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強制性交等罪とは?|構成要件や類型を解説 強姦罪からの改正点や公訴時効なども紹介

  • 強制性交等罪

強制性交等罪とは?|構成要件や類型を解説 強姦罪からの改正点や公訴時効なども紹介

2023年7月13日、強制性交等罪は「不同意性交等罪」に改正されました。

強制性交等罪ってなに?」

「強姦罪から改正されたって聞いた!どう改正されたの?」

このような疑問をお持ちの方はいませんか?

刑法改正のニュースをお聞きになった方は多いかと思いますが、では具体的にどういった改正が行われたか知ってる方は少ないかと思います。

今回は、

  • 強制性交等罪の構成要件や罰則
  • 準強制性交等罪や監護者性交等罪などの類型
  • 改正前の強姦罪と改正後の強制性交等罪の違い

などについて徹底解説していきます。

なお専門的な解説は刑事事件を数多くとりあつかい、強制性交等罪にもくわしいアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

刑法の改正により強姦罪は強制性交等罪となり、罰則は強化され、適用範囲も拡大されました。

この記事で、強制性交等罪についてしっかりと確認していってください。

強制性交等罪の構成要件とは?罪の重さは?|刑法177条を解説

平成29年に刑法について大幅な改正が行われました。

「刑法改正によって性犯罪が厳罰化!」

といったニュースの見出しを皆さんいちどは目にしたことがあるのではないでしょうか?

性犯罪110年ぶり厳罰化、改正刑法が成立 被害者告訴なしでも立件

性犯罪を厳罰化する改正刑法は16日、参院本会議で全会一致によって可決、成立した。(略)性犯罪に関する刑法の大幅改正は明治40年の制定以来、約110年ぶりとなる。7月13日に施行される見通し。

(略)

とくに強制性交等罪は、刑法改正でもっとも内容の変化した法律のひとつと言ってもいいでしょう。

まず、

強制性交等罪は何をどう罰するのか

といった点について解説します。

強制性交等罪は何を罰する?|構成要件

強制性交等罪刑法177条に規定されています。

条文を見てみましょう。

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

構成要件は、

  • 13歳以上の者に対し、「暴行又は脅迫」を用いて性交、肛門性交、口腔性交をした者
  • 13歳未満の者に対し、性交、肛門性交、口腔性交をした者

です。

「性交等」とは?

強制性交等罪における性交等とは、

膣内肛門内口腔内陰茎を入れる行為

を言います。

刑法改正前の判例においては、姦淫(性交)の定義について

男性器の女性器に対する一部挿入既遂となり、妊娠および射精の有無は問わない

と判示されています。

改正後の強制性交等罪も、この定義を踏襲することが考えられます。

膣内肛門内口腔内に対して陰茎を一部挿入した段階

で性交等が行われたと解されることでしょう。

性別は関係ある?

なお、性別については条文内において言及はされていないため、男女問わず強制性交等罪の被害者、加害者になり得るようです。

法律が施行されて間もないため判例はありませんが、たとえば衆議院法務委員会での政府参考人の答弁に以下のようなものがあります。

○宮崎(政)委員 (略)女性が加害者となって男性に性交等を強いる場合も含まれているということが明らかになっているのかどうか、御説明をお願いします。

○林政府参考人 本条におきましては、誰の陰茎を誰の膣内、肛門内、口腔内に入れるかについては文言上限定しておりませんので、(略)相手方の膣内、肛門内もしくは口腔内に自己の陰茎を入れる行為のほかに、自己の膣内、肛門内もしくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為を含むものであると考えております。

女性から男性への強制性交等も対象になると明言されています。

また男性から男性に対しての肛門性交、口腔性交も、強制性交等罪の処罰の対象になり得ます。

「暴行又は脅迫を用いて」とは?

