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逮捕されたら退職確定?懲戒免職、解雇処分の時の退職金や会社バレを防ぐ対応についても解説

  • 逮捕,退職

逮捕されたら会社から退職するよう圧力をかけられた!退職金はどうなるの?」

「そもそも逮捕を理由に懲戒免職解雇処分を受けることはある?」

このような疑問やお悩みをお持ちの方はいませんか。

退職に至るかどうかや退職金の有無は、その後の人生に大きな影響を与えます。

  • 逮捕で退職に追い込まれた時の退職金の有無
  • 逮捕を理由に解雇処分を下すことの適法性
  • 逮捕されたことが会社にバレるのを防ぐ対応方法

今回はこのような事柄を徹底解説していきます。

なお専門的な解説は刑事事件を数多く取り扱い、逮捕に関わる退職、解雇の事案にも詳しいアトム法律事務所の弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

よく「逮捕されたら人生終わり」という言説が聞かれることもありますが、実際には逮捕後にもずっと人生は続いていきます。

また、逮捕された人全員が解雇されるというわけでもなく、刑事手続きの後、職場に復帰したという方も大勢いらっしゃいます。

この記事で、逮捕による退職や解雇について確認し、ベストな対処法を身につけてください。

「痴漢、盗撮、万引きで逮捕されて退職勧奨を受けた…」退職金はもらえる?懲戒免職、解雇処分の場合も解説

最初は、退職金について確認していきます。

「懲戒解雇の場合には退職金は支払われない」

という慣例がなかば世間一般の常識として浸透しているかと思います。

逮捕されて懲戒免職、解雇された!退職金は払われる?

では、実際のところ、懲戒解雇の場合には退職金は支払われないのでしょうか?

それを知るために、まずは

「そもそも退職金とは何なのか」

について確認しておきましょう。

そもそも退職金とは?

退職金とは退職後に支払われるお金のことをいいますが、法律上、規定などが明文化されているわけではありません。

退職金を支払うかどうかはあくまで企業側が決めることです。

退職金が支払われなかったからといって、それが即、絶対に違法になるというわけではありません。

ただし就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確に定められているときには、退職金は賃金という扱いになります。

賃金という扱いなのですから、判例上は支払うべきもの、つまり義務として解釈されます。

そのことについて明示した厚生労働省の見解文を参照してみましょう。

(略)

退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。但し退職金、結婚手当等であつて労働協約、就業規則、労働契約等によつて予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと。

(略)

またこれを改めて確認する判断を下した最高裁の判例などもあります。

もし労働契約書等に退職金についての規定があるなら、これは原則払われるべきものだと思っていいでしょう。

懲戒免職、解雇時の退職金

では懲戒免職解雇されたとき、退職金が全く支払われないという事例に適法性はあるのでしょうか?

参考となる裁判例があるのでここに引用してみましょう。

まず、裁判の前提となる事件の流れについて表でまとめてみます。

退職金について裁判で争われた事例
事件の経過①
鉄道会社に20年勤めていたAは、女子高生の尻を触る痴漢行為をはたらき逮捕され、逮捕勾留後に略式起訴された。
事件の経過②
事件当時、鉄道会社は痴漢撲滅のキャンペーンを実施中であった。
またAは以前にも数回、同様の事件で逮捕されていた。
事件の経過③
Aは鉄道会社側から提示された「痴漢行為の事実を認め、会社の処分に従う」旨の自認書にサインした。
鉄道会社は、
・「痴漢撲滅キャンペーンに取り組んでいた鉄道会社の職員としてあるまじき行為であること」
を理由にAを懲戒解雇とした
事件の経過④
鉄道会社は就業規則の記述に基づき、退職金を不支給とした。
裁判の経過
Aは退職金等の支払いを求めて裁判を起こした。
第一審では、その訴えは棄却された。
裁判結果が不服であったAは東京高等裁判所に控訴した。

