強姦の意味・定義・構成要件|強姦事件のポイントを弁護士が解説
2023年7月13日以降の事件は「不同意性交等罪」に問われます。
強姦の容疑をかけられてしまったとします。
そもそも、旧強姦罪とは、どんな犯罪なのでしょうか。
ここでは、旧強姦罪の意味や定義、構成要件について、解説しています。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でおなじみのアトム法律事務所の弁護士にお願いします。
目次
旧強姦罪の定義とは
ニュースや新聞でたびたび目にする「旧強姦罪」。
まずは、定義から見ていくことにしましょう。
旧強姦罪が成立するのはどんな場合なのでしょうか。
旧強姦罪とは、暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫することによって成立する犯罪をいいます。
また、暴行または脅迫を用いなくても13歳未満の女子を姦淫する場合も成立します。
「姦淫」とは男性器を女性器に挿入することをいいます。
改正前の刑法177条は「女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。」と定めています。
旧強姦罪では、13歳という数字が、一つポイントとなります。
被害者が13歳以上かどうかで、何をしたら旧強姦罪が成立するのかが変わってくるということです。
まとめ
旧強姦罪の定義とは
旧強姦罪 | ||
---|---|---|
被害者 | 13歳以上の女子 | 13歳未満の女子 |
定義 | 暴行または脅迫を用いて姦淫すること | 姦淫すること |
刑罰 | 3~20年の有期懲役 | 3~20年の有期懲役 |
旧強姦罪の構成要件とは
「構成要件」
これは、「こうせいようけん」と読みます。
意味から確認していきましょう。
旧強姦罪の構成要件とは、旧強姦罪が成立するための要件のことです。
旧強姦罪の構成要件が認められれば、精神障害などで責任が認められないといった特別な事情がない限り、旧強姦罪が成立します。
旧強姦罪の構成要件は、「これらが全部そろうと旧強姦罪が成立しますよ」というものであると説明することができます。
旧強姦罪の構成要件の判断方法は?
では、その構成要件の具体的な中身を見ていきましょう。
旧強姦罪の構成要件の該当性は、
- ①旧強姦罪の実行行為があるか、
- ②旧強姦罪の結果が生じたか、
- ③旧強姦罪の実行行為と結果との間に因果関係が認められるか、
- ④旧強姦罪の故意が認められるか、
によって判断されます。
まずは、強姦の行為があって、結果が生じないといけません。
その上で、それらの間にきちんと因果関係がないといけない。
そしてさらに、それらすべてをわかっていて「わざと」やっていないといけないわけです。
それらがそろって初めて、旧強姦罪成立、ということになります。
旧強姦罪の構成要件のポイント
旧強姦罪の類型は?
旧強姦罪の類型とは、何を指すのでしょうか。
犯罪の類型についてみていきます。
改正前の刑法177条は、前段と後段で異なる類型の旧強姦罪を規定しています。
前段では13歳以上の女子を姦淫する類型の旧強姦罪、後段では13歳未満の女子を姦淫する類型の旧強姦罪を規定しています。
13歳以上か未満かで、規定が分かれています。
旧強姦罪の保護法益は?
保護法益とは一体何のことでしょうか。
まずは基本から学んでいきます。
「法律が守ろうとしている利益」を指しているわけですね。
つまり法律は、旧強姦罪という規定を通して、個人の性的自由を守っている、ということになります。
旧強姦罪の実行行為は?
先ほど、旧強姦罪が成立する条件の一つに「実行行為」というのがありました。
次に、旧強姦罪の「実行行為」が具体的にどんなものなのか、みていくことにしましょう。
改正前の刑法177条前段における、13歳以上の女子に対する旧強姦罪の実行行為は、暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫しようとすることです。また、改正前の刑法177条後段における、13歳未満の女子に対する旧強姦罪の実行行為は、13歳未満の女子を姦淫しようとすることです。
「姦淫」の意義については、不道徳な性交に限らず、単なる性交をいう、と考えるのが一般的です。
こちらも被害者の年齢によって、わけて考えるわけですね。
つまり13歳以上の女子に対しては、暴行・脅迫を用いて初めて実行行為あり。
13歳未満の女子に対しては、暴行・脅迫を用いなくても、姦淫しようとしただけで実行行為あり、ということになります。
旧強姦罪の手段としての「暴行又は脅迫」とは?
旧強姦罪の成立・不成立の境目になる「暴行・脅迫」はどのようなものか、考えていきましょう。
暴行は身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。脅迫は害悪の告知をいいます。
暴行・脅迫の度合いは、判例によれば、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものであれば足り、反抗できなくなる程度に達する必要はありません。
被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫でないと、旧強姦罪には当たらない、ということが言えます。
旧強姦罪の結果は?