13歳以上の者に対しては、「暴行又は脅迫」を用いたときに強制性交等罪が成立すると規定されています。

  • 暴行と言えば殴る蹴るといった行為
  • 脅迫と言えば「殺すぞ」と脅したり、弱みを握って言うことを聞かせる行為

が想像されるかと思います。

しかし、強制性交等罪における「暴行又は脅迫」は、「被害者の抵抗が著しく困難になる程度」で足りるとされています。

この「被害者の抵抗が著しく困難になる程度」というのは、行為それ自体の程度のほかに、以下の要素も勘案されます。

  • 相手方の年齢、性別、素行、経歴などのプロフィール
  • それがなされた時間、場所の環境
  • その他、具体的な事情

たとえ殴る蹴る等の暴行や脅迫的な言動をしていない場合であっても、

  • 部屋が施錠されていた
  • 体格差があった

等の個別的な事情が勘案され、

「抵抗が著しく困難であった」

と認められれば「暴行または脅迫が用いられた」ということになります。

まとめ

強制性交等罪の構成要件

被害者が13歳以上被害者が13歳未満
行為膣内、肛門内、口腔内に陰茎を入れる行為
(一部挿入で既遂)
膣内、肛門内、口腔内に陰茎を入れる行為
(一部挿入で既遂)
暴行又は脅迫の必要性必要
被害者の抵抗が著しく困難になる程度
必要なし
性別被害者、加害者とも問わない被害者、加害者とも問わない

強制性交等罪の罪の重さは?|罰則

強制性交等罪の罰則は、

5年以上の有期懲役

です。

有期懲役の最大年数

有期懲役の上限は刑法上で規定されており、その年数は20年です。

つまり、強制性交等罪は、

5年以上20年以下の懲役刑に処される

ということになります。

強制性交等罪の公訴時効は?

強制性交等罪の時効についても確認しましょう。

実は時効というのはさまざまな種類があるのですが、一般に刑事事件の時効というと「公訴時効」のことを指すことが多いです。

公訴時効とは?

公訴時効とは、

一定の年数を過ぎると起訴できなくなるという時効

です。

刑事事件における起訴とは何かについてくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。

ここでは簡単に、

公訴時効を過ぎると罪に問えなくなる

と覚えていただければ結構です。

強制性交等罪の公訴時効

強制性交等罪の公訴時効は10年です。

公訴時効の年数は、その罪の罰則に応じて段階的に決められています。

強制性交等罪の罰則は

5年以上の有期懲役

ですが、これに対応する公訴時効の年数は10年となっている、というわけです。

公訴時効の年数についてよりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。

強制性交等罪について、あらためてまとめてみましょう。

まとめ

強制性交等罪

強制性交等罪とは
条文刑法177
行為男女問わず、暴行又は脅迫を用いて膣内、肛門内、口腔内に陰茎を入れる行為
13歳未満に対しては、暴行又は脅迫の有無を問わない)
罰則5年以上20年以下の懲役
公訴時効10

強制性交等罪の類型|準強制性交等罪とは?監護者性交等罪とは?

強制性交等罪にはさまざまな類型があります。

強制性交等罪に類する犯罪について、ここで徹底解説していきましょう。

準強制性交等罪とは?|刑法178条

まずは、

準強制性交等罪

から解説していきます。

条文を確認していきましょう。

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

心神喪失」「抗拒不能」の状態となった人に対して性交等をすると、強制性交等罪と同じように罰せられます。

問題はこの、

  • 心神喪失
  • 抗拒不能

が何を指すのかです。

心神喪失とは?

心神喪失とは、判例上

精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態

を言います。

心神喪失の一例
  • 泥酔状態
  • 熟睡状態
  • 麻酔にかかった状態
  • 著しい精神障害、知的障害

つまり意識喪失していたり、精神障害などにより性的行為に対して正常な判断ができない状態のとき、心神喪失していると認められるわけです。

抗拒不能とは?

抗拒不能というのは、

心神喪失以外の理由によって心理的、物理的に抵抗することが不能又は著しく困難な状態

を言います。

抗拒不能の一例
  • だまされている状態(医療行為、検査行為等と偽られた場合など)
  • 雇用関係、地位関係によって抵抗できない状態
  • 性的行為について無知な状態(判例では14歳の性的知識の乏しい少女に対する巧言を用いた姦淫について旧準強姦罪が適用された例がある)

つまり恐怖驚愕錯誤などによって行動の自由を失っている状態を抗拒不能というわけです。

罰則と時効

準強制性交等罪は、通常の強制性交等罪とおなじ罰則が適用されます。

すなわち、

5年以上の有期懲役(20年以下の懲役)

