警察の「任意同行」を拒否すると公務執行妨害?弁護士に聞く対処・断る方法
「署までご同行願えますか?」
ドラマや映画で聞いたことのあるセリフですよね。
これはいわゆるニュースなどでもよく目にする任意同行です。
任意同行とはいったいどういう意味だろうと思われている方。
または、実際に警察から任意同行を求められ、お困りの方もいるかもしれません。
「身に覚えがないし、任意同行を拒否したい…」
そう思っても拒否すると逮捕されてしまうのではないか…と不安になりますよね。
- そもそも任意同行とは?
- 任意同行って拒否できるの?
- 拒否すると公務執行妨害になる?
など、任意同行に対するギモンを解消していきましょう!
本日のテーマは「任意同行の拒否」についてです。
専門的な部分の解説はテレビでもおなじみの弁護士、アトム法律事務所の弁護士にお願いします。
目次
任意同行はあくまで「任意」で行われる捜査です。
「行きません」と拒否すれば警察署に出頭する必要はないのでしょうか。
しかし、ネットにはこんなつぶやきもありました。
このようなウワサもありますが、本当なのでしょうか…
本当にやましいことがないから拒否したのにクロと判断されてしまっては困ります!
まず、条文や実例を見ながら「任意同行」について知っていきましょう!
警察からの任意同行を拒否したい!
そもそも任意同行の意味は?根拠は?
ドラマや映画で何気なく「任意同行」という言葉が使われていますが、一体どういう意味なのでしょう。
任意同行とは一般的に
捜査官が犯罪の疑いのある人の居宅等に赴き、犯罪の疑いのある人の同意を得て警察署等まで同行させること
ということです。
いわゆる逮捕とは全く別のものになります。
刑事訴訟法の197条ではこのように記されています。
捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。
但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
出典:刑事訴訟法 第197条第1項
つまり、任意の同行は求めることができますが強制捜査は行えないということです。
強制捜査とは逮捕・勾留(こうりゅう)・捜索・押収などのように、対象者の意思に反して行う捜査のことです。
強制捜査は令状が必要です。
さらに法律に規定のある場合にのみ行うことができます。
任意同行された時点で、逮捕の直前の段階となっているケースも多くあります。
まだ逮捕するだけの証拠がない場合に取り調べをし、条件がととのったところで逮捕手続きをするという場合もあります。
逮捕状が発付されている場合にも、まず任意で同行させ、のちに逮捕状が執行されることもあるようです。
任意同行って強制?拒否権はないの?
刑事訴訟法第197条第1項でも記されていたように、任意同行は強制捜査ではありません。
しかし、このように「拒否」することに対して不安な方もいらっしゃるようです。
実際、警察が家まで来て「署までご同行お願いします。」なんて言われたら抵抗するのが難しそうですよね。
本当に「拒否」することが可能なのか不安になります。
「逮捕」は強制捜査ですが、「任意同行」は異なります。
「逮捕」は任意ではないので拒否することはできませんし、逮捕から逃れる方法もありません。
しかし、現行犯でもなく、逮捕状もない場合は、「警察署に来てくれ」と言われても、それは任意同行です。
任意同行は任意の捜査なので断ることができます。
「任意同行」の場合は拒否してしまっても大丈夫なようです。
また、刑事訴訟法 第198条第1項にもこのように記されています。
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。
但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
出典:刑事訴訟法 第198条第1項
「出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる」
ということは
- 警察署へ同行するのを拒否できる
- 出頭した後でも自由に退去する権利がある
ということですね。
出頭した後、身体を拘束するなどして警察官が退去を無理やり引き止めれば、違法な捜査となります。
身に覚えがない任意同行であれば、警察署には出頭しないこともできます。
こちらに任意同行と逮捕を検証した表がありますのでご覧ください。
任意同行 | 逮捕 | |
---|---|---|
拒否 | できる | できない |
令状の要否 | 不要 | 必要 |
【注意!】任意同行拒否で公務執行妨害?!