さて、その控訴審の判決文を引用してみます。

長くなるので、飛ばし読みでも構いません。

(略)

賃金の後払い的要素の強い退職金について,その退職金全額を不支給とするには,それが当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。

(略)

会社と直接関係のない非違行為を理由に,退職金の全額を不支給とすることは,経済的にみて過酷な処分というべきであり,不利益処分一般に要求される比例原則にも反すると考えられる。

(略)

懲戒解雇であったとしても、その退職金を全額不支給とするには、

当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為

が必要であると判示されています。

私生活上の犯罪行為を理由として懲戒解雇、退職金全額カットが正当だと認められる事例というのはほとんどありません。

上記の鉄道職員による痴漢事例では、

  • 会社の社会的信用、信頼が低下したり毀損したりしたわけではないし
  • 控訴人の今までの勤務態度もまじめであったので
  • 総合的に判断を下すと相当強度な背信性を持つ行為であるとまではいえない

という判断が下され、退職金満額の3割、276万円強のお金が支払われました。

退職届を出すよう仕向けてくる「退職勧奨」従う方が退職金は多い?

懲戒解雇が行われる見込みがたったとき、場合によっては会社側から退職するよう勧められることがあります。

これを退職勧奨と言います。

「退職届を出すよう圧迫された!」退職勧奨に従ったときの退職金

退職勧奨においては、会社側から

  • 「自己都合の退職という扱いで退職金が支給される
  • 「実質的に解雇が行われたわけではないので、履歴書の面で再就職に有利になる

といったメリットが提示されて、退職を迫られることになります。

ただ、先ほどの事例で挙げた通り、退職金全額カットが正当と見なされるのは

当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為

があったときだけです。

一般に、ただ逮捕されただけという場合には、退職金のカットはおろか、そもそも懲戒解雇が正当と認められるかどうかすらも怪しいと言えます。

退職勧奨に従ったほうがいいのかどうかについては、事例ごとに細かく検討する必要があります。

  • 提示された退職金がいくらなのか
  • 事件が有罪となる見込みなのか、また事件内容は懲戒解雇に相当するのか

など確認し、退職勧奨を受け入れるメリットデメリットを量ります。

いずれにせよ、法律的な知識が必要となりますから、弁護士相談するのがマストな選択と言えるでしょう。

懲戒免職、解雇処分と自己都合退職 最終的な給与の差とは

懲戒解雇は、一般に自己都合退職の扱いとなります。

失業保険の受け取りも自己都合退職と同じものとなります。

給付金の受け取り

ハローワークにて雇用保険申請手続きを行い、7日間の待機期間後、さらに3か月待つ必要がある

給付日数

以下の表のとおり

被保険者であった期間ごとの給付日数
1年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
給付日数90120150

失業保険の給付について、懲戒解雇と自己都合退職は全く同じとなります。

解雇予告手当はどうなるのか

懲戒解雇が行われた時には、解雇予告手当が支払われる場合もあります。

労働基準法には、

  • 解雇を行う場合にはその30日前に予告をしなければならない
  • 予告が行われなかったときには30日分以上の平均賃金を支払わなければならない

という規則があります。

ただし、労働者の責に帰すべき事由で解雇に至った場合には、「解雇予告除外認定」を受けることで、この手当ての支払いが免除されることになっています。

実務上は、

  • 30日前に予告を行って解雇予告手当の支払いを行わないケース
  • 解雇予告除外認定を受けて手当の支払いを行わないケース
  • 除外認定を受けるのが手間であったり、後腐れなく解雇したいなどと思ったために、解雇予告手当を順当に支払うケース

が考えられます。

懲戒解雇と退職、給与の差についての結論

失業保険の条件は全く同等。

懲戒解雇の場合、解雇予告手当が支払われるケースもあるが絶対ではない。

懲戒解雇と自己都合退職、最終的な給与の差は主に退職金の金額の大小による。

「逮捕を理由に解雇処分を下して退職に追い込む」そもそもこれはOKなのか

懲戒解雇となった場合や、自己都合で退職することを決断した場合の退職金について確認できました。

ここからは、

そもそも逮捕を理由にして懲戒解雇することは正当なのか

という点について確認していきます。

逮捕を退職理由として懲戒免職、解雇はできる?