に処され、また公訴時効の年数も強制性交等罪とおなじ10年です。

まとめ

準強制性交等罪

準強制性交等罪とは
内容心神喪失、抗拒不能の状態となった人に対して性交等をする
心神喪失意識喪失など、正常な判断能力を失っている状態
抗拒不能恐怖、驚愕、錯誤などによって行動の自由を失っている状態
罰則5年以上20年以下の懲役
公訴時効10

監護者性交等罪とは?|刑法179条

つづいて

監護者性交等罪

について解説します。

監護者性交等罪の条文は以下の通りです。

十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

条文の通り、

18歳未満の者に対してその監護者が立場を利用して性交等をする

と、強制性交等罪と同じように罰せられます。

「暴行又は脅迫」が用いられる必要はありません。

監護者とは?

監護者というのは、18歳未満の者を保護監督している者を言います。

一般的な家庭モデルにおいては両親のことを指しますが、親と同程度の条件を持っている者も監護者と判断される場合があります。

監護者の要件の一例
  • 非監護者と同居し、ともに生活している
  • 非監護者の身の回りの世話をしている
  • 生活費を負担している

監護者と認められるかどうかは、個別に判断され一概には言えません。

家庭の事情、非監護者の事情によっては養親継父母、養護施設等の職員などが該当することでしょう。

ただ、教師や講師などは監護者には含まれません。

罰則と時効

監護者性交等罪は、通常の強制性交等罪とおなじ罰則が適用されます。

すなわち、

5年以上の有期懲役

に処され、また公訴時効の年数も強制性交等罪とおなじ10年です。

まとめ

監護者性交等罪

監護者性交等罪とは
内容18歳未満の者に対してその監護者が立場を利用して性交等をする
監護者とは非監護者を保護、監督しているもの
一般的には両親
罰則5年以上20年以下の懲役
公訴時効10

強制性交等罪の未遂罪とは?|刑法180条

上記、

  • 強制性交等罪
  • 準強制性交等罪
  • 監護者性交等罪

は、その未遂を罰すると規定されています。

第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。

上記3つの刑罰においては

膣内、肛門内、口腔内に陰茎を入れた段階

既遂となります。

裏を返せば、「実行の着手」があった状況で、「膣内、肛門内、口腔内に陰茎を入れなかった場合」について、未遂となります。

実行の着手とは

実行の着手というのは、簡単に言えば

その犯罪行為を開始したこと

を言います。

強制性交等罪の実行の着手

強制性交等罪では、

性交等をする目的で暴行または脅迫を用いた段階

で、実行の着手があったものとなります。

また、判例上は

性交等に至る客観的な危険性」」

があった場合にも、実行の着手があったものとして認められるようです。

客観的な危険性が認定された例
  • 強制性交等をとげる目的で車の中に引きずり込もうとした行為
  • 強制性交等をとげる目的で、山道の奥に引っ張りこもうと逃げる被害者を押さえつけた行為

引きずり込む行為それ自体は、厳密にいえば、性交等をするために直接用いられた「暴行又は脅迫」とは違います。

しかし判例上は、この「引きずり込もうとした行為」について、姦淫にいたる客観的な危険性を認め旧強姦罪の実行の着手を認めました。

13歳未満の場合

13歳未満の場合、「暴行または脅迫」を用いずとも強制性交等罪が成立します。

「条解刑法」という、刑法の実務上の運用について記した本をあたると、その実行の着手は、

客観的に見て性交等に着手したと認められるような行為を開始した時点

とされています。

注意

無論、13歳未満の者に「暴行または脅迫」を用いて強制性交等をとげようとした場合は、暴行または脅迫が行われた時点で実行の着手はあったものと解されます。

準強制性交等罪の場合

準強制性交等罪では

  • 「心神喪失、抗拒不能に乗じた場合」
  • 「心神喪失、抗拒不能にさせた場合」

で実行の着手は異なります。

準強制性交等罪の実行の着手
心神喪失、抗拒不能に乗じた場合
客観的に見て性交等に着手したと認められるような行為を開始した時点
心神喪失、抗拒不能にさせた場合
性交等を行う目的で、心神喪失、抗拒不能にさせようとした時点

