セクハラの示談金相場|よくあるQAもチェック
2023年7月13日以降の事件は「不同意わいせつ罪」に問われます。
あなたやあなたのご家族・ご友人が、セクハラの加害者になってしまったら…
刑事事件の解決に「示談」が非常に大切なのは、よく知られたことですね。
…でもいざ示談となると、わからないことだらけです。
- 示談金の相場は?
- そもそも示談のメリット・デメリットは?
- 示談の流れ、示談書の書き方は?
疑問や不安でいっぱいになることでしょう…
でも、大丈夫!心配ご無用です。
ここでは、セクハラの示談金やよくあるQAについて、徹底調査の結果をレポートします。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でおなじみ、アトム法律事務所の弁護士にお願いしました。
よろしくお願いします。
今回はセクハラですね。
示談金の相場やよくあるQAを、過去の実績や最新の動向を踏まえて解説していきます。
目次
セクハラの示談金の相場10連発
皆さん、示談といえば、キニナルのはやはり示談金の相場ですよね?
ここでは、セクハラの示談金の相場を見ていきます。
今回は特別に、アトム法律事務所が過去に解決してきた事案の一部を公開してくれました。
いずれも、過去実際にあったセクハラ事件です。
現場で弁護活動してきた我々だからこそ提供できる生のデータ!
どうぞご期待ください。
うーん!
なんとも力強いお言葉をいただきました。
期待、してますしてます!
さあ、まずは示談金が100万円未満だったセクハラのケースから見ていきましょう。
示談金が20万円~50万円程度だったケース
事案の概要 | 示談金 | |
---|---|---|
① | 自宅マンション居室内で、同僚である被害者女性に対し、その体を無理やり触るなどの性的な行為をしたセクハラ事件。 | 20万円 |
② | 同僚女性の自宅に、合鍵を使って無断で侵入したセクハラ事件。 | 20万円 |
③ | 勤務先の建物で女子トイレに侵入し、録画機能付きボイスレコーダーで、同僚の女性を盗撮しようとしたセクハラ事件。 | 30万円 |
④ | 勤務先の居酒屋で、送別会の後、未成年の被害者が泥酔状態である状態を利用して、性交渉に及んだセクハラ事件。 | 30万円 |
⑤ | 路上で、飲酒してひどく酔っ払った上で、同じ勤務先の職員である女性の口に接吻したセクハラ事件。 | 40万円 |
⑥ | 勤務先の更衣室内で、同僚である被害者を盗撮する目的で、自分の携帯電話をパーティションの向こう側に差し入れたセクハラ事件。 | 53万円 |
①②を見ると、被害者が面識ある人だと低めの金額で示談できる感じなんでしょうか。
⑥は③に似てますが、被害者が違うと示談金の額も倍近く変わってくるのですね。
示談金が100万円を超えたケース
事案の概要 | 示談金 | |
---|---|---|
⑦ | 路上に駐車中の車両内で、部下である被害者のブラジャー内に手を入れてその左乳房を揉み、ショーツ内に手を差し入れてその陰部を触るなどのわいせつな行為をしたセクハラ事件。 | 100万円 |
⑧ | 居酒屋で行われた以前の出向先の職員との飲み会の席において、同会に参加していた被害者女性の乳房を指で強く押すなどしたセクハラ事件。 | 130万円 |
⑨ | 居酒屋で、職場の送別会に参加した時に、同僚である被害者に対し、その意思に反して抱きついたり、服の下に手を差し入れたセクハラ事件。 | 150万円 |
⑧⑨あたり、飲み会とはいえ、限度をこえたセクハラをすると、示談金が100万円以上になってしまうんですね。
事案の概要 | 示談金 | |
---|---|---|
⑩ | 自分が院長を務める歯科医院で行った食事会の後、従業員をホテルに連れ込んでわいせつな行為をしたセクハラ事件。 | 1000万円 |
⑩はかなり特殊な例だとは思いますが、職業柄、示談金が相当額以上に増えてしまったんですかね。
さて、10件の実例を通して、セクハラの示談金の相場が見えてきたでしょうか。
なお、その他の示談金の相場はこちらからかんたんに確認できるようにしておきました。
以下ではセクハラの示談に関するよくあるQAを見ていきます。
一つ一つ、弁護士先生に答えていただくので、安心してご覧ください。
セクハラの示談に関するよくあるQA
セクハラの示談とは?