結論から言ってしまうと、

ただ逮捕されただけ

という理由で懲戒解雇するのは不当です。

逮捕を理由とした懲戒免職、解雇は違法の可能性が高い

日本においては、

逮捕される=何か悪いことをした=犯罪者

というような風説が、なかば一般常識として認知されています。

しかしこれはまったくの誤解です。

逮捕された段階では、その被疑者はまだ犯罪者ではありませんし、起訴され有罪になると決まったわけでもありません。

日本の法律においては、「推定無罪の原則」が適用されています。

「有罪判決が確定するまでは、何人も犯罪者として取り扱われない」という原則です。

この考え方からすれば、逮捕されたという理由だけで解雇するのは不当と言えます。

仮に逮捕後、即会社から解雇を言い渡された場合には、不当解雇として認められる場合が多いでしょう。

ただ、例えば

会社に直接被害を与えた業務上の横領などのケースで、逮捕段階から被疑者も容疑を認めており、事実に争いがない

といったような場合には、起訴を待たずに解雇が行われ、またそれが正当だと認められる可能性はあります。

有罪確定後の懲戒免職、解雇はセーフ?

逮捕されてから刑事手続きが進み、有罪判決を受けた場合はどうでしょうか。

判例からひも解いていきます。

業務に関係のない私生活上の犯罪行為について、それを理由に懲戒処分を行うには、

  • その行為が企業秩序に直接の関連を有すること
  • その行為が企業に対して社会的評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるものであること

という条件が求められます。

その上で、まずは懲戒解雇が正当だと認められた事例、不当とされた事例を確認してみましょう。

懲戒解雇が正当だと認められた事例

先の退職金の項目で挙げた

「痴漢撲滅キャンペーン中に鉄道職員という立場でありながら痴漢行為を行い逮捕されて略式起訴された事例」

においては、退職金は一部支払われましたが、懲戒解雇そのものは正当であるとされました。

また以下のような事例もあります。

懲戒解雇が正当とされた事例
事件の経過①
セールスドライバーとして働くAは、業務終了後、帰宅途上で飲酒し、酒気帯び運転で検挙された。
また検挙された事実について、会社側に報告しなかった。
事件の経過②
Aは行政処分として講習の受講と免停1日、刑事処分として罰金20万円に処された。
なお、酒気帯び運転に際して交通事故は起こしていない。
事件の経過③
会社側は、従業員規定に沿って懲戒解雇を行った。

この事例について、東京地方裁判所は懲戒解雇の事由にあたるとしました。

(略)

原告が被告のセールスドライバーであったことからすれば,被告は,交通事故の防止に努力し,事故につながりやすい飲酒・酒気帯び運転等の違反行為に対しては厳正に対処すべきことが求められる立場にあるといえる。したがって,このような違反行為があれば,社会から厳しい批判を受け,これが直ちに被告の社会的評価の低下に結びつき,企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあり,

(略)

そうすると,原告の上記違反行為をもって懲戒解雇とすることも,やむを得ないものとして適法とされるというべきである。

要するに、

「セールスドライバーの飲酒運転は社会的評価の低下に結びつき、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあり、懲戒解雇も正当と認められ得る

というわけです。

懲戒解雇が認められなかった事例

実は、

「鉄道会社職員による痴漢行為について、懲戒解雇が認められた事例」

がある一方、

「鉄道会社職員による痴漢行為について、懲戒(諭旨)解雇が不当とされた事例」

も存在します。

諭旨解雇が不当とされた事例
事件の概要
Aは鉄道会社の職員である。
Aは電車の中で5ないし6分にわたって当時14歳の被害女性の臀部及び大腿部の付近を着衣の上から触った。
なお、鉄道会社は当時、痴漢行為の撲滅に向けた取り組みを積極的に行っていた。
刑事処分の経過
Aは略式起訴となり罰金20万円の支払いが命じられた。
マスコミ報道
なお、この事件はマスコミに大々的に報道されることはなかった。

