刑事事件の時効期間の年数一覧|時効が撤廃された刑事犯、詐欺・横領の時効の年数など
刑事事件には時効があるということを知っていますか?
- 自分の刑事事件の時効の年数が知りたい
- そもそも刑事事件の時効とは何?
- 損害賠償を請求されたときの債権にも時効はある?
今回は「刑事事件の時効」について、その意味や時効期間の年数をレポートしていきます。
刑事事件の時効にまつわる詳しい解説は、刑事事件を扱うアトム法律事務所の弁護士にお願いします。
よろしくお願いします。
刑事事件の時効といえば、公訴時効が1番の関心事でないかと思います。
刑事弁護の実務の視点から皆さんの気になるところについて、解説していきます。
目次
【年数一覧】刑事事件の時効期間の年数を確認しよう
刑事事件の時効とは?
「公訴時効」について
皆さんは刑事事件の時効と聞いて何を思い浮かべますか?
「一定の年数が経過すると、時効となり刑事事件の責任を問われない」ということが思い浮かぶのではないでしょうか。
刑事事件の時効が問題となったニュースを少しだけ見てみましょう。
子会社(略)の資金を横領したとして、(略)容疑者(略)を業務上横領の疑いで逮捕した。捜査関係者によると、(略)容疑者は架空の取引を装って着服を続けていた。(略)横領は10年前からで、総額は約2億7千万円に上るとみられる。(略)公訴時効にかからない約1億6千万円について裏付け捜査を進める。
出典:日本経済新聞(2012.9.20)
こちらの事件では、会社の資金の横領が問題になっています。
そして、「公訴時効」にかからない約1億6千万円について捜査が進められていると報じられています。
では、この「公訴時効」とは一体どのようなものなのでしょうか。
「公訴時効」とは、犯罪終了後、一定の期間が経過することにより、公訴権が消滅し、その後の起訴されなくなる制度をいいます。
公訴権というは、検察官が公訴を提起する権限のことです。
この「公訴時効」の成立によって、起訴されないことはもちろんのこと、起訴されたとしても免訴判決によって裁判手続が打ち切られます。
上のニュースでは、公訴時効にかからない資金の横領について捜査が進められていました。
これは、「公訴時効」が成立すると起訴することができないため、捜査する意味がなくなってしまうからです。
「時効直前で逮捕された」という報道もあります。
次のニュースでは、時効の成立前に、死体遺棄罪の容疑で犯人が逮捕されています。
遺体が見つかった事件で、死体遺棄の疑いで逮捕された(略)公訴時効の約2カ月前の犯人逮捕に、(略)近くに住む70代の男性は安心した様子だった。
出典:産経ニュース(2018.1.26 12:28)
公訴時効の約2か月前に逮捕されてしまったようです。
このように、起訴されるリミットのギリギリのところで逮捕される事案もよくあります。
①「人を死亡させた罪」(禁錮以上)の公訴時効の年数一覧
刑事事件の公訴時効の年数について、条文を参考にまとめていきましょう。
従来、公訴時効の時効期間は、単純に「法定刑」の重さによって規定されていました。
ですが、2010年の法改正から、「人を死亡させた罪」を分けて規定されるようになりました。
そこでまずは、「人を死亡させた罪」の時効についてみていきましょう。
まず、下の公訴時効の一覧は、刑事訴訟法250条1項に規定されているものです。
250条1項 | 法定刑 | 公訴時効の年数 |
---|---|---|
柱書 | 死刑に当たる罪 | なし |
1号 | 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 | 30年 |
2号 | 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪 | 20年 |
3号 | 表の①~③以外の罪 | 10年 |
具体的に、どのような犯罪が、どのくらいの年数になるのかについて、表にまとめました。
250条1項 | 具体例 | 公訴時効の年数 |
---|---|---|
柱書 | 「殺人」(刑法199条)、「強盗致死」(刑法240条後段)、「強盗・強制性交等致死」(刑法241条3項) | なし |
1号 | 「強制わいせつ等致死」(刑法181条) | 30年 |
2号 | 「傷害致死」(刑法204条)、「危険運転致死」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条) | 20年 |
3号 | 「業務上過失致死」(刑法211条)、「過失運転致死」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条) | 10年 |
「人を死亡させた罪」については、一部、公訴時効が撤廃された刑事事件もあります。
法定刑に「死刑」が含まれている殺人などは、公訴時効にかかりません。
人を死亡させた犯罪のうち、法定刑の上限が「死刑」の犯罪は、公訴時効にかからない
