傷害罪のすべて|逮捕されても示談しないと懲役?慰謝料、時効とは?
よくある犯罪に焦点をあて、弁護士の監修のもと徹底調査したレポートを公開中の罪名ナビ。
今回は、傷害罪についての調査結果をお届けします。
傷害罪の意味や刑期、時効、逮捕の流れ、慰謝料、そして示談まで、徹底的に見ていきましょう。
目次
傷害罪とは、傷害罪の構成要件
傷害罪の定義とは
傷害罪とは、人の身体を傷害することによって成立する犯罪をいいます。 刑法204条は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定めています。
傷害罪の構成要件とは
傷害罪の構成要件とは、傷害罪が成立するための要件のことです。 傷害罪の構成要件が認められれば、正当防衛などで違法性が認められないか、精神障害などで責任が認められないなどの特別の事情がない限り、傷害罪が成立します。
傷害罪の構成要件の判断方法は?
傷害罪の構成要件の該当性は、
- ①傷害罪の実行行為があるか、
- ②傷害罪の結果が生じたか、
- ③傷害罪の実行行為と結果との間に因果関係が認められるか、
- ④傷害罪の故意が認められるか、
によって判断されます。
傷害罪の構成要件のポイント
傷害罪の保護法益は?
傷害罪の保護法益は人の身体の安全です。
傷害罪の実行行為は?
傷害罪の実行行為は人の身体を傷害することです。 「傷害」の意義については、判例は「人の生理機能に障害を与えること、または人の健康状態を不良に変更すること」と解する生理機能障害説に立っていると言われています。
傷害罪の結果は?
傷害罪の結果は人の身体が傷害を負うことです。
傷害罪の故意は?
暴行による傷害について、暴行の故意だけで足りるのか、傷害の故意を必要とするのかについて争いがあります。 判例は、傷害罪は故意犯であると同時に、暴行罪の結果的加重犯を含むから、傷害罪の故意としては暴行の故意だけで足りるとする見解に立っています。 つまり、人の身体を傷害した場合は、暴行の故意しか有していなかったとしても傷害罪が成立することになります。
傷害罪が未遂の場合はどうなる?
暴行をくわえたが傷害の結果が生じなかった場合は、暴行罪のみ成立します。 これに対して、暴行以外の方法による場合で、傷害の結果が生じなかった場合は、これを処罰する規定がないため、犯罪は不成立となります。
傷害罪と刑期
傷害罪と刑期の関係
傷害罪を犯した者は、刑法で「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。 懲役とは、懲役刑のことで、傷害罪で有罪判決を受けた人物を刑務所に収監し、刑務作業を行わせる刑罰をいいます。 もっとも、刑事裁判で懲役刑が言い渡されても、加害者側に有利な事情も考慮され執行猶予になれば、直ちには刑務所に収監されないです。 執行猶予後は、社会で日常生活を送り、再び犯罪をした場合に限り、執行猶予が取り消されて刑務所に収監されることになります。 これに対して、罰金とは、罰金刑のことで、傷害罪で有罪判決を受けた人物から一定の金銭を強制的に取り立てる刑罰をいいます。 傷害罪の場合は、50万円以上の罰金を科すことができないため、悪質な傷害事件に対しては、罰金刑ではなく懲役刑が言い渡されることになります。
傷害罪の刑期に関するQA
傷害罪の初犯の刑期は何年?
傷害罪を犯した者は、刑法で「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。 初犯の場合の刑期も、この法律の範囲内で言い渡されることになります。 実際に言い渡される刑期は、傷害罪によって生じた結果の重大性や、傷害罪の行為の悪質性の程度によって異なってきます。 傷害事件で生じた損害が重大な場合や、傷害事件の行為が極めて悪質な場合は、初犯でも実刑になることがあります。 これに対して、理論的には傷害罪が成立する場合でも、傷害罪の結果が軽微で行為の悪質性がないケースでは、不起訴として前科がつかないこともあります。 初犯であれば、略式裁判による罰金刑で終わることも多いです。
傷害罪でも執行猶予になる?執行猶予になるためには?
