示談は執行猶予に影響する?執行猶予や示談の条件とは?
示談は執行猶予に影響するのか?
執行猶予がつくのかどうかは、逮捕されたり起訴されたりしたら気になる点だと思います。
- 示談や執行猶予の意味をおさえる
- 示談書の書き方
- 執行猶予の獲得に必要な示談の条件
示談が執行猶予に与える影響について詳しくみていきたいと思います。
法律面の解説は、アトム法律事務所の弁護士にお願いしています。
目次
示談が執行猶予に与える影響…執行猶予がつくとどうなる?
刑事裁判において、示談が執行猶予に影響を与えたと思われるニュースを見つけました。
こちらをご覧ください。
岡山県赤磐市で1月、下校中の小学生ら10人が死傷した車の多重事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた(略)被告(71)に岡山地裁は13日、禁錮3年、執行猶予5年(求刑禁錮4年)の判決を言い渡した。(略)
被告が「今後二度と運転しない」と反省し、一部で示談が成立していることなどから執行猶予とした。(略)
出典:産経WEST(2018.7.13 16:54)
近年、急増している高齢者による自動車事故の刑事裁判についてのニュースです。
判決では、「禁錮3年、執行猶予5年」が言い渡されています。
執行猶予となったポイントを整理してみましょう。
✔「今後二度と運転しない」と反省している ✔一部で示談が成立している |
このような点が執行猶予がつけられたポイントであるようです。
示談したから必ず執行猶予となるわけではありませんが、執行猶予がつけられる一つの情状として示談は重要になってきます。
ここからは、なぜ示談が必要となるのか、その意味にせまっていきたいと思います。
示談が必要になる意味
そもそも、示談とはいったいどういう意味をもつのでしょうか。
刑事事件において「示談」が重要な意味をもつことを耳にしたことはあっても、具体的にどう重要なのかまで知る機会は少ないかもしれません。
まずは、示談の意味をおさえておきましょう。
示談の意味
裁判の手続きによらず、刑事事件の当事者双方の話し合いによって「民事上」の争いを解決しようとすること
被害者がいるような刑事事件をおこした場合、加害者は被害者に対して二つの側面での責任を負うことになります。
・刑事的な側面での責任 ・民事的な側面での責任 |
このような面で責任が科されることになります。
刑事的な側面での責任は刑事裁判によって決められることになりますが…
民事的な側面での責任は、示談などを通して果たすことができます。
示談成立の有無は、裁判官の判断に影響を与えます。
裁判官は執行猶予を付けるべきかどうかなどの判断をくだします。
示談の成立は、
- 当事者間において紛争が解決している
- 被害者の被害回復がおこなわれている、または、その見込みがある
- 被害者が許している事件を、国家(検察・警察など)が介入してまで加害者を処罰する必要性は薄くなる
このような点から、民事の側面である示談が刑事事件に影響を与えることになります。
示談によって被害者に対して誠実に対応する姿勢が、判決に影響するようです。
示談の流れについてくわしくはこちらの動画をご覧ください。
示談についてくわしくはこちら
執行猶予がつく意味とは?
そもそも、執行猶予とはいったいどういう意味なのでしょうか。
執行猶予がついたら、具体的にどうなるのでしょうか。
まず、執行猶予の意味からおさえておきましょう。
執行猶予とは
刑事裁判で言い渡された刑罰の執行を一定期間のあいだ猶予し、その期間を何事もなく過ごし切れば刑罰が執行されない制度
理論上は懲役や罰金など、どんな刑罰にも執行猶予がつく可能性はあります。
ただ、多くの場合は懲役や禁錮といった自由刑に付けられることがほとんどです。
懲役刑に執行猶予がつくと、すぐさま刑務所に入れらなくてもいいことになります。
執行猶予がつくと、これまで通りの社会生活をおくることができる
執行猶予はどんな事件でも付けられるわけではありません。
執行猶予には必要な要件を満たしていなければなりません。
要件 | |
---|---|
① | ✔今まで、懲役刑や禁錮刑に処せられたことがない または ✔今まで、懲役刑や禁錮刑に処せられたことがあっても、執行が終わってから5年以内に懲役刑や禁錮刑に処せられていない |
② | 言い渡される今回の刑罰が、3年以下の懲役もしくは禁錮・50万円以下の罰金であること |
このような要件をすべて満たすことで、執行猶予がつけられることになります。
示談が成立しており被害者の許しを得ていても、執行猶予の要件を満たしていない場合は執行猶予がつかないことになります。
すべての刑事事件で執行猶予がつく可能性があるわけではないことが分かりました。
執行猶予についてくわしくはこちらの動画をご覧ください。
執行猶予は、社会生活をとおして自発的な更生をはかる制度です。
執行猶予の可能性を引き出す「示談書」の書き方
示談をおこなう際には、「示談書」を作成するのが通常です。
示談書なしでも示談を締結させることは可能です。
しかし、示談書なしの示談では…
示談書なしの示談
言った言わないの争いのもとになる
このように考えられます。
のちの紛争を避けるためにも、示談書の作成は慎重におこなう必要があります。
執行猶予の可能性を引き出すことができる示談となるように、法的にリスクの低い示談書の作成が求められます。
ここからは、示談書の作成について確認していきたいと思います。
交渉に必要な示談の条件とは
示談書の書き方を解説していき前に…
示談交渉に必要な「示談の条件」について確認しておきたいと思います。
どのような条件を盛り込む必要があるのでしょうか。
刑事事件の内容によって、示談の内容もさまざまです。
各事件に沿った示談の条件で示談を締結させることが重要です。
ただ、どの事件でも共通して重要な項目があります。
示談の条件
- 被害者の許しをもらうこと
- 被害回復の実現またはその見込みがあること
- 清算条項がかかれていること
刑事手続きに影響を与えるためには、このような点が示談の条件としてふくまれていることが望ましいです。
示談の条件についてもう少し解説をくわえます。
「被害者の許し」とは、被害者が加害者への処罰はのぞまないという意思表示のことです。
「被害回復の実現またはその見込み」とは、示談金による被害回復に努めることです。
「清算条項」とは、示談書の項目以外の内容は今後請求しないと表明することです。
示談の条件の基本的な構成について知ることができました。
それでも、示談書を実際に目にしたことがないとイメージがわかないと思います。
つづいては、示談書の書き方やテンプレートを紹介していきたいと思います。
示談書の書き方・テンプレートを紹介
示談書のテンプレートについては、こちらを参考にごらんください。
示談書のテンプレートはこちら
ご覧いただけたでしょうか。
このようなテンプレートを参考に、ご自身で示談書を作成することは可能です。
インターネットや書籍などでも詳しく解説されています。
示談書の作成は、弁護士の目を通してもらうことをおすすめします。
弁護士は、法律の専門家です。
法的にリスクが低くなるような示談書であるかを、専門家の観点から弁護士にチェックしてもらいましょう。
ご自身で作成したものを弁護士にチェックしてもらうだけでも、のちのリスクを下げる効果はあると思います。
無料相談を実施する弁護士もいますので、弁護士に気軽にご相談ください。
示談書の書き方についてくわしくはこちら
執行猶予中の再犯で示談できないと執行猶予は取り消し?
