【図解】刑事事件の裁判の流れ|判決までの期間・手続きの詳細を解説する
刑事事件を起こしてしまったら、その後どのように手続きが進んでいくのでしょうか。
初めてのことで、この先どうなるのかわからず不安ですよね。
「裁判はどんな流れで進むんだろう?」
「交通事故の場合はどうなるんだろう?」
「示談は裁判に影響するんだろうか?」
そんな疑問にお答えするべく、
- 刑事事件の裁判の流れ
- 交通事故の場合の流れ
- 刑事事件の裁判と示談について
以上のことを中心に解説していきたいと思います。
目次
【図解】刑事事件の流れと期間|裁判の流れまとめ
刑事事件の裁判とは
そもそも裁判とは?
知っているようで知らない「裁判」
そもそも裁判とは何でしょうか。
- 有罪・無罪や
- 有罪の場合の刑罰
を決める手続きです。
検察官が犯人を起訴することで、裁判が始まります。
裁判に出席するのは、
被告人、弁護人、検察官、裁判官です。
そのほか、裁判のやり取りを記録する、書記官と速記官も裁判官の前にいます。
それぞれ、どのようなことをする人たちなのでしょうか。
役割 | |
---|---|
被告人 | 「人定質問」や「罪状認否」、「被告人質問」で弁護人や検察官、裁判官の質問に答える。 |
弁護人 | 被告人の弁護のために意見を言う。 被告人が無罪であることを主張したり、検察官が提示した刑罰より軽い刑罰にするべきだと主張する。 |
検察官 | 被告人が犯した罪を、証拠とともに裁判官に告げる。 そして、その犯罪の被害の大きさ、犯罪のやり方などから、ふさわしい刑罰ついて意見を言う。 |
裁判官 | 検察官、被告人・弁護人の主張を聞き、判決をくだす。 |
- 事件の内容
- 裁判の段階
によって、行われる裁判所が変わります。
それぞれの裁判所が扱う事件は、下の表のとおりです。
裁判所 | 扱う事件 |
---|---|
地方 裁判所 | 簡易裁判所が裁判権を有する事件以外の訴訟の第一審 |
家庭 裁判所 | 未成年が対象の少年事件 |
簡易 裁判所 | 罰金以下の刑にあたる罪についての事件 |
高等 裁判所 | 一審判決に不服があって控訴された事件 |
最高 裁判所 | 高等裁判所の判決に不服があって上告された事件 |
- ① 刑事事件では、基本的にはまず地方裁判所で裁判が行われます。
- ② その判決に不服がある場合、控訴して高等裁判所にステージが移ります。
- ③ 高等裁判所での判決にも不服がある場合は、全国に一か所しかない最高裁判所で最終の裁判が行われます。
刑事事件の流れ①|逮捕から起訴まで
では、刑事事件の流れを見ていきましょう。
まず初めに、
刑事事件の発生から裁判に至るまでの流れ
を確認します。
事件発生からの流れは以下の図のとおりです。
この図をもとに解説します。
事件発生~捜査(逮捕)
事件が起きて、警察がそれを認知すると、捜査が始まります。
捜査機関に、身柄拘束が必要だと考えられた場合は逮捕・勾留されます。
逮捕・勾留される場合は、
留置施設に身柄拘束されたまま取り調べが行われます。
逮捕・勾留されない場合、
自宅に居ながらにして捜査が進められます。
では、どのような場合に逮捕・勾留されるのでしょうか。
逮捕の要件
- ① 犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、
- ② 「逃亡のおそれ」「証拠を隠滅するおそれ」がある場合
逮捕・勾留される場合は、それぞれの段階で時間制限があります。
時間に注目して、逮捕からの流れを見てみましょう。
逮捕された瞬間から、上図のような時間制限の中、手続きは進んでいきます。
警察は、犯罪の捜査をすると、原則として検察に送致する必要があります。
しかし、取り調べの結果、逮捕・勾留の必要が無いと判断された場合は、身柄は釈放されます。
では、事件が検察官に送致された後はどうなるのでしょうか。
多くの場合、勾留請求されます。
勾留請求とは、
検察官が裁判官に対して、被疑者の身柄をさらに長期にわたり拘束できるよう請求することです。
勾留請求されるとどうなるのでしょうか。
勾留質問の中で裁判官が、
