逮捕と起訴の違いを徹底解説|逮捕から起訴まで…刑事事件の流れを解く
「〇〇の容疑で逮捕された」
「△△罪で起訴された」
ニュースなどでよく耳にする言葉です。
これらの違いをご存知でしょうか。
なにかの事件に関係することは想像できますが、分かっているようでよく分からないという方も多いと思います。
刑事手続きの流れに沿って、「逮捕と起訴の違い」をおさえていきましょう。
刑事事件を専門とするアトム法律事務所の弁護士に、法律部分の解説をお願いしています。
目次
逮捕・起訴…刑事事件の流れにおける手続きの違い
逮捕や起訴の明確な違いが、わからないという質問をいただくことがあります。
逮捕や起訴は、刑事事件の流れにおける手続きの違いにあります。
逮捕
警察などがおこなう事件の第一次的な捜査方法のひとつ |
起訴
検察がおこなう事件を裁判にかけるかどうかの判断 |
逮捕と起訴の違いについて、それぞれ詳しく解説していきたいと思います。
「逮捕」は基本的に警察がおこなう
逮捕と聞くと、警察が犯人に手錠をかける場面やパトカーで連行していく場面が思い出されるのではないでしょうか。
こちらの逮捕ニュースをごらんください。
静岡県藤枝市の山中で9日に女性の遺体が見つかった死体遺棄事件で、県警は12日、女性の連れ去りに関与したとして、11日夜に名古屋市内の警察署に出頭した40代の無職の男を監禁容疑で逮捕した。
すでに別の20代の男も監禁容疑で逮捕している。
男同士はインターネットで知り合ったといい、「事件当日初めて会った」と供述。
「女性とは面識がなかった」と話しているという。(略)
出典:朝日新聞(2018年6月12日20時31分)
女性の遺体が山中で見つかった事件で、この事件に何らかの形で男2人が関与したというニュースです。
県警が逮捕したとあります。
法律に違反するような事件や事故が起きると、犯人が「逮捕」されて事件の捜査がすすめられることがあります。
そもそも逮捕とは、何なのでしょうか。
逮捕とは
法律に違反した事件・事故を起こしたと疑われるに足りる相当な理由があるとき、その人物の身体の自由をうばう捜査活動
犯罪事件の捜査の一環としておこなわれる手段の一つが逮捕ということになります。
犯罪の捜査をおこなうことは、警察の職務のひとつです。
司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。
出典:刑事訴訟法第189条2項
このように、刑事事件の第一次的な捜査は、司法警察職員がおこなうこととされています。
検察官が必要だと認める場合は、検察官によって捜査されることがあります。
警察と検察は同じ捜査機関ではありますが、それぞれ独立した機関です。
両者は、協力関係であることが原則です。
捜査は、起訴するための証拠をあつめたりする手段として用いられます。
法律上、起訴権を持つ検察は警察に対する一定の指揮権や指示権が与えられています。
逮捕は警察官だけがおこなうイメージがあったかもしれませんが、違います。
逮捕状にもとづいて逮捕をおこなうことが認められているのは、警察だけではありません。
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。(略)
出典:刑事訴訟法第199条
「検察官、検察事務官又は司法警察職員」とあります。
逮捕は原則として、裁判官が発付した「逮捕状」にもとづいておこなわれます。
この逮捕状を請求できるのは…
・検察官 ・検察事務官 ・司法警察職員(警察官など) |
このような捜査機関が、逮捕状を請求することが認められています。
警察や検察といった捜査機関においては、逮捕状を請求することができるという点に違いはありません。
検察官が逮捕をおこなう事件の違い
ちなみに、検察官や検察事務官がおこなうような逮捕は、
- 政治家の不正献金
- 大型の脱税
- 談合事件
といった特殊な犯罪にかぎられることが多いです。
こちらのニュースをご覧ください。
車を海外に輸出したように装って不正に消費税の還付を受けたとして、名古屋地検特捜部は13日までに、自動車販売会社(略)社長(略)ら2人を消費税法違反(脱税)などの疑いで逮捕した。(略)
出典:日本経済新聞(2018/6/13 10:01)
名古屋地検特捜部が、脱税事件の逮捕に乗り出したというニュースです。
特捜部(特別捜査部)は、東京・大阪・名古屋の地方検察庁だけにおかれている部門です。
汚職・企業犯罪などのについて独自捜査をおこなっています。
逮捕の種類の違いとは?
ところで、逮捕にも種類の違いがあります。
簡単におさえておきたいと思います。
- 後日逮捕(通常逮捕)
- 現行犯逮捕
- 緊急逮捕
後日逮捕や緊急逮捕には、逮捕の原則となる逮捕状が必要になります。
一方、逮捕状が不要な現行犯逮捕は逮捕の例外として認められています。
逮捕についてくわしくはこちら
「起訴」はかならず検察官がおこなう
法律に違反するような事件や事故について、
- 犯罪を犯したことの明白な証拠があり
- 裁判で事件の審理が必要であると判断される
このような場合、起訴という手続きがおこなわれます。
起訴とはいったい、何なのでしょうか。
起訴とは
法律に違反した事件・事故の真相を明らかにして、真犯人に適切な罰が与えられるように裁判をおこなう申し立てを裁判所におこなうこと
有罪なのか無罪なのか、審理を裁判によって行ってほしいという検察官の判断が「起訴」と呼ばれています。
警察の一次的な捜査によって集められた証拠をもとに、起訴するかどうかの判断が検察官によっておこなわれます。
先ほど、逮捕は警察官だけでなく検察官もおこなうことができると解説しました。
一方、起訴は原則として「検察官のみ」がおこなうことが認められている権利です。
公訴は、検察官がこれを行う。
出典:刑事訴訟法第247条
公訴とは起訴のことです。
逮捕と起訴の違いをいうなら、検察官しかできないかどうかという点かと思います。
逮捕は検察官以外もできますが、起訴は原則的に検察官しかできません。
このような点が、逮捕と起訴の大きな違いであるようです。
起訴の種類の違いとは?
