強制わいせつの再犯は刑期が重くなる?執行猶予中と執行猶予後に分けて解説
2023年7月13日以降の事件は「不同意わいせつ罪」に問われます。
息子・夫が強制わいせつの執行猶予中に再犯を起こした…!
今回こそ懲役実刑となってしまうのか?
今後のことが、不安で仕方がないと思います。
そこで、本日は「強制わいせつ事件の再犯」と題して特集記事をお届けします。
- 強制わいせつの再犯は刑期は長くなる?
- 執行猶予中、執行猶予後の再犯とは
- 強制わいせつの再犯率を知る
- 再犯防止の取り組みとは?
このような点に注目して、詳しく調査しました!
目次
強制わいせつ事件の問題にくわしい専門家に、法律的な部分の解説をお願いしています。
アトム法律事務所の弁護士です。
強制わいせつ事件はデリケートな問題で、誰にも相談することができないという方が多いです。
弁護士としての経験にもとづいて、わかりやすく解説していきたいと思います。
よろしくお願いします。
あなたがもつ、強制わいせつの再犯につての疑問が解消できるよう、徹底的に調査しました。
それでは、レポートをはじめます!
強制わいせつの再犯とは?意味や刑罰をリサーチ
強制わいせつの再犯(累犯)、法律上の定義をしる
強制わいせつの「再犯」を詳しくみる前に、再犯とはそもそもいったい何なのか?
その意味から確認していきいます。
聞くところによれば、再犯とは一般的に…
「同種犯罪を何度も繰り返すこと」
このような認識の方が多いように聞きました。
ですが…
今回の記事全体をとおして、再犯の意味を、
「再び(同種とは限らず)犯罪を犯すこと」
このように定義して、解説していきます。
一般的に再犯とする例
- 強制わいせつ事件のあと、強制わいせつ事件をおこす
- 強制わいせつ事件のあと、覚醒剤事件をおこす
- 傷害事件のあと、盗撮事件をおこす
このようなパターンを再犯と定義し、解説を進めていきます。
厳密にいうと、
- 一般的な用語として使用する「再犯」
- 法律が定義する「再犯」
これらは、意味が異なります。
法律上の「再犯」は刑法56条に定められており、
第1の犯罪について懲役刑の執行を終わり若しくはその執行の免除を得た後、5年以内に更に第2の犯罪を犯し、有期懲役に処すべき場合のことをいいます。
刑法が定義する再犯(累犯)について、条文を確認しておきます。
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
出典:刑法第56条1項(再犯)
普通の生活では、刑法をみることなんてなかなかないですよね…
読み慣れていないと、むずかしいです。
法律用語の辞典を確認します。
広義では初回以後更に罪を犯すことをいうが、刑法に規定する再犯は、懲役に処せられた者がその執行を終わり又は執行の免除のあった日から5年内に更に罪を犯し有期懲役に処せられるべきときとされる。
出典:有斐閣法律学小辞典 第5版
「更に罪を犯すこと」とは、同じ罪である必要はありません。
一般的な用語として使用される再犯と同じですね。
では、法律が定義する再犯(累犯)をまとめてみます。
法律が定義する再犯
- 懲役の執行が終わった日(刑期の満了後)
- 懲役の執行の免除のあった日(刑の時効など)
これらの日の翌日から5年以内に、さらに罪を犯し有期懲役に処せられたものを再犯という
累犯(再犯)は刑期が重くなるの真相
再犯となれば一般的に、裁判官の心証(一般情状)によって量刑が重くなる傾向にあります。
一方で、法律が定義する再犯(累犯)の量刑は、刑法で規定されています。
刑法第57条をみてみましょう。
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。
出典:刑法第57条(再犯加重)
「懲役の長期の二倍以下」という点に注目してください。
これはあくまでも、刑期の年数を引き上げることができる上限を示しているだけです。
再犯(累犯)は、絶対に二倍の刑期になるというわけではありません。
可能性として、量刑が重くなることがあるということをおさえておきましょう。
強制わいせつはどんな刑罰になる?懲役などの刑期について
そもそも、強制わいせつで有罪判決がくだされると、どのような刑罰をうけるのでしょうか。
懲役など、どのくらいの刑期が待ち受けているのか気になります。
「再犯」を知る前に、まず強制わいせつの基本からレポートしていきます。
刑法の第176条です。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
出典:刑法第176条
「わいせつな行為」について裁判所は、
性欲を刺激・興奮または満足させ、かつ一般人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為
このような行為が、わいせつ行為であるとしています。
人によって、わいせつな行為の線引きがさまざまだと思いますがカンタンにいえば、
普通の人が、わいせつだと感じる行為
をさすと考えればいいでしょう。
具体例をのべるとするなら…
わいせつ行為の例
相手が嫌がっているのに、以下の行為を強引に行う行為。
- 抱きつく
- 陰部をさわる、手指でもてあそぶ
- 自分の陰部を押し当てる
- 女性の乳房をもてあそぶ
このような行為が、「わいせつな行為」とされています。
強制わいせつ罪を理解するうえで、ほかにも重要な点があります。
- 13歳以上または13歳未満
- 暴行又は脅迫
この点がポイントとなります。
「暴行・脅迫」を用いてわいせつな行為をする相手と示しているのは、被害者が13歳以上の者の場合です。
被害者が13歳未満の者である場合は、「暴行・脅迫なし」でもわいせつな行為をすれば、強制わいせつ罪になります。
強制わいせつ罪は、「6月以上10年以下の懲役」の刑罰と定められています。
「暴行・脅迫」の線引きも、人によって感じ方が違うと思います。
法律的には、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度としています。
つまり、軽微な程度の暴行・脅迫でよいとされています。
強制わいせつ罪で有罪判決を受けると、
6月以上10年以下の懲役刑
この範囲内で、判決が言い渡されることになります。
罰金刑の規定はありません。
懲役は、有罪判決ですので前科がつきます。
ポイント
強制わいせつの刑罰
懲役刑 | 罰金刑 | |
---|---|---|
刑の内容 | 刑務所に収監されて刑務作業を強いられる | 一定の金銭の支払いを強いられる |
法定刑 | 6ヶ月以上10年以下 | 規定なし |
強制わいせつについてさらにくわしく内容が知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
強制わいせつの再犯、執行猶予中・執行猶予後でちがいはある?