傷害罪で起訴されて刑事裁判になっても、執行猶予になる場合があります。 刑事裁判で懲役刑が言い渡されても、執行猶予になれば、直ちには刑務所に収監されないです。 執行猶予後は、社会で日常生活を送り、再び犯罪をした場合に限り、執行猶予が取り消されて刑務所に収監されることになります。 執行猶予になるためには、傷害事件の被害者に謝罪と賠償が尽くされ、示談が成立していることが大切です。
傷害罪と時効
傷害罪と時効の関係
傷害罪の時効は、刑事の時効と民事の時効に分けることができます。 傷害罪の刑事の時効とは、いわゆる公訴時効のことです。 公訴時効とは、検察官の公訴する権限を消滅させる時効のことです。公訴時効が成立すれば、検察官は事件を起訴することができなくなります。 また相談者によっては告訴期間のことをさして「刑事の時効」と表現される方もいます。 告訴期間とは、親告罪の告訴をできる期間のことです。刑事訴訟法235条は「親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を経過したときは、これをすることができない」と定めています。 傷害罪の民事の時効とは、いわゆる損害賠償請求権の消滅時効のことです。 民法724条の規定により、「損害および加害者を知った時」から3年間権利を行使しないときには、その権利は消滅するとされています。
傷害罪の時効に関するQA
傷害罪の公訴時効の時効期間は何年?いつから進行する?
傷害罪の公訴時効は10年です。公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行します。 傷害罪が終わった時から10年が経過した後は、検察官は傷害事件を起訴することができないということになります。
傷害罪の告訴期間は何年?いつから進行する?
親告罪の告訴期間は犯人を知った日から進行し、告訴ができる期間は6か月と定められています。 しかし、傷害罪は親告罪ではないので、6か月の告訴期間の規定は適用されません。 傷害罪の被害者は、犯人を知った日から6か月が経過した後も、傷害罪の加害者を告訴することができます。
傷害事件と親告罪の関係については『傷害罪は親告罪ではない?|告訴がなくても逮捕されるのかを解説』をご覧ください。
傷害罪の民事の時効期間は何年?いつから進行する?
傷害罪の民事の賠償請求権の時効期間は3年です。 損害賠償請求権の消滅時効は損害および加害者を知った時から進行します。 傷害罪の被害者は、損害および加害者を知った時から3年以内であれば、傷害罪の加害者に対して損害賠償を請求できるということになります。 これに対して、傷害罪の加害者は、傷害罪の被害者が損害および加害者を知ったのち3年が経過すれば、損害賠償の請求を受けないということになります。
傷害罪の慰謝料の時効期間は何年?いつから進行する?
傷害罪の慰謝料請求権の時効期間は3年です。 慰謝料請求権の消滅時効は、被害者が損害および加害者を知った時から進行します。
傷害罪の時効については『傷害罪の時効|公訴時効、告訴・民事・慰謝料の時効は何年?』でも解説しているので是非ご覧くださいね。
傷害罪と逮捕
傷害罪と逮捕の関係
現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)の違いは?
傷害罪の逮捕には、大きく、①傷害罪の事件当日に逮捕される現行犯逮捕と、②傷害罪からしばらくした後に逮捕される後日逮捕(法律的には「通常逮捕」といいます)の二つのパターンがあります。 傷害罪の現行犯逮捕とは、傷害罪の当日に傷害事件の現場で逮捕されることをいいます。傷害事件が起こったその時その場所で被害者や目撃者によって逮捕されるのが一般的です。 現行犯逮捕された後は、傷害罪の加害者はそのまま警察署に連行されることになります。 これに対して、傷害罪の後日逮捕とは、傷害罪の逮捕状にもとづいて逮捕されることをいいます。傷害事件が起こった翌日以降に逮捕状をもった警察官によって逮捕されるのが一般的です。 傷害罪の逮捕状がいつ発行されるかは、傷害事件に対する捜査の進み具合によって異なります。
傷害罪で現行犯逮捕されるケースは?
傷害罪で現行犯逮捕されるケースは、傷害事件の被害者が大きなケガを負っている点に特徴があります。 傷害事件の被害者が大きなケガを負っている場合は、目撃者や被害者側の関係者、現場に駆けつけた警察官によって現行犯逮捕されることが少なくありません。 また、傷害罪の手段として悪質な凶器を用いた場合も、現行犯逮捕されるケースが多いです。
具体例その1
加害者Aは被害者Bに対して、包丁を用いて腹部を刺し、重症を負わせたことで現行犯逮捕された。
具体例その2
加害者Aは被害者Bに対して、乱闘の末、馬乗りになって首を絞め、重症を負わせたことで現行犯逮捕された。
傷害罪で後日逮捕(通常逮捕)されるケースは?
