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警察から任意同行を求められた! 拒否できる? 実質強制? 公務執行妨害で捕まる?

  • 任意同行,拒否

警察から任意同行を求められた! 拒否できる? 実質強制? 公務執行妨害で捕まる?

「警察の任意同行って拒否できるのかな?」

こんな疑問をお持ちの方はいませんか?。

急ぎの用があるときに任意同行を求められたら困ってしまいますよね。

ただ任意同行を拒否しようと思っても、その根拠方法についてきちんと知識がなければ不安になってしまうかと思います。

間違った方法で拒否すると、場合によっては公務執行妨害などで捕まってしまうこともあり得ます。

そこで今回は、

  • 任意同行は拒否できるのか? その法的根拠は何なのか?
  • 実際の運用ではどうなのか? 実質強制なのか?
  • 任意同行を拒否するにはどうしたらいいのか?

こういった疑問を、実際の裁判例などをあげながら徹底的に解説していきます。

なお、専門的な解説はアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。

 

よろしくお願いします。

過去の経験や実際の判例にもとづいて、任意同行の拒否の仕方などを解説していきます。

任意同行は拒否できる? できない? 法的根拠もあわせて紹介!

任意同行が拒否できるのかを知るためには、

  • そもそも任意同行とは何か
  • 任意同行とはどんな法令によって規定されているのか

を知っておかなければなりません。

そこで、まずはこの2点について確認していきましょう。

任意同行とは その意味を解説

任意同行とは、警察などの捜査機関からの求めに応じ、任意で警察署などに一緒に行くことをいいます。

任意同行を求める相手によって、その根拠となる法令や意味合いなども違ってきます。

ひとつひとつ確認していきましょう。

①犯罪捜査に際しての任意同行

まず最初の例として、犯罪捜査において任意同行が求められるケースがあります。

警察官が被疑者の住居などに赴き、同意を得たうえで警察署などに同行させる、といったものです。

これは刑事訴訟法198条の第1項に根拠が規定されています。

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

書いてある通り、犯罪の捜査をするにあったて必要があるときは、被疑者に出頭を求めることができる、ということです。

重要なのは「出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と明文化されているところです。

つまり「帰りたいときに帰ることができる」ということです。

②参考人取り調べのための任意同行

また、犯罪の捜査にあたっては、被疑者だけではなく参考人も出頭を求められることがあります。

こちらは刑事訴訟法の223条の第1項に規定されています。

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。

さらに、第2項にはこのような記載があります。

第198条第1項但書及び第3項乃至第5項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

日本語が難しいですが、要約するとこの第223条も198条と同じような条件で扱うという内容です。

つまり、198条と同じようにこちらも「出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」ということです。

③職務質問に際しての任意同行

さらに、職務質問に際しても、必要とあれば警察は質問をしている人に対して警察署等に出頭を要請することができます。

職務質問というのは、一定の条件に当てはまる人に対して警察官が質問をすることを言い、警察官職務執行法2条1項に規定されています。

警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

警察官は、犯罪を犯した人、犯罪を犯しそうな人、事件の事情を知っていそうな人に対して質問をすることが、法的に許されているんですね。

こちらも、同条の第2項に状況に応じて警察署等に出頭を要請できること、第3項に、質問を受けている人はそれを拒否できることが記されています。

2.その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。

3.前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。

交通の邪魔になったり本人の不利になると判断された時には、警察署等への同行を求めることができ、非質問者は拒否ができます。

表でまとめてみましょう。

任意同行のまとめ
  被疑者の任意同行 参考人の任意同行 職務質問からの任意同行
内容 被疑者に対して警察署等への同行を求める 参考人に対して警察署への同行を求める 職務質問の相手に対して警察署への同行を求める
根拠 刑事訴訟法198 刑事訴訟法223 警察官職務執行法2
拒否の可否 拒否できる

任意同行は拒否できる!

