万引きの示談金の相場はいくら?|示談書の書き方も解説
「万引きをしてしまったお店に謝って示談したいけど、示談金に相場ってあるの?」
「示談の話がなんとかまとまりそうだけど示談書の書き方って決まってるの?」
「万引きの被害届って示談すれば取下げられたことになるの?・・・」
万引きをしてしまった方やそのご家族の中には、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか?
このページでは、そんな方のために
- 万引きの示談金の相場
- 万引きの示談書の書き方
- その他万引きの示談についての様々な疑問
について徹底的に調査してきましたので、その結果をお伝えしたいと思います!
専門的な部分や法律的な部分は刑事事件を数多く取り扱い、万引きの事案にもアトム法律事務所の刑事弁護士に解説をお願いしております。
よろしくお願いします。
万引きの事案で示談できるかどうかは、その後の人生に大きく影響する可能性があります。
しかし、示談金の相場や示談書の書き方などを知らないと、効果的な示談ができなくなってしまうおそれがあります。
ここで、万引きの示談に関する知識を学んで、効果的な示談ができる可能性を高めておきましょう。
目次
万引きの示談金の相場を確認するためには、まず前提として、
万引きがどういった犯罪になり、どういった刑罰が課せられる可能性があるか
を確認しておく必要があります。
万引きの示談の基本知識|示談の意義やメリットを紹介
万引きの犯罪名や刑罰はなにか
万引きは窃盗罪
万引きとは、一般的には商業施設の商品を無断で持ち去る行為といわれています。
しかし、万引きという罪名があるわけではなく、万引きは窃盗罪の一種となります。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第235条
何となく、万引きというと軽いイメージを持ってしまいがちですが
- 100円のお菓子の万引き
- 1億円の絵画を美術館から盗む
のは、同じ窃盗罪として処罰されることになります。
軽い気持ちで行った100円のお菓子の万引きでも場合によっては実刑となることもあるということです!
常習になると刑罰が重くなる
とはいえ、絶対ではありませんが、初犯の万引きで実刑になる可能性は極めて低いようです。
もっとも、低額の万引きであっても繰り返し行えば、実刑になる可能性は次第に高まることになります。
そして、常習的に万引きを繰り返していると、刑罰が重くなることがあります。
常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条(略)又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上(略)ノ有期懲役ニ処ス
(以下略)
出典:盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第二条
常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪(略)ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
出典:盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第三条
条文がわかりにくいと思いますので、まとめますと
- 常習として窃盗を行ったこと
- 10年以内に窃盗罪3回以上6月以上の懲役刑を受けた
場合に、こちらの条文が適用になります。
常習累犯窃盗が適用されると
- 罰金刑がなく
- 執行猶予の可能性がかなり低くなる
のが特徴です。
窃盗罪 | 常習累犯窃盗 | |
---|---|---|
懲役 | 10年以下 | 3年以上 |
罰金 | 50万円以下 | なし |
そもそも示談とはなにか|被害弁償との区別
そして、万引きしたことをお店に謝る場合、単に謝罪するだけでなく
- 万引きした商品を返す
- 万引きした商品相当額を支払う
ことにより、被害弁償をするのが通常と考えられます。
では、この被害弁償と示談とはどういった関係にあるのでしょうか?
上のツイートをされた方は示談金と被害弁償を別物として捉えているようですが、果たしてそれは正しいのでしょうか?
示談の具体的な内容と被害弁償との関係性を確認してみましょう!
示談とは何か
示談とは、当事者間の民事上の紛争を裁判等によらず、当事者間の話し合いにより解決することをいいます。
そして、示談金とは、示談の取り決めに基づき支払われる解決金のことをいいます。
そのため、示談金を受領した場合には、その後に追加で請求などはできなくなります。
両者の関係は?