傷害罪で後日逮捕されるケースは、傷害罪の加害者が傷害事件に関する証拠を隠滅する可能性が高い点に特徴があります。 警察としても、軽微な傷害事件で、証拠隠滅の可能性が低いケースでは、わざわざ裁判所に対して逮捕状を請求しないのが一般的です。 この点、傷害罪の容疑を不合理に否認している場合や、傷害事件の共犯者が多数存在する場合は、「証拠を隠滅する可能性が高い」として後日逮捕されるリスクが高まります。
具体例その1
加害者Aは被害者Bを傷害した。しかしその後、多数の目撃者や明確な証拠があるにも関わらず、容疑を不合理に否認したため後日逮捕された。
具体例その2
加害者ABCは被害者Dを傷害した。しかしその後、ABCの三者は今回の傷害事件に関して口裏合わせをして証拠を隠滅しようとしたため後日逮捕された。
傷害罪の逮捕に関するQA
逮捕されない傷害罪はある?
あります。すべての傷害罪の加害者が逮捕されるわけではありません。 傷害罪を犯してしまっても、傷害罪の結果が重大でない場合は、逮捕されないケースも多いです。 もっとも、逮捕されない傷害罪の場合でも、被害届が受理されれば、在宅(ざいたく)のまま捜査や取り調べが行われることになります。 在宅事件の場合は、警察署の留置場で生活する必要はありません。自宅で生活することができます。 しかし、警察から呼び出しがあった場合は、その呼び出しに応じて自宅から警察署に出向き、傷害事件の捜査や取り調べに協力することが求められます。
傷害罪の逮捕条件は?
傷害罪の逮捕条件は、現行犯逮捕の場合と、後日逮捕(通常逮捕)の場合とで異なります。
現行犯逮捕の要件
傷害罪の現行犯逮捕は、基本的に、傷害事件を現に確認した者によってその現場で行われる必要があります。 現行犯逮捕できるのは、基本的にその時その場限りです。 傷害事件の現行犯逮捕は、目撃者や被害者側の関係者、現場に駆けつけた警察官によって行われることが多いです。
後日逮捕の要件
傷害罪の後日逮捕は、裁判官が発行する逮捕状にもとづいて行われる必要があります。 逮捕状の発行を請求するのは、一般的に警察官です。 逮捕状の発行は、逮捕の理由と逮捕の必要性が認められる場合に限られます。 逮捕の理由とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことです。 逮捕の必要性とは、「被疑者が逃亡するおそれ」や「被疑者が罪証を隠滅するおそれ」があることです。
傷害罪の逮捕の流れは?逮捕までの流れは?
傷害罪の逮捕の流れは、大きく現行犯逮捕の場合と後日逮捕(通常逮捕)の場合に分けられます。
現行犯逮捕の流れ
傷害罪の現行犯逮捕の流れは、傷害事件の現場で傷害事件の直後に逮捕される点に特徴があります。 傷害事件の被害者や目撃者が加害者を直接逮捕するのが、傷害罪の現行犯逮捕です。 現行犯逮捕された後は、その場に通報を受けた警察官がやって来て、そのまま警察署に連行されることになります。
①傷害事件の発生
↓
②被害者や第三者による現行犯逮捕
↓
③警察署への連行
後日逮捕の流れ
傷害罪の後日逮捕の流れは、逮捕状をもった警察官に逮捕される点に特徴があります。 傷害事件の加害者を後日逮捕するためには、裁判所が発行する逮捕状にもとづく必要があります。 実際の後日逮捕の現場では、警察官が傷害事件の加害者に逮捕状の内容を読み上げて、逮捕が執行されることになります。
①傷害事件の発生
↓
②警察官による逮捕状の請求
↓
③裁判官による逮捕状の発行
↓
④警察官による後日逮捕
↓
⑤警察署への連行
傷害罪から後日逮捕されるまでの期間は?
後日逮捕されるまでの期間に、法律上の決まりはありません。 傷害罪を犯してから後日逮捕されるまでの期間は、捜査の進み具合によるところが多いです。
単純な傷害事件の場合
単純な傷害事件で捜査がスムーズに進む場合は、傷害事件から一か月以内に後日逮捕されるケースが多いです。
複雑な傷害事件の場合
複雑な傷害事件で捜査が困難な場合は、後日逮捕までの期間が長引く傾向にあります。 特に、傷害事件の関係者が複数いるなどして捜査が難航しているケースでは、逮捕状を請求することができないので、後日逮捕までの期間が長引くことになります。 複雑な傷害事件で捜査が難航している場合は、傷害事件から半年後や一年後に後日逮捕されることもあります。
傷害罪で逮捕された後の拘留期間は?
