刑事事件における起訴後の流れは?起訴されたら有罪率は?起訴件数や起訴状も解説!
刑事事件で起訴後の流れはどうなる?
そんな疑問をお持ちの方のために、刑事事件における起訴について解説します。
- 起訴状が提出された後の流れ、「公判」や「裁判」の意味は?
- 起訴件数や「起訴率」はどの程度?
- 起訴されたら有罪率はどのくらい?
他にも釈放、起訴までの期間・期限、懲戒解雇、前科から、起訴取り下げ、被害者との示談など、起訴に関する情報を全てお届けします。
法的な解説は、刑事事件の経験豊富なアトム法律事務所の弁護士にお願いしていきます。
よろしくお願いします。
刑事事件で起訴されると、「公判」がどんどんと進んでいってしまいます。
その中で有効な主張が何かを知るためにも、起訴後の流れや気を付けるべきポイントを解説していきます。
目次
刑事事件で検察官による「起訴」とは。「公判」の意味や、逮捕からの「期間・期限」もチェック。
刑事事件で検察官からされる「起訴」。
一体どのような意味なのでしょうか。
「起訴」・「公判」の意味を解説。裁判とは違う?
まず、「起訴」と「公判」の関係についてみていきましょう。
この公訴の提起、代表的なものとして3つの種類があります。
それが
公訴の提起
- ① 公判請求
- ② 略式命令の請求
- ③ 即決裁判手続きの申立て
の3つです。
ここで「公判」という言葉が出てきましたね。
「公判」とは、刑事裁判において、公判期日に法廷でなされる審理をいいます。
検察官と弁護人・被告人が裁判官の面前で主張立証を行う審理方法です。
弁護士ドラマで出てくる法廷のイメージ通りです。
公判という審理方法を裁判所に請求することを、公判請求というのですね。
そして起訴の一種類として公判請求があることも分かりました。
一方
略式命令の請求も大変重要です。
「略式命令」とは、簡易裁判所から、その管轄に属する刑事事件について、公判前に、一〇〇万円以下の罰金又は科料を科される裁判をいいます。
「公判前に」という点が重要ですね。
非公開の簡易な手続きで、迅速に事件を終結させられる点が特徴です。
この請求をするためには、「簡易裁判所に属する事件」で、「被疑者が罪を認め」、かつ「略式手続によることに被疑者の異議がない」ことが必要です。
なお、この略式命令請求のことを「略式起訴」といいます
ここで、略式起訴に関する統計を見てみましょう。
2016年に公判請求された人数は 87,735人でした。
一方、略式起訴をされた人数は 264,934 人となりました。
これを表にすると、以下のようになります。
起訴の種類 | 件数と倍率 |
---|---|
公判請求 | 87,735件 |
略式起訴 | 264,934件 |
倍率 | 略式が3.01倍 |
※犯罪統計2017による。
何と略式命令請求が公判請求の3倍の量となっています。
略式命令請求の重要さが分かりますね。
なお
この統計の数値には注意が必要です。
実はこのデータ、自動車事故に関連する事件が大きな影響を及ぼしています。
自動車事故は件数が圧倒的に多いうえに、略式起訴の割合が非常に高い事件です。
参考のために、2016年における「自動車関連事件を除いたデータ」もみてみましょう。
起訴の種類 | 件数と倍率 |
---|---|
公判請求 | 74,339件 |
略式起訴 | 45,171件 |
倍率 | 略式が0.61倍 |
※自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く ※検察統計2017による。
なんと自動車関連事件を抜くと、略式起訴の方が少ない割合になっています。
自動車関連事件は実社会で多く、略式起訴も重要ですが、他の犯罪では略式起訴が多いとは断言できない点にご注意ください。
次に
