逮捕後の身元引受人の役割|身元引受人の条件とは?どんな責任を負う?拒否できる?
「警察に逮捕されたら、身元引受人を呼ぶように言われた!これって何を意味するの?」
「警察から身元引受人として呼び出された!責任はある?拒否できる?」
このような疑問、お悩みをお持ちの方はいませんか?
身元引受人を呼ぶ側も、身元引受人として呼ばれる側も、多くは初めての経験でしょうから、不安や疑問は尽きないと思います。
今回は、
- 身元引受人を呼ぶように言われたときの意味や流れ
- 身元引受人となる条件や役割
- 身元引受人がいない場合のリスク
などについて徹底解説していきます。
なお、専門的な解説は刑事事件を数多く取りあつかい、身元引受人についてもくわしいアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
身元引受人の存在は、逮捕された方のその後の刑事手続きに大きな影響を与えます。
この記事で、身元引受人についてしっかりと確認し、もしものときに備えてください。
目次
逮捕後、警察から身元引受人を呼ぶよう言われた!|その意味とは?
「逮捕後、身元引受人の有無が釈放の条件になる」
といった話を聞いたことありませんか?
逮捕後に身元引受人を呼ぶように言われたとき、その話が意味するほんとうのところを解説していきましょう。
微罪処分の可能性|逮捕直後の身元引受人要求
逮捕直後に警察から身元引受人を呼ぶよう言われたとき、まず可能性として挙げられるのは微罪処分となる見込みがたった場合です。
原則として、刑事事件で検挙された被疑者は検察に送致されます。
しかし、被疑者やその犯行態様について、あらかじめ検察官が指定した「微罪」の条件にあてはまるときには、警察官の判断で送致が行われないこともあります。
これを微罪処分と言います。
微罪処分となれば刑事手続きはそこで終了となります。
つまり
- 起訴されることはない
- 刑事罰が科せられることもない
- 前科もつかない
ということです。
微罪処分となる条件は、犯した犯罪ごとにこと細かに規定されていますが、内容はおおむね以下のとおりです。
微罪処分の条件の一例
- 被害が軽微で被害回復が行われている
- 犯行態様が悪質ではない
- 被害者が加害者に罰則を望んでいない
- 初犯
- 「家族や上司などの監督者がいる」
監督者、つまりは身元引受人の有無が微罪処分の条件にかかってくる場合もあるわけです。
逮捕直後、身元引受人を要求され、
「後日呼び出すからきちんと出頭するように」
といった旨のことを言われなかった場合、微罪処分となった可能性は高いと言えるでしょう。
身元引受人の効果や意味
微罪処分となる以外にも、身元引受人を要求されるケースはあります。
また、身元引受人となってくれる人がいるということを警察、検察などにアピールすることで、被疑者の利益になることもあります。
具体的に見ていきましょう。
勾留阻止、早期釈放が見込める
まず、身元引受人がいることによって勾留が行われず、そのまま釈放されて在宅事件へ切り替わる可能性があります。
勾留というのは、逮捕後も引き続き警察署内の留置場などに被疑者を身体拘束し続ける手続きのことを言います。

勾留をうければ起訴されるまで最大で20日ものあいだ、警察署内に拘束を受けることになります。
勾留や刑事事件の流れについてより詳しく知りたい方はこちらの記事を参照してください。
勾留や刑事事件の流れについて
勾留が行われるのは以下の条件にあてはまったときです。
勾留の行われる条件
- ① 被疑者が定まった住所を持っていない
- ② 被疑者が証拠隠滅するおそれがあると認められる
- ③ 被疑者が逃亡したり、逃亡するおそれがあると認められる
身元引受人がいることで、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを根拠をもってアピールすることが可能となるわけです。
警察官からの身元引受人要求
また被疑者側から身元引受人などについて何もアピールしなくても、むしろ警察官側から身元引受人を要求されることもあります。
検察官が、
「身元引受人がいるなら勾留の必要はない」
と判断したときは、事件担当の警察官にそのことが伝えられ、釈放の手続きが進められていくのです。
勾留の請求が行われなければ、そのまま在宅事件として刑事手続きが進んでいくことになります。

微罪処分と違って起訴される可能性や刑事罰を科せられる可能性は残ります。
しかし勾留をうけるよりも、被疑者の負う社会的なダメージは少なくなることでしょう。
在宅事件についてより詳しく知りたい方はこちらの記事を参照してください。
保釈認容の可能性が上がる
残念ながら検察によって起訴されて、正式に裁判が開かれることになってしまうこともあります。
正式裁判が開廷される運びとなったとき、勾留をうけていた被疑者の多くはそのまま拘置所に身柄を移され、勾留され続けることになります。
これを「被告人勾留」と言います。

被告人勾留は、裁判が終わるまで続くことが多いです。
刑事裁判の期間
平成28年のデータでは、刑事裁判の第一審の平均審理期間は、3.2か月です。