逮捕の期間
傷害罪の逮捕の期間は、72時間です。 傷害罪で逮捕されてから48時間以内に送致され、24時間以内に勾留が請求されなければ、基本的に釈放されます。 傷害罪での勾留が認められない限り、留置場で二、三泊して釈放されるというイメージになります。
拘留(勾留)の期間
傷害罪での勾留の期間は、最初は10日間、さらに10日間延長される可能性があり、傷害事件が起訴されればさらに長引くことになります。 一度勾留が決定されれば、弁護士が介入し途中で示談が成立するなどの特段の事情がない限り、最低でも10日間は警察署の留置場で生活しなければなりません。 その後、さらに10日間ほど勾留が延長される可能性があります。 さらに、傷害罪で起訴(公判請求)された場合は、その後に保釈が認められるか執行猶予判決が言い渡されるまで、ずっと留置場または拘置所で生活しなければなりません。 もし早期の釈放が必要な場合は、弁護士に積極的に動いてもらった方がよいでしょう。 弁護士が示談を成立させたり、保釈を請求することで、比較的早く留置場から釈放されるケースも多いからです。
以上、傷害罪と逮捕の関係について解説しました。
傷害罪と逮捕については、こちらの『傷害罪で逮捕される?逮捕されない?勾留(拘留)・釈放の期間と流れに迫る』でも解説しているので、興味のある方はご覧ください!
傷害罪と懲役
傷害罪と懲役の関係
傷害罪には、罰金刑と懲役刑が定められています。 傷害罪の結果が軽微な場合は、略式裁判で罰金刑になる可能性があります。 これに対して、傷害罪の結果が重大なケース、または傷害罪の行為が凶器を使うなど悪質なケースでは、正式裁判で懲役刑が下される可能性が高いです。
そもそも懲役刑とは?
懲役刑とは、刑務所で刑務作業を負う刑罰をいいます。 傷害罪で懲役実刑となった場合は、刑務所に収監されて刑務作業を行わなければなりません。 これに対して、傷害罪で懲役刑になっても、判決で執行猶予がついた場合は、直ちには刑務所に収監されないので、刑務作業を行う必要もありません。
傷害罪の懲役に関するQA
傷害罪の懲役の相場は?
傷害罪の懲役刑の相場は、事件によってさまざまです。 傷害罪の懲役の法定刑は、刑法によって懲役15年以下と定められているため、傷害罪の懲役刑が傷害事件単体で懲役15年を超えることないと言えます。 傷害罪の結果が重たくない場合は、懲役刑にはならず罰金刑や不起訴で終わることも多いです。 これに対して、傷害罪の結果が重大だったり、行為が凶器を使うなど悪質な場合は、初犯であっても懲役実刑になることがあります。
傷害罪の懲役の年数は?懲役は何年?
傷害罪の懲役の年数は、刑法によって15年以下と定められています。 傷害罪で懲役実刑になるとしても、傷害罪単独であれば、刑務所に収監されるのは15年以下です。
初犯の傷害罪でも懲役実刑になる?
初犯でも懲役実刑になる可能性があります。 傷害罪の結果が重大な場合や、危険な凶器を使うなど行為が悪質な場合は、初犯でも懲役実刑になる可能性が高いです。 特に、傷害事件の被害が重大で、傷害罪の加害者と被害者の間で示談が成立していない場合は、初犯でも懲役実刑になる可能性がより高まります。
懲役実刑を避ける方法は?
傷害事件は被害者がいる刑事事件なので、被害者と示談を成立させることがもっとも大切です。 傷害罪の被害者と示談が成立し、相手から許してもらうことができれば、初犯である点が考慮され、懲役実刑になる可能性が低くなります。
初犯の傷害罪だと執行猶予になる?
初犯の傷害罪だからといって、必ずしも執行猶予になるとは限りません。 傷害罪の初犯であることは、刑事裁判において有利に考慮されますが、傷害事件の結果が重大または行為が悪質な場合は、初犯でも懲役実刑になる可能性があります、 傷害罪で刑事裁判になった場合、執行猶予の可能性を高めたければ、被害者と示談を成立させることが大切です。
傷害罪の懲役と罰金の量刑判断は?