「即決裁判手続きの申立て」については、最高裁判所のホームページでこう記載されています。
検察官は、事案が明白かつ軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、起訴状を裁判所に提出する際に、即決裁判手続の申立てをします。その後公判期日において被告人が自らが有罪であると述べ、裁判所が相当と認めた場合には、裁判所は即決裁判手続で審判する旨の決定を行います。
出典:裁判所公式HP(http://www.courts.go.jp/saiban/qa_keizi/qa_keizi_37/index.html)
軽微な事案で、罪を認めている場合に即決裁判手続きになる可能性があるということですね。
なお「即決裁判手続きの申立て」は公判請求と同時にするため、「略式起訴」とその点で異なることにご注意ください。
そして
即決裁判手続きには、以下のような特徴があります。
即決裁判手続き
- ① 懲役・禁錮を科す場合は、必ず執行猶予が付される。
- ② 原則として起訴から14日以内に公判期日が開かれる。
- ③ 証拠調べも簡略な方法で行われ、原則として「その日」のうちに判決」が言い渡される。
簡潔な手続きで迅速に終了させるこの手続きですが、注意も必要です。
これによれば判決で認定された犯罪事実が誤りだと主張して、上訴の申立てができません。
やってもいない罪を認めていないか、弁護士に相談してしっかりと考えましょう。
以上
「起訴」と「公判」の意味、関係についてお伝えしました。
一方、同じように「裁判」という言葉もよく聞きますよね。
裁判とは「司法機関である裁判所又は裁判官から、具体的事件についてされる公権的な判断」をいいます。
法的には審理そのものではなく、審理によってされる「判断」を指します。
判決などが具体的な例です。
「公判」の結果、裁判所のする判断が「裁判」ということです。
もっとも、一般的には公判のことを裁判という方もいらっしゃるようですね。
この記事では法的な意味で、裁判と公判という言葉を使いわけていきます。
以上
起訴と公判の意味、裁判との違いをみてきました。
逮捕から起訴までに「期間・期限」があるのか?起訴までの流れを確認!
被疑者が「逮捕されている場合」、警察や検察には期間制限・期限があるのをご存知ですか。
検察が起訴するか否かを決めるまでに、被疑者が拘束される期間・期限についてみていきましょう。
まず
覚えておいていただきたい数字があります。
それが、「48時間」、「72時間」、「23日間」です。
この数字がどんな意味を持つのか、見ていきましょう。
警察での流れ(48時間)
まずは「48時間」から見ていきましょう。
警察から逮捕された場合、事件と身柄は原則として「48時間以内」に検察官に送られます。
証拠や供述調書と共に事件が検察官に送られることを、「検察官送致(送検)」といいます。
最初の数字、「48時間」が出てきましたね。
まず逮捕されると、警察から取り調べを受けます。
ここで警察には3つの選択肢があります。
それがこちらです。
- ① 釈放
- ② 微罪処分
- ③ 送検
まず警察は取り調べの結果「犯罪の嫌疑がない」、「逃亡や罪証隠滅のおそれがない」と判断したときはすぐに釈放しなければなりません。
これらが、逮捕による身柄拘束が認められる要件だからです。
もっとも
釈放した場合でも事件の検察官送致はされます。
嫌疑がない場合には、送致先の検察官が不起訴と決めることになります。
身柄を拘束せずに送検することを、「書類送検」といいます。
続いて、「微罪処分」をご説明しましょう。
「微罪処分」とは、検察官があらかじめ指定した、犯罪事実が極めて軽微事件について、送検せずに終結させる処分です。
警察で注意だけ受けて帰ってくる場合、微罪処分になっている可能性があります。