万引きの示談の場合、被害弁償をすることをもって示談とすることも多いです。
この場合には、示談と被害弁償はほぼ同じ意味を有する事になります。
もっとも、両者が違う意味を有することになる場合もあります。
まず、示談金に被害弁償以外の金額が含まれる場合があります。
例えば、万引きにより被害品の損害以外にも様々な迷惑を掛けられたということで、迷惑料や慰謝料が示談金に含まれる場合があります。
この場合、被害弁償の金額は示談金の一部という関係になります。
また、被害弁償は受領するが示談はしない場合もあります。
この場合、被害弁償(の一部)をしたことにはなりますが、被害者は
- 追加の被害弁償の請求
- 慰謝料や迷惑料の請求
をすることも可能になります。
加害者の立場からすると、相手方には示談金として受領してもらわないと民事上の問題が解決しないことになります。
もっとも、被害者の方が示談しない意思が明確な場合には、被害弁償として受領してもらうだけでも刑事上有利に働くという効果はあります。
示談 | 被害弁償 | |
---|---|---|
民事上の効果 | 当事者間の紛争を解決する | 被害品の損害賠償 |
後の賠償請求 | ☓ | ○※ |
刑事上金額 | ・不起訴になりやすい ・量刑上より有利 | ・不起訴の方向 ・量刑上有利 |
万引きで示談するメリットとデメリット|加害者側のデメリットはない!
示談とは何かを学んだところで、続いては、万引きの事案で示談をすることについての被害者及び加害者のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
まず、加害者にとっては、被害者と示談したという事実がその後の刑事手続において有利に取り扱われるというのが大きなメリットです。
特に、加害者が初犯の場合、示談が成立すると不起訴となり、前科がつかなくなる可能性が高まります。
一方、被害者にとっては、被害弁償を確実に受け取れるというメリットがあります。
万引きの被害者は、加害者に対して、被害品の損害賠償などを請求することができます。
しかし、刑事処分が決まった後だと、加害者が話し合いや支払に応じなくなってしまうこともあるのが実情です。
そのため、刑事処分が決まる前に、加害者と示談をすれば、示談金として被害弁償を確実に受け取れるというのは被害者のメリットといえます。
デメリット
加害者のメリットでお伝えしたとおり、示談が成立すると不起訴となる可能性が高まります。
そのため、示談をしてしまうと、被害者の処罰感情が満たされにくくなるのがデメリットといえます。
また、後日示談の金額に不満が出てきたとしても、加害者に追加で請求できなくなるのも被害者のデメリットといえます。
他方、加害者にとっては、特に示談することによるデメリットは考えにくいです。
このように、加害者にとっては示談をするメリットしかないので、極力示談できるように努力すべきといえます。
一方、被害者の方は、お伝えしたようなメリット・デメリットそれぞれ考慮した上で、示談をするか慎重に判断する必要があります。
被害者 | 加害者 | |
---|---|---|
メリット | 金銭を確実に受け取れる | ・不起訴の可能性が高まる ・量刑上有利 |
デメリット | ・処罰感情が満たされにくくなる ・後に不満が出てきても請求できない | 特になし |
万引きの示談金の相場を実例から探る
示談の実例7選
万引きで示談するメリット・デメリットについてはよくわかりました。
では、ここからは一番気になっているであろうの示談金の相場について詳しく見ていきましょう!
もし、相場があるとすれば、どの事案でも同じような示談金になっているはずですよね。
そこで、解説をお願いしているアトム法律事務所にご協力いただき、万引きの事案と示談金の実例を調査し、その結果を以下の表にまとめてみました。
事件の概要 | 示談金 | |
---|---|---|
① | 書店で、書籍8冊(販売価格合計7000円程度)を万引き | 7150円 |
② | 書店で、コミック本2冊(販売価格合計7000円程度)を万引き | 1万円 |
③ | スーパーマーケットで、食パンなど合計40点(販売価格合計4万5000円程度)を万引き | 4万円 |
④ | ホームセンターで、未成年の友人2人と共にレインウェアなど80点(販売価格合計8万5000円程度)を万引き | 8万円 |
⑤ | コンビニエンスストアで、おにぎり1個(販売価格150円)を万引き | 10万円 |
⑥ | 百貨店内で、婦人靴3点(税込約9万円)を万引き | 11万円 |
⑦ | コンビニエンスストアで、トレーディングカード約100枚と惣菜など(販売価格合計約1万円)を、1か月のうちに4回にわたって万引き | 12万円 |
こうやって見てみると、被害品の金額と示談金の金額はほぼ同額な事案が多いようです。
一方で、150円の被害品に対して10万円で示談しているケースや1万円の被害品に対して12万円で示談しているケースもあります。
この結果については、どう分析すればよいのでしょうか?
