万引きで警察に通報されたら…|万引きの通報装置って?通報後の逮捕についても解説
- 「万引きで通報された後、どうなってしまうのだろうか?」
- 「万引きを繰り返しているため、いつ通報されてもおかしくない・・・」
このような不安をお持ちの方もいると思います。
そこで、今回は、「万引きの通報」についてレポートしていきます。
- 万引きの通報装置や、通報のされ方
- 通報される万引き犯の特徴
- 万引きで逮捕されたらどうなるか
- 万引きで通報されて後悔したときにできること
など、皆さんの気になるところをまとめました。
万引きに関する専門的なことについては、刑事事件を取り扱うアトム法律事務所の弁護士にお願いします。
目次
万引きはどうやって通報されるの?|万引きの通報装置、万引防止機構について
万引き通報装置
さて、万引きは、どのようにして通報されるのでしょうか?
すぐに思いつくことといえば、「万引きGメン」による通報ですよね。
ですが、最近では、「万引き通報装置」が設置されるお店も多くなりました。
万引き通報装置
(略)
ショッピングモールや大規模店舗の各ゲートの万引き警報装置の情報を警備室へ通報
出典:http://www.circuitdesign.jp/jp/products/rf_system/index5.asp
スーパーの出入り口に、「門のような何か」が設置されているところを見かけることがあるのではないでしょうか?
それが、万引き通報装置です。
万引きをした人がその「門」を通ると、どうなるのでしょうか?
商品個々に付けたタグが鳴り不正者を特定できるため、「精算はお済みですか?」「申し訳ございませんがタグの外し忘れかもしれませんので確認させていただけますか?」などと声をかけることができます。万引き発見時においても、お買い上げや商品回収、通報など、現場の状況に合わせた対応が可能です。
出典:http://www.mrb.jp/security/store/system.html
門の形をしたもののほかにも、天井や床に設置するタイプの通報装置もあるようですよ。
このような通報装置に加えて、技術の発展に伴い、通報いらずの万引き抑止装置も出てきています。
人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を活用した次世代型の警備アプリケーションの本格展開を進める。
警備システムの名前は「UNIBOT」。ペッパーが店内を巡回監視するだけでなく、人工知能(AI)を活用した画像認証技術で不審者の監視を行う。ペッパーに内蔵されたカメラ映像をクラウドに送信することであらかじめ登録した不審者を認識する。顔認証の結果をスマホやタブレットに通知することで従業員との連携も可能になる。
2017年1月20日~2月19日に福島県内の書店でUNIBOTの実証実験を行った。実証実験では書店が把握していた不審者情報をクラウド側に記憶させてシステムを運用した。ペッパーによる客への声かけなどを行った結果、万引きの被害額が6割強減少したという。
(略)
警備業界では人手不足解消のためドローンの活用などが研究されている。人的警備の不足をロボットで補う流れは今後も加速するだろう。
出典:ITmedia ビジネスオンライン (2018.2.27 6:00)
万引きの通報に関する技術は、日々変化しているようです。
万引防止機構や警察の呼びかけについて
万引き犯はマークされている?|万引防止機構の登場
万引きを通報・防止していくために民間団体も活動しています。
皆さんは、全国万引犯罪防止機構という団体を知っていますか?
全国万引犯罪防止機構は、万引き犯罪防止に関する
- 調査研究
- システム開発
などを行っている民間団体です。
では、なぜ「全国万引犯罪防止機構」は立ち上げられたのでしょうか?
万引犯罪はお店の経営を圧迫する経済問題にとどまらず、青少年の健全な育成を阻害する社会問題でもあります。さらに外国人や高齢者の万引が増える方向にもあり、今、大きな社会問題になっています。本機構はこのような万引犯罪防止のために立ち上げられた全国組織です。
出典:特定非営利活動法人全国万引犯罪防止機構HP(http://www.manboukikou.jp/)
このような民間団体による啓発から、万引き対策に乗り出したお店によって通報されることもあるでしょう。
万引き犯の逮捕に意欲的?|警察の呼びかけとは
警察も、万引き防止について呼び掛けているようです。
官民合同で、東京万引き防止官民合同会議というものも開かれています。
東京万引き防止官民合同会議は、どのような活動をするのでしょうか?