②「人を死亡させていない犯罪」の公訴時効の年数一覧
次に、刑事訴訟法250条2項の規定をまとめた一覧表を見ていきましょう。
刑事訴訟法250条2項には、同条1項で規定されていない犯罪の公訴時効が規定されています。
簡単にいうと、人を死亡させていない犯罪の公訴時効についての規定です。
それでは、こちらの刑事事件の時効一覧表を見ていきましょう。
250条2項 | 法定刑 | 公訴時効の年数 |
---|---|---|
1号 | 死刑に当たる罪 | 25年 |
2号 | 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 | 15年 |
3号 | 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪 | 10年 |
4号 | 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 7年 |
5号 | 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 | 5年 |
6号 | 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪 | 3年 |
7号 | 拘留又は科料に当たる罪 | 1年 |
こちらの公訴時効期間が適用される刑事事件は、どのようなものがあるか、まとめてみました。
250条2項 | 具体例 | 公訴時効の年数 |
---|---|---|
1号 | 「現住建造物放火」(刑法108条) | 25年 |
2号 | 「強盗致傷」(刑法240条前段)、「強盗・強制性交」(刑法241条1項) | 15年 |
3号 | 「強制性交」(刑法177条)、「傷害」(刑法204条)、「強盗」(刑法236条) | 10年 |
4号 | 「強制わいせつ」(刑法176条)、「窃盗」(刑法235条)、「詐欺」(刑法246条)、「業務上横領」(刑法253条) | 7年 |
5号 | 「収賄、受託収賄及び事前収賄」(刑法197条)、「監禁罪」(220条)、「単純横領」(刑法252条) | 5年 |
6号 | 「住居侵入罪」(130条)、「公然わいせつ罪」(刑法174条)、「淫行勧誘」(刑法182条)、「死体損壊」(刑法190条)「脅迫罪」(刑法222条)、「名誉棄損」(刑法230条1項)、「威力業務妨害」(刑法234条)、「侮辱」(刑法231条) | 3年 |
7号 | 「軽犯罪法違反」(軽犯罪法1条) | 1年 |
こちらの時効一覧の具体例の中身をひろい読みしていきましょう。
- 「現住建造物放火」については、25年
- 「強盗致傷」については、15年
- 「傷害」については、10年
- 「詐欺」については、7年
- 「単純横領」については、5年
- 「住居侵入」については、3年
- 「軽犯罪法違反」については、1年
この一覧表に載っていない刑事事件の公訴時効の年数について気になる方もいると思います。
時効の年数は法定刑がわかれば、刑事訴訟法と照らし合わせてみると判断できるようになっています。
わからなければ、法律の専門家である弁護士に聞いてみるのもよいでしょう。
「公訴時効」以外にも刑事事件の時効がある
刑事事件の時効といえば「公訴時効」ですが、実は「公訴時効」以外にも「刑の時効」という制度があります。
「刑の時効」とは、どのようなものなのでしょうか。
「刑の時効」とは、裁判で言い渡された刑罰が執行される際に問題になる「時効」です。
裁判で刑罰が言い渡されて確定したとします。
その後、その刑の執行を受けることなく一定期間が経過すれば、刑の執行が免除される制度です。
ただし、例外として、「死刑」の執行については免除されません。
刑の時効については、刑法に規定されています。
まず、条文を見てみましょう。
刑の時効
第三十一条 刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。
条文では、「死刑を除く」と規定されています。
「死刑」は時効にかからないんですね。
では、次に刑の時効の期間について規定された条文を見てみましょう。
時効の期間
第三十二条 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
一 無期の懲役又は禁錮については三十年
二 十年以上の有期の懲役又は禁錮については二十年
三 三年以上十年未満の懲役又は禁錮については十年
四 三年未満の懲役又は禁錮については五年
五 罰金については三年
六 拘留、科料及び没収については一年
このように、刑罰の執行について、時効が細かく規定されています。
告訴期間との違いについて
ここまで、「公訴時効」「刑の時効」を見てきました。
時効がらみで似たような概念として「告訴期間」というのがあります。
この「告訴期間」と「公訴時効」の違いはどのようなものなのでしょうか?