では、旧強姦罪の「結果」とは何を指すのでしょうか。
何をもって旧強姦罪の結果が発生した、といえるのでしょうか。
性器の一部没入があれば、旧強姦罪の結果が発生したといえます。
ここは勘違いされやすいので、きちんと押さえておく必要がありそうです。
旧強姦罪の行為と結果との間の因果関係が否定されるのはどのような場合か?
旧強姦罪が成立するには、強姦の行為と結果との間に「因果関係」が必要です。
では、その因果関係とは一体どういうものなのか、確認しましょう。
暴行・脅迫によって反抗を著しく困難にする状態が、姦淫の時点において存在しない場合は因果関係が否定されます。
因果関係とは、簡単にいうとあの行為がなければこの結果もなかったという関係をいいます。
旧強姦罪の因果関係が問題になるのは、例えば、暴行・脅迫から時間が経った後に姦淫が行われたような場合です。
たとえば、万引きを発見された女性が、警察に通報されたくなければ言うことを聞け、と脅迫され、その2週間後に性的関係を持った事件の裁判では、脅迫と姦淫との間に因果関係が認められました。
「あの行為がなければこの結果もなかった」
「あれなければこれなし」
このように言えたら、「因果関係あり」ということになるのですね。
2週間後でも因果関係が認められるというのは、意外かもしれませんね。
旧強姦罪の故意は?
よく「わざとじゃなかったから無罪」と言うのがありますよね。
あれは、旧強姦罪の場合も当てはまるのでしょうか。
被害者が本心から性交に承諾したものと誤信したときは故意を欠くことになり、旧強姦罪は成立しません。
また、改正前の刑法177条後段が規定する13歳未満の女子に対する旧強姦罪については、13歳未満であることの認識が必要で13歳以上と誤信したときは故意を欠き、やはり旧強姦罪は成立しません。
もっとも、暴行・脅迫を用いて13歳未満の女子に姦淫すれば、13歳未満であることの認識がなく故意を欠いても、前段・後段の区別なく強姦一罪が成立する、というのが判例の考え方です。
被害者が同意していたと勘違いしていたら、確かにわざと強姦したとはいえません。
実際の事件でも、被害者の同意の有無が争点になることもあるそうです。
まとめ
旧強姦罪の構成要件のポイント
旧強姦罪 | ||
---|---|---|
被害者 | 13歳以上の女子 | 13歳未満の女子 |
実行行為 | 暴行または脅迫を用いて姦淫しようとすること | 姦淫しようとすること |
結果 | 姦淫行為が行われたこと | 姦淫行為が行われたこと |
旧強姦罪が未遂になるのはどのような場合か?
殺人未遂や強盗未遂という言葉は、皆さん聞いたことがあるでしょう。
それでは、強姦未遂というのもあるのでしょうか。
旧強姦罪の実行行為に着手したものの、旧強姦罪の結果が生じなかった場合に、強姦未遂罪が成立します。
改正前の刑法177条前段が規定する13歳以上の女子に対する旧強姦罪については、手段となる暴行・脅迫を開始した時点で実行行為の着手、つまり強姦未遂を認めるのが判例です。
具体的には、被害者を自動車内か他所へ連行して強姦しようとして車内に引きずり込もうとした時点で、強姦の実行行為の着手を認めた判例があります。
また、改正前の刑法177条後段が規定する13歳未満の女子に対する旧強姦罪については、姦淫行為を開始した時点で実行行為の着手、つまり強姦未遂が認められます。
強姦未遂罪は「ある」ということです。
強姦の未遂も、犯罪になるのです。
中には、車の中に引きずり込もうとした行為が、旧強姦罪の実行行為とされたこともあるようです。
まとめ
旧強姦罪が未遂になるのはどのような場合か?
旧強姦罪 | ||
---|---|---|
被害者 | 13歳以上の女子 | 13歳未満の女子 |
未遂の成立 | 暴行・脅迫の時点 | 姦淫着手の時点 |
既遂の成立 | 姦淫に至った時点 | 姦淫に至った時点 |
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まとめ
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総まとめ
旧強姦罪 | ||
---|---|---|
被害者 | 13歳以上の女子 | 13歳未満の女子 |
定義 | 暴行または脅迫を用いて姦淫すること | 姦淫すること |
刑罰 | 3~20年の有期懲役 | 3~20年の有期懲役 |
実行行為 | 暴行または脅迫を用いて姦淫しようとすること | 姦淫しようとすること |
結果 | 姦淫行為が行われたこと | 姦淫行為が行われたこと |
既遂の成立 | 姦淫に至った時点 | 姦淫に至った時点 |
未遂の成立 | 暴行・脅迫の時点 | 姦淫着手の時点 |