先生に分析をお願いしましょう!
万引きの示談金の決まり方
被害額と示談金が大きく離れている事案はどう理解すればよいのでしょうか。
専門的なお話ですので、こちらはアトム法律事務所の弁護士に聞いてみましょう!
被害金額と示談金の額がほぼ同額な事案が多いのは、民事上想定される賠償金額が通常被害金額にとどまることとの兼ね合いかと思います。
今のところ、裁判などにおいても物に対する慰謝料請求は中々認められないため、賠償金額は被害品の金額にとどまることが多くなります。
示談金は、民事上の損害賠償金と全く同じではないですが、民事上想定される賠償金を大きく超える示談金は簡単には払いにくいものと考えられます。
また、被害品の金額に対して示談金が高額となっている事案は
ⅰ万引き行為の態様
ⅱ示談しない場合に想定される処罰
が影響しているものと考えられます。
具体的には、どういうことでしょうか?
ⅰについては、⑦の事案は1か月のうちに4回にわたって万引きが行われており、常習性がうかがわれるものと考えられます。
常習性がうかがわれる万引きは処分・量刑上不利に扱われるので、それを避けるため、高額の示談金での示談になったのではないかと考えられます。
ⅱについては、示談しない場合に想定される処罰と検証して有利であると加害者が判断すれば、高額な示談金での示談が成立しやすいと考えられます。
詳細はわかりませんが、⑤の事案は、示談しなければ懲役刑が想定される事案であったと考えられます。
懲役刑を避けるためであれば、加害者がある程度高額な示談金での示談に応じることも多いと考えられます。
また、⑦の事案も詳細はわかりませんがおそらく示談しなければ罰金刑が想定される事案であったと考えられます。
罰金刑になれば数十万円を支払うことになるため、想定される罰金と同額程度までであれば、加害者も示談に応じることが多いと考えられます。
なるほど、被害金額が一定の示談金の相場にはなるものの、やはり個別具体的な事情によって示談金は変わってくるということですね。
また、万引きの示談には一切応じない方針の店舗もあるなど、最終的には被害者の方のお気持ちの問題ですので、相場も大事ですが、それだけでは解決できないということですね。
先ほど分析したとおり、示談金の相場は具体的な万引きの態様や想定される刑罰の内容などにより異なるといえます。
実際にご自身やご家族が行ってしまった万引きの示談金の相場が知りたい場合には弁護士に相談してみたほうがよいでしょう。
押さえるべき万引きの示談書の書き方とは?
示談書が作成されるまで
これで、万引きの示談金の相場の問題についてはお分かりいただけたのではないかと思います。
これをもとに被害者の方と交渉し、交渉がうまくいけば示談書を作成するということになります。
では、万引きについて、交渉から示談書が作成されるまでに一体どういった問題があるのでしょうか?
交渉から示談書が作成作成されるまでの流れに沿って確認していきたいと思います!
①交渉
示談をしようとする場合、当然被害者の方と交渉をする必要があります。
交渉の際、被害品がそのまま手元にある場合は、被害店舗に返却することになります。
そして、被害品をそのまま返却できる状態ではない場合には、示談金の金額が問題になってきます。
先程見てきたとおり、被害品の金額が一定の相場にはなるものの、
被害者の方がそれ以上の金額でなければ示談しないと主張する場合
加害者は示談することによるメリットを考慮した上で相手方の主張する金額での示談に応じるか検討することになります。
交渉の流れとしては以上となりますが、その他、何か万引きの場合特有の問題点はあるのでしょうか?