【執行猶予中】強制わいせつの再犯はかならず実刑?再度の執行猶予の見込みは?
執行猶予中に、強制わいせつの再犯をおこしてしまった場合は、実刑は確定なのでしょうか。
再度の執行猶予の見込みもあるのか知りたいと思います。
一般的に、執行猶予中の再犯の場合、再び執行猶予がつくためには非常に厳しい要件が必要となります。
具体的には、つぎの要件3つを満たす必要があります。
必要な3つの要件
- ① 言い渡される刑が1年以下の懲役・禁錮であること
- ② 特に酌量すべき情状があること
- ③ 前科について保護観察がつけられ、その期間中に再犯をしたのではないこと
再び執行猶予がつくようになるには、この①②③のすべてを満たす必要があります。
執行猶予中の再犯は、一般的に厳しい判決が予想されます。
懲役実刑の判決がくだされれば、執行猶予が取り消され、前の刑と合わせた期間、刑務所に入る必要があります。
執行猶予中の強制わいせつ事件でも、懲役1年以下なら、理論的には再度の執行猶予が付く可能性が残っています。
非常に厳しい要件が必要となりますが、執行猶予がつく見込みはあるのですね。
執行猶予中におこした再犯…必要的取消・裁量的取消のちがい
そもそも、執行猶予とはなんでしょうか。
執行猶予つきの判決がでれば、懲役刑が言い渡されても直ちに刑務所に入る必要はありません。
執行猶予は、自発的に更生する機会として与えられます。
そのような機会を与えられたのに、再犯を犯したとなれば、執行猶予が取り消されることがあります。
執行猶予中に再犯をおこし、有罪判決がくだされた場合、
前回の執行猶予が、
- 必ず取り消される
- 取り消される可能性がある
この2つのケースがあります。
必ず取り消されるケースを、「執行猶予の必要的取消し」と言っています。
刑法の第26条で定義されています。
必要的取消し
執行猶予中にさらに罪を犯して「禁錮以上の刑」に処せらせ、その刑について「執行猶予の言渡しがない」ときなど。
このような場合、前に出された執行猶予は必ず取り消されることになる。
取り消される可能性があるケースを、「執行猶予の裁量的取消し」と言っています。
刑法の第26条の2で定義されています。
裁量的取消し
執行猶予中にさらに罪を犯し、「罰金」に処せられたときなど。
このような場合、前に出された執行猶予が取り消される可能性はあるが、取り消されないことも多い。
2つのケースに、強制わいせつ事件を当てはめて考えてみます。
強制わいせつ罪の刑罰は、「6月以上10年以下の懲役」でしたね。
罰金の可能性はありません。
つまり、強制わいせつ罪の再犯で「執行猶予の言渡しがない懲役」刑を言い渡された場合は、
前回の執行猶予は必ず取り消され、前回の分の刑も併せて執行されることになります。
【執行猶予後】強制わいせつ、二回目・三回目の再犯…かならず実刑??
