逮捕と弁護士選任|弁護士選任のタイミングは逮捕前?逮捕後?弁護士の選任手続は?
刑事事件の弁護士選任のタイミングがわからなくて、困っている方もいるでしょう。
逮捕はされていないけれど、警察からの出頭要請で、事情聴取を受けている人もいるかもしれません。
逮捕されていないなら
「まだ弁護士さんに相談するのは早いのでは?」
とも思えます。
弁護士選任のベストタイミングはいつなのでしょうか?
逮捕後まで待っていたら手遅れになったなんてことがあったら、イヤですよね・・・。
さて、今回は、
「弁護士選任のベストなタイミングを知りたい。」
というようなお悩みをかかえている方のご要望におこたえして、「弁護士選任のタイミング」についてレポートします。
- 国選弁護士の選任
- 私選弁護士の選任
- 弁護士選任の手続
などについて、まとめました。
まだ逮捕されていない方も、すでに逮捕された方も、弁護士選任のベストタイミングについて一緒に確認していきましょう。
実務的にみて、適切な弁護士選任のタイミング・手続については、刑事弁護に注力するアトム法律事務所の弁護士にお願いします。
よろしくお願いします。
刑事弁護の経験から、国選弁護士、私選弁護士などの種類に応じた弁護士選任の適切なタイミングについて説明していきます。
目次
逮捕されたら弁護士選任を!最も適切なタイミングとは?
だれでも弁護人を選任できる?弁護人選任権とは
弁護人選任権の意味
刑事事件では、弁護士のことを弁護人ともいいます。
被疑者・被告人には、弁護人選任権という権利があります。
さて、この弁護人選任権とは、どのような権利なのでしょうか。
刑事事件においては、だれもが、被疑者・被告人になったときに、弁護人選任権を有しています。
この弁護人選任権の内容は、たんに、弁護人を選任する権利にとどまらず、
実質的に弁護人から援助を受ける権利
も意味するとされています。
弁護士を選任できたとしても、実際に弁護活動をうけることができなければ、弁護人選任権の保障は意味がないことなりますよね・・・。
「実質的に弁護人から援助を受ける」というのは、
- 取り調べに対して助言をもらったり、
- 示談交渉をしてもらったり、
これらに加えて、被告人の場合、
刑事裁判の法廷で弁護してもらったり
などの援助を受けることを意味します。
また、逮捕されたら、その後、家族と連絡をとりたいですよね・・・。
しかし、捜査の都合上、家族や知人との面会が、禁止されることもあります。
このように、面会が禁止された場合でも、特別に弁護士とは面会できます。
したがって、弁護士を通じて、家族に連絡をとることも可能です。
このように、弁護士選任は、被疑者・被告人の権利として、とても重要なものです。
さて、刑事事件において、弁護士選任のタイミングはいつなのでしょうか。
やはり、逮捕直後などの捜査段階から助言してもらえたほうが、よいのかもしれないですよね。
ちなみに、刑事訴訟法では、いつでも」弁護士を選任できると規定されています。
被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
出典:刑事訴訟法第30条第1項
では、弁護士選任のタイミングや弁護士選任の方法を確認していきましょう。
国選弁護士の選任のタイミング
刑事事件の弁護士選任には、種類があります。
それは、国選弁護人の選任と私選弁護人の選任です。
まず、国選弁護人から説明していきます。
貧困などの事情により、自分で弁護人を選任して依頼できないときに利用できるのが国選弁護人の制度です。
被告人の弁護士選任に関連する条文は、次のとおりです。
被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。
出典:刑事訴訟法第36条
被告人とは、刑事訴訟において起訴された者をいいます。
したがって、この条文により、起訴された段階では、国選弁護人を選任することができます。
では、起訴される前、つまり被疑者段階では、国選弁護人を選任することはできるのでしょうか?