万引きに関する総合的な対策を推進するため、警察、自治体、各業界団体、関係機関・団体等が相互に連携した取組を展開するため、「東京万引き防止官民合同会議」を設置し、万引き防止対策に向けた会議を開催しています。
出典:警視庁HP(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/drug/manbiki/manbiki_torikumi.html)
この会議では、万引き被害について
「万引きをしない させない 見逃さない」
というスローガンの下に、「全件通報」を目指す宣言をし、様々な施策が実施されています。
お店で、赤地にまんまるの目が書かれているポスターをよく見るのではないでしょうか?
そのポスターも、この東京万引き防止官民合同会議に施策の一つのようです。
万引きをさせないという社会的気運がさらに高まりそうです。
万引きが通報されやすくなった?|全件通報に向けた万引き専用被害届とは
万引きが通報されやすくなる施策の一つとして、万引き専用被害届の登場があげられます。
この被害届は、通常の被害届の様式が簡素化されています。
そのため、従来よりも通報されやすくなる可能性があります。
では、この「万引きの通報の簡素化」の理由について、関連記事を読んでみましょう。
万引きの再犯容疑者の4人に1人が、過去に万引きを発見されても警察に通報されなかった経験があることが1日までに、警視庁の調査で分かった。同庁は「たかが万引き、と大目に見るなどの甘い対応が再犯を招いている」として、小売業界に被害をすべて通報するように求めている。
調査は今年4月20日までの3カ月間に都内の警察署で扱った万引き容疑者が対象で、810人分の報告があった。内訳は少年347人(43%)、20~64歳の成人319人(39%)、65歳以上の高齢者144人(18%)。初めて検挙・補導された「初犯者」は560人(69%)、「再犯者」が250人(31%)だった。
店舗側に万引きを発見されたのに通報されなかった経験があったのは、初犯者は560人中28人(5%)と少数だが、再犯者では250人中64人(26%)で、大きな差があった。
被害通報を巡っては、店舗側に「届け出に時間がかかり、敬遠しがち」との声があり、同庁は昨秋手続きを簡素化し、空欄を埋めるだけで被害調書が完成するひな型などを導入。同庁幹部は「簡素化の効果を実感してもらい、積極的に届け出てもらえるよう努力を続けたい」としている。
出典:日本経済新聞(2010年7月1日)
万引きが通報されない理由として、通報に時間がかかるということが挙げられています。
そのため、被害届の様式が簡素化され、より万引きが通報されやすい形になりました。
万引き専用被害届の様式で特徴的な点は、
- ▢にレ点を入れる様式
- 空欄を埋める形で被害状況を説明する様式
などです。
警察のHPでは、実際に、万引き専用被害届の様式が紹介されています。
気になる方は、以下の警察のHPで万引き専用被害届の様式をチェックしてみてくださいね。
もっとも、このような被害届が整備されたとしても、実際に通報するかどうかは、お店の判断次第です。
どのようなケースならば、お店が万引きの通報に踏み切るのか、気になりますよね。
次の項目では、万引きの通報基準について、検討していきます。
お店から被害届出されないと捕まらない?|警察への通報基準について
さて、万引きの通報規準について書かれている記事を読んでみましょう。
この記事では、愛知県警の統計から、お店の通報基準がまとめられています。
愛知県警は(略)「万引き」と呼ばれる行為に関する調査結果を発表した。(略)何割かの割合で捕捉しておきながら届け出をしない事例も確認できる。
(略)
警察に通報をする・しないの判断は、どのような基準で行われているのだろう。全体では「常習者に限る」とする回答がもっとも多く36.6%、次いで「(条件無しに)全件を通報する」が29.7%という結果となった。
