覚醒剤の再犯の刑期・刑罰|再犯は執行猶予と懲役実刑のどっち?
覚醒剤事件の執行猶予中に再犯を犯してしまった…
覚醒剤は非常に、依存性の高い薬物です。
自らの罪を反省したものの、その高い依存性から二回目・三回目と覚醒剤に何度も手を染めてしまうリスクがあります。
また、再犯の可能性は覚醒剤事件だけとはかぎりません。
覚醒剤の重い依存者・中毒者は、禁断症状などによって暴行事件や窃盗事件など、覚醒剤以外の犯罪を犯してしまう可能性もあります。
もし、ご自分が再犯を起こしてしまったとしたら…
「つぎは実刑は確実…?!」
今後のことが、不安でたまらないと思います。
そこで、本日は「覚醒剤事件の再犯」をテーマに特集記事をお届けします。
- 覚醒剤の再犯は刑期は長くなる?
- 執行猶予中、執行猶予後の再犯とは
- 覚醒剤の再犯率を知る
- 覚醒剤の依存から抜け出す治療施設は?
といった疑問について、詳しく調査しました!
目次
法律的な部分の解説は、覚醒剤事件の問題にくわしい専門家にお願いしています。
アトム法律事務所の弁護士です。
よろしくお願いします。
覚醒剤事件は、デリケートな問題でご家族やご友人にも相談することができないという方が多いようです。
弁護士としての経験をもとに、あなたの悩みにアドバイスをしていきたいと思います。
みなさんの不安が解消できるように、レポートしていきます。
それでは、さっそくはじめます!
覚醒剤の再犯なら刑期はどうなる?
覚醒剤の再犯、「累犯」の法律的な定義とは
覚醒剤の再犯について詳しくみていく前に、まずは再犯の意味について確認しておきたいと思います。
聞くところによると、一般的に再犯は「同種犯罪を何度も繰り返すこと」だと思われている方が多いように思います。
ですが…
今回の記事全体をとおして、再犯の意味としては、
「再び(同種とは限らず)犯罪を犯すこと」
として解説していきます。
一般的に再犯とする例
- 覚醒剤事件のあと覚醒剤事件をおこす
- 覚醒剤事件のあと窃盗事件をおこす
- 窃盗事件のあと傷害事件をおこす
このようなケースを再犯と定義して、お話を進めていきたいと思います。
法律的な細かい話をします。
- 一般的な用語として使われる「再犯」
- 法律的に定義される「再犯」
これらは意味が異なります。
法律上の「再犯」は刑法56条に定められており、
第1の犯罪について懲役刑の執行を終わり若しくはその執行の免除を得た後、5年以内に更に第2の犯罪を犯し、有期懲役に処すべき場合をいいます。
刑法で示されている、累犯について条文を確認しておきます。
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
出典:刑法第56条1項(再犯)
刑法は読み慣れていないとむずかしいです…
法律の用語辞典を確認してみましょう。
広義には、初犯以後更に罪を犯すことをいうが、狭義には、刑法一編一〇章「累犯」に規定されているものを指す。
すなわち、懲役に処せられた者がその執行の終わった後五年以内に更に罪を犯し、有期懲役に処するときに、これを再犯と呼び、累犯として処断刑が加重される。
出典:有斐閣法律用語辞典第4版
「更に罪を犯す」とは、同じ罪である必要はありません。
この点は、一般的に使用する再犯と同じですね。
法律がさす再犯(累犯)をまとめるとこのようになります。
法律的な意味の再犯
- 懲役の執行が終わった日(刑期の満了後)
- 懲役の執行の免除のあった日(刑の時効など)
これらの日の翌日から、5年以内にさらに罪を犯して有期懲役に処せられたものを再犯という
累犯は刑期が重くなる?