傷害罪の懲役と罰金の量刑判断では、①傷害事件の結果の重大性、②傷害事件の行為の悪質性、③傷害事件の加害者と被害者との間で示談が成立しているか、などが考慮されます。
結果の重大性
傷害事件の結果が重大な場合は、罰金ではなく懲役になる可能性が高まります。 例えば、被害者に重たい後遺障害が残った傷害事件は、結果が重大と判断されることになります。
行為の悪質性
傷害事件の行為が悪質な場合は、罰金ではなく懲役になる可能性が高まります。 例えば、包丁などの凶器を用いた傷害事件は、行為が悪質と判断されることになります。
示談の有無
傷害事件の示談が不成立な場合は、罰金ではなく懲役になる可能性が高まります。 示談が成立しているか否かは、被害者が存在する傷害事件の刑事裁判としては、重要な量刑事情となるからです。
略式裁判と正式裁判の違い
傷害罪で罰金刑が言い渡される場合は、略式裁判で法廷には出ずに終わるケースが多いです。 これに対して、傷害罪で懲役刑が言い渡される場合は、必ず裁判所の法廷で正式裁判が行われることになります。
傷害罪の刑期・刑罰については『傷害罪の刑罰と刑期|罰金・懲役実刑・執行猶予付判決の相場感を解説』でも説明しているので、是非ご覧ください。
傷害罪と慰謝料
傷害罪の慰謝料とは
傷害罪の慰謝料とは、傷害罪によって生じた精神的損害に対する賠償金のことをいいます。 傷害罪の慰謝料の金額は、傷害罪によって引き起こされた損害の程度によって異なってきます。 基本的には、損害が重たいほど慰謝料の金額が高額になります。
傷害罪の慰謝料に関するQA
傷害罪の慰謝料の相場は?
傷害罪の慰謝料の相場は、傷害罪によって生じた被害の程度によってさまざまです。 傷害罪による被害の程度が小さければ、慰謝料の金額は数万円程度でしょう。 これに対して、後遺障害が残るような重たい被害を受けた場合は、慰謝料の金額が数千万円を超えるケースもあります。
シミュレーションその1
傷害事件から治療終了まで90日(うち入院期間30日)を要し、後遺障害等級14級が認定された重症のケースで、入通院慰謝料が98万円、後遺障害慰謝料が110万円。
シミュレーションその2
傷害事件から治療終了まで180日(うち入院期間90日)を要し、後遺障害等級6級が認定された重症のケースで、入通院慰謝料が188万円、後遺障害慰謝料が1,180万円。 さらに、事故時の年齢が30歳で、事故前の年収が600万円だった場合は、後遺障害逸失利益として6,717万円を受け取れる可能性があります。
傷害罪の慰謝料請求権の時効は?
傷害罪の慰謝料請求権の時効は、傷害罪の損害および傷害罪の加害者を知った時から3年です。 慰謝料請求権は、3年間行使しない時は、時効によって消滅するので注意が必要です。 傷害罪の慰謝料請求権の時効の進行は、請求、差押え・仮差押え・仮処分、承認によって中断します。
傷害罪の慰謝料と示談の関係は?
慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償金のことをいいます。 実際のケースでは、慰謝料を支払うことで示談が成立するケースが多いです。 しかし、慰謝料の支払いはただの義務の履行なので、慰謝料を支払ったからといって必ず示談が成立するわけではない点を理解する必要があります。 傷害罪の被害者は、傷害罪の加害者から慰謝料を受け取る権利を有します。 慰謝料の受け取りは権利の行使なので、慰謝料を受け取ったからといって必ず示談を締結しなければならないというわけではないのです。
傷害罪の損害賠償請求については『傷害事件で損害賠償請求されたら|相場や示談の有効性を解説』もご覧ください。
傷害罪慰謝料と未成年者の関係は?
未成年者であっても、傷害罪の慰謝料の支払い義務を負うというのが、法律の判断です。 慰謝料の支払い義務を負わない若年者は、民法上、自分の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない者に限られます。 一般論としては、12歳から13歳程度と言われています。 したがって、未成年者であっても、原則としては、傷害罪の慰謝料を支払う義務を負うことになります。 未成年者に弁済の資力がない場合でも、慰謝料の支払い義務自体は負うことになるのです。
なお、未成年が傷害事件を起こしてしまった場合については『未成年の傷害事件の流れを解説|示談金・慰謝料の相場も紹介』で解説しているので、是非ご覧ください。
傷害罪と示談
傷害罪の示談とは
傷害罪の示談とは、傷害罪によって生じた賠償金をめぐるトラブルを、傷害罪の加害者と被害者の合意をもって解決することをいいます。 示談書の作成は、示談の成立の必要条件ではありません。 しかし、その後のトラブル(示談が成立した、しないの言い合い)を防ぐためにも、示談書を作成するが大切です。
示談成立の効果は?