まとめると、微罪処分にならない場合は、逮捕から48時間以内に警察から検察へと送致されます。
釈放された場合も送検はされますが、こちらは時間制限がありません。
検察での流れ(72時間)
続いて「72時間」という制限についてです。
送検された後は、
- 検察官が被疑者を受け取ってから24時間以内、かつ
- 逮捕から72時間以内に
以下のような判断を検察官からされます。
送検後
送検後、まず検察官から起訴されるかどうかを判断されます。
証拠が揃った場合には、早期に起訴される場合もあるでしょう。
起訴されない場合
一方すぐに起訴されない場合、次に
勾留の請求をするか否か
が判断されます。
勾留とは簡単にいえば「より長期の身体拘束」です。
詳しくは後述します。
勾留請求されない場合
勾留の請求がされない場合は、釈放されることになります。
起訴については、上で詳しくお伝えしましたので、まずは勾留についてご説明しましょう。
「勾留」とは、
- ① 被疑者又は被告人が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ、
- ② 住居不定・罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれか一つの理由があるとき
に拘禁されることをいいます。
勾留されると、留置場から自由に帰ることができません。
より長期の取り調べが必要な場合などに、勾留請求をされることになります。
勾留請求が認められれば、さらに長期間拘束されることになります。
これについては次の章でご説明します。
今は、勾留請求には逮捕から72時間という期限があることだけ押さえておいてください。
起訴されず、勾留請求もされない場合は、「不起訴処分」として釈放されることになります。
「不起訴処分」とは、起訴しないと検察官が決めることです。
嫌疑がない、証拠が不十分という場合に加え、犯人と明白な場合でも被害状況や情状などから不起訴になることもあります。
後者の不起訴処分を起訴猶予といい、検察統計によれば2016年の起訴猶予処分は不起訴処分全体の70.40%にも及びます。
不起訴処分の詳細については以下の記事をご覧ください。
検察での流れ(23日間)
では検察官による「勾留請求がされ、裁判官から認められた場合」についてお伝えしましょう。
まず勾留は「勾留を請求した日」から「10日間」認められます。
さらに、事案が複雑など、やむを得ない事情がある場合には勾留の延長も認められることがあります。
この延長も最長で「10日間」とされています。
内乱・外患・騒乱罪など、特別な場合を除き、原則として「20日間」が被疑者が勾留される最長期間です。
逮捕から勾留請求まで最長72時間拘束されますから、逮捕されると被疑者は最長で「23日間」拘束される可能性があるということになります。
最後のキーワード、「23日間」が出てきました。
これが逮捕された場合の、起訴判断までにかかる最長期間ということですね。
これらをまとめると以下の図のようになります。
出典:https://atomfirm.com/wp-content/uploads/nagare.png
この最長23日以内に、検察官は起訴か釈放を決めることになります。
なお、時間制限内に起訴できるだけの証拠がなかった場合、起訴か不起訴の判断をせずに釈放することもあります。
それを「処分保留」といいます。
以上、逮捕された場合の期間制限・期限についてお伝えしました。
期間・期限まとめ
逮捕された場合、原則として23日間以内に起訴されるかどうかが決められる。
ではこのような時間制限の中で、検察官に起訴された場合、その後の流れはどうなっていくのでしょうか。
刑事事件で起訴後の流れはどうなる?
裁判は起訴状の提出から始まる…起訴後の流れを追う。起訴状は誰でも閲覧できる?