「この被疑者は勾留の必要がある」
と判断すると、勾留されることになります。
反対にそのおそれがないと判断されると、釈放されることになります。
勾留が決まると、原則として10日間留置場に拘束され、取り調べを受けます。
やむを得ない場合はさらに最大10日間延長されます。
逮捕の時から合わせると、起訴されるまでに最大で23日間、身柄を拘束されることになります。
起訴
検察官は、被疑者の犯人たる証拠が十分にそろうと起訴します。
ではその起訴の意味と種類を見てみましょう。
簡単にいうと、裁判所に有罪・無罪の判断を求めるということです。
起訴は、正しくは「公訴の提起」といいます。
この公訴の提起には、大きく2種類あります。
公訴の提起 | 意味 |
---|---|
①公判請求 | 公開の法廷において裁判所に審理を求めること (=起訴) |
②略式命令請求 (略式起訴) | 被疑者の同意を得て、公判を開かずに書面で刑を言い渡す簡易な刑事手続による裁判を請求すること ※100万円以下の罰金又は科料の刑を科す場合のみ |
略式命令請求(略式起訴)をするためには、以下の条件を満たしている必要があります。
略式起訴の要件
- 簡易裁判所に属する事件であること
- 被疑者が罪を認めていること
- 略式手続によることに被疑者の異議がないこと
以上が、事件の発生から起訴までの流れです。
簡単にまとめておきます。
事件発生から起訴までの流れ
事件発生 ↓ 逮捕(されない場合もある) ↓ 警察による捜査 ↓ 検察官送致 ↓ 勾留(されない場合もある) ↓ 検察よる捜査 ↓ 起訴 |
刑事事件の流れ②|起訴から判決まで(刑事裁判の流れ)
ここからは、起訴されてからの刑事裁判の流れを見ていきます。
- 略式起訴される場合
- 公判請求される場合
に分けて解説します。
略式起訴の場合の流れ
略式起訴の場合は、略式命令に従って罰金・科料を支払うことになります。
身体拘束されている場合
裁判所が略式起訴に対して、罰金・科料を支払うべき命令(略式命令)を出します。 略式命令が出されると、被告人は略式命令書を受け取ります。 ↓ 検察庁内で待機し、命令書を受け取ってすぐに罰金を納付します。 ↓ 納付後、釈放されて刑事手続きは終了です。 |
身体拘束されていない場合
裁判所から自宅宛てに略式命令書が郵送されてきます。 ↓ そのおよそ2週間後、検察庁から罰金の納付告知書が届きます。 ↓ 指定場所で罰金・科料を支払うことで刑事手続きが終了します。 |
略式起訴された場合は、罰金・科料を支払うだけで、刑事手続きは終了します。
在庁略式の方法がとられ、仮納付命令付きの略式命令の場合、被告人は罰金を仮納付すれば帰宅できます。
略式命令まとめ
- 公開の裁判を開かず、簡易裁判所が書面で刑を言い渡す簡易な刑事手続き(被疑者の同意が必要)
- 100万円以下の罰金又は科料の刑を科す場合に限る
- 略式命令に従って、罰金・科料を支払うことで刑事手続きは終了
公判請求された場合の流れ
次は、公判請求された場合です。
略式起訴の場合とは違い、実際に裁判所にて公開の裁判が行われます。
裁判の大きな流れとしては、以下の図のようになります。
刑事裁判は、大きく分けるとこのような流れになります。
① 冒頭手続き
↓
② 証拠調べ手続き
↓
③ 弁論手続き
↓
④ 判決
多くの場合、①冒頭手続き~③弁論手続きまでは第1回公判で行われます。
そして、第2回公判で④判決が言い渡されます。
判決に納得できない場合、高等裁判所に控訴することができます。
では、
- 裁判の流れ
- それぞれの手続きの内容
を並行して解説していきます。
①冒頭手続き
まずは「冒頭手続き」についてです。
冒頭手続きには、以下の内容で進められます。
- ① 人定質問(じんていしつもん)
- ② 起訴状の朗読
- ③ 黙秘権等の被告人が有する権利の告知
- ④ 起訴された公訴事実に対する罪状認否
では、冒頭手続きの流れを見てみましょう。
人定質問では、被告人が人違いでないかを確かめるため、住所・氏名、生年月日、本籍地などが聞かれます。
↓
② 人定質問の次は、起訴状の朗読です。