この事例について、東京地方裁判所は以下のような判決を下しました。

(略)

一般的には,本件行為が被告の企業秩序に与える悪影響の程度は,鉄道会社以外の会社の社員が痴漢行為を行った場合に当該行為が当該会社に与える悪影響の程度に比べれば,一般的には大きくなり得るものと考えられる。

(略)

原告の被告における勤務態度に問題はなく,また,原告は被告から本件処分の以前に懲戒処分を受けたことはなかったというのである。

(略)

以上を合わせ考えれば(略)本件行為に係る懲戒処分として,諭旨解雇という原告の被告における身分を失わせる処分をもって臨むことは,重きに失するといわざるを得ない。

要するに、諭旨解雇は重すぎると判断されました。

なお諭旨解雇というのは、懲戒解雇相当の処分について懲戒解雇よりは温情的な措置として解雇する退職手続きです。

つまり、懲戒解雇よりも一段軽い措置なわけですが、それすら重すぎるという判断が下されました。

有罪判決を受けたとき、懲戒解雇が正当とされるかどうかその事件の性質、態様によって異なります。

ただ一般論としては、業務に直接関係のない私生活上の事件で、マスコミ報道もされず、罪も軽い場合には、懲戒解雇は不当となる事例が多いでしょう。

警察官や市長などの公務員、社長、広報社員など重要な従業員の場合は?

ここまでは、私企業の一般的な従業員を想定して解説してきました。

公務員の場合や、社長や広報などメディアに顔がよく知られている人の場合にはどうなのでしょうか?

公務員の場合には私生活上の犯罪でも解雇される?

ネットをのぞいてみると、公務員の処分は一般の企業よりも甘くなるという考えを持っている方は多いようです。

果たして本当にそうなのでしょうか?

公務員の懲戒処分については、「国家公務員法」「地方公務員法」などによって法的に定められています。

それぞれ該当する条文を確認してみましょう。

まずは国家公務員の懲戒の規定です。

職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

(略)

三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

続いて地方公務員の懲戒の規定です。

職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。

(略)

三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合

懲戒処分を下せると規定されていますが、具体的に「何をしたらどんな処分を受ける」といった具体的な事例は記載されていません。

ここでも判例から判断していくことにしましょう。

懲戒解雇が正当だと認められた事例

県立高校の教員が、窃盗行為を行って解雇されたという事例を紹介します。

懲戒解雇が正当だと認められた事例
事件の概要①
県立高校の教員として勤務していたAは、パチンコ店で景品のゲーム機を盗んだとして逮捕された。
事件は略式起訴となり、Aには罰金20万円が科せられた。
事件の概要②
Aは窃取行為から約2か月間、その事実を捜査機関等に申告せず、本件ゲーム機を隠匿している。
またAは、犯行時にはてんかんの発作が起こっていた旨の主張もしたが、それは認められなかった。
教育委員会の対応
県教育委員会は、事件が新聞等で報道されたことを受けて、Aを懲戒免職処分にした。
裁判の経過
Aは裁量権を逸脱した違法があると主張して、宮崎県教育委員会の所属する地方公共団体に対して、処分の取消しを求める裁判を起こした。

この事件について、裁判所は以下のような判断を下しました。

長くなりますから飛ばし読みでも結構です。

(略)

生徒の模範となるべき教職員が他人の財物を窃取したというものであり、教職員に対する信用を傷つけ、教職員全体の名誉を害するものであると同時に、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であることは明らかである上、(略)生徒、保護者、教職員その他関係者に動揺や混乱等を生じさせたこと(略)などを考慮すると、(略)社会観念上著しく相当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したものと認めることはできない。

