逮捕後の送致の流れ|送致の意味とは?送検、送付との違いや送致されないケースも紹介
「逮捕後に行われる送致ってなに?どんな手続き?」
「テレビでは送検って聞くけど違いは何?送致が行われないケースもあるの?」
このような疑問をお持ちの方はいませんか?
身柄送致、書類送検、送付など、メディアでは似たような言葉が飛び交っており、とても紛らわしい印象です。
今回は、
- 逮捕後に行われる送致の意味
- 送致、送検、送付の違いや書類送検と逮捕の違い
- 逮捕後に送致が行われない事例
などについて徹底解説していきます。
なお、専門的な解説は刑事事件を数多くとり扱い、送致の意味などにもくわしいアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
被疑者として逮捕されたとき、送致が行われるかどうかは重大かつ重要な事柄です。
この記事で送致の意味についてしっかりと確認し、もしものときに備えてください。
目次
逮捕後の送致の意味とは?|逮捕後48時間を期限に身柄付送致
まずは逮捕後の送致の意味について確認していきます。
被疑者の特定にいたった刑事事件においては、原則として送致が行われることになっています。
解説していきましょう。
逮捕直後の流れと送致の意味|48時間の期限とは
逮捕には、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕といった種類があります。
いずれにせよ逮捕が行われたとき、その犯罪の被疑者は警察署内の留置場に身体拘束をうけることになります。
逮捕の行われる要件などについて知りたい方はコチラの記事をごらんください。
さて、犯罪の被疑者を特定し留置場へ収監した警察ですが、実は彼らはこのまま裁判にまで関われるわけではありません。
刑事事件における警察の仕事は、あくまで被疑者の検挙や捜査なのです。
送致の意味とは?
刑事事件において、被疑者の刑事責任を追及するのは検察官の仕事です。
警察は、被疑者特定にいたった事件について、原則として検察に事件を送致します。
送致とは
警察が事件の証拠物や被疑者の身柄などを検察官に引き継ぐこと
送致が行われることにより、原則日本で唯一、被疑者の刑事責任を問える立場にある検察が事件を認知するにいたるわけです。
とくに、逮捕後に行われる送致のことを「身柄付送致」などと呼びます。
身柄付送致の期限
逮捕が行われたときには、警察は48時間以内に、事件を検察に送致します。
これは刑事訴訟法で定められた期限となります。
司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、(略)被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
出典:刑事訴訟法203条
送致の実務上の意味
なお、「検察官に引き継ぐ」とは言ってもそれは手続き上の話です。
実際には、被疑者は警察署内の留置場に拘束されたままですし、引き続き警察官による取り調べも継続されます。
送致後の流れ|勾留請求や起訴、不起訴の判断
逮捕後に行われる「身柄付送致」。
ここで身柄付送致が行われた『後』の流れについても確認していきましょう。
送致後の流れを簡単に図解すると以下のイラストのようになります。
送致の後にひかえるのは、検察による勾留請求の判断です。
送致後の流れ①勾留
送致が行われた後、検察は24時間以内に勾留請求するかしないかの判断を行います。
勾留とは
犯罪の被疑者を引き続き身体拘束する処分のこと
刑事訴訟法上、捜査の段階で勾留を行わない場合には、すぐに被疑者を釈放しなければならないと定められている。
勾留が認められる基準は刑事訴訟法で明記されており、その内容は以下の通りです。
勾留の基準
- ① 被疑者が定まった住居を持っていない
- ② 被疑者が証拠隠滅するおそれがあると認められる
- ③ 被疑者が逃亡したり、逃亡するおそれがあると認められる
実務上は、②を理由として逮捕に至ったほとんどの事件について勾留請求が行われています。
勾留の最大の日数
起訴前の段階での勾留は、最大で10日、やむを得ない場合に限りさらに10日の延長が認められます。
勾留についてよりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
検察が発した勾留請求、勾留延長請求は、事件担当の裁判官によって審査されます。
