身元引受人の条件|親がいないなら友人でもOK?警察の逮捕・保釈・仮釈放の瞬間
身元引受人には条件があるのでしょうか。
「警察に逮捕されてしまっても、身元引受人を引き受けてくれるような家族がいない…」
「身元引受人がいないと釈放されない…?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
- 身元引受人の条件とは
- 身元引受人は友人でもOK?
- 逮捕・保釈・刑務所からの仮出所で必要な身元引受人
身元引受人に関して、徹底的に調査しました。
法律面から解説を加えていただくのは、アトム法律事務所の弁護士です。
目次
身元引受人とは?警察に逮捕されたら
警察に逮捕されたとしたら、誰が身元引受人として来てくれるのか…
そもそも身元引受人とはいったいどんな意味があるのでしょうか。
基本からおさえていきたいと思います。
身元引受人がもつ役割や意味
身元引受人とはいったいどのような役割や意味をもっているのでしょうか。
逮捕されたりすると、警察署まで迎えに来てくれる家族という印象があります。
ただ迎えに来てくれるだけでいいのでしょうか。
身元引受人の意味
被疑者・被告人の身柄を引き受け、釈放後の生活や行動を監督してくれる人物
身元引受人はこのような役割と意味をもっています。
そもそも逮捕・勾留されるのは、
- 逃亡のおそれがある
- 証拠隠滅のおそれがある
- 住所不定である
このようなケースにおいてです。
したがって、被疑者や被告人が逃亡したり証拠隠滅を図ったりしないように監督する身元引受人がいれば、釈放される可能性があがります。
身元引受人には、釈放後の監督にふさわしいような人物であることが求められます。
身元引受人の役割
- 逃亡や証拠隠滅を防ぐ
- 警察や検察への取り調べに出頭するよう監督する
- 公判期日に出頭するように監督する
警察署まで迎えに来ることが身元引受人の役割ではありません。
身元引受人についてくわしくはこちら
身元引受人がいない?釈放の絶対条件とは限らない?
身元引受人がおらず迎えがないと、釈放されないのでしょうか。
身元引受人は、釈放の絶対条件なのか気になります。
「逃亡のおそれがない」「証拠隠滅のおそれがない」ことを示すために、身元引受人の存在は事実上欠かせない
身元引受人は、法律でなにか定義が決まっているわけではないそうです。
法律上、身元引受人は釈放の絶対条件とはされていません。
理論上は、身元引受人がいない場合でも釈放される可能性はあります。
もっとも、実際のところは、身元引受人がいないと釈放される可能性は低いでしょう。
法律で何か規定があるわけではない身元引受人ですが、釈放されるには事実上必要な条件の一つとなります。
条件を満たすなら友人でも身元引受人になれる?
身元引受人になるには条件などはあるのでしょうか。
条件によって身元引受人をお願いできる人なのかどうなのか決まってくるのでしょうか。
身元引受人の条件は法律上、条件や決まり、資格などがあるわけではない
身元引受人の条件は、「釈放後の生活や行動を監督するにふさわしい人物」であることが重要です。
身元引受人となるような被疑者・被告人との関係性からみていきたいと思います。
身元引受人は親や身内が一般的
身元引受人をお願いしたりお願いされたりするので思いつくのは、両親や身内ではないでしょうか。
親族が身元引受人となるのが通例となっています。
- 両親
- 兄弟、姉妹
- 妻・夫
- 親戚
など
親族は、同居している場合が多いと思います。
釈放後の生活や行動を監督するには、同居していることが望ましいと考えられています。
家族がいない場合は、会社の上司でも身元引受人になれる?
親兄弟がいないという方も、いらっしゃると思います。
また、実家から遠方で一人暮らしをしており家族と同居していないということもあります。
そのような場合は、会社の上司などでも身元引受人をお願いすることができます。
実際に、上司の立場で身元引受人になったという方がいらっしゃいました。
親族でなくても、身元引受人になることができます。
- 同僚
- 上司
- 取引先の社長
など
仕事関係の方に身元引受人をお願いする場合は、事件のことが必ず伝わってしまうことにはなります。
会社に事件のことが発覚すれば、会社から休職や解雇といったなにかしらの処分がくだされることもあるでしょう。
そのような可能性も見据えて、身元引受人をお願いするかどうか考えることが必要です。
親が身元引受人を拒否…友人に頼める?