被疑者の国選弁護士に関連する条文も、刑事訴訟法には規定されています。
第三十七条の二 被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
○2 前項の請求は、勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。
出典:刑事訴訟法第37条の2
国選弁護制度について、まとめてみました。
被疑者 | 被告人 | |
---|---|---|
その他の要件 | ・被疑者に対して勾留状が発せられている場合または勾留請求された場合 ・被疑者が貧困(預貯金等含み50万円未満)その他の事由により弁護人を選任することができないとき ・被疑者の請求 ・被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合にあたらないこと ・被疑者が釈放された場合にあたらないこと | 《36条の被告人国選》 ・貧困その他の事由により弁護人を選任することができないとき ・被告人の請求 ・被告人以外の者が選任した弁護人がいないこと 《37条の被告人国選》 ①下記のいずれかの場合に該当すること ・被告人が未成年者であるとき ・被告人が年齢七十年以上の者であるとき ・被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき ・被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき ・その他必要と認めるとき ②被告人に弁護人がある場合にあたらないこと |
さて、今まで見てきてとおり、逮捕された場合に、国選弁護人を選任しようと思っても、
はやくとも勾留請求された段階
でしか、弁護士に相談できません。
でも、逮捕後すぐに取り調べは開始されます。
その取り調べで、不本意な供述をとられる危険性もあるので怖いですよね・・・。
そこで、逮捕後すぐにでも弁護士にアドバイスをもらいたいと思ったとき、
当番弁護士
という制度があります。
「当番弁護士」とは、
身体を拘束された被疑者からの求めに応じて、弁護士会が速やかに弁護士を派遣する制度
です。
当番弁護士制度は、弁護士が初回1回に限り、無料で対応してくれます。
当番弁護士は、被疑者の国選弁護と異なり、逮捕された人が面会に来てもらえる点で、国選弁護制度の補充としての役割を担っています。
逮捕された直後の被疑者に対して、当番弁護士の利用を呼び掛ける弁護士さんも多いです。
ちなみに、当番弁護士の選任は、以下の弁護士会のHPからできるようです。
ここで、当番弁護士と、被疑者国選の違いについてまとめてみました。
当番弁護士 | 被疑者国選 | |
---|---|---|
依頼のタイミング | 逮捕後 | ・勾留中 ・勾留請求されたとき |
接見費用 | 1回に限り無料 | 無料 |
被疑者国選の場合、勾留請求のタイミングでしか弁護士を選任できません。
当番弁護士の場合、逮捕された後すぐに利用できますが、1回のみの利用に限定されてしまいます。
国選弁護人と当番弁護士に違いをもっと詳しく確認したい方、各制度の利用の仕方を知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。
国選や当番弁護士だからよくないということはありません。
ただ、
逮捕後すぐのタイミングで選任し、継続的に助言をもらいたい
という場合には、やはり私選弁護人を選任するほうがオススメです。
私選弁護士の選任のタイミング
私選の弁護士選任が良いといわれる理由とは?
さて、ここから、私選弁護人の選任について確認していきましょう。
ちなみに、
「逮捕されたら、私選弁護士の選任をしたほうがよい」
という話を耳にしたことがある人もいるかもしれません。
当番弁護士や国選弁護の場合、被疑者は、自分で弁護士を選ぶことができません。
弁護士会の順番に当たった当番弁護士、裁判所が選任した国選弁護人に、弁護を依頼するしかありません。
したがって、
弁護士の力量や相性と無関係に担当弁護士が決められてしまう
というデメリットがあります。
このような理由から、国選などではなく、私選の弁護人を選任したほうがよいといわれるようです。
私選の弁護士選任のタイミングとは?
私選弁護士の場合には、弁護士選任のタイミングに制限はありません。
警察の捜査対象となり、事情聴取を受けている場合には、その内容が供述調書として刑事裁判の証拠となることもあります。
取り調べでは、自白重視の傾向があるとの問題点がしばしば指摘されています。
事情聴取の段階から、弁護士を選任しておけば、行き過ぎた取り調べが行われたような場合でも、弁護士にすぐに相談することができます。
事情聴取を受けるのでさえ緊張しますよね。
それに加えて、すごみのある口調で取り調べを受けるのは大変です。
でも、そんなとき、相談にのってもらえる弁護士さんがいると心強いはずです。
取り調べに耐えるためには、捜査が開始された早い段階から弁護士さんに相談するのが、望ましいです!
