窃盗罪の量刑|初犯や余罪、再犯がある場合の相場感を解説
窃盗の量刑を知りたい!
そう思ってニュースなどを調べてみても、自分がおこした窃盗事件にあてはまるのか分からないと思います。
そこで、本日は「窃盗事件の量刑」をテーマに特別企画をお届けします。
- 窃盗の量刑相場を調査
- 窃盗罪の基本を知る
- 窃盗罪で逮捕されたらどうなる?
このような内容に焦点をあてて、窃盗の量刑について解説していきたいと思います。
目次
窃盗の量刑相場。初犯・余罪あり・再犯との違いは?窃盗症について
量刑とは?その意味を知る
窃盗の量刑相場が気になると思います。
そもそも「量刑」とはいったい何なのでしょうか。
裁判で決められるのが量刑とのことです。
もっと具体的にいうと、「懲役1年」や「罰金10万円」という刑の内容が量刑ということになります。
量刑とは
法律で決められた刑の範囲内で、裁判所によって判断される刑の種類や程度
刑事裁判では、有罪か無罪かを判断します。
有罪であった場合は、さらにどのような刑罰を科すか量刑を決定します。
さまざまな事情を総合的に検討して、量刑は決定されています。
✔窃盗行為の内容 ✔窃盗の動機・経緯や環境 ✔窃盗の手段・方法 ✔窃盗行為による結果 ✔窃盗行為が与える社会的影響 ✔窃盗犯の性格・年齢 ✔反省の有無 ✔被害弁償(被害者への慰謝料の支払い) |
など、このような事情をふまえた上で、量刑が判断されます。
窃盗事件においては、特に
- 窃盗の初犯かどうか
- 窃盗の前科の有無や件数
- 窃盗の被害金額
- 窃盗の被害弁償はできているかどうか
などが量刑に影響することになります。
また、量刑は過去の判例も参考にします。
さまざまな事情を総合的な観点でふまえて、量刑が決められます。
過去の判例などを参考にして量刑が決められているということは、それが量刑相場といえると思います。
そこで…
- ニュース
- 量刑検索システム
- 量刑調査報告集
これらを使って、量刑を調査してみたいと思います。
- ① 初犯
- ② 余罪あり
- ③ 再犯
ケース別に窃盗の量刑を調査していきます。
量刑調査①窃盗の初犯
窃盗の初犯では、どのくらいの量刑が言い渡されることになるのでしょうか。
ニュースから初犯の懲役の可能性をリサーチしてみたところ…
初犯に関するニュースを見つけることができませんでした。
ニュースから量刑相場を見極めるのはむずかしそうです。
代わりにこんなつぶやきを見つけました。
窃盗の初犯だと、執行猶予がつくのが相場とのことです。
実際のところ、どうなんでしょうか。
まず、判例検索システムで初犯の懲役の可能性をリサーチしてみました。
判例検索システム
事件の概要 |
---|
報酬と引き換えに、不正に入手したキャッシュカードを使ってATMから現金300万円を引き出して窃取した窃盗事件 |
量刑 |
懲役3年、執行猶予4年 |
不正に入手したキャッシュカードを使って、ATMから現金を数回に分けて引き出したという窃盗事件です。
「懲役3年、執行猶予4年」が言い渡されています。
犯歴がなく若年であることから、社会内で更生する機会を与えるとして執行猶予がついたようです。
つぎは、量刑調査報告集で初犯の懲役の可能性をリサーチします。
量刑調査報告集
事件の概要 |
---|
知人宅にて、腕時計1個(時価約70万円相当)を窃取した窃盗事件 |
量刑 |
懲役1年2月、執行猶予5年 |
知人の時計を盗んだという窃盗事件です。
「懲役1年2月、執行猶予5年」が言い渡されています。
懲役の年数にくらべて、執行猶予が長めな印象です。
他人の家に侵入するような侵入窃盗の場合は、逮捕につづき勾留される可能性が高くなります。
初犯でも起訴されることが多いです。
