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盗撮は被害者不明でも逮捕される?被害届なしで逮捕される可能性を解説

  • 盗撮,被害者不明

盗撮は被害者不明でも逮捕される?被害届なしで逮捕される可能性を解説

2023年7月13日、盗撮を処罰する「撮影罪」が新たに導入されました。

被害者不明、被害者不詳の盗撮というのを聞いたことはありますか?

被害者は盗撮に気づいていない。でも、目撃者に、警察に通報されてしまった・・・。」

「逮捕されたとき、家宅捜索で多数の余罪が発覚した。でも、その盗撮画像の被写体不明で、どこのだれかわからない・・。」

これらのケースは、いずれも被害者不明の盗撮事件です。

刑事事件は、「被害者がいないと事件にならない」というイメージがありますよね。

被害者不明の盗撮事件で逮捕・起訴されることはあるのでしょうか?

そこで、今回は、「盗撮被害者不明でも逮捕される?」と題して、

  • 被害届なしで逮捕される可能性
  • 被害者がいなくて示談できない盗撮事件の対処

などをレポートします。

基本的な問題として、

盗撮で科される刑罰

なども取り上げます。

盗撮の逮捕にまつわる実務的な問題は、刑事弁護に力をいれているアトム法律事務所の弁護士にお願いします。

よろしくお願いします。

盗撮容疑をかけられた場合、被害届が出されないことも多いです。

盗撮では示談が成立すれば不起訴になりやすい傾向がありますが、被害者不明では示談ができません。

このような場合の対処法についても、実務的な視点からコメントしていきます。

盗撮はどんな犯罪?被害者不明でも盗撮は刑事事件になる

「盗撮犯」の定義とは?

「盗撮って、盗み撮りのこと?」

たとえば、

  • 会社で、職場の同僚の足元にカメラを設置して、スカート内を盗撮
  • エスカレーターで、スマホを使って、スカート内を盗撮

などなど、日ごろからニュースで報道されています。

でも、実際に「盗撮罪」という罪名を聞いたことはありせんよね?

「盗撮罪」という罪名はありません。

しかし、「盗撮」をすれば、確実に何らかの犯罪には該当します。

盗撮は被害者がいる犯罪ですが、被害者不明だからといって犯罪が成立しないということはありません。

では、盗撮をした場合、具体的にどのような犯罪が成立するのでしょうか。

みていくことにしましょう。

盗撮した犯人が逮捕される犯罪には、次のようなものがあります。

  1. 撮影罪
  2. ②都道府県の定める迷惑防止条例違反
  3. ③ 刑法130条の住居侵入罪建造物侵入罪
  4. 軽犯罪法1条23号の違反

盗撮場所などによって成立する犯罪が異なります。

次の項目で、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

盗撮は原則「撮影罪」に問われる?

2023年7月13日以後におきた盗撮事件については、原則撮影罪が適用されることになります。

撮影罪とは、体の性的な部位や下着を盗撮した場合などに成立します。

撮影罪の法定刑は、「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。

撮影罪の詳細は『撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは?犯罪となる撮影行為や条例との違いについて解説』をご確認ください。

盗撮は「迷惑防止条例違反」で逮捕される?

(1)迷惑防止条例で逮捕された犯人のニュース

まず、盗撮をして迷惑防止条例違反に問われたニュースをご紹介します。2023年7月12日以前の盗撮事件は迷惑防止条例に問われる可能性が高いでしょう。

署は5日、(略)容疑者(略)を県迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で現行犯逮捕した。

逮捕容疑は5日午後0時40分ごろ、(略)駅の連絡通路に設置された上りエスカレーターで、高校2年の女子生徒(16)のスカートの中をスマートフォンで撮影したとしている。

同署によると、(略)容疑者は「好奇心で撮ろうとした」などと供述。警戒中の警察官が盗撮行為を目撃し、現行犯逮捕した。

この盗撮事件では、駅構内のスカート内盗撮が問題になっています。

このような公衆が利用する場所で盗撮をした場合、迷惑防止条例違反に問われることになります。

(2)迷惑防止条例で規定される「盗撮」の定義

さて、実際に、迷惑防止条例では、「盗撮」についてどのように規定されているのでしょうか?