何の前触れもなく突然、逮捕された場合には、
逮捕後すぐに
逮捕されていないけれど、警察から電話で呼び出しを受けたというような場合には、
呼び出しの警察からの電話の後すぐ
が、弁護士選任のベストタイミングです。
まとめ
ここまで見てきて、私選か国選か、それとも、当番弁護士を依頼するか悩むという方もいるかもしれません。
逮捕されてしまった場合には、
① とりあえず当番弁護士を1回呼んでみる
それと並行して、逮捕された方のご家族が
② 一般の弁護士事務所の無料相談を受けるてみる
このような流れの中で、
③ 相性の良い弁護士の目星をつけて私選弁護を依頼する
という方法がオススメだと言えます。
自分にピッタリの弁護士選任ができるように、弁護士選任に関する様々な制度を活用していきましょう。
国選弁護士と私選弁護の違いについて、おさらいしたい人は、こちらの記事もご覧ください。
国選弁護から私選弁護に切り替えたいと考えた方は、以下のリンクも見てみてください。
では、次に弁護士選任の手続について見ていきましょう。
弁護士選任の手続~すべては弁護人選任届からはじまる~
弁護士選任権にもとづいて弁護士選任
さて、弁護士選任に関して必要な「書面」はあるのでしょうか。
私選弁護人の選任においては、弁護士に弁護を依頼する契約に関して
委任契約書
が必要となるほか、刑事訴訟手続が有効なものとされるために、
弁護人選任届
を裁判所や検察庁に提出する必要があります。
国選弁護人の選任においては、
国選弁護人氏名通知
が必要です。
弁護士選任に必要な書類を表にまとめました。
私選弁護人の選任 | 国選弁護人の選任 | |
---|---|---|
書面の種類 | ・弁護士との関係で「委任契約書」 ・裁判所、検察庁との関係で「弁護人選任届」 | ・「国選弁護人氏名通知」 |
国選弁護人氏名通知とは、日本司法支援センターから裁判所への弁護人候補者の通知のことです。
国選弁護人の候補者を日本司法支援センターが裁判所に「通知」し、その「通知」の中から裁判所が国選弁護人を選任します。
この「通知」が、国選弁護人氏名通知です。
平成18年10月以降、日本司法支援センターが選任・解任以外の国選弁護人制度の運営を担い、国選弁護人の候補となる弁護士を契約により確保していますので、裁判所は、国選弁護人を選任するときは、同センターに対して、国選弁護人候補を指名して通知するよう求めることになっています。同センターは、これを受けて遅滞なく国選弁護人の候補を指名して通知し、裁判所はこれに基づいて国選弁護人を選任します。
国選弁護人の報酬は日本司法支援センターから支給されることになりますが、有罪判決の場合には、原則として、被告人が訴訟費用としてその負担を命じられることになります。
出典:裁判所HP「裁判手続 刑事事件Q&A」より(http://www.courts.go.jp/saiban/qa_keizi/qa_keizi_16/index.html)
私選弁護人の選任については、「弁護人選任届」がポイントです。
私選弁護士の選任は、すべては弁護人選任届からはじまるといっても過言ではありません。
たとえば、刑事裁判で起訴される前のタイミングで、弁護士選任をした場合、弁護人選任届を提出しなければ、第一審の法廷で弁護活動をしてもらえません。
(被疑者の弁護人の選任・法第三十条)
第十七条 公訴の提起前にした弁護人の選任は、弁護人と連署した書面を当該被疑事件を取り扱う検察官又は司法警察員に差し出した場合に限り、第一審においてもその効力を有する。
出典:刑事訴訟規則第17条
また、弁護士選任のタイミングが起訴後でも、法廷で弁護してもらうには、弁護人選任届が必要です。
(被告人の弁護人の選任の方式・法第三十条)
第十八条 公訴の提起後における弁護人の選任は、弁護人と連署した書面を差し出してこれをしなければならない。
出典:刑事訴訟規則第18条
さて、この弁護人選任届の提出先はどこなのでしょうか・・・。
弁護人選任届を提出!その提出先は?
さて、ここから、弁護人選任届の提出先について確認していきましょう。
捜査段階 | 起訴後 | 追起訴・再逮捕の場合 | |
---|---|---|---|
提出先 | ・検察官への事件送致前は司法警察員 ・検察官への事件送致後は検察官 | 受訴裁判所** | ・もとの事件と同一裁判所に公訴が提起され且つこれと併合された場合は不要 ・上記以外の場合は受訴裁判所 |
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さいごに
今回は、「弁護士選任のタイミング」についてレポートしてきました。
逮捕されていないとしても、事情聴取がされたタイミングで弁護士に相談するのがベストということがわかりました。
弁護士は、法廷活動以外にも、取り調べに対する助言、警察への意見書提出、示談交渉など多様な弁護活動をしています。
弁護士に相談するタイミングが早ければ早いほど、弁護活動としてできることが増えます。
現在、逮捕されている方のご家族や、逮捕はされていないけれど事情聴取されているという方は、今が弁護士選任のベストタイミングです。
まずは、弁護士に相談してみて、その弁護士に刑事事件を依頼したいかどうかを吟味してみてください。