では起訴後の流れを見ていきましょう。
先ほど述べたように起訴には
- ① 公判請求
- ② 略式命令の請求(略式起訴)
- ③ 即決裁判手続きの申立て
の3つがありましたね。
それぞれについて見ていきたいと思います。
公判請求後の流れ(公判開始まで)
まず全ての起訴において、検察官から起訴状が提出されます。
1 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
①被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
②公訴事実
③罪名
3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
出典:刑事訴訟法256条1項~3項
被告人の特定と、どんな行為がどんな罪にあたると検察官が考えるのかを記載した起訴状を提出するということですね。
そして、裁判所はこの起訴状の謄本を被告人に送達することになります。
なお、これら詳しい情報が記載された起訴状。
誰にでも見られてしまう可能性があるのでしょうか。
これに関し、刑事訴訟法53条では「事件の終結後は誰でも訴訟記録を閲覧することができる。」としています。
そのため誰からでも閲覧されてしまいそうですよね。
ですが
一方で同法はこうも定めています。
訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。
出典:刑事訴訟法53条1項但書
実際はこの規定を理由に、正当な理由がなければ起訴状は閲覧を断られることもあるようです。
とはいえ、法律上は可能であることは知っておいてください。
次に
弁護人に関する通知がなされます。
すなわち、
- ① 弁護人が選任できる。
- ② 貧困などにより弁護人を選任できない場合の、国選弁護人を選任できる。
- ③ 事件によっては、弁護人がいなければ開廷できない。
旨が通知されます。
実務では、これらの通知が「弁護人選任に関する通知及び照会」という書面で行われます。
そして、準備に必要な期間を考慮したうえで裁判長が第一回公判期日を決め、通知されることになります。
事件によって変動しますが、だいたい起訴から40日後、1か月後を第一回公判期日とすることが多いようです。
また
これらと同時にされる大変重要なものが「勾留」です。
先ほども検察官が請求する勾留を見てきましたね。
被疑者が勾留される点から「被疑者勾留」といわれます。
一方起訴された後は被告人となるため、ここでみる勾留は「被告人勾留」ともいわれます。
起訴後にされる勾留を「被告人勾留」という。
被告人勾留は、以下の場合に、裁判官から決められます。
被告人勾留の要件
被告人が
- ① 定まった住居を有しない、
- ② 罪証隠滅を疑う相当な理由がある、
- ③ 逃亡を疑う相当な理由がある
いずれかの場合にあたること。
「すでに逮捕・勾留がされていた場合」は、そのまま被告人勾留へと切り替わります。
被疑者勾留の場合は、各警察署にある留置場に入れられていることが多いです。
ですが起訴後も警察の管理下にあることは不当として、法務省が管轄する「拘置所」に移送されることがあります。
どちらにせよ、勾留されると、自由に家に帰ることはできません。
なお
「被告人勾留の期間」は「公訴提起」から「2か月」となっています。
その後継続する必要がある場合には1ヵ月ごとに更新」されていきます。
被疑者勾留 | 被告人勾留 | |
---|---|---|
効果 | 自由に帰れない | |
最初の期間 | 10日 | 2か月 |
延長できる期間 | 原則10日を超えられない | 1ヵ月ごとに更新できる |
勾留中でも、場合によっては保釈が認められることがあります。
報道などでもよく聞くこの「保釈」。
詳しくは後でお伝えします。
公判請求後の流れ(公判開始以降)
では第1回公判期日が来ると、どのように公判は続いていくのでしょう。
大きな流れをまず見ていきます。
公判の流れ
- ① 冒頭手続き
- ② 証拠調べ手続き
- ③ 弁論
- ④ 判決
冒頭手続き
冒頭手続きは
- ① 被告人が人違いでないかの確認質問
- ② 起訴状の朗読
- ③ 黙秘権などの権利告知
- ④ 被告人・弁護人の陳述
の順で進んでいきます。
起訴状朗読によって検察側の主張がされ、黙秘権などの権利を示された後に、被告人側の主張をするという流れです。
証拠調べ
その後、それらの主張を裏付ける証拠をそれぞれ提出し、裁判所が調べていくことになります。
弁論
最後に検察官が「どのような犯罪が行われ、それに対しどの程度の刑を科すべき」と刑を求めます。
それに対して被告人・弁護人が意見を陳述して、弁論を終えます。
判決
これら全てを考慮し、裁判所は有罪か無罪か、有罪ならどの程度の刑を科すかを決め、宣告します。
これを判決といいます。
以上が大雑把ではありますが、公判の流れです。
略式起訴後の流れ
略式起訴をされた場合、裁判所では公判が開かれません。
書面で審査され、略式命令で100万円以下の罰金か科料を科せられることになります。
その後は指定された場所で、指定された罰金・科料を納めることで刑の執行が完了します。
なお略式命令を受けた者や検察官は、その告知を受けた日から14日以内であれば正式裁判を請求できます。
内容に不服がある場合は正式裁判の請求をすることになるでしょう。
即決裁判手続き申立て後の流れ
最後に「即決裁判手続き」について見ていきましょう。
先ほども述べたように、即決裁判手続きの申立ては公判請求と同時に行います。
検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。
出典:刑事訴訟法350条の2
この場合、裁判所はできる限り早い時期の公判期日を決めることになります。
簡潔な手続きで迅速に刑事手続きを終結させるためです。
そして第一回公判期日の冒頭手続きで被告人が有罪の陳述をすると、裁判所が即決裁判手続きの決定をします。
この場合
原則、その日のうちに判決が出ることになります。
また、懲役や禁錮の言渡しをする場合は執行猶予が絶対につけられます。
これによって迅速に刑事手続きが終了します。
以上
3種類の起訴後の流れについて、お伝えしました。
起訴されると、休職や懲戒解雇される?公務員は?
