裁判で執行猶予が言い渡されるには「示談」が重要?交通事故を例に
刑事裁判で執行猶予付きの判決が言い渡されるには、「示談」がポイントとなっているようです。
そこで本日は「示談は裁判で言い渡される執行猶予に影響を与えるのか」をテーマに特集記事をお送りします。
- 示談は執行猶予に影響するのか
- 裁判で執行猶予が言い渡されたケースを調査
- 示談と裁判、解決方法の違いを知る
このような点に着目して解説をすすめます。
法律部分の解説には、アトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
目次
示談は裁判で言い渡される執行猶予に影響をおよぼすのか
執行猶予がつくには示談などの事情が必要
執行猶予がつくには、なにかの条件が必要になるのでしょうか。
犯罪を起こした場合、示談がポイントになることはどこかで耳にしたことがあると思います。
実際に、示談がポイントとなって執行猶予付きの判決が言い渡されたというニュースを見つけたので確認してみましょう。
こちらをごらんください。
事件捜査を装って高齢男性宅に侵入し、現金計500万円を盗んだとして、窃盗罪などに問われた大阪府警貝塚署の元巡査(略)に大阪地裁は14日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役2年6月)の判決を言い渡した。(略)
男性に550万円を支払って示談が成立したことや、懲戒処分を受けたことなどを挙げ「直ちに刑務所に収容するのは酷だ」として執行猶予を選択した。(略)
出典:産経WEST(2017.7.14 17:05)
元警察官が事件捜査を装って、高齢男性宅から現金を盗んだという窃盗事件の刑事裁判ニュースです。
- 示談が成立したこと
- 懲戒処分を受けたこと
などによって、こちらの事件では裁判官が執行猶予を選択したとあります。
やはり、示談が成立していることは裁判において重要なポイントのようです。
執行猶予がつくにはどのような条件が必要になるのでしょうか。
執行猶予の条件
- ① 言い渡される刑が「3年以下の懲役」・「3年以下の禁錮」・「50万円以下の罰金」のいずれかであること
- ② 酌むべき情状があること
- ③ 前に禁錮や懲役刑になったことがないか、あるとしてもその刑の執行終了(執行の免除も含む)から5年間あらたに禁錮や懲役刑に処せられることなく過ごしたこと
執行猶予がつくには、これらすべての条件を満たしている必要があります。
- ① や③は、刑事事件によって該当するかどうかが変わってきます。
- ② 「酌むべき情状」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
情状は、犯情と一般情状に分けることができます。
犯情
・犯行の動機 ・犯行の手段 ・被害者との関係 ・被害者の人数 ・被害の程度 |
などです。
一般情状
・犯人の生い立ち ・犯人の性格 ・犯人の反省 ・被害の回復状況(示談) ・被害者の情況、被害感情 |
などです。
示談締結には、示談書を作成するのが通常です。
示談書には、宥恕条項をもりこむことが多くなっています。
宥恕とは、被害者が加害者を許し、加害者の刑事処分をのぞまないという意思を表すものです。
被害者がうけた損害がきちんと回復され、犯罪による影響が消滅・減少していることは、刑事処分において有利な情状とみなされます。
執行猶予がつくには、示談だけでは不十分だと考えられます。
罪を犯した本人が十分に反省し被害者に対して謝罪しているなど、さまざまな情状を総合的に考慮して執行猶予を付けるかどうかが判断されます。
示談交渉のタイミングは裁判の前?
示談交渉の「タイミング」はいつなのでしょうか。
裁判の前にするものだというイメージは、漠然とあるかもしれません。
まずは刑事手続きの流れを簡単におさえておきましょう。
出典:https://atomfirm.com/wp-content/uploads/keijinonagare_3.png
刑事事件はこのような流れで手続きがすすんでいきます。
- 自宅で生活を送りながら刑事事件の捜査をうけるケース
- 逮捕されて留置場で生活を送りながら刑事事件の捜査をうけるケース
このようにおおきく二通りに分けることができます。
拘束の有無の点以外においては、同じような流れで手続きがすすめられていきます。
示談締結は一度限りなので、示談締結のタイミングは重要になります。
器物損壊罪といった親告罪のケースでは、起訴前に告訴取消をふくめた示談を締結することが大切です。
告訴が取り消されれば、不起訴処分が獲得できます。
不起訴処分となれば、裁判が開かれることはありません。
執行猶予がつくのかどうかさえ気にすることもなくなります。
執行猶予が裁判で言い渡されたらどうなる?
執行猶予がつくとどうなる?
そもそも、執行猶予が裁判で言い渡されたらどうなるのでしょうか。
あらためて執行猶予について考えてみると、よくわからないことが多いかもしれません。
執行猶予とは?