審理期間の分布をみると、全体の7割ほどの事件について、3か月以内に終わっています。
「裁判が終わるまで、何か月にもわたって勾留され続けてしまう」
社会的なダメージの大きさは想像に難くないかと思います。
被告人勾留をうけてしまったときには、保釈によって、身体拘束から自由になるという手段があります。
保釈とは、一定の金額の現金を保釈金として裁判所に預ける代わりに、身体拘束から解放されるという制度です。
裁判がすべて滞りなく終われば保釈金は返還されますが、被告人が逃亡などした場合には没取されます。
いわば保釈金は、裁判にきちんと出廷することを保障するための、人質ならぬ「もの質」というわけです。
この保釈はすべての事件について無条件に認められるというわけではなく、裁判官による審査を通らなければなりません。

- 証拠隠滅のおそれ
- 事件関係者に危害をくわえたり脅迫したりするおそれ
がある場合には、保釈は認められません。
身元引受人の存在は、こういったおそれのないことをアピールする根拠となるわけです。
保釈についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
執行猶予付き判決となる可能性が上がる
統計データを参照すると、起訴された事件のうち99.9%以上の事件は有罪となり、なにかしら刑事罰が科せられています。
仮に起訴されてしまったときには、
「いかにして量刑を軽減するか」
についても考えなければなりません。
そして、身元引受人がいることによって、執行猶予付きの判決となる可能性はあがります。
執行猶予とは、有罪判決にもとづく刑の執行に猶予期間をあたえ、その猶予期間のあいだ罪を犯さなければ刑罰の執行を行わないという制度です。
例えば「懲役3年 執行猶予5年」の判決がくだった場合には、判決から5年間、一度も罪を犯さなければ3年間の刑務所暮らしが免除されます。
執行猶予をつけてもらうには、被告人に有利な情状が必要です。
身元引受人は、裁判官が「ただちに刑務所に入れる必要はない」と判断するにあたり、被告人にとって有利な情状となります。
勾留阻止 | 保釈認容 | 執行猶予付き判決 | |
---|---|---|---|
効果 | 釈放される可能性があがる | 保釈請求が認容される可能性があがる | 執行猶予付き判決獲得の可能性があがる |
身元引受人が必要となるタイミングについては『身元引受人の条件|親がいないなら友人でもOK?警察の逮捕・保釈・仮釈放の瞬間』でも解説しているので、興味がある方はご覧ください!
逮捕者の身元引受人になる条件や役割|責任は生じる?拒否できる?
「身内が逮捕された!身元引受人になるよう言われたんだけどなにすればいいの?」
この記事をご覧の方の中には、身元引受人として呼び出しを受けたという方もいらっしゃるかもしれません。
- 身元引受人の役割や条件
- 身元引受人に生じる責任や拒否できるか
についても解説しましょう。
身元引受人の条件や役割
身元引受人の役割は、被疑者、被告人の監督です。
身元引受人の役割
監督の内容①被疑者更生
- 万引き犯の身元引受人として、極力いっしょに買い物に同行するようにする
- 薬物事件の身元引受人として、更生施設にいっしょに通う
などといったように、被疑者について更生をうながすという面について監督する役割があります。
監督の内容②見守り
証拠隠滅や逃亡をしないよう、監督し見守るという役割があります。
監督の内容③出頭、出廷
- 警察の取り調べ要請に応じてきちんと出頭させる
- 公判が開かれる日にきちんと裁判所に出廷させる
などといったように、被疑者についてきちんと刑事手続きに参加させるよう監督する役割もあります。
身元引受人の条件
身元引受人の条件は、法的に規定があるわけではありません。
身元引受人の監督の役割をきちんとこなせる人物であることが重要です。
一般的に、親、兄弟、妻、夫、親戚など、被疑者や被告人の身内が身元引受人になるケースが多いです。
より詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
友人、彼女、会社の上司はOK?弁護士は?
とはいえ
「親戚はみんな遠方に住んでいて身元引受人になれない」
といった場合もあるかと思います。
身内に身元引受人となってくれる人がいないときには、会社の上司に身元引受人を依頼することを考えましょう。
注意
会社の上司に身元引受人を依頼した場合、もれなく事件のことが会社にバレてしまいます。
その結果、停職や解雇などなんらかの処分が下される可能性もあります。
会社の上司に身元引受人をお願いするときは、そういったリスクについても考える必要があります。
また、自身の恋人や友人に身元引受人をお願いするという手もあります。
- 「一緒に住んでいる」
- 「仕事上深い関わりがある」
といったように、より監督の役割に適していると判断される要件を備えていれば、なおいいでしょう。
身元引受人 | |
---|---|
役割 | 被疑者、被告人の監督 |
条件 | 役割を果たせる人 一般的には身内だが、会社の上司、友人や恋人も可 |
身元引受人に生じる責任|拒否はできる?