実務上は、逮捕後に検察に送致された事件のおよそ9割の事件について勾留が行われ、その中のおよそ6割の事件について勾留延長が認められます。
送致後の流れ②起訴、不起訴の判断
送致が行われたあと、警察と検察は共同して、さらに事件について捜査を進めていきます。
とくに検察にとっては、起訴、不起訴の判断を下すのに必要な情報を集めることが、第一の目標となります。
起訴とは
検察官が、
「犯罪の被疑者を裁判にかけたいと思います。裁判を開いてください」
と裁判官に訴えることを言います。
不起訴とは
被疑者について起訴せず、お咎めなしとすることを言います。
被疑者が犯行事実について認めていたとしても、本人の情状や犯行後の情況などにより、不起訴となることも多いです。
よりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
起訴、不起訴についてよりくわしく知りたい方はコチラ
ここで、刑事事件の手続きの流れをまとめてみましょう。
まとめ
刑事事件の流れ
①事件が検察に送致される |
---|
警察から検察に被疑者の身柄や証拠物が送られる。 検察が事件を認知。 |
②検察が勾留請求を行う |
引き続き身体拘束する必要があれば検察が勾留請求し、裁判官がそれを承認。 |
③勾留が認められて、被疑者を最大で20日間拘束 |
実務上、ほとんどの事件で勾留が認められる。 また勾留が認められた事件のうち、およそ6割の事件は勾留延長まで認められる。 |
④起訴、不起訴の判断 |
必要な捜査を完了し、被疑者について裁判にかけるかどうかを検察官が判断 |
逮捕後の送致と書類送検の違いとは?|送致、送検、送付の違い
巷では、この送致について「送検」や「送付」などと表現されることもあります。
さらにマスコミ界隈では「書類送検」といった言葉が使われることもあり、とかくややこしい印象です。
ここで
- 「送致」「送検」「送付」の意味の違い
- 「書類送検」と「逮捕」の違い
などについて解説していきましょう。
「送致」「送検」「送付」それぞれの意味
まず、「送致」「送検」「送付」の違いです。
送致とは
刑事訴訟法上、被疑者の身柄や事件の証拠品などを送ることを言います。
送検とは
送検は送致と同義です。
送致は刑事訴訟法上で使われている表現ですが、送検はマスコミの報道などで使われる表現です。
送付とは
刑事訴訟法の条文上、主に刑事手続きに必要な「書面」や「証拠物」などを送るときに使われる表現です。
おおかた送致と同じ意味ですが、被疑者など人の身柄を送るときには送付という言葉は使われません。
送致 | 送検 | 送付 | |
---|---|---|---|
意味 | 被疑者の身柄であったり、事件の証拠物などを送る | 送致のマスコミ用語 | 刑事訴訟法上、主に書面や証拠物等を送るときに使われる表現 |
書類送検と逮捕の違い|書類送検は長期間におよぶ?
テレビのニュースなどでは「書類送検」という言葉が使われることがあります。
送検、という言葉が入っていることからわかる通り、これはマスコミ用語です。
マスコミが書類送検というとき、それが意味していることは何なのかを紐解いていきます。
在宅事件とは?|在宅事件は期間の制限無し
「書類送検」を紐解くために、ここで「在宅事件」について触れておかなければなりません。
実は警察が認知し、被疑者の特定にまでいたった事件について、一から十まですべて逮捕が行われるわけではありません。
逮捕というのは被疑者について
- 証拠隠滅されたり
- 逃亡されたり
したら困るので、身体拘束しておくという処分に過ぎないのです。
証拠隠滅や逃亡のおそれがないときには、原則的に逮捕も行われません。
一般人が現行犯逮捕をしたときも、警察官の捜査によりこういったおそれのないことが判明したら、すぐ釈放されます。
逮捕の条件についてよりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
巷では、「逮捕されない=無罪放免」といった誤解が蔓延しています。
実際には、逮捕されないまま、警察や検察の捜査を受けて、最終的に一度も身体拘束されることのないまま有罪になるといったケースもあります。
在宅のまま刑事手続きが進んでいく態様の事件のことを「在宅事件」といいます。
平成28年のデータでは、刑事事件の全被疑者のうち逮捕が行われたのは約4割ほど。
全体の約6割の事件は、一度も逮捕が行われることなく刑事手続きが進んでいったのです。
書類送検とは?