一例として、東京都迷惑防止条例について確認していきます。

東京都の迷惑防止条例では、「盗撮」について、次のように規定されています。

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

一 (略)

二 公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

三 (略)

東京都の迷惑防止条例全文については、以下のリンクから検索できます。

東京都の迷惑防止条例の正式名称は、

「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」

というものです。

正式名称を使って検索をかけたほうが見つけやすいです。

さて、さきほどの条例について、盗撮の禁止に関する規定内容を表にしました。

【盗撮】東京都迷惑行為防止条例違反
5条1項2号
盗撮の場所・公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けないでいる場所
・公共の場所
・公共の乗物
盗撮の対象通常衣服で隠されている下着や身体
行為・写真機等で撮影する行為
・撮影目的で、写真機等を差し向ける行為
・撮影目的で、写真機等を設置する行為
平成30年1月1日現在

現時点では、東京都の迷惑防止条例は、このような規定になっています。

ただし、平成30年7月1日に、改正された条例が施行される予定です。

盗撮については、「盗撮の場所」の規制が変わります。

改正後、盗撮が禁止される場所は、

公衆が利用する場所

にとどまらず、

住居などのプライベートな空間

も含まれます。

改正後の条例も見てみましょう。

次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

イ  住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ  公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

表にまとめてみました。

【改正後】東京都迷惑防止条例(盗撮)
5条1項2号
盗撮の場所・公共の場所
・公共の乗物
=====
・住居
・便所
・浴場
・更衣室
・人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
 (公衆が利用する場所に限られない)
・学校
・事務所
・タクシー
・不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物
 (例:カラオケボックスなど)
盗撮の対象通常衣服で隠されている下着や身体
行為・写真機等で撮影する行為
・撮影目的で、写真機等を差し向ける行為
・撮影目的で、写真機等を設置する行為
平成30年7月1日施行。

改正後の全文は、コチラから見られますよ。

さて、条例における「盗撮」の定義や構成要件はわかりました。

次に、刑事罰について確認していきましょう。

(3)東京都迷惑防止条例違反の刑罰

気になる「刑罰」について、確認します。

東京都の迷惑防止条例違反の盗撮の場合、

「1年以下の懲役刑」または「100万円以下の罰金刑」

が科されます。

常習として盗撮をした場合には、

「2年以下の懲役刑」または「100万円以下の罰金刑」

が科されます。

改正後の条例でも、同様です。

表にまとめました。

【東京都】迷惑防止条例違反の刑罰
刑罰常習の場合の刑罰
「盗撮」1年以下の懲役刑
100万円以下の罰金刑
2年以下の懲役刑
100万円以下の罰金刑

懲役刑もあるとは、盗撮だからといって、あなどれないですね・・・。

(4)東京都以外だと?千葉県や愛知も知りたい!刑罰はどのくらい?

迷惑防止条例は、都道府県ごとに制定される条例です。

したがって、都道府県ごとに「盗撮」として処罰される行為態様も違います。

実際に撮影したときしか処罰されない

という規定もあれば、

カメラを差し向けたり設置したりすることも処罰の対象になる

規定の仕方も、あります。

刑罰についても、一律に決められているわけではありません。

東京都の迷惑防止条例では、常習でない盗撮の場合、

「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」

という刑罰になっていました。

その他の都道府県、たとえば、千葉県愛知県などは、

「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」

という刑罰になっています。

【千葉県・愛知県】迷惑防止条例違反の刑罰
刑罰常習の場合の刑罰
「盗撮」6月以下の懲役刑
50万円以下の罰金刑
1年以下の懲役刑
100万円以下の罰金刑

さて、次に、刑法の建造物侵入罪・住居侵入罪について確認していきましょう。

刑法の「建造物侵入罪」でも犯人は逮捕される?

