窃盗罪で告訴された|告訴の意味、窃盗で告訴状をだせる親族間、告訴の取り消しなどの流れ
窃盗で告訴されたら、その後どうなるの?
そんな不安をお持ちの方もいることでしょう。
そこで、今回は「窃盗の告訴」についてレポートしていきます。
- そもそも告訴って何?
- 窃盗で告訴されたら、どんな刑罰になるの?
- 窃盗の告訴を取り消してもらうには、どうすればいい?
などなど、皆さんのギモンにお答えしていきます。
窃盗罪の詳しい内容や、告訴など法律的な解説については、アトム法律事務所の弁護士にお願いします。
目次
「窃盗罪で刑事告訴されたけれど、告訴って何?」|告訴の意味について
刑事告訴の意義|告訴とは何か確認しよう
告訴のために提出される「告訴状」とは
窃盗をして逃げたけれど、警察に逮捕されるのが不安で仕方ない
こんな人もいるのではないでしょうか?
窃盗の捜査が開始されるとしたら、
告訴状などによる被害の申告
が、きっかけの一つとなります。
この窃盗事件でも、被害者によって告訴状が出され、警察に被害が申告されています。
病院を運営する公益財団法人(略)は22日までに、7万錠を超える向精神薬が所在不明になったとして、容疑者不詳のまま窃盗の疑いで(略)署へ告訴状を提出した。
出典:産経WEST(2017.9.22 11:04)
このように、警察へ「告訴状」が提出されることによって、窃盗が明るみに出ます。
でも、
そもそも「告訴状」とは何だろう
このように思う人もいるでしょう。
まず、「告訴状」の意味から確認していきましょう。
「告訴状」とは、告訴の意思を表示した書面のことをいいます。
告訴の意思とは、犯罪の被害者その他の告訴権者から、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことです。
告訴は、口頭でも可能とされています。
しかし、一般的には、書面での告訴、すなわち、告訴状が提出されることが多いです。
告訴状が出されると、告訴した人から警察に対して、
- 犯罪事実の申告
- 犯人処罰の意思表示
が、されたことになります。
では、告訴状に関連する条文を見てみましょう。
告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
出典:刑事訴訟法第241条第1項
この条文のうち、「書面」というのが、告訴状のことです。
仮に、口頭で窃盗の告訴がされた場合でも、捜査機関によって調書が作成されるようです。
検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。
出典:刑事訴訟法第241条第2項
さて、
告訴状が出されるとしたら、どんな内容が書かれてしまうのだろうか
と、不安に思う人もいるでしょう。
次の項目では、窃盗の告訴状の内容について、確認しておきましょう。
窃盗で告訴される場合、「告訴状」の内容はどうなる?
告訴状の中核となる内容としては、
- 犯罪事実の申告
- 犯人処罰の意思表示
です。
まず、「告訴の趣旨」という項目で、「窃盗罪に当たるため処罰してほしい」と記載されます。
「被告人の下記所為は、窃盗罪(刑法235条)に該当すると思料しますので、捜査の上、厳重に処罰されたく、告訴いたします。」 |
そして、窃盗の犯罪事実の申告については、「告訴事実」の項目で詳しく記載されます。
窃盗罪の告訴事実としては、例えば次のような記載が考えられます。
被告訴人は、2018年2月16日午前4時10分頃、◯◯県◯◯市◯◯ 1‐2–3 の飲食店が入るビル1階ベンチ において、告訴人山田太郎(当時 50歳)が寝ていたところ、告訴人所持の財布から現金7000円を抜き取ったものである。 |
告訴状については、この2点を中心に書かれることになります。
窃盗罪で告訴状に書かれる項目を箇条書きにしてみました。
・「告訴状」というタイトル ・作成年月日 ・宛名(警察署長) ・告訴人に関する情報(住所・氏名・職業・電話番号) ・被告訴人に関する情報 ・告訴の趣旨 ・告訴事実 ・窃盗の告訴に至る経緯 ・立証方法 ・添付書類 |
自分の名前を告訴した人は知らないから、告訴されない
こんなふうに考えている人も、いるかもしれません。
しかし、そのような場合には、被告訴人不明として、窃盗の告訴状は出されることになります。
窃盗も親告罪?|窃盗罪の起訴に告訴が必要な場合について
さて、告訴といえば、
親告罪
を、思い浮かべる人もいるかもしれません。
親告罪しか告訴されない
と、思っている人もいるのではないでしょうか?