初犯の強制わいせつ事件の場合、事件の内容によって量刑が異なります。
痴漢事件で、強制わいせつ罪に問われたときは執行猶予がつく可能性が高いようです。
しかし、悪質な場合は懲役実刑になることもあるようです。
強制わいせつ罪は、罰金刑の規定がないので、起訴されると必ず刑事裁判が開かれます。
- 示談が成立している
- 被害者の許しがある
このような場合は、不起訴になる見込みもあります。
では、ここから本題にはいります。
執行猶予後の再犯の場合はどうなるのでしょうか。
二回目、三回目といった強制わいせつの再犯では、懲役実刑となってしまうのでしょうか。
強制わいせつの刑事処分について、再犯のタイミングごとに解説していきます。
▼執行猶予中の再犯
強制わいせつの有罪判決で執行猶予中の者が再び強制わいせつをしてしまった場合は、起訴され刑事裁判になったら、まず確実に懲役実刑の判決が下されます。
懲役実刑の判決を避けるためには、起訴される前の捜査段階で、被害者と示談を締結し、告訴を取り消してもらう必要があります。
強制わいせつ罪は、法改正により2017年から非親告罪となりました。
しかしながら、実務上は、被害者との示談が成立し被害者が告訴を取り消して起訴を望まないケースでは、不起訴処分とする運用が定着すると思われます。
刑事裁判で懲役実刑の判決が下された場合は、前刑の執行猶予は取り消され、今回の刑と前回の刑を合わせた期間、刑務所に入る必要があります。
▼執行猶予期間終了直後の再犯
起訴前の捜査段階で示談が成立し、告訴が取り消されない限り、刑事裁判になって実刑判決が下される可能性が高いです。
執行猶予期間が終了していても、期間終了後間もない再犯の場合は、厳しく処罰される傾向にあるからです。
もっとも、この場合はすでに前刑の執行猶予期間は終了しているため、前刑の執行猶予が取り消されることはありません。
今回、言い渡された刑の期間だけ刑務所に入れば刑期をまっとうしたことになります。
▼執行猶予期間終了から10年後の再犯
起訴され刑事裁判になったとしても、再び執行猶予になる可能性が残っています。
とくに、被害者と示談が成立し、被害者から「許す」意思が表明されているケースでは、軽い処分・処罰が期待できます。
刑事処分の結果は、再犯をしたタイミングで変わってくるようですね。
【犯罪白書】強制わいせつの再犯率を見る
成人における強制わいせつの再犯率を探る
強制わいせつ事件の再犯率は、どのくらいになるのでしょうか。
法務省が発表した「平成27年版犯罪白書」をもとに確認していきたいと思います。
強姦・強制わいせつの成人検挙人員の前科者率が報告されています。
平成7年~平成26年にかけて多少の増減はあるものの、同一罪種の前科をもつものの犯行はほぼ横ばいとなっています。
平成26年において強制わいせつの再犯者率は約 8.1%です。
再犯率
強制わいせつの成人検挙人員(平成26年)
検挙者数 | 同一罪名再犯者 | |
---|---|---|
刑法犯すべて | 202,754人 | 31,043人 |
強制わいせつ | 2,293人 | 185人 |
他の犯罪についてもくわしくみたい方は、こちらの法務省のホームページから犯罪白書をご覧ください。
強制わいせつ事件など刑法犯罪の再犯防止に求められること
「再犯の防止等の推進に関する法律」が、平成28年12月に公布、施行されました。
この法律は、国や地方公共団体、さらには民間団体とが連携し、犯罪をした者への指導・支援に当たり「再犯」を防止することが目的です。
強制わいせつ事件にかぎらず、すべての犯罪の再犯を防止するためには、刑罰を与える以外のアプローチも必要になります。
すべての人が再犯を犯すわけではありません。
ですが、刑務所から出所した後の環境がどうあるかが、その後の再犯防止に大きく影響するようです。
再犯防止に大切であると考えられているのが…
- 「居場所」
- 「出番(仕事)」
これらがない場合、社会からの疎外感・孤立感が起因して再犯を起こす可能性が高いといわれています。
「居場所」と「出番(仕事)」をもち、社会復帰が促進されれば、社会における存在意義をもつことができるでしょう。
それぞれが、どのように重要なのかをくわしくみていきます。
居住環境を整える
刑務所などを出所したあと、多くの人は帰る所がないようです。
入所受刑者の居住状況が「平成27年版犯罪白書」ではまとめられています。
再犯回数が多いほど、住居不定の割合もふえているようです。
出所後も行き場のない人の住居を確保するため、一時的にも宿泊場所など施設の機能を強化したり、開拓を進めることが大事であると考えられています。
施設例
- 更生保護施設
- 自立準備ホーム
などです。
仕事を確保する
刑務所に再び収容されることとなった人の多くが無職者であることが多いようです。
入所受刑者の就労状況が「平成27年版犯罪白書」ではまとめられています。
入所度数を重ねるにつれて、無職者の占める比率が高くなっていることが分かりました。
このように、仕事の有無と再犯は関連していると考えられています。
刑務所の出所後を見据えて、
- 職業訓練を行う
- 雇用先となる雇用主の開拓
政府の再犯防止の取り組みとして、このような対策がたてられています。
社会生活の中での自分の居場所・仕事をつくることで、社会の一員であるという意識をもつことが再犯防止には大事であると感じられます。
政府による再犯防止の取り組みについて興味のある方は、政府広報のホームページもあわせてご覧ください。
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