そもそもセクハラはどんな犯罪?
セクハラの示談について知りたいのはもちろんですが、その前に…
- そもそもセクハラとはどんな犯罪なのか?
- セクハラをすると、どんな刑罰が待っているのか?
というところからですよね。
先生に解説していただきましょう。
セクハラは、セクシャルハラスメント(性的な嫌がらせ)の略語です。
セクハラの全てが刑事事件になるわけではありません。
しかし、時として
- 刑法に定められた強制わいせつ罪
- 各都道府県が定めている迷惑防止条例違反
にあたることがあります。
フムフム。セクハラは強制わいせつ罪や条例違反になるんですね。
では、ひとまず刑法の強制わいせつ罪の条例を見てみましょう。
刑法176条は「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」と定めています。
わあ!強制わいせつ罪になると、刑罰がとても重いですね。
一番長いと懲役10年とは…
ちなみに、条例は各都道府県によって異なります。
代表例として、東京都や大阪府の条例では、セクハラは6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。
こっちも結構重いですよね。
以下、「懲役」や「罰金」の意味を詳しく聞いてみましょう。
「懲役」とは、懲役刑のことで、セクハラで有罪判決を受けた人物を刑務所に収監し、刑務作業を行わせる刑罰をいいます。
もっとも、刑事裁判で懲役刑が言い渡されても、加害者側に有利な事情も考慮されて執行猶予になれば、直ちには刑務所に収監されません。
執行猶予になると、直ちに刑務所には収監されず、執行猶予期間中は社会で日常生活を送ります。
そして執行猶予期間内に再び犯罪を犯さなければ、刑務所への収監を免除されます。
執行猶予期間中に再び犯罪を犯した場合、執行猶予が取り消されて、その取消しの時から懲役刑の刑期分、刑務所に収監されます。
「罰金」とは、罰金刑のことで、セクハラで有罪判決を受けた人物から一定の金銭を強制的に取り立てる刑罰をいいます。
セクハラの場合、たとえば大阪府や東京都の条例によると、50万円を超える罰金を科すことができないため、悪質なセクハラ事件に対しては、罰金刑ではなく懲役刑が言い渡されることになります。
強制わいせつ罪の意味についてもっと知りたい方には、この記事が役立ちそうです。
セクハラの意味についてもう少し読んでみたい方には、こちらもオススメです。
懲役 | 罰金 | |
---|---|---|
意味 | 刑務所に収監し、刑務作業を行わせる刑罰 | 一定の金銭を強制的に取り立てる刑罰 |
条例違反 | 6ヶ月以下の懲役 | 50万円以下の罰金 |
強制わいせつ罪 | 6ヶ月以上10年以下の懲役 | 罰金刑はなし |
セクハラの示談の効果は?
さて、刑法の強制わいせつ罪や条例違反になり得るというセクハラ事件。
- セクハラで示談をするとは、どういう意味なのでしょう?
- 示談をした場合、どんな効果があるのでしょう?
セクハラの示談とは、セクハラによって生じた賠償金をめぐるトラブルを、加害者と被害者の合意をもって解決することをいいます。
示談書の作成は、示談成立の必要条件ではありません。
しかし、その後のトラブル(「示談が成立した、しない」の言い争い)を防ぐためにも、示談書を作成することが大切です。
示談が成立すると、その効果として、セクハラの加害者は、被害者に示談金を支払い、その他の示談の条件を履行する義務を負います。
セクハラの被害者は、加害者が示談の条件を履行しない場合、成立した示談書を証拠として、その後の民事手続きを有利に進めることができます。
へえ~
「示談」っていうのは、犯罪で生じた賠償金問題を、当事者たちが合意で解決することなんですね。
後々の「言った、言わない」トラブルを避けるためにも、示談書の作成は必須ですね!