ちなみに、起訴にも種類の違いがあります。
簡単におさえておきたいと思います。
- 公判請求(正式起訴)
- 略式命令請求(略式起訴)
公判請求は、公開の法廷で開かれる裁判をおこなうように裁判所に求めます。
略式命令請求は、被疑者の同意を得て法廷ではなく書面審理で刑罰が言い渡されるように裁判所に求めます。
起訴についてくわしくはこちら
逮捕~勾留~起訴~裁判まで!違いが分かる刑事事件の流れ
刑事事件の流れは、大きく2つに分けられます。
- 在宅で捜査がおこなわれる在宅事件
- 身柄が拘束される身柄事件
この2つです。
在宅事件と身柄事件の大きな違いは、「逮捕・勾留」されているかどうかという点にあります。
逮捕・勾留されている身柄事件は、厳格な時間制限のなかで手続きがすすめられていくことになります。
この時間制限に沿って、身柄事件の手続きの流れを解説していきたいと思います。
流れ①事件発生から逮捕まで
事件発生から逮捕までの流れです。
警察に逮捕される事態に発展するということは、警察が事件を把握していることになります。
警察が事件を把握するきっかけを、「事件の端緒」といいます。
事件の端緒はさまざまなケースが考えられます。
✔街中で不審人物として警察に職務質問される ✔事件の被害者によって警察に被害届が提出される ✔事件の第三者によって警察に告訴、告発される ✔マスコミによって事件が報道される ✔みずから警察署に自首する |
【参考】:「警察逮捕までの流れ|逮捕の前兆は?逮捕状をもった警察官がくる時間はいつ?」
さまざまな事件の端緒によって警察に事件が発覚するわけですが…
そもそもなぜ逮捕されることになるのでしょうか。
なぜ逮捕される?
逮捕する「理由」と「必要性」があるため
逮捕は、逮捕の要件を満たしている必要があります。
- 犯罪を疑うに足りる相当な理由があり
- 逃亡や証拠隠滅のおそれといった逮捕の「必要性」がある
このような場合、逮捕されることになります。
逮捕の理由についてくわしくはこちら
流れ②逮捕から送致まで【48時間以内】
逮捕されると、「48時間以内」に送致されます。
司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、(略)被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
出典:刑事訴訟法第203条1項
48時間以内に警察は送致の段取りを進めなければなりません。
では、送致とはいったい何なのでしょうか。
送致
被疑者の身柄や事件の証拠・書類などを検察官に送り届け、引き継ぐこと
一般的には、「送検」といわれることもあります。
ただしくは、送致といいます。
刑事事件で逮捕されても、検察官に送致されないケースもあります。
「微罪処分」といって、軽微な事案は警察の捜査だけで終了させるという制度になります。
微罪処分の対象とならなければ、検察官に送致されることになります。
平成28年における全検挙人員に占める微罪処分の比率は29.7%となっています。(平成29年度「犯罪白書」より)
流れ③送致から勾留請求まで【24時間以内】
送致されると、「24時間以内」に勾留請求されるかどうか検察官によって判断されます。
検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、(略)被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
出典:刑事訴訟法第205条1項
24時間以内に検察官によって勾留請求されるがどうかが決定します。
検察官が勾留を請求するには、理由があります。
犯罪をおこなったと疑うに足りる相当な理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合は24時間以内に勾留請求されることになります。
- 住居不定である
- 証拠隠滅のおそれがある
- 逃亡のおそれがある
勾留請求されると、その当日または翌日に裁判所で裁判官からの勾留質問を受けます。
勾留されるかどうかは、勾留質問をとおして裁判官によって判断されます。
流れ④被疑者勾留・勾留延長から起訴まで【最大20日間以内】
勾留が決定すると、留置場などの刑事施設での生活が余儀なくされます。
勾留が決定すると、「10日間」のあいだ勾留されることになります。
勾留延長となれば、さらに「10日間以内」で勾留期間が延長されます。
あわせて、原則として「最大20日間内」に起訴されるかどうか検察官によって判断されます。
前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
② 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
出典:刑事訴訟法第208条
原則的に最大20日間内に起訴されるか検察官によって判断されます。
勾留されたという事実は、事件を起訴するかどうかの判断とは別問題になります。
勾留されたからといって必ず起訴されるわけではないし、勾留されなかったから必ず不起訴になるわけでもありません。
勾留されたことと、事件の起訴・不起訴は別問題です。
不起訴についてくわしくはこちら
流れ⑤起訴から裁判まで【約1カ月】
検察官に起訴する判断がくだされると、「起訴状」が裁判所に提出されます。
そして、裁判所から起訴状の写しが郵送で送られてきます。
起訴されると、約1ヶ月後に裁判がおこなわれることになります。
起訴前から勾留されている場合は、起訴された後も、保釈請求が認められないかぎり勾留されつづけることになります。
裁判期日には、勾留されている場所から裁判所へ出頭します。
逮捕から起訴、判決までの流れはこちら
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