一般的に再犯は、裁判官の心証(一般情状)により量刑が重くなる傾向にあります。
一方で、法律で定義される再犯(累犯)では量刑について刑法で規定があります。
こちらの条文をご覧ください。
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。
出典:刑法第57条(再犯加重)
「懲役の長期の二倍以下」とあります…
これはあくまで、刑期の年数を引き上げることができる上限を示しているだけです。
再犯(累犯)となれば、かならず二倍の刑期になるというわけではありません。
ですが、可能性としては量刑が重くなる場合があるという点は覚えておいてください。
覚醒剤の使用や所持は何罪?懲役などの刑期について
覚醒剤の「再犯」が本日のテーマなのですが…
覚醒剤に関する違反行為を行うと、どのような罪に問われることになるのでしょうか。
有罪判決をうけると、懲役などの刑期がどのくらい待ち受けているのか気になります。
まずは、法律の基本的なことから見ていきましょう。
覚醒剤に関しては、「覚せい剤取締法」で定められています。
この覚せい剤取締法で禁止行為となるのは大きく、覚醒剤の
- 輸入
- 輸出
- 所持
- 譲渡
- 譲受
- 使用
- 製造
などの行為が違法行為となります。
違反行為の多くを占めるのは、覚醒剤の所持・使用です。
覚せい剤取締法では、原則的に、
所持・使用ともに「10年以下の懲役」と定められています。
懲役とは、強制的に刑務所に収監されて刑務作業を強いられる刑罰です。
10年以下ということは最長で10年、刑務所に収監される可能性があるということですよね。
10年となると、かなり長い期間です…
可能性としてあるということは、覚悟しておきたいです。
覚醒剤の所持・使用についてのポイントを確認しておきましょう。
ポイント
覚せい剤取締法違反の刑罰
所持 | 使用 | |
---|---|---|
行為内容 | 覚せい剤を本人の管理の及ぶ場所に保管していること | 覚せい剤を薬品として消費すること |
懲役刑の長さ | 10年以下の懲役 | 10年以下の懲役 |
覚醒剤の刑罰については『覚醒剤は懲役何年?売人や運び屋の営利目的の所持・密輸で逮捕?使用は罰金?』で特集しているので、是非ご覧ください!
執行猶予中・執行猶予後、覚醒剤の再犯は?
【執行猶予中】覚醒剤の再犯は実刑確実?再度の執行猶予や保釈の可能性は?
執行猶予中に覚醒剤の再犯を行ってしまった場合は、実刑は確実なんでしょうか。
保釈や執行猶予の可能性も気になります。
まず、執行猶予中の再犯の場合は、再び執行猶予がつくための要件は非常に厳しいです。
具体的には、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- ① 言い渡される刑が1年以下の懲役・禁錮の場合
- ② 特に酌量すべき情状がある場合
- ③ 前科について保護観察がつけられ、その期間中に再犯をしたのではない場合
この①②③をすべて満たさなければ、再び執行猶予がつくことはありません。
覚醒剤事件の再犯の場合は、刑事裁判で1年を越える懲役が言い渡される可能性が極めて高いため、再度の執行猶予は絶望的です。
また、覚醒剤事件の場合は、「特に酌量すべき情状がある」と認められるケースも、極めて稀です。
執行猶予中の覚醒剤事件で再度の執行猶予が認められるケースは、体感での感想になりますが、1000件中に1件もないのではないでしょうか。
1000件中に1件もない!?
非常に厳しいんですね。。。
その場合は、保釈も認められにくいのでしょうか。
実刑がほぼ確実に見込まれる以上、初犯の場合と比べると、保釈も認められにくいです。
ただ、覚醒剤使用の事件の場合は、「尿検査」という有罪の確実な証拠があります。
そのため、特に事実関係に争いがない事件の場合は、執行猶予中の再犯であっても、保釈が認められるケースがあります。
まとめると…
執行猶予中の覚醒剤の再犯の場合は、
- 再度の執行猶予は絶望的。ほぼ確実に実刑になる。
- 保釈はケース・バイ・ケースで認められる可能性がある
という感じになりますね。
執行猶予中の再犯、必要的取消と裁量的取消
執行猶予という制度はそもそも、なぜ存在するのでしょうか。
自発的に自ら更生する機会として与えられるのが、執行猶予です。
ですので、そのような機会を無視し、再犯を犯したとなれば執行猶予が取り消されることがあります。
執行猶予中に再び罪を犯し、有罪判決を受けた場合、
前回の執行猶予が、
- 必ず取り消されるケース
- 取り消される可能性があるケース
この2つがあります。
必ず取り消されるケースは、「執行猶予の必要的取消し」と言われています。
刑法第26条で定義されています。
必要的取消し
執行猶予の期間内にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せらせ、その刑について執行猶予の言渡しがないときなど。
この場合は、前に出された執行猶予は必ず取り消される。
取り消される可能性があるケースは、「執行猶予の裁量的取消し」と言われています。
刑法第26条の2で定義されています。
裁量的取消し
執行猶予の期間にさらに罪を犯し、罰金に処せられたときなど。
この場合は、前に出された執行猶予が取り消される可能性はあるものの、取り消されないことも多い。
この2つのケースに、覚醒剤事件を当てはめて考えてみると…
覚醒剤の所持・使用は、「10年以下の懲役」と規定されています。
罰金の可能性はありません。
つまり、覚醒剤の再犯で「執行猶予の言渡しがない懲役」刑を言い渡された場合は、
前回の執行猶予は必ず取り消され、前回の分の刑も併せて執行されることになります。
【執行猶予後】覚醒剤の再犯(二回目・三回目…)は実刑判決??