実務的なところですので、ここはアトム法律事務所の弁護士にお尋ねしてみましょう。
実は、一部のチェーン店などでは、本部の方針で示談には一切応じないことになっているようです。
その場合には、万引きをした店舗の方に交渉権限がなく、そもそも交渉自体が困難になってしまいます。
そうなんですね・・・
実際、twitterでもこんな声が聞かれます。
こういった店舗で万引きをしてしまった場合には、示談をあきらめるしかないのでしょうか?
チェーン店の本部と直接交渉するという方法が考えられないわけではありません。
もっとも、その交渉がうまくいく可能性は残念ながら高くはないのが実情です。
残念ですけど、示談は相手方の同意がなければできない以上、仕方がありませんよね・・・
②示談条件の確定
示談金の額が合意に達したとしても、それに付随する示談条件をどうするかで争いになる場合があるようです。
万引きの場合、立入禁止条項などを示談の条件に含めることがあるようです。
立入禁止条項とは、その名のとおり、加害者が万引きをして店舗など一定の場所に立ち入らないことを定める条項です。
このような立入禁止条項を入れることが示談の条件となる場合があります。
加害者としては示談したいあまりに、被害者側の条件を無条件に受け入れる事がありますが、その条件を守れるかどうかはよく検討しましょう。
③示談金の支払
示談条件が確定し、示談の内容が確定すると、合意した示談金を支払う流れになります。
万引きの場合には、振込などではなく、示談金を被害者に現金で直接支払うことが多いようです。
これは、刑事事件の場合、先ほどお伝えしたとおり、示談が刑事処分に影響するため、刑事手続が終わった後、示談金が支払われないと不都合だからです。
ただし、警察や検察は、被害者に示談の成立や示談金の受領を確認することが通常です。
その場で示談金を支払った場合は、受領証や領収証を忘れずに作成することが重要となります。
④示談書の作成
そして、通常、示談金を支払うと同時に示談書を作成する流れになります。
もっとも、書面を作るのが面倒くさいということで、示談を口頭で済ますことは可能なのでしょうか?
法律的なお話ですので、アトム法律事務所の弁護士にお尋ねしてみたいと思います。
示談は、当事者の合意によって成立し、口頭だけでも示談は成立します。
つまり、示談書の作成は示談成立の法律上の要件ではない事になります。
もっとも、示談の事実や内容につき、争いが避けるのを防ぐため、示談成立時には示談書を必ず作成した方がいいでしょう。
実務上も、示談書の作成は事実上必須となっているといえます。
いわゆる口約束だけだと、紛争の火種が残ってしまうということですね。
ここで、今まで見てきた示談書が作成されるまでの流れを表にまとめてみましたので参考にしてみてください。
流れ | 注意点 | |
---|---|---|
① | 交渉 | 一律交渉に応じないチェーン店も |
② | 示談条件の確定 | 立入禁止条項等の万引き特有の条項 |
③ | 示談金の支払 | その場で支払う場合も |
④ | 示談書の作成 | 法律上の要件ではないが必ず作成 |
謝罪文が示談に有効なことも・・・
万引きの示談書が作成されるまでのことについてはよくわかりました。
では、実際に万引きの示談の交渉をする際、謝罪文は必須なのでしょうか?