傷害罪の示談が成立したということは、傷害罪によって生じた賠償金のトラブルが当事者間の合意によって解決したということを意味します。 示談が成立すれば、傷害罪の加害者は、被害者に対して、示談金を支払い、その他の示談の条件を履行する義務を負います。 傷害罪の被害者は、加害者が示談の条件を履行しない場合は、成立した示談書を証拠として、その後の民事手続きを有利に進めることができます。
加害者側の示談のメリットは?
傷害罪の示談が成立すれば、傷害罪の加害者は、その後の刑事手続きにおいて、示談が成立しなかった場合と比べて有利に取り扱われます。 具体的には、刑事裁判にならない可能性や、不起訴で前科がつかない可能性が高まります。 示談が成立したことで、軽微な傷害事件であれば不起訴になることも多く、傷害罪の前科がつかないメリットは大きいです。
被害者側の示談のメリットは?
傷害罪の示談が成立すれば、傷害罪の被害者は、民事裁判などの面倒な手続きを経ることなく、賠償金を受け取ることができます。 もっとも、示談の成立と同時に賠償金を受け取らなければ、その後に加害者に逃げられてしまうリスクもあるため、注意が必要です。 加害者に逃げられてしまった場合は、賠償金を受け取るためには、示談書を証拠として民事裁判などの手続きを取る必要が出てきます。
傷害罪の示談に関するQA
傷害罪の示談金の相場は?初犯の場合の相場は?
傷害罪の示談金の相場は、ケースによってさまざまです。 初犯の傷害罪だからといって示談金が安くなることはあまりなく、傷害罪によって生じた結果の大小や、被害者の処罰感情によって金額が左右されることが多いです。 傷害罪の被害がそれほど重たくない場合は、10万〜30万円程度の示談金でまとまるケースも多いです。 傷害罪の被害者の側としても、実際に治療に要した金額に加えて、一定の慰謝料を貰えれば、誠意が伝わったとして満足するケースが多いからです。 これに対して、傷害罪によって生じた損害が重たい案件に関しては、示談金が100万円を超えることも珍しくありません。 後遺障害が残るようなケースだと、実際に民事裁判になれば数千万円から一億円以上の損害賠償が認められることもあります。 そのため、当事者の話し合いでまとまる示談においても、示談金の金額が高くなる傾向にあります。 刑事事件としての傷害罪の場合は、加害者が刑務所に入ってしまえば、いくら民事裁判で損害賠償が認められたとしても、実際に賠償金を回収するのは困難です。 賠償金の回収を重視する被害者の方は、民事裁判で認定される可能性がある賠償金の金額よりも安い金額で示談してしまうのも一つです。 示談であれば、「示談金を実際に受け取ってから示談書を作成する」という前払いの方式を取ることが可能で、お金が回収できないリスクを回避することができるからです。
示談拒否で、傷害罪の示談に応じない場合は?
傷害罪の加害者が示談に応じない場合、被害者としては、自らが傷害罪で被った損害を取り戻すためには、自らで法的な手段を取る必要があります。 まずは、傷害罪の加害者に対して、内容証明郵便で傷害罪にもとづく損害賠償を請求してみるなど、何らかのアクションを起こしてみましょう。 もし加害者がそれでも示談を拒否する場合は、傷害罪で被害を被ったことを理由とした民事裁判や民事調停を起こすことも可能です。 ただし、たとえ傷害罪で被害を被った場合であっても、民事の手続きで弁護士を立てる場合は、自らで弁護士費用の大半を負担する必要が出てきます。 これに対して、傷害罪の被害者が示談に応じない場合、加害者としては、刑事手続において刑罰が重たくなるリスクを負います。 具体的には、示談が成立すれば不起訴になったのに示談が不成立だったから罰金や刑事裁判になるリスクがあります。 また、示談が成立すれば執行猶予になったのに示談が不成立だったから実刑になるリスクを負うことになります。 また、傷害罪の被害者が示談に応じない場合、加害者は、刑事手続が終わった後も、傷害罪により損害を与えたことを理由とする民事の損害賠償責任を負い続けることになります。
傷害罪で示談しない場合は?