ではこのように起訴された場合、休職命令や懲戒解雇をされることはあるのでしょうか。
まず、起訴をされたことだけを理由として解雇されることは原則としてありません。
「無罪推定」といい、「有罪が確定するまでは、無罪として扱う」という原則があるためです。
とはいえ
犯罪行為が明白だったり、性質上会社や自治体の信用性・信頼性を傷つけた例外的な場合には、絶対に解雇されないとはいえません。
具体的な事情によって判断は異なりますから、「就業規則」を確認しながら、弁護士に相談してみましょう。
なお
就業規則によっては、起訴されることで休職命令を出される場合はあります。
また、「有罪判決が確定した時点」で懲戒解雇・免職される場合もあります。
こちらも不安な場合は確認してみましょう。
起訴取り下げになることはある?
このような起訴ですが、起訴取り下げについてこんな条文があります。
公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
出典:刑事訴訟法257条
一般的には起訴取り下げということが多いですが、法的には起訴の「取り消し」になります。
実務上は「被告人の死亡」や、「起訴の前提となる判例の変更」などの場合に行われることがほとんどです。
ですが、理論的には真犯人が発見された場合や、証拠から被告人が犯人でないことが明らかになった場合にも起訴取り下げの可能性があります。
起訴後の裁判と前科との関係は?
なお、起訴や裁判という言葉と共に、「前科」という言葉を聞いたこともあるかと思います。
この前科という言葉の意味も正確にチェックしておきましょう。
「前科」とは、確定判決で刑の言渡しを受けたことをいいます。
起訴され、裁判になったとしても、無罪判決になれば前科はつきません。
有罪判決を下された場合にのみ前科がつきます。
なお「略式命令」も罰金刑の言渡しを受けるため、前科がつきます。
同様に「即決裁判手続き」も刑の言渡しを受けるため、前科がつきます。
一方、「微罪処分」は裁判所による判断がありませんから、前科はつきません。
それ以外にも今まで紹介してきた処分について、前科との関係を表にまとめてみます。
前科がつくか | |
---|---|
起訴 | 有罪になれば前科がつく |
略式起訴 | 罰金で前科がつく |
即決裁判手続き | 判決により前科がつく |
不起訴処分 | 前科は絶対につかない |
処分保留 | 起訴され、有罪判決を受ければ前科が付く。 |
以上、起訴と前科の関係についてお伝えしました。
刑事事件の起訴に関するデータを大公表!