(略)

要するに、

  • この事件の行為は、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であることは明らかであり
  • 懲戒処分を行ったことは社会通念上妥当

とされました。

懲戒処分が不当とされた事例

先述の事例と同じ福岡高裁での裁判で、中学校の教員が2度にわたり酒気帯び運転をしたという事件を紹介します。

懲戒解雇が不当とされた事例
事件の概要①
中学校の教員Aは生徒の名簿や成績等が入っていた光ディスクを紛失した。
紛失4日後、公開授業の反省会として宴会が開かれていた最中、そのディスクを拾ったという施設からの電話があった。
事件の概要②
その施設の駐車場で待ち合わせる手はずが整った。
Aは酒を飲んでいたため、運転代行サービスに連絡して、運転の代行を要請した。
しかし、その要請は断られてしまった。
事件の概要③
Aは自分で運転するしかないと考えるに至り、酒気帯び運転をして施設の駐車場に向かった。
その途上、警察官の検問を受けて現行犯として検挙された。
その場では事情聴取のみが行われ、警察官によって車ごと施設の駐車場に搬送してもらった。
事件の概要④
光ディスクを回収後、Aは車の中で仮眠をとった。
2時間後に起床し、運転代行サービスに連絡したが、また断られた。
Aは自ら運転を再開したが、その途上でパトカーに停止を命じられ,呼気検査の結果アルコールが検出され、2度目の検挙に至った。
県教育委員会の対応
県教育委員会は、「光ディスクを紛失したこと」「2度にわたって飲酒運転をして検挙されたこと」を理由にAを懲戒免職処分とした。

この事件について、福岡高裁は以下のような判断を下しました。

(略)

本件酒気帯び運転及び本件紛失のそれぞれに対する非難の程度との兼ね合いにおいて考慮しなければならないのは,控訴人に対する教師としての評価が極めて高かったということである。

(略)

控訴人は,教師としての資質,能力,意欲及び勤務態度のいずれの点においても欠ける点がなかったというにとどまらず,むしろ被控訴人にとって有為な人材の一人であったとさえいっても過言ではない。

(略)控訴人を免職にした本件処分は,上記イで見た加重処分の判断基準に照らしていかにも厳しすぎ,重きに失するものといわざるを得ない。

(略)

  • 事件の態様がそこまで悪質ではないうえ、光ディスクは無事回収されている
  • Aは教師としての資質、能力、意欲、勤務態度のいずれの点においても欠ける点がない優秀人材であった
  • そういった事情を考慮すると懲戒免職処分は重すぎる

といった結論です。

公務員に対する懲戒処分は、懲戒処分を判断する者に広範な裁量が認められています。

私生活上の犯罪行為に対する懲戒処分は、その事件の態様や、処分者の今までの勤務態度や性格などによって大いに変動し得ます。

例えば、公務員が窃盗した事案をひとつ取って見てみても、

  • 懲戒免職になるケース
  • 停職で済んだケース

があります。

窃盗で懲戒免職になった事例
  • 宮崎県庁の臨時職員が他の職員の財布(現金約3万5000円在中)を盗んだ事案
  • 県立高校図書館の司書であった臨時職員が店舗で衣類等8点(合計約1万4000円相当)を万引きし罰金20万円の略式命令を受けた後、その1週間後に再び缶詰等7点(合計約1800円相当)を万引きして逮捕された事案
  • 小学校の教諭が二度にわたって女性用下着を万引きし、逮捕、起訴された事案
窃盗で停職処分になった事例
  • 農業改良普及センター職員がATMに置き忘れられた現金9万円を窃取した事案につき、停職6か月とされた事例
  • 県職員がワイシャツ1枚(1980円相当)を万引きした事案につき、停職6か月とされた事例
  • 警視庁公安部の課長(警視)が塗料2本(合計800円相当)を万引きした事案につき、停職1か月とされた事例

同じ窃盗でも、処分がここまで違うわけです。

なお法律上、公務員について

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」

については、職に就く能力を有しない=免職は免れないとされています。

一般的に言って、私企業の従業員と比べれば、公務員は犯罪行為に対する懲戒解雇のリスクは高いと言えるでしょう。

社長が逮捕された!処分はどうなる?