①任意同行拒否の公務執行妨害とは
任意同行を拒否できる権利があるというのはわかりました。
しかし、拒否した際に公務執行妨害にはならないのでしょうか。
「公務執行妨害で逮捕!」
なんて言葉をよく聞きますよね。
任意同行を拒否する権利があるのに拒否すると逮捕、となるとたまったものではありません。
Twitterでもこのような声があがっています。
本当に任意同行を拒否しただけで公務執行妨害で逮捕されてしまうのでしょうか。
まず初めに「公務執行妨害」についてみていきたいと思います。
公務執行妨害とは公務員の職務遂行を暴行や脅迫などにより妨げることをいいます。
条文にもこのように記されています。
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法 第95条
「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」
と記載されていますね。
決して軽い罪ではありませんね。
任意同行の公務執行妨害についてこのようなウワサもあります。
こちらのつぶやきのように
- 任意同行から逃げようとして警察官などに暴行を加える
- 警察官を脅迫する
などの行為に当てはまれば公務執行妨害と見なされ逮捕されてしまう可能性があります。
任意同行を口頭で拒否しただけでは公務執行妨害にはなりません。
任意同行を拒否する際に、警察官の身体を押しのける、殴るなどの行為をすると公務執行妨害にあたります。
暴行の意思がなくても、少し手が触れた、などでも公務執行妨害と見なされるケースも実際にあるので注意が必要です。
突然、警察に囲まれて「任意同行お願いします」なんて言われたら動揺してしまいます。
しかし、そこで無理やり逃げようとしたり、警察官に危害を加えると公務執行妨害になる可能性もあります。
パニックになる気持ちもわかりますが、そこは冷静に対処しましょう。
実際に公務執行妨害で逮捕されている例もあるので実例をみてみましょう。
実例①
こちらのニュースでは実際に殴るなどの暴行を加えたわけではありませんが、逮捕されています。
家出中に事情を聴こうとした警察官を自分の車に乗せ、制止を無視して兵庫県加古川市から同県姫路市の自宅まで約23キロ走り続けたとして、兵庫県警加古川署は9日、公務執行妨害容疑で(略)を現行犯逮捕した。(略)
署までの任意同行を求めようと(略)の車の後部座席に乗り込んだところ、(略)は車を発進。
署員や追跡するパトカーの制止を無視し、30分以上にわたって高速道路などを運転し続け、約23キロ離れた自宅まで走り続けた。
出典:産経WEST 2017.6.10 09:05
実例②
こちらはかなり手荒で、「殺人未遂」と「公務執行妨害」の容疑で逮捕されています。
このにニュースのような場合は逮捕されてしまいます。
覚醒剤の所持容疑で捜索中、車を急発進させて警察官を約30メートル引きずって殺害しようとしたとして、千葉県警薬物銃器対策課は16日、殺人未遂と公務執行妨害の疑いで、(略)逮捕したと発表した。(略)
県警で(略)を指名手配し行方を追っていたところ、同日中に袖ケ浦市内で乗り捨ててあった乗用車が見つかった。
(略)は勤務先の社長に相談するなどし、15日に富津市内にいたところを任意同行。同日夜に勝浦署員が逮捕した。
出典:千葉日報 2017年6月17日 05:00
【弁護士に聞く!】任意同行は拒否できる?Q&A3選
Q1.任意同行と職務質問の違い
「夜道を歩いていると職務質問をされた」
なんて話を聞いたことがありますよね。
もしくは実際に職務質問を受けたことがある、という方もいるのではないでしょうか。
「任意同行」と「職務質問」こちらは混同されがちですが全く別のものです。
まず、職務質問とは簡単に言えば警察官が、不審な人物をを呼び止めて質問することです。
警察官職務執行法にも次のように記されています。
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
出典:警察官職務執行法 第2条 第1項
もし、何も犯罪を起こしていないのに職質されたらたいへん不愉快に思いますね。
拒否して立ち去りたい気持ちもよくわかります。
任意同行と同様に職務質問も拒否することができるのでしょうか。
職務質問も任意の捜査なので拒否することが可能です。
しかし、職務質問に答えず無理に逃走すると余計なトラブルに発展してしまう可能性もあります。
職務質問は、その場で警察官の質問に対して何らかの回答をし、問題なければ終了します。
なので、素直に答える方がよい場合もあるでしょう。
やましいことがないのであれば、いい気分ではないかもしれませんが大人しく職務質問に答える方が賢明かもしれません。
通常は職務質問は声をかけられたその場で行われます。
しかし、任意同行は警察署まで連れて行かれてから捜査が行われるのでその点で職務質問とは異なるといえます。
任意同行 | 職務質問 | |
---|---|---|
根拠法令 | 刑事訴訟法 | 警察官職務執行法 |
拒否 | できる |
Q2.任意同行を断る方法は?