ここまで読んでいただいた方ならもうお分かりかとは思いますが、どんな場合であっても、任意同行は法的に拒否することができます。

警察官が強制的に本人を警察署まで連行することはできません。

法律上は任意同行を拒否する権利は強く保障されているわけです。

任意同行は実質的には強制なのか? 判例などから紐解く

しかし、任意同行は実質的には強制されるのと変わりないという考えを持っている方は多いようです。

中にはほとんど強制とも言えるような方法で警察署へ任意同行させられたという方も…。

法的に拒否できるといっても、実際に断ることができるかどうかというのは、また別の話です。

警察官も日本の治安を守るという使命をもって働いていますから、そう簡単には引き下がりません。

また詳しくは後述しますが、判例上、任意同行にあたって警察には有形力の行使(実力行使)が認められています。

実際の判例から紐解いていきましょう。

任意同行を拒否した者を取り押さえたものの適法となったケース

法的には、任意同行を拒否している人を無理やり警察署に連れていくのは違法です。

ですが、判例においては多少強引な方法を使って呼び止めた場合でも適法と判断されたケースがあります。

それがこちらです。

任意同行を拒否した者を取り押さえた事例
ケース① 後を追いかける*1
警ら中の警察官が、当時頻発していた窃盗事件への関与が疑われる男を発見。
呼び止めて、職務質問をし、風呂敷の中身を見せるよう要求したところ、男はにわかに歩き出し、逃亡。
警察官は職務質問続行のために、その跡を追いかけた。
ケース② 目の前に立ちふさがる*2
段ボールで身を隠しながら、向かいの病院の様子を探っていた男に対して警察官が職務質問を行った。
逃げようとした男の前面に23分間、数メートルの間移動して立ちふさがった。
ケース③ 背後から腕に手をかける*3
夜間、道路上で職務質問をし、駐在所に任意同行した男が、質問中に隙を見て逃げ出した。
警察官はその男を追跡して、背後から腕に手をかけて停止させた。

*1最高裁昭和29年12月27日判決 大審院刑事判例集8巻13号2435頁 *2広島高裁昭和51年4月1日判決 高等裁判所刑事判例集29巻2号240頁 *3最高裁昭和29年7月15日決定 大審院刑事判例集8巻7号1137頁

これら警察官の行為は全て適法とされました。

法的に任意同行を拒否できるといっても、警察の実務的には、有形力の行使がみとめられているのです。

有形力の行使(実力行使)は認められている

有形力の行使というのは、簡単に言ってしまえば実力行使のことです。

判例上では、

逃走を図り又は抵抗する非質問者らを制止し、職務質問を遂行するため社会通念上妥当な範囲で、一時的に有形力の行使をすることはできる

と判じられています。

この、社会通念上妥当な範囲というのが明確に定義されているわけではないのですが、上で挙げたような程度の実力行使は容認されています。

また対象の不審ぶりや嫌疑の程度の差によって、有形力の行使が認められる範囲にも強弱が生まれると思われます。

重大犯罪の嫌疑がかかっていたり、明らかに不審な行動をしていた場合などには、より程度の激しい実力行使も認められると言えるでしょう。

任意同行を拒否したものの公務執行妨害で捕まったケース

また任意同行を拒否しようとするあまり、その場の警察官に対して手をあげたり脅迫したりした場合、公務執行妨害として現行犯逮捕されてしまう場合もあります。

こちらのニュースをご覧ください。

家出中に事情を聴こうとした警察官を自分の車に乗せ、制止を無視して(略)約23キロ走り続けたとして、兵庫県警加古川署は9日、公務執行妨害容疑で(略)現行犯逮捕した。

(略)

同署によると9日午後7時25分、署員がナンバープレートなどから、(略)容疑者を発見。署までの任意同行を求めようと(略)容疑者の車の後部座席に乗り込んだところ、(略)容疑者は車を発進。署員や追跡するパトカーの制止を無視し、30分以上にわたって高速道路などを運転し続け、約23キロ離れた自宅まで走り続けた。

(略)

警察官を乗せたまま制止を無視して車で走り続け、公務執行妨害で逮捕されたケースです。

詳しく解説していきます。

公務執行妨害とは

公務執行妨害は、刑法95条第1項に規定されています。

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害は公務員の仕事「公務」自体を保護するためにあります。

警察官は公務員ですから、警察の仕事も「公務」のうちに入ります。

条文を読むと「暴行又は脅迫」と書いてありますが、実務上は字義通りの意味ではありません。

例えば「警官の胸を押して」逮捕された例もあります。

警視庁は14日、国会議事堂前の集会に参加していた30代の男を、警戒中の機動隊員に対する公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕した。同庁によると、逮捕容疑は午後3時45分ごろ、東京都千代田区永田町1丁目の路上でパイプ柵を乗り越えて車道に出ようとして機動隊員に制止された際、隊員の胸を押したというもの。「やっていない」と容疑を否認しているという。