(1)建造物侵入罪で逮捕された犯人のニュース

盗撮目的で、他人が看守する建造物に「侵入」してしまったとします。

そのような場合、建造物侵入罪に問われてしまいます。

庁舎内の女子トイレで盗撮しようとしたとして、神戸地検は15日、(略)検事の(略)容疑者(略)を兵庫県迷惑防止条例違反建造物侵入の疑いで逮捕し、発表した。

(略)

神戸地検によると、(略)容疑者は昨年9月19日と今年2月6日、兵庫県姫路市の神戸地検姫路支部の庁舎別館にある女子トイレに忍び込み、個室内の女性を盗撮するため、仕切りの上からスマートフォンを差し向けるなどした疑いがある。

この盗撮事件では、地検の検事さんが、盗撮目的で、自分の職場の女子トイレに侵入しています。

(2)建造物侵入罪は「盗撮」なの?

単純に考えて、「建造物侵入」と「盗撮」は、似ても似つかないですよね・・・。

まずは、建造物侵入について、刑法の条文を確認します。

(住居侵入等)

第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅建造物若しくは艦船に侵入し(略)た者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

この条文によれば、

  • 個人の家に侵入すれば、「住居侵入罪」
  • 人の看守する建造物に侵入すれば、「建造物侵入罪」

が成立します。

ところで、

特定の犯罪が成立するための要件のことを「構成要件」

といったりします。

そして、「建造物侵入罪」でポイントとなる「構成要件」は、「侵入」です。

「侵入」の定義との関連で、盗撮でも建造物侵入罪が成立することになります。

建造物侵入罪にいう「侵入」の定義とは、建造物の管理者の意思に反して、立ち入ることです。

建造物の管理者は、通常は「盗撮目的の立ち入りをめない」という意思を持っていると考えられます。

盗撮犯は、このような管理権者の意思に反して、施設へ立ち入ることになるため、「建造物侵入」に該当してしまいます。

したがって、実際に盗撮をしたかどうかにかかわらず、「侵入」した場合、建造物侵入罪に問われます。

職場の建物に入っていいのは、会社で仕事をするためです。

盗撮目的で入ると、「侵入」に該当してしまいます。

「住居侵入罪」についても、同様の考え方ができます。

「知り合いのAさんを盗撮したくて、Aさんの家に招かれたとき、Aさんを盗撮した」

というケースがあるとします。

このような場合、「住居権者」であるAさんは、通常、盗撮目的で立ち入られることを承諾していはいはずです。

したがって、盗撮目的で他人の家に侵入した場合には、住居侵入罪に問われます。

(3)建造物侵入罪の刑罰

建造物侵入罪刑罰については、さきほど見た条文に規定されていました。

ここで、おさらいしておきます。

刑法第130条の刑罰

3年以下の懲役または10万円以下の罰金

建造物侵入罪といっしょに迷惑防止条例違反が成立する場合、刑罰はどうなってしまうのでしょうか。

建造物に侵入して、迷惑防止条例違反の盗撮をした場合、いわゆる「科刑上一罪」として処理されて、刑罰が決められます。

迷惑防止条例違反と、刑法の建造物侵入罪の両方に問われる場合、成立する犯罪の法定刑が比較されて、最も重い刑罰で処断されます。

たとえば、懲役刑についていえば、

  • 条例違反の刑罰が「6月以下の懲役」で、
  • 建造物侵入罪の刑罰が「3年以下の懲役」

です。

この場合、懲役刑は「3年以下」の範囲で言い渡されます。

という範囲で、刑罰が決定されることになります。

実際に、奈良県で建造物侵入と、条例違反が問題になった裁判例がありました。

その裁判例では、重い「建造物侵入罪」を基準に、懲役刑が言い渡されました。

盗撮は「軽犯罪法違反」でも逮捕される?