社長が逮捕された場合には懲戒解雇になったりするのでしょうか?

結論から言えば、就業規則に基づいた解雇処分にはなり得ません。

通常、就業規則というのは従業員のみに適用され、役員には適用されません。

社長への処分としては、

  • 監査役取締役会からの解任請求
  • 株主総会からの解任請求

等が考えられますが、実際に解任に至るケースはまれでしょう。

広報の社員など会社の顔が逮捕された!この場合は解雇できる?

広報としてメディアに出演しているような社員が逮捕された場合には、解雇は正当なものとして認められるのでしょうか?

その企業の顔としてメディアによく出演していた場合には、解雇のリスクは上がります。

とくに、逮捕の事実が企業名と共に報道されたような場合は、なおのことでしょう。

私生活上の行為について、解雇が正当と認められる条件のひとつは、

その行為が企業に対して社会的評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるものであること

です。

企業名とともに逮捕の事実が報道されたときには、この条件に当てはまる可能性も高まります。

いずれにせよ、私生活上の犯罪行為に対して懲戒解雇を下すとき、その正当性については

  • 事件の態様
  • 処分者のこれまでの勤務態度や性格、実績
  • 量刑の重さ
  • 会社への影響度

など様々な側面から総合的な判断がくだされます。

一概に「報道されたから即解雇!」「有罪になったから即解雇!」というようなことは言えないでしょう。

勾留中(×拘留中)は休職扱い?会社バレを防ぎ仕事に復帰する!逮捕で退職になるのを防ぐための対応

ここまで、

「逮捕がすぐそのまま解雇につながるわけではない」

という点について解説してきました。

ただ、企業は法律の専門家ではありませんから、社内の勝手な判断で逮捕だけを理由に解雇処分を下すこともあり得るでしょう。

逮捕されたことについて、バレずに済むのならそれに越したことはありません。

勾留中(×拘留中)は外に出られない!仕事や給与への影響とは

逮捕された後には、起訴されるまでに最大で23日間、警察署内の留置場に拘束を受ける可能性があります。

なお、よく「拘留」という誤記も見受けられますが、「拘留」は1か月未満、刑務所の中に収監する刑罰のことを言います。

逮捕手続き中の留置場への収監は「勾留」です。

勾留とは?逮捕後の拘束期間とは?

こちらのイラストをご覧ください。

逮捕の流れ

逮捕後の流れはこのようになっています。

逮捕から72時間で事件は検察に送致され、そこから24時間以内に勾留請求が行われます。

勾留が認められた場合には、警察署内でそのままさらに起訴されるまで原則最大20日間、身体拘束を受けることになります。

逮捕の流れについてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

勾留中は休職扱いになるのか 給与への影響

逮捕されてしまったあとでは、自分から企業や家族に連絡をすることはできません。

また警察のほうから家族や企業に連絡をしてくれるケースも非常に稀でしょう。

長い間誰とも連絡がつかず、無断欠勤し続ける羽目になる場合も考えられます。

逮捕、勾留され欠勤した場合には「自己都合欠勤」という扱いになります。

会社によっては、本人の希望を聞いた上で余っている有給を消化していくケースも考えられます。

起訴されるまでの逮捕勾留は原則として最大23日間です。

そのすべてを有給で賄うことができる人は少ないでしょう。

有給を使わなかった分の欠勤については、基本的には給与は発生しないと考えるべきです。

会社バレを防ぐ対応とは?逮捕時の会社への言い訳

そもそも逮捕されたことが会社にバレなければ、会社から処分を受けることもありません。

会社バレを防ぐことができるのか

考えてみましょう。

そもそも会社バレは防げるのか?