傷害罪の示談をしない場合、傷害罪の加害者は、その後の刑事手続において、示談が成立した場合と比べて重たい処罰を受けるリスクを負います。 また、傷害罪の示談をせずに刑事処罰を受けたとしても、傷害罪の加害者は、傷害罪によって相手に与えた損害につき、引き続き損害賠償責任を負い続けることになります。 これに対して、傷害罪の被害者としては、傷害罪の示談をしないで刑事手続きが終わった場合でも、引き続き、加害者に対して損害賠償を請求し続けることができます。 示談金の金額や示談の条件に納得がいかない場合は、傷害罪によって被った損害につき、民事裁判や民事調停などの法的な手続きをとって、傷害罪の加害者に賠償を求めるのも一つです。 ただし、傷害罪の加害者が刑務所に入ってしまった場合は、賠償金の回収が困難なので注意が必要です。
傷害罪の示談書の書き方は?
傷害罪の示談書の書き方は、通常の示談書の書き方と同様です。 示談書の冒頭で、傷害事件が起こった日時・場所、傷害罪の加害者と被害者の氏名などを記載して、事件の内容を特定することになります。 また、傷害罪の示談書には、示談金の金額やその支払い方法を記載します。 示談書の作成は、加害者と被害者の双方がサインをすることで完了します。 示談金の一括払いが難しい場合は、示談金の分割払いの合意を結ぶことも可能です。 傷害罪の示談書に、「被害者は加害者のことを許す」旨の宥恕条項(ゆうじょじょうこう)を設けた場合は、その後の刑事手続きで、加害者に有利に考慮されます。
傷害罪の示談の流れや示談の方法は?
傷害罪の示談の流れは、通常の事件の示談の流れと同様です。 傷害罪の加害者が被害者の連絡先を知っている場合は、当事者同士で示談の話し合いを進めることができます。 示談成立の流れとしては、
①話し合い
↓
②示談条件の確定
↓
③示談書の作成
↓
④示談金の支払い
↓
⑤示談書にサイン
という流れを経ることが多いです。 これに対して、傷害罪の加害者が被害者の連絡先を知らない場合は、傷害罪の示談を進めるためには、弁護士を選任する必要があります。 弁護士を選任すれば、警察官や検察官から被害者の連絡先を聞くことができるケースが多いからです。 弁護士を選任した後の示談の流れとしては、弁護士が被害者と話し合って、示談が成立することになります。
傷害罪は示談すれば不起訴になる?示談しても起訴される?
傷害罪は親告罪ではないので、傷害罪の示談が成立したからといって、必ず不起訴になるわけではないという点をまず理解する必要があります。 もっとも、傷害罪の被害がそれほど重たくない場合は、傷害罪の被害者と示談が成立すれば、起訴猶予による不起訴の可能性が高まります。 被害者と示談が成立すれば、加害者を起訴する必要性が低くなるからです。 これに対して、示談しても起訴されるケースというは、傷害罪の被害が重たい場合や、凶器などを使っていて行為が悪質な場合などです。
傷害罪の示談が不成立だった場合はどうなる?
傷害罪の示談が不成立の場合は、傷害罪の加害者は、その後の刑事手続において、重たい処罰に課されるリスクを負います。 示談が不成立だった事実は、示談が成立している場合と比べて、傷害罪の加害者側に不利な事情として取り扱われるからです。 なお、示談が不成立だったとしても、傷害罪によって負わせた損害の賠償を完了している場合は、その限りにおいて、傷害罪の加害者側に有利な事情として取り扱われます。 これに対して、傷害罪の被害者は、傷害罪の示談が不成立である以上、刑事手続きが終わった後も引き続き、加害者側に対して、傷害罪によって負った損害の賠償を請求し続けることができます。
なお、示談金の相場はこちらからかんたんに確認することができます。
『【傷害事件の示談金の相場2022】示談の仕組みと重要性を解説』では、示談金の相場について、過去の事例を取り上げて丁寧に解説しているので、興味がある方は是非ご覧ください!
また、本記事以外で、傷害事件に関して知っておきたい情報は『傷害事件で逮捕・前科を回避するための正しい対処法』にまとめているので、興味がある方はご覧ください。
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まとめ
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