まずは、「親告罪」の意味を確認しておきましょう。
親告罪とは、公訴の提起に告訴のあることを必要条件とする犯罪です。
親告罪とされている犯罪については、告訴がなければ、起訴されることはありません。
告訴の有無と、起訴される可能性についてまとめました。
親告罪 | 親告罪以外 | |
---|---|---|
告訴あり | 起訴される可能性がある | 起訴される可能性がある |
告訴なし | 絶対に起訴されない | 起訴される可能性がある |
さて、
窃盗罪は親告罪なのだろうか?
という疑問をお持ちの方もいると思うので、確認していきましょう。
窃盗犯人と被害者の関係によっては、親告罪とされることがあります。
具体的には、
配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族
の間で、窃盗をした場合に、親告罪とされます。
窃盗罪が親告罪とされる場合について規定した条文を、挙げておきます。
(親族間の犯罪に関する特例)
第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
出典:刑法第244条第1項、同第2項
この条文は、親族相盗例と呼ばれています。
親族間での窃盗に関する特別な規定です。
この条文の内容を表にまとめてみました。
刑法244条 | 親族の範囲 | 刑法上の扱い |
---|---|---|
1項 | 配偶者、直系血族又は同居の親族 | 刑の免除 |
2項 | 上記以外の親族 | 親告罪 |
この条文でいう「親族」は、民法の定義に従います。
民法上、「親族」とは、
- 6親等内の血族
- 配偶者
- 3親等内の姻族
のことをさします。
たとえば、
6親等の血族というと、「はとこ(自分から見て祖父母の兄弟姉妹の孫)」が、それにあたります。
「いとこ」だと、4親等の血族です。
このように見てみると、かなり広い範囲の親族による窃盗が、告訴がなければ起訴されない親告罪の対象となっているようです。
被害届・告発状と「告訴状」の違い|それぞれの意味を確認しよう
窃盗は告訴だけじゃない!|被害届と告訴の違い
さて、告訴状と類似のものとして、
- 被害届
- 告発状
というものがあります。
これらの違いについて、見ていきましょう。
まずは、「被害届」の意味について、確認していきましょう。
「被害届」とは、犯罪により被害を受けた者が、被害を受けた事実を捜査機関に申告するため作成する書面のことをいいます。
では、被害届と告訴の違いは、どのような点にあるのでしょうか。
被害届と告訴の違いは、「犯人の処罰を求める意思表示」を含むかどうかです。
被害届の場合には、犯罪事実の申告にとどまります。
一方で、告訴の場合には、「犯人の処罰を求める意思表示」を含みます。
また、被害届は被害者によって、提出されます。
一方で、告訴は、告訴権者によって告訴されます。
告訴と被害届の違いをまとめてみました。
告訴 | 被害届 | |
---|---|---|
内容 | 犯罪事実の申告+犯人の処罰を求める意思表示 | 犯罪事実の申告のみ |
届出の主体 | 告訴権者 | 被害者 |
窃盗では、告訴状ではなく、被害届が出されるケースもよくあります。
次のニュースでは、区役所の資料に関する窃盗罪の被害届が出されています。
区役所で、交付前のマイナンバー78枚と、住民基本台帳ネットワークシステムなどにつなげる端末用のノートパソコン1台が盗まれた(略)。区は(略)署に被害届を出した。
出典:時事ドットコムニュース(2018.2.28 18:53)
この窃盗事件では、区役所が被害者となります。
区役所によって被害届が提出されています。
告訴と似ている「告発」とは?|告訴と告発の違い
さて、告訴と類似するものとして、
「告発」
というものもあります。
窃盗について、告訴ではなく、告発される場合もあります。
次の窃盗事件では、NPO法人の施設運営による収益を、そのNPO法人の元職員が盗んだことが問題になっています。
NPO法人の元職員は、市から窃盗で告発されています。
陶芸館(略)で今年2月、指定管理者だったNPO法人(略)の元職員2人の着服が発覚した問題で、同市は20日、元職員の女性2人を窃盗罪で(略)署に告発した。
同市によると、同NPOの職員だった50代と40代の女性2人は平成26年5月ごろから27年3月ごろの間、同館の利用料2万8千円を盗んだとしている。
利用者が保管していた領収書と経理の状況を調べた結果、140人分の利用料(2万8千円)の差額を確認。同署に相談のうえ、窃盗罪で告発したという。
(略)
同NPOは着服の事実を把握しながら約1年間、市に報告しなかった。市は今年4月1日で同NPOの指定管理者の指定を取り消し、同陶芸館を直営で管理している。