前者について一例を挙げると、

抗拒不能の女性の上に乗りかかった

という時点で、旧準強姦罪の実行の着手を認めた事例があります。

後者については、たとえば

  • 薬を盛ろうとしたであるとか、
  • 酒を飲まそうとしたであるとか、
  • だます目的で嘘をついた

といった行為が考えられます。

監護者性交等罪の場合

判例の蓄積がないため、確かなことは言えません。

13歳未満に対する強制性交等罪を準用し、

客観的に見て性交等に着手したと認められるような行為を開始した時点

を実行の着手とするのが自然だと思われますが、より正確な解釈は判例の蓄積を待つことになるでしょう。

まとめ

強制性交等罪などの実行の着手

実行の着手
強制性交等罪(13歳以上)暴行又は脅迫を用いた段階
or
性交等に至る客観的な危険性が認められた段階
強制性交等罪(13歳未満)客観的に見て性交等に着手したと認められるような行為を開始した段階
or
暴行または脅迫を用いた段階
準強制性交等罪客観的に見て性交等に着手したと認められるような行為を開始した段階
or
性交等を行う目的で、心神喪失、抗拒不能にさせようとした時点
監護者性交等罪判例不足につき不明

これら実行の着手をしたうえで、「膣内、肛門内、口腔内に陰茎を入れなかった」ときには未遂罪となります。

強制性交等致死傷罪とは?|刑法181条

  • 強制性交等罪
  • 準強制性交等罪
  • 監護者性交等罪

について、被害者を死傷させた場合、

強制性交等致死傷罪

としてより重く処断されます。

条文を確認してみましょう。

第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

条文中の「第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪」というのは、「強制性交等罪、準強制性交等罪、監護者性交等罪」のことです。

「人を死傷させる」の範囲

条文中の人を死傷させるの範囲について解説していきましょう。

傷の度合い

まず傷の度合いですが、判例上は

「メンソレータムを1回塗っただけで苦痛を感ぜずに治った」

という程度の傷でも、旧強姦致傷の罪が成立するとされています。

どんなに小さな傷であろうとも、傷を負わせた時点で強制性交等致傷罪が成立するとみていいでしょう。

膣内、肛門内、口腔内への傷

無論、膣内肛門内口腔内へ傷を負わせた場合も例外ではありません。

処女に対しての強制性交によって処女膜に裂傷を負わせた事件につき、旧強姦致傷罪が適用された事例があります。

受傷の経緯

受傷の経緯も問われません。

性交等の行為そのもので受傷した場合はもちろんのこと、

  • 暴行又は脅迫の段階で死傷した場合や
  • 性交等をされそうになった人が逃走を図り、その途中で転倒などして負傷した場合

も強制性交等致傷罪が成立します。

性交等にいたる前に死傷した場合

たとえ強制性交等罪自体が未遂であっても、実行の着手後に被害者が死傷すれば、強制性交等致死傷罪既遂あつかいとなります。

一例

性交等をとげる目的で、被害者の抵抗を封じるため首を絞めたところ同被害者が死に至った。

その後、性交等をしなかった場合であっても、強制性交等致死罪の既遂罪が適用される。

罰則と時効

強制性交等致死傷罪の罰則は

無期懲役、もしくは6年以上の有期懲役

です。

公訴時効は、

  • 被害者が死亡した場合は30年
  • 被害者が死亡せず、あくまで傷害を負うにとどまる場合は15年

です。

まとめ

強制性交等致死傷罪

強制性交等致死傷罪とは
内容強制性交等罪
準強制性交等罪
監護者性交等罪
において、被害者を死傷させる
死傷の範囲どんな小さな傷害であっても致傷罪になる
罰則無期懲役、もしくは6年以上20年以下の懲役
公訴時効傷害:15
致死:30
強制性交等致死罪において殺意があった場合

ここで問題となるのは、強制性交等致死罪において殺意があった場合です。

殺意をもって人を殺した場合には、通常、殺人罪が適用されます。

しかもこの殺人罪は、法定刑の上限が強制性交等致死罪よりも重いのです。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