「警察官が前に立ち、通せんぼしてきたので、手で押しのけた」といったような場合、公務執行妨害で逮捕される可能性もあります。

また場合によっては、偶発的に手が触れたというだけでも逮捕される可能性はあります。

任意同行を拒否する場合であっても、乱暴なことはしないほうが賢明でしょう。

続いて確認するのは、明らかに任意同行の範囲を超えていると思われる方法で取り調べを受けたものの、適法とされたケースです。

客観的に任意の範囲を超える方法で取り調べが行われたが、適法となったケース

こちらも表で確認してみましょう。

客観的に「行き過ぎ」でも適法とされた事例
ケース① 徹夜で長時間取り調べを行う*1
任意同行に応じた被疑者に対して、徹夜で22時間にも渡り取り調べが行われ、被疑者の自白によって逮捕されたという事件。
この長時間の取り調べの適法性が議論されたが、被疑者本人が進んで取り調べを受けていたこと、休憩等の要求もされなかったことなどから適法とされた。
ケース② ホテルに宿泊させ長期間取り調べを行う*2
任意同行に応じた被疑者をホテルに宿泊させ、4夜に渡り取り調べが行われたという事件。
ホテルに宿泊させる行為は、妥当とは言えないとされながらも、被疑者が取り調べに協力的に応じており、事件の性質も緊急を要するものであったので適法とされた。

*1 最高裁判所第3小法廷 平成元年7月4日 事件番号 昭和60(あ)826 *2 最高裁判所第2小法廷 昭和59年2月29日 事件番号 昭和57(あ)301

判例では、どちらもこのように長時間、長期間取り調べを行うのは妥当ではないとしながらも、事件の性質などから適法とされました。

  • 事件が比較的大きい
  • 任意の事情聴取に積極的に応じていることが明らか

この2点に該当するとき、上記の例のような任意同行からの長期間の取り調べも適法とされるようです。

強制的な任意同行が違法と判断されたケース

もちろん、強制的な任意同行の請求が違法だとされたケースもあります。

強制的な任意同行が違法とされたケース
逃亡する被質問者を追いかけたケース
職務質問中、任意同行を求めた際に逃亡した被質問者を警察官が追いかけたという事例。
警察官は「とまらなければ逮捕する」「逃げると撃つぞ」などと叫びながら追跡し、追いついたところで肩に手をかけた。

*大阪地裁昭和43年9月20日判決 判例タイムズ228号229頁

この判例では、「とまらなければ逮捕する」「逃げると撃つぞ」といった、強制力を匂わせるような発言をした点が違法とされました。

任意同行を拒否する時のおすすめの方法 弁護士を呼ぶべき?