謝罪の気持ちを伝えたほうが示談の話を進めやすそうなことからすれば、謝罪文は必須とも思えます。
一方で、謝罪文を渡すことが逆効果だったり、何か不利益なこともあるかもしれないと思うと、謝罪文を渡さないほうがいいようにも思えます。
この点は、実務的な問題を含みますので、アトム法律事務所の弁護士にお伺いしてみましょう。
ケースバイケースですので、謝罪文が必須とまではいえませんが、基本的には謝罪文を渡した方がいいでしょう。
当初は示談交渉に応じない意思を明確にしていた被害者でも、謝罪文を見て示談交渉に応じてもらえたケースもあります。
ただし、謝罪文の記載内容次第では、被害者の感情を逆なでしたり、示談交渉が上手く進まなくなってしまうおそれも確かにあります。
記載内容に気をつければ、基本的には謝罪文を渡した方がいいということですね。
でも、記載内容に気をつけるといっても、具体的にどのような謝罪文を書けばいいのかわからないという方が多いと思います。
そんな方のために、下のページでは、万引きの謝罪文の書き方の雛形が記載されています。
ポイントとしては
- 被害者が被った迷惑を具体的にイメージし、そのことについて自分の言葉で率直に謝罪する
- 万引きをしてしまった原因を分析する(言い訳と捉えられないように注意する)
- 今後万引きをしないようにするための具体的な方策を記載する
といったことがあげられます。
なお、示談の具体的な条件は交渉をしてから決定し、別途示談書に記載するので
被害弁償の意思のみを示し、具体的な内容は記載しない
ことも必要です。
先ほどお伝えしたとおり、謝罪文はその内容により、その後の示談に有利にも不利にも働く可能性があります。
できれば、謝罪文を被害者に送る前に、一度弁護士に内容を確認してもらったほうがいいでしょう。
また、示談交渉は拒否する被害者も謝罪文だけは受け取ってくれる場合もあります。
謝罪の意思を被害者に示すことは刑事手続上有利な方向に働く事柄ですので、その場合、謝罪文だけでも渡すようにしましょう。
謝罪文 | 示談書 | |
---|---|---|
示談に必須か | 必須ではない | 事実上必須 |
効果 | 加害者の謝罪の意思を表したもの | 民事上の紛争を当事者間で解決した証明 |
示談書の雛形で押さえるべきポイントを確認!
示談の話がまとまり、いざ示談書を作成しようと思っても、その書き方がわからずお困りの方もいらっしゃると思います。
実際に、twitter上でもこんな声が聞かれます。
示談書なんて作成したことがない方が大半でしょうから、示談書の書き方がわからなくても仕方がありません。
実は、万引きの示談書の書き方はこうでなければならないという決まりがあるわけではありません。
もっとも、示談書に記載しておくべきポイントというものは存在します。
ここでは、下のページに掲載されている万引きの示談書の書き方の雛形を参考にそのポイントを確認していきたいと思います!
この雛形を見ると、記載すべきポイントは
- 示談の対象となる万引事件の内容
- 示談金の金額及び示談条件
- 清算条項
- 日付
- 当事者の署名・押印
であることがわかります。
清算条項を入れ忘れてしまうと、民事上の紛争を解決するという示談書の効果がなくなってしまうおそれがあるので注意しましょう。
宥恕条項とは
上のページの雛形を見てみると、第5条に 宥恕条項 というものが記載されています。
宥恕条項を盛り込むか否かは任意と記載されていますが、一体宥恕条項とはどのような意味があり、どのような効果があるのでしょうか?
法律的なお話ですので、こちらはアトム法律事務所の弁護士にお尋ねしてみましょう。
宥恕とは、上のページの宥恕条項の文言として記載されているとおり
加害者の犯行を許し、加害者に対する刑事処罰を望まない
という意味です。
この宥恕文言が示談書に盛り込まれていると
単なる示談の場合よりもさらに不起訴の可能性が高まる
という効果があります。
嘆願の文言が入ればより有利
示談書に記載されている内容によって示談の効果が変わってくるんですね!