加害者側 | 被害者側 | |
---|---|---|
意味 | セクハラの賠償金のトラブルが当事者間の合意によって解決した | セクハラの賠償金のトラブルが当事者間の合意によって解決した |
権利・義務 | 示談金の支払い義務が生じる | 示談金を受け取る権利が生じる |
セクハラの示談のメリットは?
加害者側のメリット
さて、加害者はもちろん、被害者にとってもなかなか良さそうな「示談」。
ここはズバリ、示談にはどんなメリットがあるのか聞いちゃいましょう。
先生、セクハラで示談をする加害者にとってのメリットってなんですか??
セクハラの示談が成立すると、その後の刑事手続きにおいて、加害者は示談が成立しなかった場合に比べ有利に扱われます。
具体的には、不起訴となり刑事裁判にならないことで、前科がつかない可能性が高まります。
刑事裁判や前科がつくのを避けられれば、社会復帰もスムーズです。
セクハラの加害者側にとって、示談のメリットは非常に大きいです。
おお~メリット押しですね。
刑事処分が軽くなる可能性が高いということで、加害者はぜひとも示談したほうが良さそうです。
被害者側のメリット
加害者にとって、とてもメリットの大きそうな示談ですが…
示談は被害者にとっても、メリットがあるのでしょうか?
セクハラの示談が成立すれば、被害者は民事裁判などの面倒な手続きを経ることなく、賠償金を受け取ることができます。
もっとも、示談の成立と同時に賠償金を受け取らなければ、その後加害者に逃げられてしまうリスクもあるため、注意が必要です。
加害者に逃げられてしまった場合、賠償金を受け取るためには、示談書を証拠として民事裁判などの手続きを取る必要が出てきます。
とはいえ、セクハラの被害者側にとって、示談のメリットはやはり大きいです。
なるほど。
示談をした場合、被害者は民事裁判とかしなくても、早期に賠償金を受け取れるんですね。
やはり示談は、加害者・被害者双方にとってメリット尽くしのようです。
次は反対に、セクハラで示談をするデメリットを見ていきましょう。
セクハラの示談のデメリットは?
加害者側のデメリット
示談は加害者・被害者どちらにとってもメリットが大きいということでしたね。
では逆に、デメリットはあるのでしょうか。
まずは加害者側から見ていきましょう。
セクハラの加害者側にとって、示談成立のデメリットは特にありません。
仮に示談が不成立に終わると、
- 被害者に対する賠償責任を負い続ける
- 刑事処罰が軽くならならない
というデメリットを負います。
しかし示談が成立すると、加害者側にとっては良いこと尽くしで、デメリットはありません。
示談交渉を依頼することで、弁護士費用はかかるでしょう。
しかしセクハラで逮捕されたなんて知れたら、仕事をクビになるのは必至です。。
事件のスムーズな解決を手伝ってもらえるのだったら、弁護士費用の出費は当然のことですよね。
加害者にとって、示談成立のデメリットはありません。
…ということで、加害者はやはり積極的に示談を目指すべきです。
被害者側のデメリット
では最後に、セクハラで示談することによる被害者側のデメリットを見てみましょう。
セクハラの被害者側にとって、示談成立のデメリットは、加害者に対する刑事処罰が軽くなることです。
示談が成立したという事実は、その後の刑事手続きにおいて、加害者に有利に扱われます。
ですから示談が成立していると、加害者に対する刑罰は軽くなる傾向にあります。
セクハラの被害者は、加害者に対して強い処罰感情を抱いているケースも多いでしょう。
加害者の刑事処分が軽くなるのは、被害者にとってはデメリットといえるでしょう。
そうか。示談が成立すると、加害者への刑事処分が軽くなっちゃうんですね。
それは確かに、被害者にとっては納得のいかない事態かもしれません。
自分がセクハラの被害者だったら、
- 加害者と示談して早々に賠償金を受け取るか…
- 示談をせず、加害者に重い刑事処分が下されるのを待つか…
なかなかに迷うところです。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
示談成立のメリット | ①賠償責任を免れる ②不起訴の可能性が高まる | 早期に賠償金を得られる |
示談成立のデメリット | 特になし | 加害者に対する刑事処罰が軽くなる |
セクハラの示談の流れとは?