親や家族が身元引受人を拒否するという事態も考えられます。
また、親には事件のことがバレないようにしたいという方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合は、友人などにお願いすることはできるのでしょうか。
友人や知人でも、身元引受人になることはできます。
- 友人
- 知人
- 恋人
など
「釈放後の生活や行動を監督するにふさわしい人物」であれば、どのような方でも身元引受人をお願いすることができます。
身元引受人が条件になる刑事手続きのタイミング
身元引受人が必要になるのはどのようなタイミングでしょうか。
✔逮捕 ✔勾留 ✔保釈 ✔執行猶予 ✔仮釈放・仮出所 |
身元引受人が条件となるこのようなタイミングごとに解説していきたいと思います。
警察に逮捕された
身元引受人は、警察に逮捕されてすぐに呼び出されることが多いケースもあるようです。
たとえば万引きのような場合は、微罪処分として警察の段階で事件が終了することがあります。
- 犯罪の事実が極めて軽微である
- 検察官によって指定された事件
このような事件は、微罪処分となることがあります。
万引きのケース
逮捕されても微罪処分になるには
✔初犯である ✔素行不良ではない ✔被害金額が少ない ✔被害回復に努めている + ✔身元引受人がいる |
警察などの捜査機関に逮捕されてすぐに釈放の可能性がでてくると、身元引受人の呼び出しが必要になります。
勾留を阻止したい
事件によっては、勾留されることがあります。
勾留されるのは、
- 逃亡のおそれがある
- 証拠隠滅のおそれがある
- 住所不定である
このようなケースでした。
勾留阻止の活動は、勾留請求される前か後かでポイントがちがいます。
勾留請求前
事件を担当する検察官に対して勾留する必要がないことを伝えて、勾留請求を阻止する
弁護士がついていれば、勾留請求前にこのような活動をおこないます。
具体的には、
- 身元引受人となる人から身元引受書を取得して、検察官に提出する
- 被疑者のおかれた状況を説明し、逃亡の可能性がないことを訴える
このような内容で活動します。
勾留請求後
裁判官に対して勾留する必要がないことを伝えて、勾留決定がくだされることを阻止する
弁護士がついていれば、勾留請求後にこのような活動をおこないます。
具体的には、
- 勾留することで被疑者が勤める会社に甚大な損害が出ることが懸念される
- 勾留することで被疑者の高齢の両親を世話する人がいなくなる
このような内容で活動します。
職業や社会的な立場、家族関係、実刑の見込みなどによって、被疑者に逃亡のおそれがないかどうかが判断されます。
身柄事件から在宅事件に切り替わると、検察庁から呼び出しを受けて取り調べを受けることになります。
身元引受人がいることで、検察庁へ出頭するように見守ることができます。
逃亡しないように監督する身元引受人の有無は、非常に重要になります。
勾留の決定後でも、勾留の取消請求・勾留の執行停止が認められれば釈放されることになります。
逮捕・勾留の流れについてはこちらの動画をごらんください。
保釈を求めたい
逮捕・勾留を経て、検察官によって起訴されることになったとします。
起訴された後、身柄の釈放をもとめて保釈を申請することができます。
このような流れで、保釈はすすめられていきます。
保釈されるためには、一定の条件を満たす必要があります。
保釈の条件
- 今回の罪が「死刑・無期懲役・1年以上の懲役・1年以上の禁錮に当たる罪」に該当しない
- 今まで「死刑・無期懲役・10年以上の懲役・10年以上の禁錮に当たる罪」の有罪判決をうけていない
- 常習性のある犯罪を犯していない
- 証拠隠滅のおそれがない
- 被害者や証人、その家族などに危害を加えるようなおそれがない
- 氏名・住所が明らか
上記のような保釈の条件は、法律で定められています。
しかし、上記の条件を満たさない場合でも、裁判所の裁量(職権)で保釈が認められる場合があります。
そして、裁量(職権)保釈されるかどうかにおいて、「身元引受人」がいることは重要になってきます。
起訴された後は、刑事裁判をうけることになります。
刑事裁判の公判期日において、被告人は必ず出廷しなければなりません。
そのため、公判期日に出頭する裏付けを身元引受人によって行うことができれば、裁量保釈が認められる可能性が高まります。
法律上、裁量保釈を獲得するには身元引受人は必須ではありません。
ですが、身元引受人がいることで保釈の可能性があがるということが分かりました。
保釈についてくわしくはこちらの動画をごらんください。
執行猶予をつけたい
日本の刑事裁判では、起訴されると約99.9%が有罪判決になるという統計データがあります。
懲役刑がくだされるような犯罪を起こしてしまった時、執行猶予が付くかどうかという点は非常に気になります。
執行猶予の意味をご存知でしょうか。
執行猶予
有罪判決が言い渡された場合、一定期間のあいだ刑を執行しない制度
懲役刑の判決が言い渡されたとしても、執行猶予付きの判決であれば、
「すぐさま刑務所にはいらずにすむ」
ということになります。
執行猶予についてくわしくは、こちらの動画をごらんください。
執行猶予がつくには、非常に厳しい要件を満たすことが必要になります。
その要件は次のとおりです。
第一の要件
いままで懲役刑や禁錮刑に科せられたことがない
または
科せられたことがあっても、その執行が終了した日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない
第二の要件
3年以下の懲役もしくは禁錮の言渡しを受けた
または
50万円以下の罰金の言渡しを受けた
第一の要件と第二の要件、このどちらも満たせば執行猶予がつく可能性があります。
これら要件のほかに、酌むべき情状がある場合は執行猶予判決となる可能性が高まります。
- 十分な反省がみられる
- 悪質な行為ではなかった
- 再犯するおそれがない
このような点が酌むべき情状となります。
執行猶予は、自発的な更生が社会生活の中で求められます。
「生活や行動を監督」する身元引受人のもとであれば、社会生活の中で更生するための環境が整っている裏付けとみなされます。
生活や行動を監督するには、同居しているほうが適していると考えられることが多いです。
そのため、親族が身元引受人になるケースが多くみられます。
刑務所から仮釈放・仮出所する
懲役刑や禁錮刑で刑務所で受刑期間をすごし、刑期満了前に釈放される制度を仮釈放といいます。
仮出所といわれることもありますが、法律の用語としては仮釈放が使われます。
- 自分の犯した罪に対して十分に反省している
- 再犯するおそれがない
このように判断されると、仮釈放となります。
法律上は、有期刑の場合、刑期の3分の1を過ぎた時点から仮釈放は認められます。
もっとも、実際には、刑期の3分の2を過ぎたころから、仮釈放されるケースが多いようです。
仮釈放は更生の意欲・反省の様子にくわえて、身元引受人がいるかどうかなどの点をふくめて総合的に審査されます。
生活や行動を監督する身元引受人がいるかどうは、仮釈放でも重要視されています。
仮釈放のあいだに再び罪を犯したりするなどすれば、仮釈放が取り消されることがあります。
身元引受人は法的な条件・責任が科されない?
