【傷害事件と保釈金】傷害の保釈金の相場はいくら?傷害の前科があると高くなる?
「傷害事件をおこしてしまって、起訴された。いま、保釈請求を考えている。」
このようなときに必要な傷害事件の保釈金はいくらなのでしょうか。
皆さんがかかえている傷害事件の保釈金に関する不安には、次のような疑問を取り上げます。
- 傷害事件の保釈金の相場はいくら?
- 傷害事件の保釈金はどうやって払えばいい?
- 傷害事件で保釈を請求したいけど、そもそも保釈はどういう制度?
などなど。
これらの傷害事件の保釈に関する疑問について、お答えしていきます。
実際の傷害事件や法律についての解説は、刑事弁護のエキスパート、アトム法律事務所の弁護士にお願いします。
相場はいくら?!傷害事件の保釈金の相場をチェック
傷害事件の保釈金の一般的な相場とは?
保釈を請求したいけど、傷害事件では保釈金をどのくらい用意したらいいのかわからなくて、迷っているケースもあるでしょう。
まずは、このようなお悩み解決のために、次のことをレポートします。
- 傷害事件の保釈金の相場
- 実際のケースで決定された傷害事件の保釈金
では、さっそく確認していきましょう。
一般的に、単純な傷害事件の保釈金の相場は、150万円から200万円といわれています。
傷害事件の保釈金の一般的な相場は、150万円~200万円程度
傷害罪とはどんな犯罪?ケガさせるといってもパターンはいろいろ
傷害事件というと、真っ先に思いつくのが、刑法の傷害罪だと思います。
刑法の傷害罪とは、どのような犯罪なのか説明しておきましょう。
以下の条文をご覧ください。
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法204条
こちらが、刑法の傷害罪について規定した条文になります。
この条文の中に、「人の身体を傷害した」と一節がありますね。
これは、不法の有形力を行使して人の生理的機能に傷害を加えることを意味しています。
たとえば、嫌いな相手を傷めつけてやろうと思ってナイフで切り付けて、傷を負わせたようなケースは、この傷害罪に当たります。
でも、人にケガを負わせるシチュエーションは他にもいろいろあります。
- 物を奪いとる手段として、相手を殴ってケガをさせてしまった
- 公務を妨害しようとして暴れていたら、警察官を殴ってケガをさせてしまった
- わいせつな行為をする手段として、相手を殴ってケガをさせてしまった
このように、他の犯罪の手段として傷害がらみの事件を起こす場合もあります。
どのようなシチュエーションで、いくらの保釈金が必要になるのか気になりますよね?
以下では、相手を傷つけること自体を目的とする傷害罪だけでなく、傷害を手段とした傷害がらみの事件についてもまとめていきますよ。
実例から検証!傷害事件の保釈金をチェック
では、これから、実際に傷害事件の保釈金を見ていきましょう。
単純な傷害事件の保釈金はどれくらい?
まず、単純な傷害事件の保釈金について表にまとめました。
下の表をご覧ください。
事件の内容 | 保釈金 | |
---|---|---|
① | 口論の際、知人に対し鉄の棒で殴る暴力を加えた事案。 | 200万円 |
② | 自分のこどもの両手足首を縛り、暴力を加えた事案。 | 250万円 |
③ | げんこつで、相手の腹部をなぐる暴力を加えた事案。 | 300万円 |
こちらの表では、どれも相手を傷つける目的で、暴力を加えた事案をまとめています。
まず、①のケースの保釈金は、相場どおりの金額になっています。
次に、②のケースや③のケースでは、相場を上回る金額になっています。
同じ種類の事件でも、保釈金の金額は、個別の事案ごとに異なっています。
保釈金の金額は、被告人の逃亡を防止できるくらいの金額に決定されます。
被告人の資産状況なども参考にしながら、どのくらいの金額にすれば被告人が逃亡しないのかという視点から、保釈金額が決定されます。
相場はあっても、具体的な事件で金額が異なるのは、各事件の被告人の事情を個別に考慮しているからです。
保釈金の金額の決定についての説明をしたページがあるので、ご紹介しておきますね。
わいせつ目的の傷害事件の保釈金はいくら?