起訴状の朗読では、検察官が起訴状を読み上げ、立証しようとしている事実や犯罪名などを明らかにします。
↓
③ 起訴状の朗読が終わると、裁判長から黙秘権などの権利や、裁判にあたって注意すべきことを伝えられます。
↓
④ 以上の手続が終わった後、被告人・弁護人は、起訴状記載の罪を認めるかどうか質問されます。
また、被告人に言い分を主張する機会が与えられます。
最後の罪状認否のときに罪を認めてしまうと、後で覆すことは不可能に近いです。
冒頭手続の公判期日が始まる前までに、弁護人としっかり打ち合わせをすることが大切です。
②証拠調べ手続き
次は「証拠調べ手続き」に移ります。
証拠調べ手続きは以下の内容で進められます。
- ① 冒頭陳述(ぼうとうちんじゅつ)
- ② 犯罪事実に関する立証(検察官、被告人・弁護人)
- ③ 情状に関する立証
- ④ 被告人質問
では、証拠調べ手続きの流れです。
冒頭陳述では、検察官がどのような犯罪事実を立証しようとしているのかを詳しく説明します。
また、弁護側も被告人に有利な事情の説明を行うことも可能です。
↓
② その後、検察官と弁護人の立証活動により、証拠の取調べが行われます。
↓
③ 被告人が罪を認めている場合は、被疑者のご家族などの情状証人に、証人尋問をすることが多いです。
↓
④ 検察官、弁護人による立証が終わると、被告人に対し弁護人、検察官、裁判官からそれぞれ質問がなされます。
証拠の提示は、主に以下の方法がとられます。
証拠の提示3種類
- 証拠が証人による証言の場合、検察官と弁護人が証人に質問
- 証拠が書面の場合、検察官又は弁護人が書面を朗読
- 証拠が物の場合は、裁判官に直接見てもらう
この犯罪事実に関する立証で、有罪・無罪、有罪の場合の量刑が決まります。
③弁論手続き
最後に「弁論手続き」です。
弁論手続きは以下の内容で進められます。
- ① 論告・求刑(検察官)
- ② 弁論(弁護人)
- ③ 最終陳述(被告人)
弁論手続きの流れです。
そして、その事実に対する量刑についても意見を述べます。(求刑)
↓
② その後、論告求刑に対して弁護人が弁論をします。
この最終弁論が最後の反論の機会となります。
↓
③ そして最後に、被告人が検察官の論告求刑に対して意見を述べます。
以上までの流れで、第1回公判は終わります。
およそ10日後、第2回公判が開かれ、判決が言い渡されます。
④判決の言渡し
判決の言い渡しでは、裁判官によって
- 有罪か無罪か
- 有罪の場合は、どのような刑にするのかとその理由
が言い渡されます。
以上で、刑事裁判は終結します。
刑事裁判の流れまとめ
①人定質問 ②起訴状の朗読 ③黙秘権等の被告人が有する権利の告知 ④起訴された公訴事実に対する罪状認否 ⑤冒頭陳述 ⑥犯罪事実に関する立証 ⑦情状に関する立証 ⑧被告人質問 ⑨論告・求刑 ⑩弁論 ⑪最終陳述 ⑫判決 |
【コラム】刑事事件の証人尋問の流れ
刑事裁判で、証人尋問が行われるときがあります。
それは、「証拠調べ手続き」の中で、証拠として証言が必要なときです。
被害者や目撃者の証言が、証拠になるということです。
どのような流れで証人尋問は進むのか、おさえておきましょう。
証人の立場として検察側証人か弁護側証人に分かれます。
検察側証人
検察側から呼ばれる場合は、検察側証人となる
検察側証人になるのは、被害者本人もしくは被害者に有利な証言する人
弁護側証人
弁護側から呼ばれた場合は、弁護側証人となる
弁護側証人になるのは、被告人に有利な証言をする人
では、証人尋問の流れを見てみましょう。
ちなみに、進行についてはすべて裁判官から指示があるので安心してしてください。
住所・氏名・生年月日・職業について聞かれるので、それに答えます。 |
宣誓書を朗読します。 内容は、真実を述べることを誓う、ということです。 |
いよいよ尋問です。 検察官、弁護人から順に質問されますので、端的に答えていきます。 裁判官からも質問される場合もあります。 |
裁判官から終わりを告げられると、証人尋問は終了します。
その後は法廷から出てもいいですし、傍聴席に移っても大丈夫です。
交通事故の刑事事件はどんな流れ?