(略)
「全件通報」がドラッグストアや家電量販店、スーパーなどで多い(略)。一方で、ショッピングセンターやホームセンター、コンビニでは、「常習者」を通報基準としているところが多い。
出典:http://www.garbagenews.net/archives/1799703.html
お店の特性ごとに通報基準が異なっているという点も興味深いですね。
全国万引犯罪防止機構が平成28年度に出している統計では、万引きを通報する判断基準がある店舗は、調査対象の約30%だったようです。
通報基準のある店舗において、具体的な通報基準としては、
- 被害額の大きさ
- 犯行の回数
などが挙げられています。
ただし、
その他
という選択肢の割合が大きいため、通報基準はいまだブラックボックスといえそうです。
万引きがどのくらい検挙されているのかについて知りたい方は、次の記事もご覧ください。
【通報の具体例】車のナンバーで通報、通報プラス万引き犯の写真公開など
では、実際に、万引きが通報されたケースについて、ニュースを読んでみましょう。
最初の事件は、車のナンバーで容疑者が浮上した万引き事件です。
万引きをした人は、万引防止用の通報装置が反応したため、店員さんに声をかけられています。
その後、万引き犯は逃走しましたが、車のナンバーで特定されています。
ドラッグストアで商品を万引したとして、(略)容疑者(略)を逮捕した。「自分のお金が減ってしまうことが嫌だった」と容疑を認めている。
逮捕容疑は7月17日午後4時5分ごろ、(略)ドラッグストアで、馬油や350ミリリットルの缶酎ハイ計6点(販売価格約5700円)を盗んだとしている。
(略)容疑者はトートバッグに精算前の商品を入れて店外に出ようとしたが、出入り口に設置された万引防止用のセンサーが反応。男性店員が声をかけたが、軽乗用車で逃走したという。車のナンバーから(略)容疑者が浮上した。
出典:産経WEST(2016.10.26 14:04)
通報だけで収まればよいですが、そうとも限りません。
通報とともに、万引き犯の写真を公開するお店もあります。
万引被害を防ぐため、犯人とみられる画像を公開することは許されるのか。今月、各地の小売店が「万引犯」として防犯カメラ画像を公開していたことが相次いで判明した。
(略)
今月上旬、万引犯とみられる人物の画像を店内に張り出していたことが明らかになった(略)店舗。画像を公開した意図について、男性店長はこう繰り返した。画像は顔をぼかす処理をしておらず、万引犯であることを示唆するように「全て見てますよ」と注釈を付けていた。
(略)
眼鏡販売店チェーン(略)会社は(略)店舗で写した同様の画像にモザイク処理をしてホームページに掲載し、弁償に応じない場合はモザイクなしの画像を公開すると警告した。
出典:産経WEST(2017.2.20 8:15)
ただ、このような写真公開は、店側としてもリスクが高いです。
過去には、写真公開に踏み切ろうとしたお店に対して、警察からストップがかかったこともありました。
今後の動向としては、写真を公開するのではなく、
万引き常習者の写真をデーベースにする構想
に移っていきそうです。
機構では、万引常習者の顔写真をデータベース化し、公開でなく、事業者間で共有する構想を進めている。「ブラックリスト」をつくることで常習者を特定しやすくする狙いだ。
出典:産経WEST(2017.2.20 8:15)
この記事の「機構」とは、万引犯罪防止機構のことをさしています。
データベース化が実現されてしまったら、万引き犯は、今より通報されやすくなりそうです。
通報される万引き犯はどんな人?|万引き犯の特徴について
万引きを繰り返す人
さて、通報される万引き犯には、どのような特徴があるのでしょうか?