まず、「告訴期間」の意義について確認しましょう。
「告訴期間」とは、親告罪について、告訴を有効にすることのできる期間です。
親告罪は、告訴権者の告訴がなければ起訴されません。
ですが、一定期間内にされた告訴でなければ、その告訴は有効とされないため、起訴もされないことになります。
告訴期間は、原則として「犯人を知つた日から6か月」とされています。
過失傷害や名誉に関する罪などは、「親告罪」とされています。
このような「親告罪」では、告訴がなければ起訴されません。
公訴時効の時効期間の年数がまだ残っているとしても、告訴期間を過ぎれば起訴されません。
時効が撤廃された刑事犯があるのはなぜ?
法定刑に「死刑」が含まれている犯罪では、公訴時効を撤廃する法改正がありました。
なぜ、法定刑が撤廃されたのでしょうか。
公訴時効の撤廃がされた経緯について、「法務省だより」を見てみましょう。
殺人罪の公訴時効期間は、これまでは25年とされていましたので、たとえ凶悪な殺人犯であっても、25年間逃げ切れば、処罰されることはありませんでした。
しかし、殺人事件などの遺族の方々からは、「(略)公訴時効を見直してもらいたい。」という声が高まりました。
そこで、法務省では、公訴時効の趣旨や法律を見直すとした場合の理論的問題、外国の制度や国民の意識の動向など、様々な調査を行い、法制審議会での調査・審議を経て、殺人罪など一定の犯罪について、公訴時効を廃止したり、公訴時効期間を延長する法案を国会に提出し、このほど成立したものです。
出典:法務省だより 赤れんが 2010 July vol.31(http://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no31/one.html)
どうやら、殺人罪などについては、公訴時効の見直しを求める要望が高かったようです。
そのため、法務省では、各種検討を行い、公訴時効を撤廃する法改正に至りました。
「時効にかかるまで逃げ切れば処罰されない」という考え方については、賛否両論だと思います。
ですが、そもそも、公訴時効という制度はなぜ規定されているのでしょうか。
公訴時効という制度の存在意義については、諸説あります。
ひとつには、実体法説という考え方です。
これは、時の経過によって犯罪の社会的影響が低下し、刑罰を加えられる必要性が低下するという考え方です。
また、訴訟法説という考え方もあります。
時間の経過によって証拠が散逸し、審判が困難になるため、訴追されるべきではないという考え方です。
公訴時効の存在意義については学説上も、実務上も、論争が繰り広げられているようです。
時効成立はいつ?詐欺や横領を例に起算日から年数を数えてみよう
では、「公訴時効」の年数を起算日から数えてみましょう。
ここでは、詐欺や横領を例に考えてみます。
まず、公訴時効の起算点について規定している条文を確認しましょう。
時効は、犯罪行為が終った時から進行する。
出典:刑事訴訟法第253条第1項
この条文によると、公訴時効の起算点は「犯罪行為が終った時」です。
この「犯罪行為が終った時」の意味を確認しておきましょう。
公訴時効の起算点となる「犯罪行為が終った時」の解釈について説明します。
ここでいう「犯罪行為」とは、構成要件に該当する事実をいい、行為とそれから生じた結果を含むと解されています。
たとえば、「自分の傷害行為によって、相手が数日後に死亡した」という傷害致死事件を考えてみます。
この場合、相手が死亡した日が、公訴時効の起算点になります。
公訴時効の起算点で問題となる「犯罪行為」とは、構成要件として規定されている事実をいうようです。
これを踏まえて、「詐欺」の公訴時効の成立について考えてみましょう。
詐欺の公訴時効について
まず、詐欺罪の条文を見てみましょう。
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
出典:刑法第246条第1項
ここでいう「犯罪行為」とは、「人を欺いて財物を交付させた」ということです。
詐欺罪では、相手方から財物を交付させた時から、公訴時効がカウントされます。
たとえば、次のようなニュースで公訴時効を考えてみましょう。
次のニュースでは、詐欺の犯人は、平成28年10月25日に逮捕されてしまったようですが、公訴時効にかかったのでしょうか?