さいごに、「盗撮」が、軽犯罪法違反になる場合を確認しておきましょう。

(1)軽犯罪法違反で逮捕された犯人のニュース

さて、盗撮軽犯罪法違反で逮捕されたニュースを読んでみましょう。

市内で無許可の民泊を営み、火災報知機型の隠しカメラで宿泊客を盗撮したとして、(略)県警は4日、不動産会社長の男(略)軽犯罪法違反の疑いで書類送検し、発表した。「カメラは防犯目的だったが、客をのぞき見できると思い、ベッドの方へ向きを変えた」などと供述しているという。

県警によると、男は2016年8月~17年6月、所有する(略)賃貸マンションの一室で無許可の民泊を営業。17年6月27~28日には、部屋の天井に取り付けた火災報知機型の小型カメラ(直径10センチ)で、宿泊客の韓国人の男女を盗撮した疑いがある。

盗撮犯自ら経営している民泊の場合、建物の管理権者は盗撮犯自身です。

そのため、建造物侵入罪には問われません。

ふつうに考えても、自分の建物に立ち入って、建造物侵入が成立したら、たまったものではありませんよね。

また、「民泊の部屋」は、公衆が出入りするような場所ではありません。

したがって、迷惑防止条例違反にも問われません。

そうなってくると、軽犯罪法で処罰される可能性がでてくるわけです。

(2)軽犯罪法だと「のぞき見」として処罰される?

「軽犯罪法というくらいだから、刑罰も軽いのかな?」

そう考えたあなたは、あながち間違いではありません。

まずは、盗撮が、軽犯罪法違反に問われる根拠条文を見てみましょう。

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

(略)

二十三 正当な理由がなくて人の住居浴場更衣場便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所ひそかにのぞき見た

この軽犯罪法1条23号では、

「のぞき見した者」

が処罰されることになります。

盗撮は、カメラを通したのぞき見です。

したがって、この規定によって、盗撮が罰せられるのです。

(3)盗撮が軽犯罪法違反だと刑罰はどうなる?

先ほどの条文だと、

拘留または科料

と規定されていました。

懲役でもないし、罰金でもないし、聞き覚えがない・・・。

拘留・科料とは、どのような刑罰なのでしょうか。

「拘留」とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設に収容される刑罰です。

拘留は、懲役と異なり、刑務作業は科せられません。

「科料」とは、1000円以上1万円未満を納付しなければならない刑罰です。

科料は、最も軽い主刑といわれています。

迷惑防止条例違反の盗撮で、罰金刑だと、50万、100万が相場でした。

それと比べると、軽犯罪法違反で納付しなければならない科料は、少額です。

刑罰は、とても軽いものが定められているといえます。

なお、盗撮の刑罰については『盗撮はなんていう犯罪でどんな刑罰?|盗撮罪という法律はないの?』でも解説しているので、興味がある方はご覧ください。

さて、次の項目では、いよいよ

被害者不明の盗撮だと、不起訴になるのか?

といった疑問のこたえを確認していきましょう。

被害者不明(被害届なし)でも盗撮容疑で逮捕される?

「被害者不明の盗撮」って何?

まず、次のような事案があったとします。

「盗撮しているその場で、被害者に盗撮がバレた。」

このような事案では、被害者は特定されるので、被害者不明の盗撮にはなりません。

しかし、

「目撃者に気づかれただけで、被害者は気づいていない。被害者は、その後いなくなった。」

というケースもあります。

このようなケースでは、被害者は特定されないので、「被害者不明盗撮」になります。

被害者不明の盗撮とは?

盗撮の被害者が、その後いなくなったケース

スマホ盗撮など被害者が気づいていないと「被害届」は出されない?

被害者が盗撮に気づいていない場合、被害届は出されようがありません。

ただし、個人の家など、被害者を特定できるような形で盗撮していた場合もあるでしょう。

そのような場合、最初は被害者不明だったとしても、余罪捜査の過程で、被害者に連絡がいき、その後、被害届が出される可能性があります。

また、

被害に気付いていたけれど、怖くて気づかないふりをしていた

というケースもあります。

そのような場合、後日、被害者の気が変わってしまい、被害届が出される可能性があります。

被害届には提出期限がないため、その後しばらく経ってから出されることも稀ではありません。

被害届が出される場合
  1. ① 余罪捜査の過程で被害者に気づかれた
  2. ② 被害者が盗撮犯に気づかないふりをして立ち去ったが、後日被害届を出された

「被害届なし」の「盗撮」は逮捕される?不起訴になることもある?