書類送検とは「在宅事件において行われる送致」のことです。
被疑者在宅のまま、検察に事件の証拠物などが送致されたということです。
在宅事件の捜査期間
なお、在宅事件の場合、逮捕勾留が行われた事件と比べると捜査期間が長期化する傾向があります。
逮捕後に起訴されるまでの勾留の期限は、刑事訴訟法上で最大20日と明確に定められています。
しかし、在宅事件については、「○○日以内に捜査を完了して起訴しなければならない」などと法的に定められているわけではないのです。
在宅事件の場合、検察の起訴、不起訴の判断まで何か月も経過してしまうことはざらにあり、場合によっては事件の発生から年単位で待たされることもあるようです。
実務上、検察としても逮捕勾留の行われた事件を優先的に処理していくため、軽微な在宅事件については後回しにしがちだと言われています。
逮捕後、送致されないケース|釈放される条件とは
「警察に逮捕されたけど、お叱りを受けるだけで帰ってこれた」
といった話を聞いたことはないでしょうか?
たとえばヤフー知恵袋にはこのような投稿がありました。
ID非公開さん 2017/6/24 09:55:18
警察に釈放された後の呼び出しについて。
自分は先週警察に捕まったのですか、当日釈放され、帰宅しました。その際に、来週(つまり今週)の土日のどちらかに来るようにいわれました。
(略)
出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14175790644
実は、逮捕後必ず長期間身体拘束されるというわけではなく、
- 逮捕後、送致が行われず、すぐに釈放となるケース
- 逮捕後、送致は行われるものの、すぐ釈放となるケース
が存在します。
ここで触れておきましょう。
逮捕後、送致されないケース「微罪処分」
逮捕後、送致が行われずにすぐに釈放となるのは
「微罪処分」
となったときです。
微罪処分となったとき、検察に事件が送致されず、警察の取り調べの段階で刑事手続きが終了します。
微罪処分の意味|送致されず刑事手続き終了
刑事訴訟法の、検察への事件の送致にかかる条文を参照してみましょう。
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
出典:刑事訴訟法246条
あらかじめ検察官が指定している一定の犯罪について、送致の必要なしと判断されれば微罪処分となります。
送致が行われないということは、
- 起訴されることはない
- 刑事罰が科されることもない
- 前科もつかない
ということです。
微罪処分となる条件
微罪処分となる条件について明確な基準はありません。
また、検察の指定した犯罪の種類によっても条件も細かく違うようです。
ただ一般論として、以下の条件にあてはまるときには微罪処分となる可能性が高いようです。
微罪処分となる条件の一例
- 検察官が指定した犯罪である
- 被害が軽微で被害回復が行われている
- 犯行態様が悪質ではない
- 被害者が加害者に罰則を望んでいない
- 初犯
- 家族や上司などの監督者がいる
逮捕後の釈放の条件|送致後に勾留されないケース
逮捕後、送致は行われるものの、すぐ釈放となるケースもあります。
こちらは、逮捕後に勾留されなかったといった場合です。
いま一度、勾留の条件について振り返ってみましょう。
勾留の基準
- ① 被疑者が定まった住居を持っていない
- ② 被疑者が証拠隠滅するおそれがあると認められる
- ③ 被疑者が逃亡したり、逃亡するおそれがあると認められる
これらの条件にあてはまらず、勾留請求されなかったり、勾留請求が認められなかったりしたときは、すぐさま釈放されます。
釈放後は、通常の在宅事件と同じように刑事手続きが進んでいきます。
微罪処分となった場合 | 勾留されない場合 | |
---|---|---|
釈放 | 釈放される | 釈放される |
送致 | 送致されない | 送致はされる |
意味 | 微罪につき、刑事手続きを終了する。 | 勾留の条件にあてはまらなかったため釈放。 在宅事件として刑事手続きが進んでいく。 |
なお、本記事に記載したこと以外で逮捕後に知っておきたい情報は『逮捕されても人生終了じゃない!早期釈放と前科・クビ回避の方法』にまとめているので、興味がある方はご覧ください。
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ここまでアトム法律事務所の弁護士とともにお送りしました。
逮捕後の送致の意味などについて、かなり深いところまで知ることができたのではないでしょうか?
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とくに、微罪処分を獲得することができれば、その時点で刑事手続きは終了し、刑事罰を科せられたり前科がついたりする可能性もゼロになります。
少しでもお悩みのことがあるのなら、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は逮捕後の送致について解説してきました。
逮捕後の送致についてのまとめ
- 送致とは検察に被疑者の身柄や証拠物を送ることを言う
- 送検は送致のマスコミ用語であり、書類送検は在宅事件における送致のマスコミ用語である。
- 被疑者特定にいたった刑事事件は原則検察に送致されるが、微罪処分となれば送致は行われない。
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