では、次にわいせつ目的の傷害事件について、保釈金の金額を見ていきましょう。
事件の内容 | 保釈金 | |
---|---|---|
① | わいせつ目的で、女性の首をロープで絞める暴力を加えた事案。 | 150万円 |
② | 強姦する目的で、女性の反抗を抑圧する程度の暴力を加えた事案。 | 500万円 |
まず、①のケースでは、強制わいせつに伴う傷害事件です。
これは、強制わいせつ致傷の類型です。
次に、②のケースは、強姦に伴う傷害事件です。
これは、強姦致傷の類型です。
ケース①の保釈金額は150万円である一方で、ケース②では500万円となっています。
これらのケースは、わいせつな行為を目的としてケガをさせた点で共通します。
ですが、実際の事件処理に伴って適用される条文が異なります。
適用条文が異なるため、実際に、判決の内容に差がでてきます。
判決の内容として・・・
- 執行猶予がつくのかどうか
- 量刑が重いのか軽いのか
などについて違いが出ます。
強制わいせつ致傷と、強姦致傷の量刑をまとめてみました。
事例集①
強制わいせつ致傷の量刑
事案 | 量刑 | 情状 | |
---|---|---|---|
① | 自宅を訪れた宅配業者の女性に対して、全治2週間をの傷害を負わせた事案。 | 懲役2年6か月(執行猶予3年) | ●集配があるかのように装って招き入れた計画的な犯行。 ○着衣の上から被害者の身体に接触するにとどまる。暴行の程度が軽い。 |
② | しゃがみこんでいた女性に対して、加療1か月の傷害を負わせた事案。 | 懲役3年(執行猶予4年、保護観察付) | ●飲酒に起因する粗暴かつ悪質な犯行。 ○示談が成立している。 |
③ | 女性の両腕をつかんで林に連れ込んだ際の暴行で、全治10日間の傷害を加えた事案。 | 懲役3年(執行猶予5年、保護観察付) | ●女性が妊婦だと認識しており、卑劣かつ危険な犯行。 ○計画的な犯行ではない。 |
事例集②
強姦致傷の量刑
事案 | 量刑 | 情状 | |
---|---|---|---|
① | アパートの隣の部屋に侵入し、女性の顔面を殴る等して、加療1週間の傷害を負わせた事案。 | 懲役3年(執行猶予5年) | ●短絡的な犯行。 ○姦淫自体は未遂。被害弁償が済んでいる。 |
② | 女子高生を自動車で連れ去ろうとした際に、加療15日の傷害を負わせた事案。 | 懲役3年実刑 | ●被害女性を執拗に追いかけるなど手口が大胆かつ手荒で卑劣。 ○強姦自体は未遂。被害弁償が済んでいる。 |
③ | 女性の運転する原付に、自車を衝突させるなどして、加療10日間の傷害を負わせた事案。 | 懲役5年実刑 | ●危険かつ卑劣な犯行。 ○贖罪寄付をした。 |
まず、①強制わいせつ致傷の量刑を見てみましょう。
この場合には、執行猶予判決になっている場合が多々あります。
次に、②強姦致傷の量刑を見てみましょう。
この場合には、実刑判決になることが多いようです。
実刑判決がでる可能性があると、被告人の逃亡のおそれが高まると一般的には考えられています。
保釈金の金額を決定するには、被告人の逃亡のおそれが高いかどうかが影響します。
このような事情からすると、実刑判決が出やすい②のケースでは、保釈金の金額が高く設定されたと考えられます。
なお、2017年に刑法が改正され、強姦罪は正式には強制性交罪と名称が変更になりました。
強盗に関係する傷害事件の保釈金はいくら?
では、さいごに、強盗に関する傷害事件の保釈金についてレポートします。
他人の物を奪う過程で、暴力を加えたというような傷害事件の保釈金の金額をまとめてみました。
以下の表をご覧ください。
事件の内容 | 保釈金 | |
---|---|---|
① | 書店でDVDを万引きした後、その店の店員に暴力を加えた事案。 | 200万円 |
② | 路上でバッグのひったくりをする際に、被害者に暴力を加えた事案。 | 200万円 |
③ | 金品を奪う目的で、被害者の頭を打ち付けるなどの暴力を加えた事案。 | 300万円 |
まず、①や②のケースでは、保釈金の金額は200万円になっています。
次に、③のケースでは、保釈金の金額は300万円です。
物取りの事案でも、保釈金の金額に差があります。
いままでと同じく、だいたいの相場はありますが、被告人の個別の事情が考慮されて具体的な保釈金の金額が決定されています。
では、被告人の個別の事情とは、どのような事情をいうのでしょうか?