(1)「被害届なし」でも起訴される?

  • 「被害届がいないのに、なんで逮捕されるの?」
  • 「被害届がいないのに、不起訴にならないのは、おかしい。」

そんなことを考えてしまう人もいるかもしれません。

しかし、被害届が出されていないというのは、

「被害者不明」「被害者不詳」

ということを意味するのであって、「被害者がいない」ということではありません。

被害者不明だと不起訴になりやすいのはたしかです。

でも、刑事事件としての「盗撮の事実」がある限り、被害者不明でも起訴される可能性があります。

奈良地方裁判所の裁判例を見てみましょう。

この盗撮事件では、被害者不明の盗撮のほか、もう1件起訴されており、合計2件の盗撮事件が問題になっています。

【裁判例】被害者不明の盗撮
▼事案
教員が、職場である学校の女子トイレに、用便中の女性の姿態を盗撮する目的で、侵入した。
女子トイレの個室内で用便中の氏名不詳の女性を、デジタルカメラで撮影した。
▼罪名
 建造物侵入罪
 迷惑防止条例違反
▼結論
 懲役1年(執行猶予3年)
▼備考
・ほかに、同校のクラブハウスでの盗撮も問題になっている。
・多数の余罪がある。

奈良地方裁判所 平成28年(わ)第284号

この裁判例では、被害者不明でも不起訴になりませんでした。

しかも、「懲役刑」が科されています。

罰金刑のほうが、懲役刑よりも軽いと考えられています。

このような刑罰が言い渡される際に考慮された事情としては、

  • 教員の立場を悪用して、職場で盗撮したこと
  • 学校関係者などへ多大な衝撃を与えること
  • 起訴されていない余罪が多数あること

などです。

これらの事情があるため、盗撮態様において悪質性が高いと判断されてしまいました。

(2)被害者不明の盗撮で逮捕される可能性

さて、被害届なしで起訴される可能性があるということは、その前提として「逮捕される可能性」もあるということです。

被害者不明だけれど逮捕されてしまった実例を確認してみましょう。

盗撮容疑の事案

▼事案

雑貨店で、氏名不詳の女性のスカート内にカメラを差し向けた。

被害者不明のまま、捜査が進められた。

▼逮捕

 あり

▼勾留

 あり

▼起訴

 あり

▼刑罰

 罰金30万円

この事件でも、逮捕されたその後、刑事裁判で有罪判決が出されています。

逮捕の決め手となる証拠や、逮捕の可能性については『盗撮の後日逮捕(通常逮捕)の可能性|防犯カメラや被害届が証拠になる?』で詳しく解説しているので、是非見てみてくださいね。

ところで、逮捕と同様に、警察に連行されるものとして「任意同行」というものがあります。

盗撮では任意同行されることもあります。

盗撮の任意同行の特集は『盗撮で任意同行|後日逮捕されて罰金刑?任意同行のその後に迫る』をご覧ください。

逮捕されなくても起訴されることがあるので、次の項目で確認していきましょう。

(3)逮捕されない場合でも起訴される?|在宅事件と書類送検

ふつう、刑事事件といえば、

「逮捕されたら、その後、起訴まで身体を拘束され続ける」

とイメージする人も多いでしょう・・・。

これは、いわゆる「身柄事件」です。

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逮捕されたら、その後、警察から取調べを受けることになります。

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警察による取調べ後、警察から検察へ、盗撮事件の捜査資料が送致されます。