逮捕容疑は(略)競売で落札した(略)旧旅館に放火して全焼させ、約3カ月前に契約した火災保険金の支払いを翌22年1月18日に保険会社に請求し、約1億7千万円をだまし取ろうとしたとしている。
(略)
23年3月に所在不明となり同4月に全国に指名手配。25日午前、東京都内で警視庁の警察官が発見した。
出典:産経WEST(2016.10.25 18:02)
このニュースになった刑事事件の時効期間についてまとめると、以下のとおりになります。
詐欺事件の概要
▼公訴時効の起算日
平成22年1月18日
▼「詐欺」の公訴時効期間の年数
7年
▼時効にかかる日
平成29年1月17日を経過したとき
▼逮捕された日
平成28年10月25日
この詐欺の刑事事件で犯人が逮捕されてしまったのは、平成28年10月25日です。
時効にかかる日は、平成29年1月17日を経過したときです。
したがって、公訴時効の起算点から数えて「7年」の年数を経過していません。
この事件のニュースでは、時効について次のように言及されています。
容疑者(53)を逮捕した。詐欺未遂の公訴時効(7年)が約3カ月後に迫っていた。
出典:産経WEST(2016.10.25 18:02)
このように、時効間近で逮捕されてしまったようです。
横領事件の公訴時効について
次は、業務上横領の公訴時効について考えてみましょう。
この事件は、農協の職員が管理していたお金を着服した横領事件です。
滋賀県警は6日、顧客の定期積立の解約金など現金約571万円を着服したとして、業務上横領の疑いで(略)容疑者(略)を逮捕した。
(略)
平成28年7月~29年3月、顧客の50代男性の定期口座五つを解約手続きし、計約571万円を着服した疑い。
出典:産経WEST(2018.2.6 14:45)
この横領事件についても、公訴時効を考えてみましょう。
業務上横領事件の概要
▼公訴時効の起算日の目安
平成28年7月~29年3月
▼「業務上横領」の公訴時効期間の年数
7年
▼逮捕された日
平成28年2月6日
この事件では、横領事件の犯罪が終わった後、比較的早い時期に逮捕されてしまったようです。
業務上横領の公訴時効の年数は、7年です。
その公訴時効期間を経過する前に逮捕されています。
「実は時効直前の逮捕だった!?」あなたの時効は停止していませんか?
刑事事件の時効の「停止」とは?
「公訴時効が経過するのを待とう」と考える犯人もいるかもしれません。
ですが、刑事事件の時効について、「停止」をご存知ですか?