万引きで通報された人のニュースを読んでみましょう。
このニュースの万引き犯は、万引きを繰り返す特徴があるようです。
市の幹部職員の万引による不祥事で、(略)男性課長は(略)市内の食料品店で食料品など3点(計587円相当)をポケットに入れたまま店外へ出て山形署に通報された。課長は昭和60年、平成20年にも万引し、警察に通報され、罰金30万円の処分を受けている。
(略)
女性主幹は(略)市内の食料品店で食料品4点(計約2000円相当)を手提げ袋に入れ、店外に出たため万引をしたとして山形署に通報され取り調べを受けた。平成23年にも万引し、警察の取り調べを受けているという。
出典:産経ニュース(2017.10.19 11:33)
この人たちのように、万引きを繰り返す人も多いです。
万引きをする理由には、
経済的理由
があります。
これとは別に、繰り返す理由として、
ストレス解消
などがあります。
万引きを繰り返す傾向については、「窃盗癖」や「クレプトマニア」とも呼ばれます。
窃盗癖を治すために、特別な治療を受ける人もいます。
小学生や中学生が万引きで通報されたらどうなる?|子供の万引きについて
万引きは、「初発型非行」といわれています。
さて、初発型非行とは一体どのようなものなのでしょうか?
初発型非行とは、犯罪の入り口と考えられている、例えば自転車盗や万引きの事を指します。
特徴としてまず、犯罪に至る動機が単純です。万引きだったら、「お腹が減ったから食べ物を盗った。」「お金が足りなかったから、商品を盗った。」「お金を使うのがもったいなかったから、欲しかったおもちゃを盗った。」などです。
(略)
次に、犯行も簡単にできます。わざわざ計画する必要もありません。
(略)
初発型非行は「くせ」になると言われています。見つからなければ味をしめ、その後も繰り返してしまいます。罪の意識のハードルが低いので、「ジュース一個くらい、いいかな。」「安い商品出し、いいかな。」と思ってしまいがちです。
お店の店員さんも、見逃してしまうことがあるのだと思います。業務が忙しければ、いちいち万引きに時間やエネルギーを使っている暇はありません。警備員や万引きGメンを雇うのにもお金がかかります。
「くせ」になって繰り返せば、大きな犯罪に発展します。繰り返すうちに、罪の意識のハードルは下がります。「これくらい、いいかな。」と思って犯罪を繰り返すうちに、大きな商品を盗むようになったり、他の犯罪に対しても心理的なハードルが低くなるのかもしれません。
出典:子の声傾聴会HP(http://konokoe.com/column/syohatugata)
このように、「万引き」は、犯罪の入り口になりうるものようです。
では、どのくらいの割合で万引きは起こっているのでしょうか?
警視庁の発表する「少年非行の傾向(平成28年)」によると、子供たちの刑事事件については、殺人や、傷害事件などよりも窃盗のほうが多いです。
子供の窃盗手口の約6割を占めるのが、「万引き」になっています。
窃盗犯の手口別で最も多いのは、万引きで1,725人(61.5%)、次いで自転車盗が520人(18.5%)となっています。
出典:警視庁HP(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/hiko.files/hikou.pdf)
さて、万引きで通報された子供たちはどうなるのでしょうか?