出典:産経WEST(2017.7.21 9:15)
この窃盗事件の登場人物を整理してみました。
市
↓ 業務委託 NPO法人(窃盗の被害者) ↓ NPO法人の職員(窃盗犯人) |
市は、この窃盗事件の被害者ではありません。
よって、市から、窃盗の「被害届」を出されることはありません。
また、市は、告訴権者でもないため、窃盗の「告訴」をされることもありません。
したがって、「告発」という手段が採られたのだと考えられます。
では、この「告発」とは、どのようなものなのでしょうか。
「告発」とは、犯人及び告訴権者以外の第三者が、捜査機関に対し犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
告訴と、告発の大きな違いは、その主体です。
告訴できるのは、告訴権者です。
告発の場合には、犯人及び告訴権者以外の第三者が、主体となります。
告訴 | 告発 | |
---|---|---|
内容 | 捜査機関に対し犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示 | 捜査機関に対し犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示 |
主体 | 告訴権者 | 犯人及び告訴権者以外の第三者 |
ちなみに、窃盗犯人が自ら捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その処分に服する意思を表示した場合は、「自首」にあたります。
告訴ができる人は告訴権者|告訴権者の範囲を確認しよう
さて、
- 告訴は、告訴権者にしかされない
- 告発は、犯人と告訴権者以外の人によってされる
という話がありました。
ここで気になるのが、
告訴権者の範囲
だと思います。
では、告訴権者の範囲について確認していきましょう。
告訴権者の範囲は、刑事訴訟法に規定されています。
犯罪により被害を受けた者のほか、被害者の法定代理人も独立して告訴権を有するものとされ、また、被害者の一定の親族は、条件的に告訴権者とされています。
窃盗の告訴に関係する刑事訴訟法の規定を、見てみましょう。
窃盗の告訴権者①|被害者
まず、窃盗事件の被害者は、告訴権者にあたります。
規定は、次のとおりです。
犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
出典:刑事訴訟法第230条
窃盗の告訴権者②|法定代理人
未成年の財布など財物を盗んだ
というような窃盗事件があるとします。
このような窃盗事件では、被害者である未成年者に加えて、その法定代理人によって、告訴される可能性があります。
規定は、次のとおりです。
被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。
出典:刑事訴訟法第231条第1項
窃盗の告訴権者③|被害者が死亡したとき
被害者が死亡した場合には、被害者によって告訴されることはありません。
そのような場合の告訴権者の規定は、次のとおりです。
被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
出典:刑事訴訟法第231条第2項
窃盗の告訴権者④|被害者の法定代理人などの近親者が被疑者となるケース
高齢になった親のお金を、成年後見人である子供が盗んだ
という窃盗事件もあるでしょう。
その場合には、一定の近親者が告訴権者となります。
規定は、次のとおりです。
被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができる。
出典:刑事訴訟法232条
窃盗の告訴権者⑤|告訴することができる人がいないケース
窃盗が親告罪とされたケースにおいて、告訴権者がいない場合
も、あるかもしれません。
そのような場合、補充的に告訴権者が指定されることになります。
規定は、次のとおりです。
親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができる。
出典:刑事訴訟法第234条
窃盗罪で告訴状が受理されたらどうなるか?|窃盗罪の告訴、成立要件、時効について
自分は窃盗罪で逮捕されるの?|窃盗罪の構成要件、窃盗の手口を確認しよう
さて、ここまで、告訴の概要についてレポートしてきました。
ここからは、窃盗罪について確認していきましょう。
まず、窃盗罪が、どのような犯罪なのか確認しておきましょう。
窃盗罪とは、他人の財物を窃取する犯罪です。
具体的には、
不法領得の意思で、占有者の意思に反してその占有を侵害し、目的物を自己(場合によっては第三者)の占有に移す