身元引受人の役割について確認してきましたが、中には
「被疑者や被告人の監督なんて気が進まない…」
という方もいるのではないでしょうか?
- 身元引受人にはどんな責任が生じるのか
- 身元引受人をお願いされたとき、それを拒否することはできるのか
についても見ていくことにしましょう。
身元引受人に責任は生じない
身元引受人に法的な責任が生じることはありません。
たとえば被疑者が証拠隠滅をはたらいたり、被告人が裁判に出廷しなかったりしても、身元引受人が責任を追及されることはないのです。
身元引受人拒否の方法
身元引受人になることを拒否することは可能です。
また、いったん身元引受人になることを了承したのち、あとからそれを撤回して辞退することも可能です。
身元引受人を拒否したいときには、身元引受人になるよう要求された機関(警察や被疑者の弁護士など)にその旨を伝えます。
身元引受人がいない場合は逮捕されたままとなる?
身元引受人がいないときには、さまざまなデメリット、リスクを背負うことになります。
ヤフー知恵袋にはこのような投稿がされていました。
身元引受人が結局いないわけですが、警察署から帰れるんでしょうか?
出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10109720650
- 身元引受人がいない場合の対処法
- 身元引受人がいない場合のデメリット、リスク
について、それぞれ解説していきます。
身元引受人の代行サービスはある?
老人ホームへの入所や病院への入院に際して、身元引受人の代行サービスを提供しているNPO、社団法人はあります。
しかし、刑事事件においては、身元引受人の代行サービスを提供している企業などはありません。
どうしても身元引受人が見つからないときには、弁護士に依頼するのが良いでしょう。
とくに起訴前の段階であれば、捜査機関との交渉次第で弁護士が身元引受人として認められるケースも多いです。
身元引受人に覚えがない場合でも、弁護士に相談することで事態を好転させることが叶う場合もあるわけです。
身元引受人なしのデメリット、リスク
身元引受人がいないことによるデメリット、リスクは主に以下の通りです。
微罪処分 |
---|
微罪処分となり得る事件について、微罪処分が取り消されて送検される可能性があがる |
勾留 |
勾留をうける可能性があがる |
保釈 |
保釈請求が拒否されてしまう可能性があがる |
執行猶予 |
執行猶予付き判決になり得る事件について、実刑判決となる可能性があがる |
身元引受人がいなくても、釈放、保釈、執行猶予付き判決が叶う場合もあります。
しかし実務上、とくに釈放や保釈については、身元引受人の存在が絶対に必要な要件だとみなされている節があります。
社会復帰について考えたときには、なんとしてでも身元引受人を探し出した方がよいと言えるでしょう。
逮捕にともなう身元引受人についてのお悩みは弁護士に相談!
ここまでアトム法律事務所の弁護士とともにお送りしました。
逮捕にともなう身元引受人の意味や効果について、かなり深いところまで知ることができたのではないでしょうか?
この記事をご覧になっている方の中には、自分の事件に即して具体的なアドバイスが欲しい! という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、ここからは弁護士に相談できる様々なサービスについてご紹介します。
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最後に弁護士からメッセージ
では最後に一言お願いします。
逮捕にともなう身元引受人についてお悩みの皆さん。
早い段階で弁護士に相談していただければ、釈放、保釈、執行猶予付き判決を目指すにあたり、適切な身元引受人を選定することができます。
身元引受人がいない場合は、交渉次第で弁護士が身元引受人として認められるケースもあります。
また、身元引受人として警察などに呼ばれて困っている方も、弁護士に相談していただくことで法律の専門家からのアドバイスを受けることができます。
法的責任や、拒否した場合の影響などについて、根拠をもってお伝えすることができます。
少しでも気がかりなことがあれば、まずはとにかく弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は逮捕後の身元引受人について解説してきました。
逮捕後の身元引受人についてのまとめ
- 身元引受人がいれば、釈放、保釈認容、執行猶予付き判決獲得の可能性があがる
- 監督の役割を果たせる者が身元引受人になれる。なお、身元引受人に法的な責任は生じない
- 身元引受人がいない場合、さまざまなリスクを背負うことになる
なお、本記事に記載したこと以外で逮捕後に知っておきたい情報は『逮捕されても人生終了じゃない!早期釈放と前科・クビ回避の方法』にまとめているので、興味がある方はご覧ください!
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