14歳に満たない者の行為は罰しないというルールが刑法に存在しています。
この場合、14歳未満の中学生や小学生については、刑事責任を問うことができません。
どのような措置が待っているのでしょうか。
20歳未満の子供が刑罰法令に触れる行為をした場合、全件、家庭裁判所に送致されることになります。
たとえば、子供が14歳未満だった場合、「触法少年」として手続が進められます。
通常の刑事裁判の手続ではなく、児童福祉法による処置が行われます。
また、場合によっては、都道府県知事または児童相談所所長から送致されて、家庭裁判所の審判を受けることになります。
審判の結果、下される処分としては、原則として、
- 保護観察所の保護観察に付される
- 児童自立支援施設又は児童養護施設に送致される
というものです。
14歳未満の場合には、特に必要と認められない限り、少年院には送致されません。
少年事件の一連の流れについては、次の図のとおりです。
少年事件に関する詳しい手続の流れは、「平成28年度版 犯罪白書の概要」に掲載されています。
「非行少年に対する手続の流れ」というタイトルで、子供の刑事事件の流れが図で紹介されています。
気になる方は、以下のリンクもご参照ください。
未成年者の万引きについてもっと知りたいという方は、以下のリンクも見てみてください。
さて、万引きが多いのは子供だけではありません。
次の項目では、高齢者の万引きについてまとめます。
高齢者が万引きで通報される場合も多い
高齢者になってはじめて万引きをして、通報される人も多いようです。
高齢者の万引きについて、次のような見解があります。
高齢の初犯者は店に入ってから万引を決意することが多く、あいさつなど店員に声をかけられると思いとどまる傾向があることも判明。「高齢者の万引は、でき心や寂しさ、孤立と結びついている」と話す。
出典:産経WEST(2014.11.24 20:45)
この見解によると、
さみしさ
を理由に、万引きする高齢者も多いようです。
ほかにも、
配偶者の介護からくるストレス
なども理由にあります。
「近親者の病気・死去」に直面した者や「家族と疎遠・身寄りなし」の者は、万引きに手を染めやすいことが判明しており、配偶者との死別や病気の看護および介護などに伴うストレスが犯罪に駆り立てている可能性が示唆されました。
出典:みんなの介護ニュース(https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no156/)
また、高齢者においては、認知症のため万引をしてしまうこともあるようです。
急増する認知症高齢者も万引き犯罪の増加要因となるかもしれません。厚生労働省の「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」によると、2025年には認知症高齢者は700万人にも上る見込み。「万引きをした高齢者が実は認知症だった」という事例は全国で相次いでおり、責任能力を巡って裁判になっています。
出典:みんなの介護ニュース(https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no156/)
万引きで窃盗罪として罰せられる前提として、万引き犯には、
万引き犯が、「責任能力」
を有していることが必要です。
認知症の場合には、「責任能力」がないと判断される場合もあります。
その場合、万引きについて通報されて裁判になったとしても、高齢者は処罰されません。
実際、裁判で精神鑑定の結果、万引犯が犯行時に認知症などにより心神喪失にあったと認められて無罪になった事例はある
(略)
一見、正常に見えるので事件として送致されても、診断書や通院歴などを家族が検察官に提出すれば、軽い処分で済んだり、処分されないこともありうる。また、仮に認知症などであったからといって、裁判になれば、必ずしも責任能力まで否定されるとは限らない。争っても必ずしも責任能力がないとの主張が通るわけではない。
出典:プレジデントオンライン(2010.6.14)
もっとも、認知症だったとしても、必ず責任能力が否定されるわけではない点に、注意が必要です。
万引きは逮捕されたらどうなるの?|逮捕の種類、窃盗罪の罰金刑・時効について
万引きは現行犯逮捕が多い?|警察への通報・被害届提出などの流れ
さて、ここからは、
- 万引きの逮捕のされ方
- 万引きが何罪で逮捕されるか
など、見ていきましょう。
まず、万引きの通報から逮捕までをチェックです。
万引きの現行犯逮捕について
まずは、万引きが現行犯逮捕されたニュースを読んでみましょう。
署は3日、盗みの疑いで、(略)容疑者(46)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は3日午後6時40分ごろ、(略)市内のショッピングセンターの食品売り場で、食料品など11点(販売価格合計2474円)を盗んだ疑い。容疑を認めている。
出典:佐賀新聞ニュース(2018.3.4 10:29)
次のニュースでは、万引きGメンに発見された万引き犯が現行犯逮捕されています。