という行為で、窃盗罪が成立します。
窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
窃盗罪に関する刑法の規定を挙げておきます。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第235条
窃盗の手口としては、
- 万引き
- 置き引き
- スリ
- 車上荒らし
など、たくさんあります。
窃盗罪と逮捕の関係については『窃盗罪は現行犯以外で逮捕されない?|逮捕後の流れと証拠を解説』で詳しく説明しているので、是非ご覧ください。
さて、このような窃盗罪で告訴される可能性は、いつまで続くのでしょうか。
次の項目では、告訴期間について確認していきます。
窃盗罪は、親族間によって親告罪かどうかが分かれる!|告訴期間を確認しよう
先ほど、ご紹介したとおり、窃盗罪は、親族の範囲によって親告罪かどうかが分かれます。
親告罪の告訴については、告訴期間というものがあります。
この告訴期間にされた告訴でなければ、有効な告訴とは認められません。
さて、窃盗罪が親告罪とされる場合、その告訴期間はどのくらいなのでしょうか。
窃盗罪が親告罪とされる場合の告訴期間は、
犯人を知った日から6か月
です。
窃盗罪が親族相盗例によって親告罪となる場合には、この告訴期間内に告訴されなければ、起訴されません。
親告罪の告訴に関係する条文を見ておきましょう。
親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。
出典:刑事訴訟法第235条本文
たとえば、
久しぶりに遊びに行った、いとこの家で、いとこの財布を盗んだ
というケースがあるとします。
この場合、いとこが犯人を知った日から6か月を経過しても、窃盗で告訴されなかったとします。
告訴期間内に告訴がなければ、起訴されないため、この窃盗のケースでは処罰されることはありません。
親告罪 | 親告罪以外 | |
---|---|---|
告訴期間の有無 | あり | なし |
さて、親告罪とされない場合には、
いつまで経っても、告訴される可能性が残る
ということなのでしょうか?
次の項目では、このような疑問について解消していきましょう。
自分は窃盗罪で起訴されるの?|窃盗罪の公訴期間を確認しよう
さて、
自分は、見ず知らずの人の財布を盗んだから、親告罪にはあたらない
こんなケースは多数あると思います。
このようなケースでは、一体いつまで、告訴の可能性があるのでしょうか?
親告罪以外の犯罪にも、告訴期間のような目安があるのでしょうか。
親告罪以外の犯罪では、公訴期間が告訴される期間の目安になります。
公訴期間とは、検察官が適法に公訴を提起することができる期間のことです。
公訴期間を経過してしまうと、起訴されないため、その犯罪では処罰されなくなります。
そのため、公訴期間の年数が、告訴される期間の目安となります。
さて、窃盗の場合には、公訴期間の年数はどのくらいなのでしょうか。
公訴期間については、刑事訴訟法に規定があります。
公訴期間は、個別の刑罰法規に規定される法定刑によって異なります。
窃盗罪の場合には、7年
となります。
法定刑の重さを基準に公訴期間が定められています。
参考のため、公訴期間に関連する条文も挙げておきますね。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
出典:刑事訴訟法第250条第2項
この公訴期間を目安にすると、窃盗の告訴される可能性は、7年間続きます。
7年とは長期にわたりますよね。
公訴期間の経過を待っていたら、
やっぱり窃盗で告訴されてしまった
というケースもあるかもしれません。
そうなると、気になるのが、やっぱり窃盗罪の刑罰ですよね。
窃盗罪で起訴されたら、どうなるか?|窃盗罪の刑罰について
窃盗罪の法定刑をおさらい
さて、窃盗で告訴されて起訴されてしまった場合に、どのような刑罰が科されるのか、実例に即して確認していきましょう。
先ほど見たとおり、窃盗罪の条文上、刑罰は、
十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
と規定されています。
実際に裁判になったら、このとおりの刑罰が科されるのでしょうか。
裁判で現実に言い渡される刑罰は、個別の刑罰法規に規定される法定刑を基礎に、法律上の加重減軽を施して処断刑が定められ、その範囲内で刑が宣告されます。
個別のケースによって、言い渡される刑罰は、様々です。
次の項目から、どのような窃盗事例で、どのような刑罰が科されているのか確認していきましょう。
窃盗罪が初犯だったらどんな刑罰?