その後、検察官のもとで勾留されて、盗撮事件の取調べを受けます。

逮捕されたときから、身体の拘束時間を合計すると、最長で23日間です。

その後、起訴されて刑事裁判にかけられるという流れです。

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しかし、盗撮容疑の捜査において、

  • そもそも逮捕されない
  • 逮捕後に釈放された

というようなケースもあります。

このように、身体を拘束されないで捜査が進められる事件もあります。

これは、いわゆる在宅事件といわれるものです。

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在宅事件の場合は、留置場に行く必要はありません。

しかし、警察から呼び出しがあった場合は、警察署へ任意出頭するなどして、取調べを受けることになります。

その後、警察から検察官へ、盗撮事件の捜査資料が送致されます。

これが、いわゆる「書類送検」です。

書類送検とは、捜査の書類致を、察官にすることです。

盗撮犯の身体は検察へ送致されないので、検察官から取調べをうけるときは、家から出頭することになります。

また、在宅事件だからといって、起訴されないことはありません。

在宅事件が起訴された場合、家から出廷することになります。

「被害者が気づいていない盗撮」=「証拠なし」とは限らない

被害者不明で起訴されるとしても、証拠がないような事件は起訴されません。

被害届も、盗撮事件の証拠のひとつです。

被害者が気づいていない盗撮では、被害届は出されません。

でも、被害届が出されないからといって、逮捕・起訴されないかといえば、そうではありません。

「被害届なし」は、「証拠なし」ではないのです。

盗撮事件の場合には、

  • 撮影した「盗撮画像や動画」
  • 盗撮目的で「設置した小型カメラ」
  • 盗撮の様子が録画された「防犯カメラの映像」

などが、証拠になります。

そのため、被害者が気づていないために被害届がだされなくても、目撃者の通報により捜査が進められれば、盗撮事件の証拠は収集されてしまうのです。

被害者不明の盗撮で「被害者との示談」ができないとき

初犯の盗撮事件は「示談すると不起訴」って本当?

  • 被害者と示談すれば、不起訴の可能性が高い
  • とくに初犯の盗撮は、示談で不起訴になりやすい

というようなことが、いわれています。

そもそも、「示談」とは、どういったものなのでしょうか。

「示談」とは、民事上の紛争を、裁判によらずに、当事者間の話し合いで解決する契約のことです。

盗撮の被害者は、撮影されたことによる精神的なショックをうけていることが多いです。

盗撮犯は、このような精神的損害に対する賠償として、被害者から、慰謝料を請求されることになります。

このような損害賠償について、民事裁判ではなく、当事者間の話し合いで解決するのが示談です。

でも、証拠もあって、冤罪というわけではないのに、不起訴なんてことはあるのでしょうか・・・。

嫌疑が十分な場合でも、様々な事情が考慮されて不起訴とされるケースもあります。

このような「不起訴処分」のことを、「起訴猶予」とよびます。

起訴猶予処分の場合に、考慮される事情としては、

  • 犯人の性格・年齢・境遇
  • 犯罪の軽重・情状
  • 犯罪後の情況

などです。

初犯の場合、通常、犯罪傾向が進んでいないため、「厳罰に処される必要性が低い」と評価されます。

また、示談の成立は、「犯罪後の情況」として考慮されます。

したがって、初犯の盗撮で示談が成立すれば、不起訴になりやすいのです。

盗撮の示談については『盗撮の示談金額の相場2020|慰謝料としての相場は50万円?』をご覧ください。

また、盗撮の不起訴については『盗撮事件は50%が不起訴?不起訴率から可能性を計算!有罪率も統計推移から!』を見てみてくださいね。

さて、示談交渉は、交渉の相手、すなわち被害者が特定していなければできません。

被害者不明の盗撮事件で、示談ができないときはどうすればよいのでしょうか・・・。

被害者不明で「示談の相手」がいないときどうする?

被害者不明で示談交渉ができない場合、不起訴はあきらめるしかないでしょうか?

答えは、NOです!