一般的に初犯の事件では、執行猶予が得られやすい傾向があります。
初犯の覚せい剤取締法違反の刑罰は、懲役1年6ヶ月に3年間の執行猶予がつくケースが多いようです。
では、ここから本題にはいります。
執行猶予後の再犯の場合はどうなるのでしょうか。
二回目、三回目の覚醒剤の再犯では、実刑判決はまぬかれないものなのでしょうか。
二回目、三回目のような再犯の場合は、「懲役2年前後」の実刑判決となるケースが多いです。
覚醒剤のような同種の薬物事件の場合、二回目、三回目…
と回数を重ねるごとに、求刑が6ヶ月ずつ重くなるのが一般的です。
前刑の執行終了から7~10年というように期間が長く開けばあくほど、執行猶予付き判決の見込みは高くなることもあるようです。
初犯の場合と、二回目・三回目の再犯とで大きな違いは、執行猶予がつくかつかないかの点だと思います。
依存性が高い覚せい剤のような薬物事件では、再犯を犯しやすい傾向にあります。
そのため、強く更生を促すためにも実刑となることが多いようです。
初犯・二回目・三回目の刑罰について、ポイントを確認しておきましょう。
ポイント
再犯の刑期の相場
懲役 | 執行猶予 | |
---|---|---|
初犯 | 1年6ヶ月 | つく |
二回目※ | 2年前後 | つかない |
三回目※ | 2年前後 | つかない |
覚醒剤の再犯率を犯罪白書から見る。年齢による検挙人員の違いは?
成人における覚醒剤の再犯率
覚醒剤事件の再犯率は、どのくらいにのぼるのでしょうか。
法務省が発表した「平成28年版犯罪白書」をもとに確認していきたいと思います。
まずこの犯罪白書でいう覚醒剤の再犯率とは、「同一罪名を犯したもの」をさすとしています。
同一罪名再犯者(前に覚せい剤取締法違反で検挙されたことがあり,再び同法違反で検挙された者をいう。)
出典:犯罪白書(平成28年版)第5編 第1章 第1節「3 覚せい剤取締法違反により検挙された同一罪名再犯者」
同一罪名再犯者率は近年、上昇傾向にあるという結果が出ているようです。
平成18年~平成27年の10年間で、成人の覚せい剤取締法違反の検挙数は毎年1万人を超えています。
平成27年においては、再び覚醒剤事件を起こした再犯者率は65.4%と半数以上を占めています。
再犯率
覚せい剤取締法違反の成人検挙人員(平成27年)
検挙者数 | 同一罪名再犯者 | 同一罪名検挙なし | |
---|---|---|---|
覚せい剤取締法違反 | 10,903人 | 7,128人 | 3,775人 |
同一罪名再犯の検挙人員の数をみるだけでも、覚醒剤の依存性の高さを感じますね。
覚醒剤事件の検挙数を年齢別にみる
覚醒剤事件の再犯率を確認しましたが、年齢別に検挙数は違うのでしょうか。
犯罪白書(平成27年)を確認しました。
覚醒剤に関する事件は、40代あるいはそれ以上の中高年層において、近年増加傾向にあるようです。
- 歌手
- 俳優
- 元野球選手
などの有名人が起こした覚醒剤事件が記憶に新しいと思いますが、彼らも中高年層でした。
犯罪白書によると、40~49歳、つづいて、30~39歳の割合が多くなっているようです。
かつては20代が多くを占めていた覚醒剤事件ですが、年々減少傾向にあります。
少子化によってそもそも若年層の数自体が少なくなっているためとの見方もできると思いますが、
近年では50代のほうが20代を逆転している点が特徴としてあげられるでしょう。
このような傾向にあるのは、若年層に比べて金銭的に余裕のある中高年層がターゲットにされていることが原因ともいわれています。
年齢別
覚せい剤取締法違反の検挙人員(平成27年)
検挙人員 | |
---|---|
20歳未満 | 119人 |
20~29歳 | 1,417人 |
30~39歳 | 3,383人 |
40~49歳 | 3,779人 |
50歳以上 | 2,324人 |
犯罪白書について、もっとくわしく確認したい方は、こちらの法務省のホームページからご覧ください。
覚醒剤の再犯防止の取り組み、治療施設などはある?