さいしょに、窃盗で告訴されたとき、前科がなく窃盗初犯だった場合に、どのような刑罰が科される可能性があるか確認していきましょう。
窃盗初犯の刑罰①
▼事案
洗濯機内から制服上下1組ほか1点(時価合計約5000円相当)を窃取。
▼刑罰
懲役1年(執行猶予3年)
窃盗初犯の刑罰②
▼事案
スーパーの商品(販売価格合計3万775円相当)を万引き。
▼刑罰
懲役10月(執行猶予3年)
これらの窃盗のケースでは、執行猶予がついており、懲役の年数も比較的短期になっています。
初犯の窃盗の場合には、不起訴となることも多いです。
窃盗罪が未遂だったらどんな刑罰?
次に、告訴された窃盗罪が未遂の場合に、どのような刑罰が科せられるか確認していきましょう。
窃盗未遂の刑罰①
▼事案
車上荒らしをする目的で、駐車中の車両に乗り込もうとした時点で、逮捕された。
▼刑罰
―(不起訴)
窃盗未遂の刑罰②
▼事案
駐車場に駐車中の車両内を物色中、発見されて逮捕された。
▼刑罰
―(不起訴)
▼示談
あり。示談金は13万円。
ここで、ご紹介した窃盗未遂事案では、不起訴となり、刑罰が科されていません。
もっとも、前科が多数ある場合、懲役刑が科されるケースがあります。
窃盗罪が癖になっていたらどんな刑罰?
さいごに、窃盗の前科がある場合、どのような刑罰が科されるのかについて見てみましょう。
窃盗の前科がある場合①
▼事案
ホームセンターで商品(販売価格合計1万1354円相当)を窃取した。
▼前科
同種前科1犯
▼刑罰
懲役10か月
窃盗の前科がある場合②
▼事案
電車内において、被害者のズボンのポケットから、現金5296円、回数券5枚(券面額合計800円)、クレジットカード1枚等財中の財布1個(時価約5000円相当)を抜き取ってっ窃取した。
▼前科
同種前科5犯
▼刑罰
懲役2年10か月
前科がある場合には、執行猶予ナシの懲役刑が科されることが多いようです。
なお、窃盗罪の刑罰は『窃盗罪の刑罰|初犯は実刑判決と執行猶予のどっち?でも詳しく説明しているので、是非ご覧ください
「告訴取り消しがあると不起訴になるって本当?」|窃盗の告訴状の取下げと起訴・不起訴の関係
告訴の取り下げがあれば、不起訴になる
と聞いたことがある人もいるかもしれません。
親告罪だと、告訴がなければ起訴されません。
そのため、親告罪の場合には、告訴が取り下げられときも、起訴されることはありません。
親告罪でない場合には、どうなるのでしょうか?