  • 殺意をもって被害者を殺害し、性交等をした場合
  • 強制性交等をしたのち殺意をもって同被害者を殺害した場合

判例上は、「強制性交等致死罪」と「殺人罪」の観念的競合となります。

観念的競合とは

その行為が複数の罪にかかるものとして認めること。

罰則は、それらの罪のうちもっとも重い刑が採用される。

強制性交等致死罪と殺人罪とを観念的競合としたとき、その法定刑は殺人罪のものを適用し、

死刑または無期懲役、もしくは6年以上20年以下の懲役

となるわけです。

強盗・強制性交等及び同致死罪とは?|刑法241条

強制性交等罪の未遂罪や既遂罪を犯したうえで、強盗の未遂罪や既遂罪を犯した場合には

強盗・強制性交等罪

に問われます。

さらに、強盗・強制性交等罪によって被害者を死なせた場合には

強盗・強制性交等致死罪

に問われ、さらに厳しく処断されます。

強盗・強制性交等罪

まずは、強盗・強制性交等罪の条文を見てみましょう。

長くなるので、飛ばし読みで構いません。

強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。

2前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

要素をひとつずつ解説していきましょう。

対象

対象となるのは、

  • 強盗の未遂罪か既遂罪を犯し、さらに強制性交等罪の未遂罪、既遂罪を犯した者
  • 強制性交等罪の未遂罪か既遂罪を犯し、さらに強盗の未遂罪か既遂罪を犯した者

です。

この強制性交等罪には、文理上、準強制性交等罪を含むものと解されますが、監護者性交等罪は含みません。

未遂の場合

人を死傷させた場合を除いて、強制性交等の罪も強盗の罪も、「どちらも」未遂である場合には刑を軽減できるとされています。

さらにそれが中止犯である場合には、「必ず」刑の軽減、免除をすることになっています。

中止犯とは

未遂犯の中でも、「自分の意思」で犯行を中止した場合は中止犯とされている。

日本の判例上は、「悔悟憐憫等の感情にもとづいて犯罪を完成させなかった場合」についてのみ中止犯とされるのが通例。

傷害を負わせた場合

条文は、被害者について何らかの傷害を負わせた場合については言及していません。

強盗・強制性交等罪「のみ」で罰するとする説と、強盗・強制性交等罪と強盗傷害罪の観念的競合(二種の罪のうち、より重いほうで処罰する)とする説があります。

改正前の旧強盗強姦罪の場合、東京地裁の判例では前者の説がとられているようです。

罰則と時効

罰則

無期懲役、または7年以上の有期懲役

です。

公訴時効15年です。

まとめ

強盗・強制性交等罪

強盗・強制性交等罪とは
内容強制性交等罪
準強制性交等罪
において、強盗もはたらく
未遂未遂の場合は刑を軽減でき、さらに中止犯の場合は必ず刑を軽減、免除
罰則無期懲役、または7年以上20年以下の懲役
公訴時効15

強盗・強制性交等致死罪

強盗・強制性交等の罪を犯し、さらにこれにより被害者を死に至らしめた場合は

強盗・強制性交等致死罪

になります。

条文を確認してみましょう。

第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

こちらも要素をひとつずつ見ていきます。

対象

強盗・強制性交等の罪によって人を死なせた者です。

罰則と時効

罰則は

死刑または無期懲役

となります。

公訴時効はありません。

殺意があった場合

強盗・強制性交等罪において殺意があった場合には、判例上、

「強盗・強制性交等罪」と「強盗殺人罪」の観念的競合(二種の罪のうち、より重いほうで処断する)

となります。

罰則は変わらず、「死刑または無期懲役」となります。

まとめ

強盗・強制性交等致死罪

強盗・強制性交等致死罪とは
内容強盗・強制性交等罪において被害者を死なせる
罰則死刑または無期懲役
公訴時効なし

強制性交等罪と強姦罪を徹底比較|刑法改正でなにが変わった?

強制性交等罪は、平成29年の刑法改正に合わせて、強姦罪が改正される形で誕生しました。

ここで強姦罪から具体的に何が変わったのか、その主な改正内容を解説していきましょう。

適用範囲拡大|構成要件の条文改正

旧強姦罪の条文を見てみましょう。

暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

まず強制性交等罪は、強姦罪と比較しその適用範囲が拡大されています。

姦淫から性交等へ

旧規定では、

  • 暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を「姦淫」した者
  • 13歳未満の女子を「姦淫」した者