一方、被害金額が高額ではない万引きで、示談が成立しているような場合、初犯なら不起訴になることが多いです。
初犯であれば、不起訴の可能性があるということでした。
とはいえ、被害金額や窃盗の手段によっては、初犯でも懲役の可能性はあるようです。
先生が上記で言及している示談については『窃盗罪の示談金の相場はいくら?|示談の重要性や流れも解説』で特集しています。
量刑調査②窃盗の余罪あり
窃盗の余罪がある場合では、どのくらいの量刑が言い渡されることになるのでしょうか。
こちらも、ニュースからは窃盗の余罪があるケースでの量刑を見つけることができなかったので…
判例検索システムで余罪がある場合の懲役の可能性をリサーチします。
判例検索システム
事件の概要 |
---|
麻雀店数店で現金を窃取したという窃盗事件 |
量刑 |
懲役2年8月 |
余罪として約50件もの窃盗を繰り返していたようです。
「懲役2年8月」が言い渡されています。
つぎは、量刑調査報告集で余罪がある場合の懲役の可能性をリサーチします。
量刑調査報告集
事件の概要 |
---|
ネットカフェで被害者がテーブルに置いていた現金約4万円とキャッシュカードなどが入った財布を窃取 また、別の被害者がテーブルに置いていた現金約8000円と定期券などを窃取した窃盗事件 |
量刑 |
懲役2年、執行猶予1年6月 |
複数の被害者の財布などを窃取したようです。
「懲役2年、執行猶予1年6月」が言い渡されています。
執行猶予がつくケースとつかないケースのちがいは、調査結果のみでははっきりとは分かりません。
弁護士による個別の事件の精査が必要になってくると感じます。
余罪についてくわしくはこちら
量刑調査③窃盗の再犯
窃盗の再犯では、どのくらいの量刑が言い渡されることになるのでしょうか。
まずは、ニュースから再犯の懲役の可能性をリサーチします。
ニュース
執行猶予中に食品を万引したとして、窃盗罪に問われた京都市左京区の無職の女(36)の判決公判が16日、京都地裁で開かれた。
御山真理子裁判官は「女には摂食障害などがあるが、更生のための環境が整っている」として懲役1年2月、執行猶予5年(求刑懲役1年2月)を言い渡した。(略)
出典:産経WEST(2014.10.16 17:37)
執行猶予中に万引きの再犯を犯したという窃盗事件です。
「懲役1年2月、執行猶予5年」が言い渡されています。
万引き事件の場合、再犯でも執行猶予がつくことになるケースもあるようですね。
つぎは、判例検索システムで再犯の懲役の可能性をリサーチします。
判例検索システム
事件の概要 |
---|
被告人は自分の子どもに万引きするように指示したとという窃盗事件 |
量刑 |
懲役2年、執行猶予4年 |
同種事犯を3件繰り返しているが不起訴に終わっており、前科がないことなどから執行猶予がついたようです。
つぎは、量刑調査報告集で再犯の懲役の可能性をリサーチします。
量刑調査報告集
事件の概要 |
---|
前科10犯(累犯2犯)の男が、歯科医院のドア施錠を解いて現金約1万7500円を窃取した窃盗事件 |
量刑 |
懲役3年6月 |
前科10犯の男がおこした窃盗事件です。
「懲役3年6月」が言い渡されています。
執行猶予はつかず、懲役も3年を超えてきました。
執行猶予中の再犯の場合は、一般的には、厳しい判決が予想されます。
実刑判決が下されれば、執行猶予が取り消され、前の刑と新しい刑の両方を合わせた期間、刑務所に入らなければなりません。
もっとも、万引きの場合は、事案によっては、再度の執行猶予が付く可能性があります。
窃盗事件のなかでも、万引きは再犯が多いので量刑の判断がほかと異なる場合があるようです。
再犯についてくわしくはこちら
窃盗症の量刑は懲役より治療?