23日午後1時35分ごろ、(略)ショッピングセンター(略)で、未精算の食料品を入れたカートを押して店外へ出る女を男性保安員が発見。女が万引を認めたため、通報で駆け付けた(略)署員が窃盗容疑で現行犯逮捕した。
逮捕されたのは、(略)無職の女(71)。かごの中には、牛肉やみかんなど食料品ばかり計44点(計約3万8900円相当)が入っていた。同署が確認したところ、女は財布に現金約100万円を所持していた。調べに対し、女は「金を出すのがもったいなくてやった」と容疑を認めているという。
出典:産経WEST(2015.12.23 18:44)
さて、ここで現行犯逮捕とは何かについてを確認しておきましょう。
現行犯逮捕の場合は、事件発生後すぐに逮捕されてしまいます。
現行犯逮捕の流れは、次の図のとおりです。
万引きと逮捕の関係について詳しく知りたい方は『【万引き逮捕】万引で警察に逮捕されるとどうなる?その後の流れを解説』をご覧ください。
次に、現行犯逮捕と対比される概念として、「後日逮捕」があります。
後日逮捕の流れは、次の図のとおりです。
では、後日逮捕と現行犯逮捕では、手続上、何か違いがあるのでしょうか。
現行犯逮捕には、逮捕状が必要とされていません。
捜査機関だけではなく、一般人によっても逮捕されます。
通報を受けてかけつけた警察に現行犯逮捕されることもあれば、万引きを発見した店員に現行犯逮捕されることもあるということです。
万引きの現行犯人が現行犯逮捕される場合のパターンをまとめてみました。
①万引きを見つけたお店の人によって、警察へ通報される ②駆け付けた警察によって、現行犯逮捕される |
①万引きを見つけたお店の人によって、現行犯逮捕される ②警察に万引き犯を引き渡すために、通報される |
お店の人によって、万引き犯が現行犯逮捕された場合には、
直ちに捜査機関に引き渡される
ことになります。
万引きは現行犯逮捕じゃないと逮捕されない!?
万引きは現行犯逮捕でないと逮捕されない
こんな話を耳にした人もいるでしょう。
なぜ、そのようなことが言われているのでしょうか。
そのように言われるのは、万引きの逮捕は現行犯逮捕が圧倒的に多いからだと思われます。
とはいえ、「現行犯逮捕でないから逮捕されない」とは、断言できません。
防犯カメラの映像などをきっかけに、後日逮捕されるケースもあります。
万引きは現行犯逮捕が多いといっても、まったく後日逮捕がないわけではないようです。
万引きが後日逮捕されたケース
さて、ここから万引きが後日逮捕されたケースについて確認していきましょう。
次のニュースでは、
- 防犯カメラの映像
- 転売履歴
から、万引き犯は後日逮捕されています。
商業施設で高級なベビー用品を万引したとして、(略)署は窃盗の疑いで、(略)容疑者(37)を逮捕した。容疑を認めている。
逮捕容疑は、平成29年12月22日午前11時20分ごろから午後1時10分ごろまでの間に、(略)商業施設2カ所で、高級ブランドのベビー用品「抱っこひも」計10点(販売価格計約25万円)を万引したとしている。
同署によると、商業施設の防犯カメラの映像から(略)容疑者の関与が浮上したという。(略)容疑者は犯行後、横浜市内のリサイクルショップで盗品を転売していた。
出典:産経ニュース(2018.3.10 07:19)
このように、証拠が残りにくい万引きでも、後日逮捕の可能性はあります。
ところで、現行犯逮捕された場合と、後日逮捕された場合で、万引き犯にとって何か違いはあるのでしょうか。
現行犯逮捕される場合には、万引きの現場で逮捕されます。
一方で、後日逮捕される場合は、警察が逮捕状をもって、生活圏内に逮捕をしに来ることになります。
後日逮捕の場合には、警察が
- 家
- 会社
などに来て逮捕されます。
このような場合に、万引き犯の名誉を守るために、任意同行の形式がとられる場合があります。
その場合、任意同行で連行された後、逮捕手続に移行することになります。
万引きの逮捕についてもっと知りたい方は以下のリンクもご覧ください。
さて、逮捕の種類についてわかったところで、こんどは万引きがどのような犯罪なのかについて確認していきましょう。
万引きは何罪?|刑法の窃盗罪について確認しよう
万引きは何罪?万引きの意味とは
万引きとは、窃盗罪の手口のひとつです。
万引きの意味を確認しておきましょう。
買い物客を装い、商品をさがすふりをして盗むこと
出典:デジタル大辞泉
では、そもそも窃盗罪とは、どのような犯罪なのでしょうか。
窃盗罪とは、「他人の財物を窃取」する犯罪です。
他人の占有下にある財物を、その他人の意思に基づかずに、自己又は第三者の占有下に移すことで処罰されます。
万引きは、店長の占有下にある商品を、店長の意思に基づかずに、自分の占有下に移すことになるため、窃盗罪に当たります。
店長の意思を考えると、お金を払わないで商品を持ち出すことは許されません。
にもかかわらず、商品を取っていってしまったら、店長の意思に基づかずに、自分の占有下に移したことになってしまいます。
万引きした商品を戻せば、窃盗罪は成立しない?