ここで、保釈金の金額を決定する際に参考にすべき事情を挙げている条文を見てみましょう。
刑事訴訟法
保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
条文:第93条第2項
この条文では、保釈金の金額は「被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額」を定めなければならないとしています。
この金額を定めるためには、いままでレポートしてきたように、次のようなことが考慮されます。
- 実刑判決が出そうだから、保釈されたら、被告人は逃げるのではないか?
- 保釈金をいくら納付させたら、被告人は逃亡しないのか?
このような視点で、保釈金額が決定されます。
【Q&A】傷害事件で逮捕・起訴された場合の保釈金
1.傷害の前科があることは保釈金の金額決定に影響がありますか?
では、ここからは、傷害事件の保釈金Q&Aにうつりましょう!
保釈金の金額はいろいろな事情を考慮して、被告人が逃亡しないといえる金額が決定されます。
前科という事情も、保釈金決定に影響を及ぼす事情なのでしょうか。
同種前科があると、実刑判決がでる可能性が高まります。
そうなると、被告人の逃亡のおそれが高まるため、相場といわれている額を上回ることが予想されます。
保釈金の金額は、被告人の逃亡を防止できる金額に設定されます。
前科があって実刑判決が出されることが予想できる場合、被告人の逃亡を阻止するためには、保釈金の金額は高めに設定されることが多いです。
逃亡してしまえば、保釈金は没取されます。
「このお金を放棄してまで逃げるのは惜しい。」
このように、被告人が思うような金額が設定されることになります。
2.保釈金を払えない場合は、どうなりますか?
保釈請求をして、保釈を許可してもらったとします。
でも、保釈金を準備できないと、保釈金は納付できません。
このように、保釈金を払えない場合でも、釈放してもらえるのでしょうか。
釈放してもらうには、保釈金の納付が絶対に必要です。
保釈制度は、保釈金の納付と引き換えに、被告人が釈放される制度です。
保釈金の納付がなければ、被告人は釈放してもらえません。
納付がなければ釈放されないことの根拠となる条文を見てみましょう。
保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。
出典:刑事訴訟法第94条第1項
このように、保釈が決定されても、保釈金の納付がなければ実際にその決定が執行されません。
保釈の流れをつかんで、スムーズな保釈を目指しましょう。
3.保釈金の納付方法について教えてください。
保釈金はどのように納付すればよいのでしょうか?
納付方法や期限は決まっているのでしょうか。
保釈金は裁判所に現金で納付します。
裁判所からは、保管金受領証書が発行されます。
納付時期は、保釈決定後です。
保釈金の納付期限は特にありません。
納付期限はないとしても、保釈金を納付しなければ釈放してもらえないので、早めに納付したいところです。
保釈の手続や保釈金の納付については、以下のページも参考にしてみてください。
4.保釈金を借りることはできるのですか?
保釈を請求したくても、保釈金を準備できない場合には、保釈請求をあきらめなければならないのでしょうか。
資力のない被告人は、どのように保釈金を準備すればよいのでしょうか。
保釈請求の際に、保釈金を誰かに借りることはできるのでしょうか。
自分で保釈金を準備できない場合、家族や友人に借りるなどして準備することになります。
日本保釈支援協会という団体から借りる方法もあります。
保釈金の立替システムを利用する際には、手数料など契約内容をよく吟味する必要があります。
「自分で保釈金を準備できない場合はどうすればよいのだろうか・・・。」
このように悩んだ場合の対応策としては、次のような方法があります。
- 家族から借りる
- 友人から借りる
- 保釈金の立替システムを利用する
このような方法によって、保釈金を準備することができます。
5.保釈保証協会は保釈金を立替えてくれるのですか?
日本保釈支援協会という保釈金の保証協会があります。
この協会では、保釈金の準備ができないことで、保釈請求ができない人たちの救済のために、保釈金の立替を行っています。
くわしくは、日本保釈支援協会のホームページでご確認くださいね。
Q 保釈保証金の立替を申込みたいのですが、どうすればいいですか?