ここまで、「起訴の意味と起訴後の流れ」について見てきました。
ここで、より具体的に起訴に関係するデータを見ていきましょう。
日本の起訴件数は?起訴率・不起訴率を確認しよう。
まず日本の起訴件数から起訴率・不起訴率を確認していきます。
2016年において、送検された全刑事事件は371061件でした。
そのうち、起訴件数は119510件でした。
一方で不起訴となった件数は160226件となっています。
ここから「起訴率」を計算してみましょう。
なお、単純化するために起訴率は起訴件数と不起訴件数の合計における割合を示しています。
項目 | 数値 |
---|---|
起訴件数 | 119510件 |
不起訴件数 | 160226件 |
起訴と不起訴の合計 | 279736件 |
起訴率 | 42.72% |
※自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く ※検察統計2017による。
計算すると、2016年の起訴率は42.72%となりました。
半数以下という起訴率を意外に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、2016年以前の起訴件数、起訴率も一気に見ていきましょう。
年 | 起訴件数 | 不起訴件数 | 起訴率 |
---|---|---|---|
2012年 | 135632件 | 164210件 | 45.23% |
2013年 | 127496件 | 164711件 | 43.63% |
2014年 | 125427件 | 166192件 | 43.01% |
2015年 | 120036件 | 163248件 | 42.37% |
※自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く ※検察統計2017による。
数年にわたり、同程度ということが分かりましたね。
ちなみに、この統計からは「自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件」は除いてあります。
先ほども述べたように、これらの事件は大量かつ略式起訴が大変多いためです。
ご注意ください。
なお
起訴率の裏返しである不起訴率についても見ていきましょう。
2012年からの推移を一気に確認です。
年 | 不起訴率 |
---|---|
2012年 | 54.77% |
2013年 | 56.37% |
2014年 | 56.99% |
2015年 | 57.63% |
2016年 | 57.28% |
※自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く ※検察統計2017による。
全部の年で5割を超えているということが分かりました。
これが日本における起訴件数と起訴率、不起訴率です。
起訴されたら絶対有罪!?日本の有罪率をみる
では42.72%の確率で起訴された場合、「有罪になる」のは何%程度なのでしょうか。
99.9%ともいわれる、「日本の有罪率」の実態に迫ります。
まずは2016年、簡易裁判所における有罪率を見てみましょう。
2016年 | 数値 |
---|---|
有罪件数 | 5,562件 |
無罪件数 | 4件 |
合計数 | 5,566件 |
有罪率 | 99.93% |
※司法統計平成28年度版より ※略式手続きは除外
99.93%!
非常に高い数値ですね。
なお
簡易裁判所では上述した様に略式命令が出されます。
ですがこれは件数が多いうえに、全て有罪となりますから、統計から除外してあります。
続いて
地方裁判所における有罪率をみてみましょう。
2016年 | 数値 |
---|---|
有罪件数 | 52,016件 |
無罪件数 | 103件 |
合計数 | 52,119件 |
有罪率 | 99.8% |
※司法統計平成28年度版より
何と99.8%!
地裁でも有罪率が高いままでした。
最後に
高等裁判所についてみてみましょう。
2016年 | 数値 |
---|---|
有罪件数 | 623件 |
無罪件数 | 24件 |
合計数 | 647件 |
有罪率 | 96.29% |
※司法統計平成28年度版より
ここも96.29%と高い有罪率になっていました。
99.9%とまではいきませんが、全ての裁判所において高い有罪率だということが分かります。
なお
最高裁ではほどんと有罪無罪の判断をすることがないため、割愛させていただきます。
有罪率まとめ
起訴された場合、有罪率は9割越え!