がその対象となっていました。

姦淫とは

判例上、姦淫とは膣内に陰茎を挿入する行為を言う

改正により、「肛門性交」「口腔性交」もその要件に追加されました。

旧規定では「肛門性交」「口腔性交」では強制わいせつ罪が適用されており、行為の悪質さと量刑との不均衡が問題とされていました。

他の強制性交等罪の類型においても、改正にともない「姦淫」の語が「性交等」へ置換されています。

性別のくくりを撤廃

旧規定では

女子を」姦淫した者

について処罰の対象となっていました。

改正により「女子」が「」へと置きかわり、性別のくくりが撤廃されました。

旧規定では、たとえば男性から男性への、女性から男性への強制的な性行為等について、旧強姦罪の処罰の対象とはなりませんでした。

この改正により、男性女性ともに被害者加害者になり得るようになったわけです。

他の強制性交等罪の類型においても、改正にともない「女子」が「者」へと置換されています。

なお女性から女性へふるわれる性暴力については、その身体的な制約により条文の規定する「性交等」をとげないので、強制性交等罪の処罰の対象にはなりません。

罰則強化|集団強姦罪は吸収され廃止へ

旧強姦罪と比較し、強制性交等罪はその罰則強化されています。

強制性交等罪と強姦罪の罰則比較

旧規定と改正後の規定について、罰則を比較すると以下の表のとおりとなります。

罰則の比較
旧規定改正後の規定
旧強姦罪
現強制性交等罪
3年以上の有期懲役5年以上の有期懲役
旧準強姦罪
現準強制性交等罪
3年以上の有期懲役5年以上の有期懲役
旧強姦致死傷罪
現強制性交等致死傷罪
無期または5年以上の懲役無期または6年以上の懲役

なお、強盗・強制性交等罪の罰則規定は、致死にいたった場合もいたらなかった場合も、旧規定と変わりはありません。

旧規定の集団強姦罪

旧規定では「集団強姦罪」という罪がありました。

二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。

ご覧の通り、

4年以上の有期懲役

という罰則であり、これは現行の強制性交等罪よりも軽い刑罰となります。

刑法改正に合わせ、集団強姦罪は強制性交等罪に吸収される形で廃止となりました。

監護者性交等罪の新設

監護者性交等罪は改正によって新設された刑です。

旧規定では、監護者による13歳以上の者に対する性的虐待について、より罪の軽い児童福祉法を適用するしかありませんでした。

「暴行又は脅迫」の事実について、立証が非常に難しかったのです。

現行法ではこれに対応し、監護者性交等罪を新設。

監護者による性交等について「暴行または脅迫」の有無を問わなくなりました。

親告罪の条文廃止

旧強姦罪は親告罪でしたが、法改正により親告罪の対象から外されることになりました。

これは準強制性交等罪、監護者性交等罪、強制性交等致死傷罪も同様です。

親告罪とは?

親告罪というのは、

告訴がなければ起訴することができない」

犯罪類型のことです。

告訴とは?

被害者が犯罪に遭った事実を申告し、犯罪の加害者について処罰することを希望する訴えのことを言う。

ここでは簡単に「被害届のより強い版」とお考え下さい。

旧規定では、この告訴がなければ加害者について罪に問うことができなかったのですが、法改正により告訴がなくても刑事責任を追及することができるようになりました。

親告罪や告訴についてよりくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。

いま一度、改正点についてまとめてみましょう。

まとめ

強制性交等罪の改正点

改正のポイント
適用範囲広がった
性別のくくりがなくなり、肛門性交や口腔性交も処罰の対象となった
罰則強化された
新設された刑監護者性交等罪が新設された
13歳以上の者がこうむる性的虐待の被害に対応した
親告罪非親告罪となった
告訴がなくても起訴できるようになった

まとめ

ここまでアトム法律事務所の弁護士とともにお送りしました。

強制性交等罪について、かなりくわしく知ることができたのではないでしょうか?

ここで簡単に、この記事の内容を復習してみましょう

強制性交等罪のまとめ
  • 強制性交等罪は、13歳以上の者に暴行または脅迫を用いて性交等をしたり、13歳未満の者に性交等をしたりした場合に適用される
  • 類型としては、準強制性交等罪、監護者性交等罪、強制性交等致死傷罪、強盗・強制性交等罪がある
  • 改正により厳罰化し、非親告罪となり、適用範囲も広がった

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