もし、執行猶予中に「再犯」を犯してしまったとしたら…
その事件で示談できないと執行猶予は取り消しされてしまうのでしょうか。
執行猶予の取り消しとは?
執行猶予の取り消しとなってしまったらどうなってしまうのでしょうか。
執行猶予中に再犯を起こしてしまうと…
- 必要的取り消し
- 裁量的取り消し
この2つのどちらかとなります。
意味 |
---|
執行猶予が「必ず」取り消されてしまう |
要件 |
執行猶予の期間中に、さらに罪を犯して「禁錮以上の刑」に処せらせ、その刑について「執行猶予の言渡しがない」ときなど |
意味 |
---|
執行猶予が取り消される「可能性」がある |
要件 |
執行猶予の期間中に、さらに罪を犯して「罰金」に処せられたときなど |
執行猶予が必ず取り消されるか、取り消される可能性があるかは事件の内容によってさまざまです。
執行猶予が取り消しとなると、
- 猶予されていた前回の禁錮刑・懲役刑といった刑期
- 今回、言い渡された禁錮・懲役といった刑の刑期
これらの合計期間、刑務所に入らなければなりません。
執行猶予中に再犯を犯して有罪判決の言渡しをうけると、執行猶予が取り消されることがあるとのことでした。
再犯についてくわしくはこちら
執行猶予中の再犯は示談しなければ実刑?
執行猶予中の再犯では、示談しないと必ず実刑となってしまうのでしょうか。
執行猶予中の再犯で、示談はどのように判断されるのでしょうか。
執行猶予中の再犯は、示談の有無にかかわらずきびしい処罰となることが予想されます。
もっとも、今回言い渡される刑罰が懲役1年以下であれば、「再度の執行猶予」となる可能性は残ります。
被害者がいるような刑事事件では、執行猶予中であっても示談の有無は重要になってきます。
執行猶予中の再犯だから必ずしも、実刑になるとは言い切れないようです。
執行猶予を再び獲得するためには、どのような状況でも示談はポイントとなるようです。
執行猶予獲得における示談以外に重要な条件
示談以外に必要な執行猶予の条件
執行猶予がつくためには、示談以外にもポイントとなる条件がいくつかあります。
示談以外に求められる条件
- ① 十分に反省している
- ② 再犯のおそれがない
- ③ 更生の環境がととのっている
執行猶予がつくには、ただ単に被害者と示談が成立していればいいというわけではありません。
ひとつずつ、くわしくみていきたいと思います。
条件①十分に反省している
刑事事件においては、事件について十分に反省しているのかどうかという点も重要視されています。
心のなかだけで、反省していても検察官や裁判官には伝わりません。
- 反省文を作成する
- 被害者への謝罪文を作成する
示談のほかには、反省している気持ちを表した文書を作成して、検察官・裁判官に提出することが大切です。
反省文・謝罪文についてくわしくはこちら
条件②再犯のおそれがない
刑事事件においては、再犯のおそれがないかどうかという点も重要視されています。
いくら「二度としません。」と口にしたとしても、検察官・裁判官が信じてくれるとはかぎりません。
事件の引き金となった原因(依存症やストレス)を取り除く努力をしている
示談のほかには、心療内科に通ったり病気を治療しようとする具体的な行動を起こしていることを検察か・裁判官に伝えることが大切です。
再犯防止などについてくわしくはこちら
条件③更生の環境がととのっている
刑事事件において、更生の環境がととのっているかどうかという点も重要視されています。
「執行猶予期間中は家でおとなしくしています」といっても、検察官・裁判官に一人だとなにをするか分からないと思われるかもしれません。
生活や行動を監督する「身元引受人」が必要
身元引受人は家族がなるのが一般的ですが、同僚・上司や友人・恋人などでも身元引受人になることは可能です。
示談のほかには、身元引受人を立てることが大切です。
身元引受人についてくわしくはこちら
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最後に一言アドバイス
最後に一言、弁護士からアドバイスをいただきます。
執行猶予付きの判決を得るには、示談によって被害者の被害回復に努めている姿勢を見せることが重要となってきます。
示談はご自身でおこなうことも可能ですが、事件の内容によっては被害者から接触を拒まれてしまうことも少なくありません。
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