として消費する一切の行為 |
覚せい剤取締法違反と刑期、有罪になったら懲役は何年?
覚せい剤取締法違反と刑期の関係
覚せい剤取締法違反と懲役刑
覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けると、刑罰はどのくらいでしょうか?
覚せい剤取締法には、原則として、
- 所持の場合は10年以下の懲役
- 使用の場合も10年以下の懲役
と規定されています。
懲役は懲役刑のことで、覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けた人を刑務所に収監し、刑務作業を行わせる刑罰です。
所持 | 使用 | |
---|---|---|
実行行為 | 覚せい剤を本人の管理の及ぶ場所に保管していること | 覚せい剤を薬品として消費すること |
懲役刑 | 一定の期間、刑務所に収監して刑務作業を行わせる刑罰 | 一定の期間、刑務所に収監して刑務作業を行わせる刑罰 |
懲役刑の長さ | 10年以下の懲役 | 10年以下の懲役 |
覚せい剤取締法違反に執行猶予はつくの?
ところで、「執行猶予」という言葉を聞いたことはありますか?
裁判で懲役刑が言い渡されても、加害者に有利な事情が考慮されて執行猶予になれば、直ちに刑務所に行くことはありません。
執行猶予になったら、社会で普通に日常生活を送ることができます。
再び犯罪を犯した場合に限り、執行猶予が取り消されて刑務所に収監されるのです。
…事件を起こしてしまった人にとっては、実に優しい制度ですよね。
執行猶予は、
- 3年以下の懲役もしくは禁錮
- 50万円以下の罰金
につくものです。
覚せい剤の所持や使用では、法定刑自体は「懲役10年以下」と重めですが、最終的に言い渡される刑罰が3年以下になれば、執行猶予をつけることはできます。
覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けても、執行猶予がつく可能性があるのです。
実刑 | 執行猶予 | |
---|---|---|
判決 | 刑事裁判で懲役刑の有罪判決を受ける | 刑事裁判で懲役刑の有罪判決を受ける |
刑務所 | 直ちに刑務所に入る | 直ちに刑務所には入らない |
覚せい剤取締法違反で有罪になったら懲役は何年?
覚せい剤取締法違反の懲役は何年?
覚せい剤を所持・使用し、覚せい剤取締法違反で有罪になると、10年以下の懲役に処せられるとのことでした。
「10年以下」というとだいぶ長いですが、最も短いと何年になるのでしょうか?
ここで、懲役刑について定めた刑法12条を見てみましょう。
懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
出典:刑法12条
有期懲役は原則として、最低1ヶ月、最長20年なんですね。
ですから覚せい剤取締法違反で懲役刑になった場合、原則として、もっとも短ければ1ヶ月の懲役ということになります。
法律には「10年以下」としか書かれていませんが、これは「1ヶ月以上10年以下」という意味なのです。
覚せい剤取締法違反の初犯の刑罰はどれくらい?
覚せい剤取締法違反の刑罰が見えてきたところで、初犯の場合の刑罰が知りたいところですね。
いくら法定刑が10年以下の懲役とはいえ、初犯だったら、刑罰も結構軽いんじゃないでしょうか…?
初犯の覚せい剤取締法違反の刑罰は、懲役1年6ヶ月に3年間の執行猶予がつくケースが多いです。
ただし、これは
- 1回の少量の使用や
- 少量の所持
の場合です。
覚せい剤の密売人などで、
- 大量に所持していた場合や
- 大量に輸入した場合
は、いくら初犯とはいえ実刑になる可能性があります。
なお、覚醒剤の初犯の刑罰については、『覚醒剤の初犯の刑罰・刑期はどれくらい?保釈金はいくら?』でも特集しているので、是非見てみてくださいね。
また、覚醒剤の再犯については『覚醒剤の再犯の刑期・刑罰にせまる|再犯は執行猶予と懲役実刑のどっち?』をご覧ください!
覚せい剤取締法違反の未遂は罰せられる?