勾留されてしまった場合には、会社に隠し通すことは無理でしょう。

23日間もの欠勤となれば、会社としても事情を詳しく聞かざるを得なくなります。

また、仮に入院していた等の言い訳をしたとしても、通常そういった場合には診断書の提出が求められます。

会社バレを防ぐには、勾留を受けないようにすることが重要です。

一定の犯罪について微罪と判断されたものについては、事件が検察に送致されず、警察署内で刑事手続きが終了することもあります。

これを微罪処分と言います。

微罪処分になったときには、すぐに自由の身になれるうえ、刑事手続きが終了しているのでこれ以上何かしら刑事罰が科されることもありません。

  • 逮捕後、在宅事件に切り替わり釈放された場合
  • 微罪処分となって釈放された場合

こういった時には、会社バレを防ぐことができる可能性もあります。

会社バレを防ぐための対応と会社への言い訳

勾留が行われなかった場合、身体拘束を受ける期間は最大3日間です。

3日間程度なら、体調不良を理由にして会社を休んでも、怪しまれることはないでしょう。

ただ、先述の通り、留置場の中から会社に連絡を入れることはできません。

会社へは家族から連絡を入れてもらうことになるかと思います。

ただ、逮捕後3日間は弁護士以外、たとえ家族であっても面会することができないのが通常の運用となっています。

今後の企業への対応、言い訳をどうするのか

きちんと話し合う場合には弁護士の手を借りることになるでしょう。

逮捕後の面会などについてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

  • 外部と連絡する手段を得るためにも
  • 今後の対応を相談するためにも
  • 勾留の阻止のためにも

何よりもまず弁護士に相談するのがマストな選択です。

また、たとえ頼れる弁護士のツテがなくても、当番弁護士制度、国選弁護士制度などを使えば、一定の条件で無料で弁護士に頼ることができます。

逮捕による退職についてお悩みなら弁護士に相談!

ここまで、弁護士の解説とともにお送りしました。

逮捕による退職についてかなり深いところまで知ることができたのではないでしょうか。

ですが、自分の事件に即してもっと具体的なアドバイスが欲しい! という方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、ここからは弁護士に相談できる様々なサービスについてご紹介します。

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来所相談は、土日や祝日も可能とのことです。

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掲載されているのは、当サイトの編集部が厳選した頼りになる弁護士たちです。

相談してみたい弁護士をぜひ見つけてみてください。

最後に弁護士からメッセージ

では最後に一言お願いします。

逮捕による退職についてお悩みの皆さん。

逮捕だけを理由として懲戒解雇などの処分を下すのは、不当である可能性が高いです。

また有罪になったとしても、私生活上の犯罪行為であったなら、判例上不当と判断されるケースは多いと言えるでしょう。

弁護士に相談していただければ、職場への働きかけによって不当な解雇を阻止することができるかもしれません。

また、

「このまま刑事手続きが進めば解雇は確定なのだから、早く自分から退職しろ」

といった形で圧力をかけられている方も、弁護士に相談していただくことで、客観的な視点からご自身の状況を知ることができるようになります。

まずはとにかく、弁護士に相談していただき、お悩みを払拭してください。

まとめ

今回は逮捕による退職について解説してきました。

逮捕による退職についてのまとめ
  • 退職金は、労働規約等によってあらかじめ支給条件が定められているときには、賃金という扱いになり、支払いに義務が生じる。
  • 私生活上の犯罪行為を理由にして懲戒解雇が行われたとき、退職金全額カットが正当だと認められる事例はかなり限定的である。
  • 逮捕されたことだけを理由にして懲戒解雇処分が下されるのは、不当である可能性が高い。
  • 起訴、有罪確定後であっても、私生活上の犯罪行為を理由に懲戒解雇を行うのには、高いハードルを超える必要がある。
  • 勾留されなければ、逮捕の期間は最大3日間となり、会社にバレるリスクも下がる。

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