刑事事件で起訴された後にすべき活動。
このように非常に高い有罪率。
では、起訴されてしまった後は、もはや何もできることはないのでしょうか。
いえ、そんなことはありません。
ここからは、起訴された後でもできる活動を見ていきたいと思います。
起訴取り下げを目指す。
先ほども述べたように、法律上は起訴取り下げ(取り消し)の可能性があります。
実務上あまり使用されることはないのですが、可能性がある以上、努力する価値はあります。
勾留されていると直接的な行動は難しいかもしれません。
ですが冤罪の場合、弁護士や家族・友人の協力により、地道な目撃者探索などを行い、起訴取り下げを目指すこともできます。
保釈を目指す。
次に、勾留されている場合は「保釈」を目指しましょう。
「保釈」とは、未決勾留中の被告人が保証金を納付し、釈放されることをいいます。
被告人や弁護人、配偶者などの請求か、裁判所の職権でなされます。
これによって自由に家に帰ることができますが、「裁判所からの召喚を不当に無視」したり、「逃亡した場合」は、保釈は取り消されてしまいます。
その場合は保証金の全部・一部を没取される可能性があります。
刑事裁判は心身共に疲れてしまうもの。
ですが留置場・拘置所から出て、自由に帰れると精神的に余裕が出てくるかもしれません。
また公判時の受け答えや態度につき、弁護士とより詳細に打合せをすることもできるようになるでしょう。
保釈については下の記事が詳しいですので、ぜひご覧ください。
執行猶予を目指す
また、有罪判決を受ける場合でも、「執行猶予」が付されるか否かで大きな違いがあります。
「執行猶予」とは、情状によりその執行が一定期間猶予され、その期間を無事経過すれば刑を受けることがなくなる制度をいいます。
たとえば懲役刑を受けた場合、本来ならば刑務所に入る必要があります。
ですが執行猶予がつけば、刑務所に行かずに済みます。
その後問題を起こさずに執行猶予期間が経過すれば、刑の言渡しは効力を失います。
刑務所に入るか、社会生活を続けられるかは大きな違いですよね。
起訴されても、執行猶予を得られるよう、活動していきましょう。
具体的にどのような活動によるべきかは、以下の詳細な記事をご覧ください。
被害者と示談を成立させる。
次に、被害者と示談を成立させることがとても重要です。
「示談」とは、民事上の紛争について、裁判外における当事者間の話合いによって解決することをいいます。
たとえば示談金で損害の賠償をし、その事件に関しこれ以上の義務がないことを合意します。
損賠を賠償することで、厳罰に処すべき必要性が低下します。
執行猶予がつくなど、裁判所の量刑判断に影響を及ぼすでしょう。
また
場合によっては被害届の取り下げまでをも合意できる場合があります。
被害届を取り下げることで、被害者の処罰感情が低下したと主張できます。
これも同様に裁判所の量刑判断に影響を及ぼすでしょう。
下の記事が示談について詳細ですので、こちらもぜひご覧ください。
とはいえ、具体的にどのような示談交渉をしたらよいのか分かりませんよね。
逮捕・勾留されている方はそもそも被害者と交渉すらできません。
他の活動も含め、具体的にどのように動けば、もしくは依頼すればよいのでしょう。
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- ② 料金体系が明確で、金銭的な見通しがなるべく立っていること。
の点から絞り込みました。
ぜひ検索してみて下さい。
最後に一言アドバイス
以上、刑事事件と起訴についてみてきました。
最後にアトム法律事務所の弁護士から一言お願いします。
「起訴されるか否か」、「起訴されたらどう活動するか」によって人生は大きく変わります。
弁護士に相談すれば、事案に即した有効な活動や注意点が聞けるでしょう。
また、勾留されている被疑者・被告人に代わって弁護活動もしてもらえます。
たとえば
弁護士なら、加害者に会ってくれない被害者と示談交渉ができる場合もあります。
被害者との交渉は時期が早いほど有効ですし、他の弁護活動も早い時期の方が選択肢が多いものです。
ご不安な場合は、なるべく早く弁護士に相談してみて下さい。
まとめ
以上、刑事事件における起訴について見てきました。
最後に見てきた内容をまとめます。
起訴のまとめ
- ① 起訴とは、検察官が裁判所に刑事事件の審理を求めること。
- ② 逮捕された場合、起訴までに身体を拘束するのには期間制限がある。
- ③ 日本における起訴率は約4割強。
- ④ 起訴されると公判がはじまり、勾留が継続する場合もある。
- ⑤ 起訴された場合の有罪率は9割超えと高いが、「保釈」や「執行猶予」を目指して、示談などの活動をしていくことができる。
起訴された場合の高い有罪率は驚きでしたが、そんな中でもすべき活動があることが分かりました。
ですが、具体的なイメージがわかない場合は、ぜひスマホで無料相談をしてみて下さい。
弁護士から具体的なアドバイスを聞くことができるかもしれません。
また近所の弁護士に依頼したい場合は全国弁護士検索も有効でしょう。
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刑事事件と起訴に関する不安が一日も早く解消するよう祈っています。