時効の「停止」がある場合、公訴時効の年数は進行しません。
では、時効の「停止」の具体的内容について確認していきましょう。
「時効の停止」とは、何らかの客観的事実によって、時効の進行を停止させ、時効の完成を猶予する制度です。
公訴時効が停止するのは、起訴されたり、国外に逃げ隠れするような事実がある場合です。
これらの事実がなくなれば、再びその刑事事件の時効期間は進行します。
それでは、公訴時効が停止する場合をまとめておきましょう。
- ① 公訴の提起があった場合(共犯に対してされた公訴の提起も含む)
- ② 犯人が国外にいる場合
- ③ 犯人が逃げ隠れしているために、有効に起訴状謄本の送達や、略式命令の告知ができなかった場合
このような場合に、刑事事件の時効が停止されます。
公訴時効の停止がされた事件を少しだけ見てみましょう。
この事件は、沖縄返還協定を巡り学生らが暴徒化し、警察官を死亡させたという刑事事件です。
犯人は、殺人容疑に問われています。
実行役とされる(略)容疑者(67)が47年に殺人容疑などで指名手配され逃走中。共犯の(略)公判が停止中だったため、当時の殺人罪の公訴時効期間だった15年が過ぎた61年になっても(略)容疑者の時効は成立しなかった。
出典:産経ニュース(2017.2.14 21:08)
この事件では、容疑者は逃亡していましたが、共犯者は公訴を提起されていました。
共犯に対してされた公訴の提起による時効の停止は、他の共犯者にも効力があります。
そのため、この事件では、逃亡している容疑者の時効も停止されました。
Aさん(共犯者)に公訴が提起された。 ↓ Aさんについて公訴時効が停止される。 ↓ Bさんは逃亡中。Bさんの時効も停止。 |
※公訴の提起によって「停止された時効」は、管轄違い・公訴棄却の裁判が確定した時から再び進行する。
刑事事件の「時効の停止」についても、法律の専門的な内容でわかりにくいですよね。
気になる方は弁護士さんに聞いてみるのもよいかもしれません。
時効が中断したら時効期間の年数はどうなるの?
「停止」に似た概念として、「中断」という言葉があります。
「中断」とは、何を意味しているのでしょうか。
「時効の中断」とは、時効の達成に必要な期間の進行が、一定の事実の発生によって中断する制度です。
時効が中断されると、ふりだしに戻り、中断事由の終了後に改めて時効期間の経過を待たなければなりません。
現行法では、公訴時効については、時効の中断という方式は採用されていません。
時効の停止の場合、7年の公訴時効だとすると、6年経過した時点で時効が停止されたとします。
この場合、停止事由の消滅後、時効にかかるまでに必要な年数は、あと1年です。
これに対して、時効の中断の場合、中断事由の消滅後、ふりだしに戻ってカウントすることになります。
そのため、時効にかかるまでに必要な年数は、7年です。
時効の停止
▼例
公訴時効が7年
時効の停止事由発生時は6年経過後
▼残りの時効期間
約1年
時効の中断
▼例
公訴時効が7年
時効の中断事由発生時は6年経過後
▼残りの時効期間
7年
刑事事件の公訴時効の算定方法で採用されているのは、「時効の停止」です。
そのため、再び最初からカウントしなおす必要はありません。
刑事事件以外の時効の年数は?民事上の責任について
民事上の損害賠償や慰謝料にも時効はある?
ここまで、刑事事件の時効の年数についてお話してきました。
でも、刑事事件が問題になっているということは、その被害に関する民事責任も問題になります。
そうすると、民事責任に関する時効も問題になります。
ここからは民事責任に関する時効について検討していこうと思います。
前提として、どのような民事責任が問われるのでしょうか。
刑事事件を起こした場合でも、被害に関する損害賠償については民事責任を問われます。
この損害賠償の中には、精神的損害に対する損害賠償である慰謝料も含まれます。
刑事事件で生じた損害については、不法行為による損害賠償請求権という債権が成立します。
この債権にもとづいて、被害者から損害賠償を請求されることになるのです。
加害者は被害者から不法行為による損害賠償請求を受けるのですね。
続いては、損害賠償請求権の時効を見ていきましょう。
民事責任に関する時効の起算点や期間
では、不法行為による損害賠償請求権は、時効により何年で消滅してしまうのでしょうか。
ここは2020年に施行された民法改正で変わっているとの噂を聞きました。
変更されている部分は、改正前と改正後に分けて解説して頂きましょう。
時効の起算点はいつからで、期間はどれくらい?
まずは時効がいつから進行して、どれくらいで完成するかを考えてみましょう。
早速ですが、先生お願いします!