窃盗症といわれるような、依存症をご存知でしょうか。
万引きを何度もおこなってしまうという方は、窃盗症である可能性が高いといわれています。
窃盗病、窃盗癖、クレプトマニアなどとも呼ばれています。
窃盗症
利益目的ではなく、窃盗行為そのものの衝動がおさえられず窃盗行為を繰り返してしまう依存症
依存症というと、薬物・酒・ギャンブルなどが代表されるイメージが強いと思います。
窃盗症は、窃盗という行為そのものに依存してしまうことがあります。
窃盗は犯罪であるのに繰り返してしまうため、何度も逮捕されるというケースがあとを絶ちません。
こちらのニュースをごらんください。
万引きで有罪となり、保護観察付きの執行猶予期間中に再犯に及んだ窃盗症(クレプトマニア)の被告に、裁判所が罰金刑を選択するケースが相次いでいる。
保護観察中の再犯は懲役刑となるのが通常で、罰金刑は例外的だ。
近年、再犯防止のため依存症などの病的原因を研究する動きが進んでおり、裁判所の判断に一定の影響を与えているとの見方もある。(略)
出典:毎日新聞(2017年8月25日 15時49分)
万引きの再犯では、量刑がほかの犯罪とは例外的となる傾向にあるとの記事です。
窃盗症という依存症は、懲役刑で刑務所に収監されても依存症が治るわけではないと考えられているからのようです。
窃盗症(クレプトマニア)は、精神疾患のひとつです。
しかも、確立された治療方法はまだないともいわれています。
懲役刑によって更生をはかるのではなく、専門医による治療を受けることが再犯防止につながると考えられています。
万引きの再犯は罰金になることがあるとはいっても、被害者に対する被害弁償や十分に反省していることなどが求められます。
窃盗罪を知る。刑法の基本と量刑の判断方法
窃盗罪の基本をおさえる
窃盗の量刑について調査してきました。
ここからは、基本に立ち返って窃盗罪について解説していきたいと思います。
窃盗罪は刑法で規定されている犯罪です。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:刑法第235条
窃盗罪は他人の財物を盗むことをさします。
万引き、置き引き、ひったくり、バイク窃盗、空き巣…
このようにさまざまな犯罪行為をさす言葉が存在しますが、すべて窃盗罪に該当します。
窃盗罪は、他人の財物を窃取する行為です。
「窃取」について解説をくわえたいと思います。
他人の占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有下に移転する行為
としています。
代金を支払わずにお店の商品を持ち去る万引きは窃盗罪です。
ベンチに置いてあるカバンから財布を持ち逃げするのも窃盗罪です。
窃盗の量刑は法定刑内で判断
窃盗の基本についておさえたところで、窃盗罪の法定刑を確認しておきたいと思います。
窃盗罪の法定刑
10年以下の懲役または50万円以下の罰金
法定刑とは法律上、ある犯罪行為に対して刑罰の内容とその程度を規定することになります。
窃盗罪でいうなら「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」が法定刑になります。
10年以下、50万円以下の意味は分かりますが、最低ラインは決められているのかがよくわかりません。
窃盗罪の「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」について補足したいと思います。
懲役
- 最長10年
- 最低1ケ月
罰金
- 最高50万円
- 最低1万円
このような範囲内で、窃盗の量刑が決められることになります。
刑法の各罪名の条文には詳しく記されていないので範囲がよくわかりませんでした。
窃盗罪の法定刑について最後に表でまとめておきます。
窃盗罪
法定刑の範囲
懲役 | 罰金 | |
---|---|---|
上限 | 10年 | 50万円 |
下限 | 1ケ月 | 1万円 |
窃盗についてくわしくはこちら
窃盗罪の逮捕を解説。
窃盗で逮捕されたあとの流れ
窃盗事件で逮捕されたら、そのあとすぐに裁判が開かれて量刑が決まってしまうのでしょうか。
逮捕された後の流れって、あまり知る機会がないと思います。
こちらをご覧ください。
逮捕・勾留を経て、刑事裁判が開かれるまでの流れです。
窃盗事件にかぎらず、刑事事件はこのような流れで手続きがすすめられていきます。
逮捕された後は、警察によって48時間以内に検察官へ送致するかが検討されます。
検察官は送致をうけると24時間以内に
- 勾留請求
- 起訴
- 釈放
これらのいずれかを検討します。
裁判官によって勾留決定となれば、留置場など刑事施設のなかで10日間も生活をおくらなければなりません。
勾留延長となれば、さらに10日間以内の勾留がつづくことになります。
最大で23日間も留置場で生活しなければならず、自宅に帰ることができません。
仕事や学校などは、たとえ2~3日でも休みにくいと思います。
長い間、欠勤・欠席がつづけば社会生活に影響が出ることになるでしょう。
逮捕されてすぐ弁護士に相談することがポイントになってきます。
逮捕の流れについて、くわしくはこちらの動画をごらんください。
窃盗の逮捕についてくわしくはこちら
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最後に一言アドバイス
さいごに一言、弁護士からアドバイスをいただきたいと思います。
窃盗事件においては、被害者と示談を締結することで不起訴や早期の釈放となる可能性が高くなります。
それだけでなく、窃盗事件で示談をすることは、加害者にとって適正な量刑になる可能性も高めます。
示談はただお金を支払えばいいというものではなく、心からの謝罪の気持ちを被害者に伝えることがポイントとなります。
第三者的な立場として弁護士が間に立つことで、誠意を明確に伝えることができるでしょう。
窃盗事件の早期解決や適正な量刑を望むのなら、弁護士に早急に相談してみましょう。
まとめ
窃盗の量刑をテーマに特別企画をお送りしました。
量刑相場観のイメージはついたでしょうか。
とはいえ、量刑は窃盗事件を個別に精査する必要があります。
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