たとえ、示談ができなくても、「贖罪寄付」(しょくざいきふ)という方法もあります。

弁護士会・日本弁護士連合会(日弁連)では、被害者のいない刑事事件や、被害者との示談ができない刑事事件などにつき、刑事手続の対象となっている方の改悛の真情を表すための「贖罪寄付」を受け付けています。

「示談のかわりに贖罪寄付をしたことで、不起訴になった盗撮事件」を確認しておきましょう。

贖罪寄付と不起訴

▼事案

ビルのエスカレーターで、女子高生のスカート内に、スマートフォンを差し入れ、動画撮影した。

▼盗撮時の状況

被害者の女子高生は、気づかずに立ち去った。

通行人に、現行犯逮捕された。

▼示談

  • 被害者不明のため、示談なし。
  • 示談の代わりに、贖罪寄付30万円。

▼結論

不起訴 

贖罪寄付をすれば、必ず不起訴になるというわけではありません。

しかし、仮に、起訴されてしまったとしても、贖罪寄付をしたことで量刑上考慮してもらえる可能性があります。

つまり、贖罪寄付によって、刑罰を軽くしてもらえる可能性が広がるということです。

弁護士会以外にも、多くの団体で贖罪寄付を受付てもらえます。

こちらのサイトを参考にしてください。

さて、次の項目では、余罪が多数ある初犯の場合に、被害者不明の余罪事件で起訴されるかどうかを検討していきましょう。

初犯でも余罪があるとき「被害者不明の余罪」は起訴される?刑罰は重い?

(1)余罪そのものの逮捕・起訴の可能性

初犯で逮捕されたとしても、今まで盗撮をくり返しおこなっていた盗撮犯も多くいます。

  • 家宅捜索によって、家にあった盗撮機器から、盗撮画像が発見されてしまったり・・・
  • 任意提出したスマホから、スカート内の盗撮画像が発見されてしまったり・・・

そのようなことから、盗撮の余罪が警察にバレてしまうことが多々あります。

所持品のビデオカメラを分析したところ、盗撮した女性が写っていたという。他にも動画が保存されており、同署で余罪を捜査している。

押収された盗撮画像が精査され被害者が特定されるなどして、

  • どこで盗撮したか?
  • 誰を盗撮したか?
  • 本人が盗撮犯で間違いないか?

などが分かれば、余罪についても、逮捕や起訴される可能性がでてきます。

(2)「余罪」がある場合の刑罰の重さ

被害者不明の余罪が多数ある場合、

「盗撮画像がたくさんあって、なんだか印象が悪いんじゃないかな・・・。」

と心配になりますよね。

余罪がある場合、刑罰は重くなるのでしょうか。

起訴されていない犯罪事実については、処罰されることはありません。

したがって、起訴されていない余罪について、処罰されることはありません。

もっとも、量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮して、法定刑の範囲内において、裁判所によって決定されるものです。

余罪が多数あることで、盗撮の犯罪傾向や、計画的犯行であることなどが推察される場合、量刑が重くなる可能性があります。

余罪が多数あって、刑罰が重くなりそうな場合でも、

  • 身元が分かっている被害者との示談交渉を進める
  • 贖罪寄付をする
  • 治療など再犯しない対策を講じる

といった対処で、挽回できる可能性があります。

盗撮の余罪については『盗撮の余罪は捜査によって立件・再逮捕される?|初犯の場合も解説』をご覧ください。

被害者が特定できない盗撮画像がたくさんあって、余罪すべてについて示談ができないようなケースもあるかもしれません。

でも、あきらめないで、今できる対処を弁護士さんといっしょに考えていきましょう!

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さいごに

さて、「盗撮被害者不明でも逮捕される?」と題してレポートしてきました。

被害者不明でも逮捕や起訴されることがあるようです。

被害者不明の場合は、示談ができません。

示談の代わりに贖罪寄付などの対処が必要です。

盗撮事件の場合、初犯だと不起訴になりやすいといわれています。

しかし、被害者不明の場合には、示談交渉の相手がいないので、示談を成立させられません。

示談の代わりに贖罪寄付をしたり、盗撮癖を治す治療をするなどの対処が必要になってきます。

根本的な解決に向けて、刑事事件に精通した弁護士と一緒に対処法を検討していきましょう。

現在、盗撮容疑でお悩みの方は、すぐにでも弁護士にご相談いただければと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

盗撮事件で捜査されると不安なことも多いですが、勇気をもって弁護士に相談しに行きましょう!

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