「保釈支援申込書」に記入をして、当協会までFAXまたは郵送にてお送りください。尚、この申込書は当協会ホームページからダウンロードできます。
保釈金を準備する方法は、様々です。
日本保釈支援協会を利用するほかには、全国弁護士協同組合連合会(略称「全弁協」)を利用することも可能です。
下の図は、両者の取扱いサービスをまとめたものです。
立替事業
「日本保釈支援協会」と「全弁協」
日本保釈支援協会 | 全弁協 | |
---|---|---|
保釈金の立替え | あり* | なし |
保釈保証書の発行 | あり | あり |
どのようなサービスを利用すればよいのだろう・・・。
このようにお悩みの方は、弁護士に相談してみるのもよいかもしれません。

逮捕・起訴から保釈までの流れを確認
傷害事件で逮捕・起訴され保釈まで
いままで、傷害事件の保釈金について見てきました。
では、ここで、傷害事件で逮捕されてから保釈されるまでの流れを見ておきましょう。

傷害事件で逮捕された後、勾留されたとします。
その後、勾留されたまま起訴されると、裁判中もずっと被告人は勾留されることになります。
このような未決勾留の場合に、被告人の釈放を求めるのが保釈請求です。
裁判官が保釈の許可をするまでの流れは、次のような流れになります。
«保釈請求から釈放まで≫
保釈請求(88条)
↓
検察官の意見(92条1項)
↓
保釈保証金の金額の決定(94条1項)
↓
保釈許可決定
↓
保釈保証金の納付
↓
釈放(94条1項)
※保釈の流れについて、解説動画についても是非チェックしてくださいね!
納付しても返還される?!保釈金の意味とは
保釈金は、保釈が取り消されたり、被告人が逃亡したりしなければ、返還されます。
保釈とは、保釈金を積むことで、釈放されるという制度です。
しかし、保釈金は、被告人が自由を得るための対価ではありません。
保釈金は、被告人が逃亡しないことを保証する担保となるお金です。
保釈金には、このような意味があります。
したがって、最終的に被告人が逃亡しなければ、保釈金は返還されるのです。
傷害事件の保釈金のお悩みは弁護士に相談しよう!
傷害事件の保釈金についてご理解いただけたでしょうか。
傷害事件の保釈金について、もっと詳しい話を弁護士に聞きたいという方もおられますよね?
そのような方に、ぴったりのサービスをご紹介します。
お手持ちのスマホからすぐに連絡する方法
こちらの弁護士事務所は、刑事事件の無料相談を実施しています。
24時間365日予約を受け付ける窓口を設置しています。
夜間や土日も相談予約できるとは便利ですね。
「自分の傷害事件では、保釈金がいくらになるのか教えてほしい。」
「傷害事件の保釈金の立替方法について相談したい。」
そんなお悩みをサクッと解決してくれますよ。
刑事事件でお困りの方へ
ご希望される方はこちら
24時間365日いつでも全国対応
※無料相談の対象は警察が介入した刑事事件加害者側のみです。警察未介入のご相談は有料となります。
広告主:アトム法律事務所弁護士法人
代表岡野武志(第二東京弁護士会)
LINEで相談は、匿名でも可能です。
まずは、気軽に相談してみたいという方でも、便利です。
じっくり話せる地域の弁護士を探す方法
傷害事件の保釈について、すぐにでも地元の弁護士に依頼したい。
そのような方にとっては、弁護士を手早く探せるサービスがほしいですよね。
そこで、おすすめなのが、全国弁護士検索サービスです。
お住まいの地域をタップすれば、すぐに弁護士事務所が検索できますよ。
かゆいところに手が届くサービスになっています。

どの事務所も、刑事事件に力を入れている弁護士事務所です。
47都道府県からピックアップしているので、地元の弁護士をすぐに見つけることができますよ。
さいごに一言
「保釈金が準備できるか不安だから傷害事件の保釈請求をあきらめよう。」と考えている方もいるのではないでしょうか?
でも、今回のレポートで傷害事件の保釈金には相場があることをおわかりいただけたと思います。
傷害事件の保釈金の用意に不安があっても、相場を認識することで、保釈請求へのためらいも消えていくのではないでしょうか。
今のうちに保釈金についての疑問を解消して、起訴されたらすぐ保釈請求できるように準備を進めましょう。
傷害事件の保釈金について疑問のある方は、お早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
傷害事件の保釈金についての不安は解消していただけたでしょうか。
みなさまのお悩み解決の手助けができたら幸いです。
自分の傷害事件の保釈について弁護士に相談されたい方は、今回ご紹介したサービスを是非ご利用ください。
ご自身のニーズにあわせて、ぜひご活用ください!
また、このサイト内には、傷害事件についてのコンテンツがたくさんあります。
本記事以外で、傷害事件に関して知っておきたい情報は『傷害事件で逮捕・前科を回避するための正しい対処法』にまとめているので、興味がある方はご覧ください。
さらに、関連記事も要チェックです!