身に覚えがあるとき
実際に犯罪を犯している場合は素直に任意同行を受け入れた方がよいでしょう。
冒頭でも触れましたが、任意同行を求められた時点で、逮捕の直前の段階となっているケースも多くあります。
任意同行を求められた際に暴れたり、警察官に怪我をさせたりすれば事態は悪化します。
身に覚えがないとき
この場合は出頭する必要はなく、警察署へ同行しないことも可能です。
この場合はまず口頭で任意同行を拒否することが考えられます。
無理に逃げようとしたり、警察官を脅迫したりすれば「公務執行妨害」になる可能性があります。
Q3.任意同行の違法の判例を知りたいです
捜査機関側の違法な任意同行もあったりするのでしょうか…
捜査機関は令状が発付されていない限り強制的な捜査はできないはずですが…
実際にこんなニュースもありました。
大阪地裁は24日、覚醒剤取締法違反(使用)の罪に問われた男性被告(55)に無罪(求刑懲役2年)を言い渡した。
大阪府警の巡査長が採尿のための捜索差押令状を示さないまま、被告を押さえつけるなどした行為が適法かが争われていた。
飯島健太郎裁判長は「任意捜査の限度を超えた逮捕行為というほかない」と述べ、制止行為を違法と判断した。(略)
弁護側は令状提示前の制止の違法性は重大で、その後の採尿も「違法な証拠収集」と無罪を主張。
検察側は「実力行使は必要やむを得ない限度を超えていない」と反論していた。
公判では被告側が撮った制止時の動画が証拠採用された。
弁護人の秋田真志弁護士は「意義ある判決。警察はひどい暴力をふるい、うそもついていた」と話した。
出典:朝日新聞 2017年3月24日12時43分
逮捕でもなく、このように令状がでていない状態でこのような捜査は任意捜査としての限度を超えているという内容です。
違法な捜査かどうかという基準は
- 任意同行を求めた時間・場所
- 任意同行の方法
- 任意同行を求める必要性
- 任意同行後の取り調べ時間・方法
- 監視の状況
など諸般の事情を考慮して判断されることになります。
例えば任意同行の捜査の際にトイレの中まで監視する、などは任意捜査としての許容限度を超えています。
「任意捜査」は「逮捕」とは違います。
任意捜査としての許容限度を超えてはいけません。
許容限度を超えて、実質的に逮捕に至るものとなっていないかが留意点です。
任意同行が違法捜査であった場合、国家賠償請求を行うことが可能なのだそうです。
国家賠償請求とは、公務員による公権力の行使について、国や地方自治体にその賠償を求めることです。
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最後にひとこと
「任意同行」は拒否できるということがわかりました。
しかし、拒否する際にも気をつけるべき点がありましたね。
自分が任意同行を求められる立場になってしまったら気をつけましょう。
最後にアトム法律事務所の弁護士からひとことお願いします。
「任意同行」を拒否する際に「公務執行妨害」にならないように注意しましょう。
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