交通事故は、人身事故として取り扱われると刑事事件になります。
刑事事件となり、有罪判決が下されると、
- 罰金刑
- 禁錮刑
- 懲役刑
などで刑罰を受けることになります。
交通事故で負う可能性のある刑事責任と、その刑罰は次のとおりです。
罪 | 罰則 |
---|---|
自動車運転過失致死傷罪 | 7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金 |
危険運転致死傷罪 | 負傷は15年以下の懲役 死亡は1年以上の有期懲役 |
殺人罪 | 死刑または無期もしくは5年以上の懲役 |
救護措置義務違反(人身) | 5年以下の懲役または50万円以上の罰金 |
酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
では、どのような流れで、上記のような刑罰が決まっていくのでしょうか。
① 事故発生
↓
② 現場検証
↓
③ 警察署での取り調べ
↓
④ 検察に送致
↓
⑤ 起訴・不起訴
交通事故も、刑事手続き自体は、他の刑事事件とだいたい同じ流れで進んでいきます。
しかし、現場検証に時間がかかる点が異なります。
事故が起こった時の時間帯や天気、周囲の状況などを検証します。
現場検証以降の流れは、他の刑事事件と同じです。
ページ上部の「刑事事件の流れ①|逮捕から起訴まで」をご覧ください。
交通事故が刑事事件になる基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。
刑事事件の裁判に示談は影響する?
示談の流れ
まずは示談の流れを見ていきましょう。
示談交渉には、以下の3パターンがあります。
- 被害者と直接やり取りをする場合
- 警察が介入して示談交渉する場合
- 弁護士を挟んで示談交渉をする場合
性犯罪など、被害者が加害者とは直接連絡を取りたがらないことも少なくありません。
その場合、示談を進めるためには弁護士に依頼して、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらう必要があります。
弁護士のみ、捜査機関から被害者の連絡先を聞くことができます。
連絡先を入手できれば、示談交渉を進めていくことになります。
①被害者の連絡先を知る ↓ ②謝罪文を送る ↓ ③示談交渉する ↓ ④示談書を交わす ↓ ⑤示談金を支払う |
弁護士に依頼すると、連絡先を入手できるだけでなく、様々な手助けをしてもらえます。
弁護士に示談交渉を依頼するメリットの例を挙げておきます。
- 交渉中、双方が感情的にならず、建設的な示談交渉ができる
- 謝罪文や示談書の書き方を教えてもらうことができる
- 適切な示談金額にしてもらうことができる
では、裁判に示談の成立の有無は影響するのでしょうか。
親告罪の場合は、示談によって告訴取消しをしてもらうこともできます。
ご自身で示談交渉をするにしても、弁護士に依頼するにしても、可能な限り示談は成立させておくのが好ましいです。
示談については、こちらのページで詳しく解説しています。
示談成立後の公判の流れ
示談が成立している場合、裁判の流れに違いはあるのでしょうか。
示談が成立している場合でも、公判の流れは同じなので、ページ上部の「刑事事件の流れ②|起訴から判決まで(刑事裁判の流れ)」を参照してください。
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最後に一言
ここまで、刑事事件の裁判の流れに関する情報をお届けしてきました。
最後に専門家のアドバイスをお聞きしましょう。
例えば、起訴前の段階で示談が締結できていれば、起訴されずに済むこともあります。
また、親告罪の場合、被害者に告訴を取り消してもらうよう、働きかけることもできます。
早めからの対応で、執行猶予が付いたり、刑が軽くなる可能性も高くなります。
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