覚醒剤は、心身ともに依存性の高いものであると認識されています。
再犯を繰り返してしまうのも、覚醒剤に依存してしまっているからだと考えるのが一般的です。
このような依存症は、適切な治療をおこなうことで、十分に回復可能な疾患であるとされています。
覚醒剤の再犯を防止するためにも、覚醒剤への依存を断ち切る必要があります。
ですが、実際には依存症の治療をおこなう医療機関などが少ないのが現状のようです。
また、そのような治療施設があるという情報が、すべての人にまでいきわたらないという課題も抱えています。
そこで…!
ここからは、覚醒剤の再犯防止の一環となる治療施設のようなものはあるのか調査しました。
「厚生労働省」のホームページによると、依存症についての対策がたてられているようです。
アルコール、薬物、ギャンブルなど…
人によって依存の対象はさまざまですが、公共機関や私設団体などによって依存者へのケアの取り組みが行われています。
▼保健所
市民の健康・保健・医療・福祉などの相談を受け付けています。
アルコール、覚醒剤のような薬物、ギャンブルなどの依存症や引きこもりの問題など、幅広く相談を受け付けています。
保健所は生まれた時からなじみのあるところだと思います。
全国各地に設置されているので、身近な存在かもしれません。
まずは、相談の足掛かりとして利用してみるのはいかがでしょうか。
▼精神保健福祉センター
地域住民の精神的健康の保持増進や予防といった活動が主な目的です。
心の健康や社会復帰についての相談から、アルコール、覚醒剤のような薬物の依存症など幅広く相談を受け付けています。
精神保健福祉センターは、各都道府県・政令指定都市ごとに1か所以上はあるようです。
保健所よりは数が少ないですが、地域に根付いた施設を使ってみるのもいいかもしれません。
▼自助グループ・家族の自助グループ
アルコール、覚醒剤のような薬物、ギャンブルなど依存症の問題を抱えた人たちが自発的に集まった団体のことです。
同じ悩みをもつ者同士で悩みを共有し、ともに治療や更生に励むことができることが特徴です。
このような団体については、精神保健福祉センター・保健所・市町村などが、連絡先といった情報を提供してくれています。
- DARC(ダルク)
- ナラノン
- NPO法人アパリ
などがあげられますが、このなかでもダルクは有名だと思います。
ダルクは各地域に施設があります。
ですが、各施設によって更生の効果に差が出ることがあるようです。
保健所や市町村に問い合わせる際は、このような点についても聞いてみることも大切です。
刑務所には、覚醒剤専用の更生施設はありません。
そのため、覚醒剤依存症を本格的に更生させることが、再犯防止への一歩となるでしょう。
治療施設、更生施設への相談についてくわしくは厚生労働省のホームページをご覧ください。
覚醒剤事件の再犯で悩んだら、弁護士に相談
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さいごに一言、弁護士からアドバイスをいただきたいと思います。
覚醒剤のような薬物に関する刑事事件で、お悩みの場合は今すぐ弁護士に相談することが大切です。
覚醒剤の再犯の場合、執行猶予がつくことはかなり厳しくなります。
そのような可能性を聞くと途方に暮れてしまうかもしれません。
ですが、弁護士に相談していただければ、あなたにとってできるだけ最良な結果を迎えられるように尽力します。
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