言い渡された刑罰が一定期間のあいだ執行されないこと
執行猶予が無事経過すれば、刑の効力は消滅する
懲役刑や禁錮刑に執行猶予がつけば、すぐさま刑務所に入る必要はありません。
ちょっとこちらのニュースをごらんください。
深夜に大分市庁舎の女子更衣室から下着を盗み出したとして、窃盗の罪に問われた元市職員(略)に大分簡裁は7日、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。(略)
出典:大分合同新聞(2018/05/07 15:30)
下着を盗んだ窃盗事件の裁判がおこなわれて、判決が言い渡されたというニュースです。
「懲役1年、執行猶予3年」の判決が言い渡されています。
このケースにそって解説するなら、執行猶予期間である3年をなにごともなく経過すれば、懲役刑の1年が執行されることはありません。
法律上、罰金刑にも執行猶予を付けることはできますが、実務上では罰金刑に執行猶予が付くことはほぼないようです。
執行猶予期間のあいだに再び罪を犯すようなことをせずに執行猶予期間が終了すれば、刑務所に入れられることはありません。
一方、執行猶予期間のあいだに再び罪を犯し、執行猶予なしの懲役刑を言い渡されると、前の執行猶予は取り消されることになります。
そして、そのときに言い渡される刑と、前に言い渡された刑を合わせた期間刑務所に入ることになります。
悪いことをしたら相応の罰が与えられるべきであるという考えから、懲役などの刑罰は規定されています。
一方、罪を犯したとしても、社会の一員としていち早く立ち直らせるという働きも求められます。
早期の社会復帰をうながし、自発的に更生の機会をはかるために執行猶予という制度がもうけられています。
執行猶予についてくわしくはこちら
交通事故で執行猶予がついたケースを調査
執行猶予付きの判決が言い渡されたら、すぐには刑務所にはいることはないということが分かりました。
では、実際に執行猶予付きの判決が言い渡された裁判を調査してみたいと思います。
今回は、身近に起こりやすい交通事故に焦点をあてて執行猶予のケースを調査してみました。
まずはこちらのケースからご確認ください。
交通事故①
執行猶予がついたケース
事件の概要 |
---|
自動車で原付バイクを運転する被害者をひき、加療約1ケ月を要する骨折などの傷害を負わせたにもかかわらず、救護義務を怠りそのまま逃げたという事件 |
判決 |
禁固10月執行猶予3年 |
自動車で原付バイクに衝突して怪我を負わせたのに救護義務を怠り、ひき逃げをしたという事件です。
「禁固10月執行猶予3年」の判決が言い渡されています。
つづいてのケースを確認してみます。
交通事故②
執行猶予がついたケース
事件の概要 |
---|
自動車を運転中に助手席に座っている同乗者との会話などに気を取られて注意義務を怠り、原付バイクを運転する被害者に衝突して脳挫傷の傷害を負わせて死亡させた |
判決 |
禁固1年執行猶予4年 |
不注意により原付バイクに衝突して、被害者を死亡させてしまったという事件です。
「禁固1年執行猶予4年」の判決が言い渡されています。
つづいてのケースを確認してみます。
交通事故③
執行猶予がついたケース
事件の概要 |
---|
自動車を運転中に安全確認が不十分なまま注意義務をおこたり、進路前方で交通事故をおこして停止中の自動車に衝突させ、被害者を死亡させた |
判決 |
禁固1年6月執行猶予3年 |
交通事故をおこして停車していた車に衝突してしまったという事件です。
「禁固1年6月執行猶予3年」の判決が言い渡されています。
以上、3つの交通事故の判決結果を確認してきました。
交通事故において、執行猶予がつくことがあるということが分かりました。
交通事故での執行猶予の可能性について解説した記事はこちら
示談で解決・裁判で解決、違いはある?
争いごとを解決する方法としては、示談と裁判があります。
これらの違いはどのような点にあるのでしょうか。
それぞれの解決方法について確認していきたいと思います。
示談は「個人」対「個人」で話し合う
示談とは一体、どのようなものをいうのでしょうか。
示談とは?
トラブルの当事者である「個人」対「個人」による話し合いによって、民事上のトラブルを終結させる合意を結ぶこと
示談は、民事上の争いを話し合いによる合意によって終結させることです。
弁護士が間に入ることもありますが、あくまで個人が契約したことによる代理人です。
当事者同士であるという構図に変わりはありません。
示談はトラブルを終結させることではありますが、「紛争の蒸し返しをふせぐ」という側面も持っています。
お互いが納得する示談の条件を設定し、示談金を支払うことで争いを終了させます。
示談締結の際は内容に注意して、法的に効力のある示談を締結することが大切です。
未成年者と示談をおこなった場合は、法律上取り消される可能性があります。
有効な示談を締結させるためには、未成年者の法定代理人と示談をおこなう必要があります。
裁判は「個人」対「個人」の話し合いに「国家」が介入する
裁判とは一体、どのようなものをいうのでしょうか。
裁判とは?
トラブルの当事者である「個人」対「個人」による話し合いに、「国家」の司法機関である裁判所または裁判官が法に則って解決しようとする公的判断のこと
示談は「個人」対「個人」で話し合うことであるとお伝えしてきましたが、裁判はその話し合いに「国家」が介入します。
当事者同士での解決が見込めない時に利用されることになります。
紛争を解決する方法としては、ADR(裁判外紛争解決手続)などの第三者機関が間に入る方法もあります。
それでも解決しない場合に、裁判が利用されます。
判決が確定すると、判決の内容には従わなければなりません。
従わない場合は、強制執行の申し立てをおこなうことができます。
裁判をおこなうには、時間・お金・手間がかかるなどのリスクがあります。
このようなリスクを回避するためにも、まずは裁判の前に示談を検討することをおすすめします。
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最後に一言アドバイス
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起訴が予想されるような刑事事件において不起訴処分をのぞむなら、示談交渉は重要になってきます。
たとえ、示談成立が起訴後でも示談成立という事実は、裁判官の執行猶予などの判断に影響を与えます。
刑事処分、刑事処罰に影響を与える可能性のある示談ですが、なによりも被害者への誠実な対応をおこなうことが大切です。
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困ったと思った時点で一番ベストな結果を得られるように、弁護士によるアドバイスを求めましょう。