身元引受人の役割を果たせなくても責任は問われない
身元引受人の社会的信用・信頼はなくなる
身元引受人がいたとしても、被疑者や被告人が逃亡したり証拠隠滅をはかろうとしたりする可能性があります。
そんなとき、身元引受人にはなにか責任が科されたりするのでしょうか。
監督不行き届きで、刑罰など科されてしまったりするのでしょうか。
逃亡をはかったりするなどしたとしても、身元引受人に対する罰則などはありません。
身元引受人が刑事責任や民事責任に問われることはありません。
ただ、身元引受人としての責任が果たされなかったとすれば…
身元引受人としての役割が果たせていなければ、再び身元引受人にふさわしいと判断されることがむずかしくなる
身元引受人がつくことで、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれなどが防がれることを期待されています。
刑罰をうけることはなくとも、身元引受人としての責任が果たせなければ信用や信頼は失われることになるでしょう。
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さいごに一言アドバイス
さいごに一言、アドバイスをいただきたいと思います。
刑事事件で逮捕されたら、弁護士に早急にご相談いただきたいと思います。
身元引受人がきちんといることを弁護士は、検察官や裁判官に伝えます。
そうすることで、早期の釈放を目指します。
弁護士によっては、無料相談をおこなっています。
事件早期の解決をのぞむなら、早い段階から弁護士に相談するようにしましょう。
まとめ
身元引受人には条件があるのか調査してきました。
- 親族以外にも知人や友人でも身元引受人になれる
- 釈放後の生活や行動を監督するにふさわしい人物であること
- 監督不行き届きでも、身元引受人はとくに責任は問われない
身元引受人にまつわる疑問は解消できたでしょうか。
刑事事件は、弁護士による個別の対応がポイントです。
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身元引受人がいない場合は釈放されない?
法律上、身元引受人は釈放の絶対条件とはされていません。理論上は、身元引受人がいない場合でも釈放される可能性はあります。もっとも、実際のところは、身元引受人がいないと釈放される可能性は低いでしょう。法律で何か規定があるわけではない身元引受人ですが、釈放されるには事実上必要な条件の一つとなります。 身元引受人がいない場合
身元引受人は親や身内が一般的?
親族が身元引受人となるのが通例となっています。釈放後の生活や行動を監督する人物としては、同居していることが望ましいと考えられています。そのため、同居の親族が身元引受人になることが最も多いです。 身元引受人は親や身内が一般的
会社の上司でも身元引受人になれる?
親族でなくても、身元引受人になることができます。親きょうだいがいないという方や、実家から出て遠方で一人暮らしをしており、家族と同居していないという方がいます。そのような場合は、会社の上司などでも身元引受人をお願いすることができます。実際に、上司の立場で身元引受人になったという方がいらっしゃいました。 会社の上司でも身元引受人になれる
条件を満たすなら友人でも身元引受人になれる?
親や家族が身元引受人を拒否するという事態も考えられます。また、親には事件のことがバレないようにしたいという方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、友人や知人でも、身元引受人になることはできます。 友人でも身元引受人になれる
身元引受人の役割を果たせなかったらどうなる?
身元引受人がいたとしても、被疑者や被告人が逃亡したり証拠隠滅をはかろうとしたりする可能性があります。その場合、身元引受人に対する罰則などはありません。そのため、身元引受人が刑事責任や民事責任に問われることはありません。ただし、身元引受人としての役割が果たせていなければ、再び身元引受人にふさわしいと判断されることは難しくなります。 身元引受人の役割を果たせなかった場合