実は、
親告罪とされない犯罪でも、告訴の取り消しは、不起訴につながりやすい
という傾向があります。
ここから、窃盗の告訴状の取り下げと、不起訴の関係について見ていきましょう。
言い回しに注意!「取り下げ」と「取り消し」
ところで、
告訴の取り下げ
という言葉遣いをする人もいます。
法律上は、
取り消し
という言葉を使います。
このテキスト内でも、以後、「告訴の取り消し」という言い回しをしていきますね。
告訴の取り消し方法
示談と一緒に、窃盗罪の告訴を取り消してもらう
告訴をした人に、告訴を取り消してもらうためには、告訴取り消しについて交渉をしなければなりません。
でも、突然、被害者に告訴取り消しだけの交渉だけ、持ち掛けるわけにはいきませんよね。
通常は、示談交渉の中で、告訴取り消しについても一緒に交渉することになります。
さて、この「示談」とは、どのようなものなのでしょうか。
示談とは、「民事上の紛争を裁判によらずに当事者間で解決する契約」のことをいいます。
たとえば、窃盗の中でも、万引きをした場合、窃盗犯人には、
- 商品の対価
- 精神的損害
などについて、民事上の金銭賠償義務が生じます。
このような民事の金銭賠償に関して、民事裁判をせずに、被害者と加害者で解決する契約が示談です。
示談の成立により、
- 被害弁償が済んでいる
- 処罰感情が軽減した
というような評価がされます。
そのため、示談の成立自体も不起訴の可能性を広げます。
窃盗で告訴されて示談交渉をしたいなら、示談の流れをチェックしよう
下の図は、示談の流れを表したものです。
この示談の流れの図を見た人の中には、
この図には、加害者が登場していないじゃないか!?
と、不思議に思われる方もいるかもしれません。
この図には、示談交渉の実態が表れています。
そもそも、示談交渉は、当事者が行うものです。
しかし、被害者の心情としては、加害者と直接やりとりについて抵抗があります。
そのため、通常は、加害者側の弁護人が橋渡しをする形で、示談交渉が進められます。
示談の概要についてもっと知りたいという方は、こちらのリンクもご覧ください。
示談は、民事上の金銭賠償に関する当事者の契約です。
したがって、示談成立には、「示談金」の支払いが必須です。
窃盗で告訴された場合、示談にはどのくらいの示談金が必要なの?
このような疑問をお持ちの方は、こちらからチェックしてみてください。
示談交渉と一緒に、告訴の取り消しの交渉も進める
この前提として、とっても重要なポイントがあります。
それは、告訴の取り消しには期限があるということです。
次の項目では、この告訴取り消しの期限について、確認します。
注意!告訴の取り消し期限
さて、ここで注意したいのが、告訴の取り消し期限です。
告訴は、事件が起訴されると、取り消すことができません。
親告罪の場合には、告訴期間がありました。
さらに、取り消し期限もあります。
親族相盗例が適用される場合には、告訴取り消し期限は、起訴される前です。
さて、この告訴の取り消しに関する条文を確認しておきましょう。
告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
出典:刑事訴訟法第237条第1項
また、親告罪の告訴の取り消しには、もう一つ注意点があります。
それは、いったん取り消した犯罪の告訴は、再度できないということです。
この規定についても、確認しておきましょう。
告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。
出典:刑事訴訟法第237条第2項
窃盗罪が親告罪とされるケースの場合には、告訴の有無が不起訴処分に直接的な影響を与えます。
もっとも、親告罪とならない一般的な窃盗のケースでも、告訴が取り消させれることで、不起訴処分につながる可能性が広がります。
窃盗で告訴されてお悩みの場合には、弁護士さんに相談して、告訴取り消しのための交渉をすぐに開始しましょう。
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さいごに
今回は、「窃盗罪の告訴」についてレポートしてきました。
告訴そのものの意味についても理解できたし、窃盗で告訴される可能性は7年も続くということもわかりました。
窃盗罪で告訴されたとしても、告訴取り消しによって不起訴になるケースも多いです。
告訴取り消しの交渉は、相手方の処罰感情とも関係があるため、デリケートな問題です。
早期に準備をはじめて、じっくり取り組んでいくことで、告訴取り消しをしてもらえる可能性が大きく広がります。
窃盗罪の告訴についてお悩みの方は、今すぐ弁護士に相談していただければと思います。