不法行為に基づく債権の時効は民法724条に規定されており、2種類あります。
第1に、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅することになります。
要するに、民事責任の時効は、被害者が加害者と被害の存在を知ったときから3年間で債権は消滅します。
第2に、不法行為の時から20年間経過したときも、時効により消滅します。
要するに、被害者が加害者や被害の存在を知らないときでも、刑事事件が起こった時点から20年間で債権は消滅してしまうということです。
これらの期間は民法改正前後で変更ありません。
ありがとうございます。
基本的には民法改正前後で変わりないとのことですが、少しだけ変わる部分があるとの噂を耳にしております。
先生、どうでしょうか。
新民法では、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間は3年間から5年間と変更されています(新民法724条の2)。
例えば、傷害事件や交通死亡事故の損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知った時から5年間行使しないときは、時効で消滅することになります。
また、通常の損害賠償請求権と同様に、傷害事件や交通死亡事故のときから20年間経過すれば時効により消滅します。
なるほど、交通事故で人的損害と物的損害が生じた場合、人的損害の時効は5年で、物的損害の時効は3年ということになるんですね。
時効の期間がわかったところで、続いては時効が中断することはあるのかを見ていきましょう。
時効は中断するの?
民事上では時効の中断は認められています。
そこで、先生には時効の中断・更新を説明して頂きましょう。
ここも民法改正で変わっているところなので、まずは民法改正前から解説をお願い致します。
「時効の中断」とは、中断事由が起こることにより、それまで進行していた時効がリセットされて、はじめから進行するということです。
中断事由とは、例えば加害者が被害者に対して損害賠償債権が存在することを認めたような場合です。
次に、「時効の停止」とは、停止事由が起こることにより、進行していた時効がストップすることをいい、停止事由が消滅したら再び時効は進行します。
では、民法改正でどのように変わったのでしょうか。
民法改正により、時効の中断は、「時効の更新」となり、時効の停止は、「時効の完成猶予」という制度に改められました。
更新・完成猶予となる事由は、細かく見れば変更されていますが、基本的には改正前と同様に考えておけば大丈夫です。
基本的には名前が変わったと考えておけばいいのですね。
確かに時効の「中断」と「停止」って少しわかりにくいですよね…
最後に新民法がいつから適用されるのかを見ていこうと思います。
新民法はいつから適用されるの?
では、最後に大事なポイントを見ていきましょう。
それは、自分が起こした刑事事件は新民法と旧民法のどっちの適用を受けるの?という疑問です。
改正後は時効の期間が5年となっている部分もあるので、結構大事なところですよね。
どうやら、新民法が施行された2020年4月を境に考えればいいというわけではないようですね。
先生、わかりやすくお願いします!
基本的には、刑事事件が施行日である2020年4月1日の前後どちらで起こったかを考えればよいのですが、不法行為の場合は注意が必要です。
まず、不法行為の時効が3年という原則は変わっていないので、改正前後で違いは生じません。
しかし、人の生命・身体を侵害した場合の損害賠償請求権は3年から5年に伸びています。
改正民法が適用されるのは、2020年4月1日の時点で3年間の時効が完成していない場合です(民法附則35条2項)。
そのため、2017年4月以降に刑事事件を起こして生命・身体に対する不法行為責任を負った場合、時効は5年間となります。
同様に、2020年4月1日の時点で20年間が経過していない場合も、改正民法が適用されます(同1項)。
そのため、2000年4月以降に不法行為責任を負った場合は、改正民法により、「時効の完成猶予」および「更新」が適用されます。
2017年4月以降に刑事事件を起こして生命・身体を脅かした場合、民法改正により時効期間が伸びるんですね。
改正で一番大きな影響はここかもしれないですね。
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さいごに
今回は、「刑事事件の時効」についてレポートしてきました。
時効がない刑事事件があったり、時効期間の年数が長い刑事事件もたくさんありました。
時効の年数が長期間にわたる刑事事件では、逃亡しても時効直前に逮捕されてしまう人もいます。
逮捕された後には、被害者との示談や、逃亡のおそれのないことを警察に掛け合うなどの弁護活動が必須です。
こうした弁護活動は相当な時間を要します。
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時効を待たずに逮捕されてしまった方は、できるだけ早く弁護士にご相談していただくことをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「刑事事件の時効」について、理解を深めていただけたら幸いです。
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