様々な判例をご覧いただきました。

  • 任意同行を拒否するにあたって、警察官も簡単に引き下がってはくれないということ
  • ある程度の実力行使は認められているということ

が確認いただけたかと思います。

ですが、任意同行の拒否は法的に保障されていることであるというのもまた事実です。

ここからは、拒否するときに気をつけるべきポイントや、有効な拒否の仕方について解説していきましょう。

拒否するときのおすすめの方法

①なぜ任意同行を求められているのか確認

まず確認してもらいたいのは、自分が何の目的で任意同行を求められているのかという点です。

先述の通り、任意同行は、

  • 刑事事件の被疑者として
  • 参考人として
  • 職務質問の延長で

求められます。

刑事事件の被疑者として任意同行が求められた場合、すでに容疑が固まっている可能性も高いです。

その場合、任意同行を拒否しても、すぐに逮捕状が発行され、今度は強制的に逮捕され連行されてしまうということも考えられます。

容疑が固まっているのにも関わらず警察があえて任意同行を求める場合というのは、

  • 逮捕をスムーズに行うため
  • 被疑者に配慮し、逮捕される場面を近隣住民や家族などに見せないようにするため

と言われています。

特にご自身にやましいことがある中で任意同行を求められた場合には、素直に応じた方が不必要なダメージを避けることができます。

②穏便に断る

任意同行を拒否するとき、

  • 慌てて逃げようとして、周囲の人にぶつかって怪我を負わせたり
  • 警察官に暴力を振るったり
  • 警察官に乱暴な言葉遣いをしたり

することは絶対にあってはなりません。

こうした行為は、暴行罪傷害罪公務執行妨害などに問われる可能性もあります。

特に公務執行妨害については、目の前に立つ警察官を押しのけたりするだけでも成立し得ます。

穏便に断る、ということを心がけてください。

穏便に断る、と言っても実際には難しい局面も多いかもしれません。

「拒否を続けるうちに警察官がどんどん増えていき、あたりを取り囲まれてしまう」

こういったケースも珍しいことではないようです。

こちらのニュースをご覧ください。

警視庁の警察官から、理由もなく所持品検査に応じるようもとめられるなど、違法な職務質問をうけて精神的苦痛を負ったとして、東京都内のIT企業につとめるエンジニア(略)が8月21日、都を相手取り慰謝料など計165万円をもとめる国家賠償請求訴訟を起こした。

(略)

東京都中央区にある会社に出勤途中、自動販売機で飲みものを買っていた。そこに制服姿の警察官3人があらわれて、「荷物の中を確認させていただきたい」と、(略)背負っていたリュックの中身を見せるようもとめてきた。

(略)さんは所持品検査に応じる義務はないと考えて拒否したが、警察官は「危険なものが入っているのではないか」と所持品検査に応じるよう、執拗に食い下がった。(略)さんは勤務先に向かうためにその場を離れようとしたが、警察官は回り込むなどして進行を妨げてきたという。

(略)

その後、パトカーが現場に到着するなどして、江添さんは最大10人近くの警察官に取り囲まれてしまった。

(略)

警察官警察官10人に取り囲まれてしまっては、冷静な対応も難しいかもしれません。

任意同行を拒否するとき、その方法としては、「弁護士に頼る」のがおすすめです。

以下に、弁護士に頼るメリットを解説していきましょう。

弁護士を呼ぶメリット

弁護士を盾にすると、捜査機関も警戒し慎重にならざるを得なくなります。

一般市民は捜査の「適法」「違法」の限界ラインを知りません。

警察は、それを踏まえたうえで、強制捜査ともとれる態度に出るのです。

この状態を回避するには、法律の専門家を盾とするのが最も効果的です。

弁護士に頼った時のメリットをまとめてみましょう。

弁護士に頼るメリット
  • 警察官の態度の軟化を見込める。
  • 任意同行の必要性を警察に確認してもらえる。
  • 任意同行後の取調べ段階で、適切なアドバイスをもらえる。
  • 任意同行後、逮捕を避けるために、意見書などを作成してもらえる。

弁護士を呼ぶ際には、事前に出張費用や弁護報酬について取り決めを交わしておくことが重要です。

顧問弁護士がいれば、比較的スムーズに現場に駆けつけてくれることでしょう。

任意同行の拒否についてお悩みなら弁護士に相談!

ここまで、弁護士の解説とともにお送りしました。

任意同行の拒否についてやその仕方について、かなり深いところまで知ることができたのではないでしょうか。

ですが、自分の事件に即してもっと具体的なアドバイスが欲しい! という方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、ここからは弁護士に相談できる様々なサービスについてご紹介します。

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相談してみたい弁護士をぜひ見つけてみてください。

最後に弁護士からメッセージ

では最後に一言お願いします。

任意同行についてお悩みの皆さん。

拒否する、断ると言葉で言うのは簡単ですが、実際に行うにはかなりハードルが高いと感じられるのではないでしょうか。

また、中には家族の方が任意同行に応じ、そのまま帰ってこないという方もいらっしゃるかもしれません。

できるだけ早い段階でご相談をいただければ、弁護士としても取れる対策の選択肢が増えます。

少しでも気がかりなことがありましたら、積極的に弁護士にご相談してください。

まとめ

今回は任意同行の拒否について解説してきました。

任意同行の拒否についてのまとめ
  • 任意同行は、法的に拒否できる。
  • ただし、警察も職務を全うするために中々引き下がらないことも多い。
  • 任意同行を拒否するにあたっては、なるべく穏便に済ますほうが良い。
  • また弁護士を呼ぶのも非常に有効。

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