では実際に示談するとして、気になるのは示談の流れです。
具体的に、まずはどうしたらいいのか。
示談はどんな風に進んでいくのか。
先生、教えていただけますか?!
セクハラの示談の流れは、通常の事件の示談の流れと同じく、加害者側と被害者側との交渉により進行します。
セクハラの加害者が被害者の連絡先を知っている場合、当事者同士で示談の話し合いを進めることができます。
示談成立の流れとしては、
①話し合い
↓
②示談条件の確定
↓
③示談書の作成
↓
④示談金の支払い
↓
⑤示談書にサイン
という流れを経ることが多いです。
これに対して、セクハラの加害者が被害者の連絡先を知らない場合、示談を進めるためには弁護士を選任する必要があります。
弁護士を選任すれば、警察官や検察官から被害者の連絡先を聞けるケースが多いからです。
弁護士を選任した後は、弁護士が被害者と話し合って、示談が成立することになります。
うーん。わかりやすい!
まずは被害者と連絡がとれなければ、示談もなにもないわけですね。
弁護士に頼むなりどうにかして、被害者と連絡をとること。
これが示談の第一歩ということです。
加害者側 | 被害者側 | |
---|---|---|
相手の連絡先を知っている | 自分で示談を進めることが可能 | 自分で示談を進めることが可能(※) |
相手の連絡先を知らない | 弁護士を選任する必要がある | 弁護士を選任する必要がある |
※ただし、加害者の側から示談の申し入れがあるまで待つことも多い
セクハラの示談書の書き方は?
セクハラ事件を起こしてしまったら、積極的に示談するのが良さそうということがわかりました。
示談金の相場も示談の流れも、だいたい分かりました。
でも先生、肝心の示談書の書き方とやらがさっぱり分かりません!
セクハラの示談書の書き方は、通常の示談書の書き方と特に変わりません。
ポイントは、示談の対象と内容を明確にすることです。
示談書には通常、以下の項目を盛り込んでいきます。
①事件の内容(日時、場所、加害者・被害者の氏名など)
②示談金の金額、支払方法
③示談書に記載されたもの以外の賠償義務がないこと(清算条項)
④加害者と被害者の署名
⑤被害者が加害者を許すこと(宥恕条項)、被害者が告訴を取り下げること(告訴取消)
示談金の一括払いが難しい場合は、分割払いの合意を結ぶことも可能です。
示談書に、「被害者は加害者のことを許します」という旨の宥恕条項(ゆうじょじょうこう)を設けた場合、その後の刑事手続きでは加害者に有利に考慮されます。
へえ~!
期待を裏切らず、非常にわかりやすく教えてくださいました。
示談書にはいくつか盛り込むべき項目があるんですね。
ここで教わったことをきちんと踏まえたら、ちゃんと示談できそうで心強いです。
書き方 | 要否 | |
---|---|---|
事件の内容 | セクハラ事件が起こった日時、場所、加害者と被害者の氏名などを記載する | 一般的によく盛り込まれる |
示談金の記載 | 示談金の金額と支払い方法を記載する | 一般的によく盛り込まれる |
清算条項 | 示談書に記載されたもの以外の賠償義務がないことを記載する | 一般的によく盛り込まれる |
署名 | 被害者と加害者双方がサインする | 一般的によく盛り込まれる |
宥恕条項 | 加害者を許す旨の文言を書く | 任意 |
告訴取消 | 被害者が告訴を取り下げる旨の文言を書く | 任意 |
さて先ほど既にご紹介した以下の記事ですが、セクハラ事件の示談についても詳しいので、是非チェックしてみてください。
またセクハラは強制わいせつ罪にもなり得ますので、強制わいせつ罪の示談についてはコチラがおすすめです。
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最後に一言アドバイス
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