犯罪には、既遂犯と未遂犯とがあります。
既遂犯とは、ごく簡単にいえば、犯罪を最後まで遂行した場合をいいます。
では未遂とは、どのような場合をいうのでしょう。
(未遂とは)犯罪の実行に着手したがこれを遂げない場合をいう。
出典:有斐閣 法律用語辞典 第4版
犯行を完全には遂行しなかった場合を、未遂というのですね。
覚せい剤の所持・使用の未遂も処罰されるので、注意が必要です。
覚醒剤の刑罰については『覚醒剤は懲役何年?売人や運び屋の営利目的の所持・密輸で逮捕?使用は罰金?』でも特集しているので是非見てみてくださいね。
…さてここまで、「覚せい剤取締法違反の懲役」について見てきました。
以下では、時効について見ていきます。
覚せい剤取締法違反の時効は何年?
刑事ドラマやニュースなんかを見ると、よく
「この事件はもう時効だ」
なんて言葉を耳にしますよね。
時効がきたら、もうその事件については捜査できない。
つまり犯人は自由の身、というイメージですよね?
覚せい剤取締法違反の場合、時効は何年くらいなのでしょうか?
覚せい剤取締法違反の時効とは、いわゆる公訴時効のことです。
公訴時効とは、検察官が公訴する権限を消滅させる時効のことです。
公訴時効が成立すると、検察官は事件を起訴することができなくなります。
覚せい剤の所持・使用の公訴時効は、7年です。
覚せい剤の所持・使用で検察が事件を起訴できるのは、事件から7年までということでした。
意味 | 期間が経過したら、検察官は事件を起訴することができない |
---|---|
起算点 | 犯罪行為が終わった時から進行 |
覚せい剤取締法違反の場合 | 所持・使用の場合は7年 |
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ここまで、覚せい剤取締法違反について、アトム法律事務所の弁護士と一緒にお届けしてまいりました。
でも実際に、自分が覚せい剤取締法違反の当事者だったら、自分のケースに沿った具体的なアドバイスが欲しいですよね?
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最後に、アトム法律事務所の弁護士から一言いただきましょう。
ご自身、あるいはご家族・ご友人が、薬物・覚せい剤取締法違反をしてしまった皆さん。
これからどうなるのだろう…と、不安に思っていらっしゃることでしょう。
刑事事件解決のポイントは、スピードとタイミングです。
早い段階でご相談いただくことで、弁護士としてもとれる手段が増えます。
弁護士に相談するのは、はじめは怖いかもしれませんが、弁護士に相談するメリットは大きいです。
ぜひとも積極的に弁護士相談してください。
必ずやお力になれることと思います。
まとめ
いかがでしたか?
薬物・覚せい剤取締法違反について見てきました。
当サイト「刑事事件弁護士カタログ」には、他にも役立つコンテンツが満載です。
を活用して、あなたの悩み事を解決しましょう。
弁護士は、あなたの事件を解決する心強い味方です。
薬物覚せい剤取締法違反のすべてを徹底解説|その意味・時効・懲役とは?
覚せい剤取締法違反の定義は?
覚せい剤取締法違反とは、覚せい剤取締法という法律に違反することをいいます。覚せい剤取締法では、覚せい剤に関して、①使用、②所持、③譲渡、④譲受、⑤製造などをすることが禁止されています。この取締法の目的は、覚せい剤の乱用による保健衛生上の危害の防止とされています。 覚せい剤取締法違反とは、その構成要件は?
覚せい剤取締法違反で有罪判決をうけると刑罰は?
覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けると、原則として、所持・使用どちらも10年以下の懲役と規定されています。ただし、裁判で懲役刑が言い渡されても執行猶予になれば、直ちに刑務所に行くことはありません。執行猶予は、①3年以下の懲役もしくは禁錮②50万円以下の罰金につくものです。 覚せい剤取締法違反と刑期、有罪になったら懲役は何年?
覚せい剤取締法違反に時効はある?
あります。覚せい剤の所持・使用の公訴時効は、事件から7年です。公訴時効とは、検察官が公訴する権限を消滅させる時効のことです。公訴時効が成立すると、検察官は事件を起訴することができなくなります。 覚せい剤取締法違反の時効は何年?
覚せい剤取締法違反の初犯の刑罰はどれくらい?
初犯の覚せい剤取締法違反の刑罰は、懲役1年6ヶ月に3年間の執行猶予がつくケースが多いです。ただしこれは、1回の使用量が少なかったり、少量の所持の場合です。覚せい剤の密売人などの場合、初犯でも実刑になる可能性はあります。 覚せい剤取締法違反で有罪になったら懲役は何年?