更に調査してみたところ、
加害者に刑事処罰を行わないことを求める
というより積極的な意味を持つ「嘆願」の文言が入っていれば(嘆願書があれば)
宥恕の場合よりもより不起訴の可能性が高まる
という効果があるようです。
被害届の取下はさらに有利
さらに
被害者が刑事事件として立件されることを望まない
というさらに積極的な意味を持つ「被害届の取下げ」の条項が盛り込まれ、それに基づき、実際に被害届が取り下げられた場合は
嘆願の場合よりもさらに不起訴の可能性が高まる
という効果があります。
意味 | 不起訴の可能性※ | |
---|---|---|
単なる示談 | 民事上の紛争が当事者間で解決した | 低 |
宥恕文言 | 加害者に対する刑事処罰を望まない | ↑ |
嘆願の文言 | 加害者に刑事処罰を行わないことを求める | ↓ |
被害届の取下げ | 被害者が刑事事件として立件されることを望まない | 高 |
万引きの示談金に関するその他の疑問
万引きの被害届は示談すれば取下げになる?
ここからは、万引きの示談についての様々な疑問をアトム法律事務所の弁護士にご回答していただきたいと思います!
まず、万引きが行われると、以下のツイートのように、被害店舗から被害届が警察に提出されることが多いようです。
このように、万引きの被害届が提出されたあと、示談が成立すれば、被害届は取下げられたことになるのでしょうか?
示談をしただけでは、直ちに被害届が取下げられたことにはなりません。
示談とは、あくまで当事者間の民事上の紛争を解決するものです。
一方、被害届は、被害者が警察に刑事事件としての立件のために提出されるものであり、民事事件と刑事事件は別の手続だからです。
被害届を取下げてもらうには、示談書に被害届取下げの条項を入れた上で、被害者に別途取下げの手続きを取ってもらう必要があります。
示談は民事上の話、被害届は刑事上の話と別の手続きの話ということですね。
ここで、被害届と示談書とを検証した表を作成してみましたので、よろしければご参照ください。
被害届 | 示談書 | |
---|---|---|
提出先 | 警察 | 被害者※ |
効果 | 被害者が刑事事件として立件されることを望む | 民事上の紛争を当事者間で解決した証明 |
万引きの逮捕後にも示談は必要?
万引きをしてしまった後、逮捕をされないように示談交渉をしていたが、その間に逮捕されてしまったという方から相談を受けました。
万引きで逮捕された後も示談は必要になってくるのでしょうか?
たとえ逮捕後であっても、示談が成立することにより、様々な利点があるので、万引きの逮捕後にも示談は必要になります。
そうなんですね!
弁護士のご指摘を踏まえて、逮捕後の示談にどのような利点があるか、時系列に沿って見ていきたいと思います。
逮捕直後の示談は微罪処分を導く!?
警察は、逮捕後、48時間以内に検察官に送致することが原則です。
しかし、一定の軽微な犯罪は、個別に検察官に送致せず済ませる微罪処分となります。
この際、逮捕直後に示談すれば微罪処分となり、早期に刑事手続が終了する可能性が高まるといえます。
なお、万引きが微罪処分として処理される割合は、4割程度となっています。
ただし、微罪処分は、被害金額の小さい軽微なものを想定しています。
そのため、高額な品の万引きの場合には、示談をしても微罪処分としては処理されませんので、その点は注意が必要です。
早期の示談は勾留を防ぐ
原則どおり、検察に送致された後も、早期に示談をすることで
- 検察官の勾留請求を防ぐ
- 裁判官の勾留決定を防ぐ
- 準抗告が認容される可能性を高める
ことにより、勾留されない可能性を高めることになります。
勾留をされてしまうと、長期間、身柄が刑事施設に留め置かれることになり、様々な不利益が生じます。
それを防ぐには、早期に示談することが重要となります。
示談の成立は前科を防ぐ
また、起訴される前に示談が成立すれば、不起訴の可能性が高まることになります。
不起訴になれば、いわゆる前科がつかないことになります。
被害金額などにもよりますが、万引きの場合、初犯なら、示談が成立すれば不起訴となる可能性が極めて高いといえます。
示談の成立は量刑に影響する