ところで、
万引きを後悔して、とった商品を棚に戻しておいた
という人もいるかもしれません。
その場合、「窃盗罪は成立しない」ということでよいのでしょうか。
窃盗罪は、他人の財物を事故の占有下に移した時点で成立します。
衣料品の万引きでいえば、店内で自分のカバンに入れた時点で、窃盗罪が成立します。
その後、棚に戻したとしても、窃盗罪が成立しなかったことにはなりません。
もっとも、窃盗罪そのものは成立するとしても、
- 万引きが、お店の人にバレなかった
- お店の方針として、商品を戻してくれるなら通報しないというルールがある
というような場合、万引きで通報されることはないでしょう。
万引きについてもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクも見てみてください。
さて、実際に万引きで起訴されたら、どのような刑罰が待っているのか気になりますよね。
次の項目で確認していきましょう。
万引きで起訴されたら罰金刑?|万引きの刑罰について確認しよう
では、万引きで起訴されたらどのような刑罰に処せられるのでしょうか。
このような刑罰は規定されていますが、初犯の場合、不起訴となる場合もあります。
万引きの刑罰についてもっと知りたい方は、以下のリンクもご覧ください。
犯罪をしているのに、なぜ初犯の場合には不起訴なのだろうか?
こんなギモンをもつ人もいるでしょう。
この理由の一つには、
被害届の取り下げなどによる処罰感情の低下
があります。
次の項目で詳しく見ていきましょう。
万引きで通報されて後悔した場合|被害届を取り下げてもらう方法
万引きの被害届を取り下げてもらうメリット
万引きで通報されて、これから窃盗罪の刑罰が待っている
そんなふうに考えながら、後悔している人も多いと思います。
ですが、通報されて被害届を受理された後でも、それを取り下げてもらえれば、
- 立件されない
- 不起訴になる
などの可能性が高まります。
なぜならば、立件や起訴の判断の際、捜査機関によって被害者の処罰感情も考慮されるからです。
万引きが被害届取り下げによって不起訴になったケース
では、実際に、万引きの被害届が取り下げられて不起訴になった事例を見てみましょう。
この事案では、示談交渉も一緒に進められています。
万引きの被害届が取り下げられて不起訴
▼事案
ショッピングモールのある店舗で、店長が管理する商品1着(9000円相当)を窃取した。
▼被害届の取り下げ
あり
▼処罰感情
宥恕
▼示談
あり
被害届の取り下げに関する交渉は、非常にデリケートな問題です。
示談交渉を進める際、弁護士と相談して慎重に対処していきましょう。
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さいごに
今回は、「万引きの通報」についてレポートしてきました。
万引きの通報のされ方や、通報された後にどのような犯罪にあたるのか理解が進みました。
万引きが通報されたとしても、その後、事件化されないことも多いです。
もっとも、それは、万引きを見つかった際にうまく対応できたことが理由です。
たとえば、お店に被害届を取り下げてもらったり、示談を成立させたりなどの対応です。
これらの交渉は、非常にデリケートな問題であるため、時間がかかります。
万引きで通報されてしまった方は、すぐに弁護士にご連絡いただき、一緒に対応していきましょう。