起訴されても、万引きの場合、初犯であれば罰金刑になる場合が多いようです。
もっとも、初犯であっても、実刑の可能性も当然あります。
示談の成立は、実刑を免れるなど量刑上、有利に働くことになります。
以下の裁判例は、万引きの初犯の事案ですが、実刑を免れ、執行猶予となったことに示談の成立が大きく影響しているものと考えられます。
被告人は、転売目的で、販売価格が27万円と高価な玩具を狙って万引きしたものであり、今回が初めての万引きではないことがうかがわれることなどの事情にもかんがみると、被告人の刑事責任には相応の重さがある。
(略)被告人は転売先との間で売却代金6万4000円を支払って示談を成立させているが、そこでは本件被害品の所有権が被害店舗にあることが確認されており、本件被害品が警察に領置されていることも踏まえれば、早晩本件被害品は被害店舗に返還されると見込まれる上、被告人は損害の一部弁償として被害店舗に10万円を支払っていることが認められる。
窃盗の罪質に照らせば、このような事情は刑の量定にあたって相当程度考慮されるべきである。
加えて、これまで前科がないことなどの事情も斟酌すれば、(略)今回に限りその刑の執行を猶予するのが相当である。
出典:東京地判平成26年10月31日
上記の裁判例のように、示談しない場合に想定される処罰を考慮した上で、示談を成立させる必要性がどれだけ高いかを検討する必要があります。
最後に、示談成立の有無による処罰の見通しを表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
示談成立 | 示談不成立 | |
---|---|---|
不起訴の可能性 | 高い | 低い |
起訴の場合の処罰 | 罰金刑や執行猶予が多い | 実刑の可能性も |
未成年の子供の示談金に違いはある?
未成年の子供が万引きをしてしまい、その親が示談交渉をするという場合が考えられます。
まさに、そのような事案で、以下のような質問をされている方がいらっしゃいました。
https://legalus.jp/criminal/theft/qa-1785
実際のところ、未成年の子供の万引きの場合、示談金に何か違いはあるのでしょうか?
未成年の子供の万引きの場合に、示談金の相場が変わるということはありません。
ただし、未成年の子供の場合、今後のため学校や警察に連絡してほしくないという意向が強い場合があります。
先ほどの示談金の相場で見たとおり、そのような場合には、被害金額を大きく上回る金額で示談する場合もあります。
最終的には、当事者双方がどのように考えるかということですね。
なお、未成年の子供であっても、万引きで逮捕・勾留されてしまう可能性があることは成人の場合と変わりません。
ただし、未成年の場合、その後の手続が成人の場合と異なる部分があります。
詳しくは以下のページに記載されておりますが、簡単な表を作成してみましたので、両方ご覧になってみてください。
未成年 | 成人 | |
---|---|---|
逮捕・勾留 | される | される |
示談金相場 | 同じ | 同じ |
逮捕・勾留後の身柄確保施設 | 鑑別所 | 留置場・拘置所 |
手続 | 非公開(審判)※ | 公開(裁判) |
示談金はいつ払う?
「示談金をいつまでにいくら払うか」という点は、示談を結ぶ際に示談書に明記しておくべき事項です。
示談の取り決めは必ず守らなくてはいけませんので、示談金の支払期限は厳守してください。
もし示談書に記載した支払期限を守れなかった場合、こちらが先に約束を反故にしたということで、被害者側から示談の無効を主張されてしまう可能性があります。
そうなると前述した示談のメリットも得られませんので、示談金支払期限は必ず守りましょう。
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最後に一言アドバイス
では、先生、最後にまとめの一言をお願いします。
冒頭でお伝えしたとおり、万引きの事案で示談できるかどうかは、その後の人生に大きく影響する可能性があります。
しかし、示談をし、不起訴処分に持ち込めるかどうかは時間との戦いであり、一刻一秒を争います。
万引きの示談でお困りの方は今すぐ弁護士に相談してみて下さい。